介護保険サービスと消費税

2014-03-16 21:47:37 | 日記
もうじき消費増税(5%→8%)となるが、非課税となるものも相当ある。財務省HPでは、『社会政策的配慮から非課税としているもの』として、次のように列記している。


 ・医療保険各法等の医療
 ・介護保険法の規定に基づく居宅サービス、施設サービス等
 ・社会福祉法に規定する社会福祉事業及び社会福祉事業に類する事業等
 ・助産
 ・埋葬料、火葬料
 ・身体障害者用物品の譲渡、貸付け等
 ・一定の学校の授業料、入学金、施設設備費、学籍証明等手数料
 ・教科用図書の譲渡
 ・住宅の貸付け


介護保険サービスに関しては、「介護保険法の規定に基づく居宅サービス、施設サービス等」と記載されているが、具体的には、国税庁HPに列記されている次の項目が該当するであろう。


(非課税(介護保険))
 1 要介護者が負担する介護サービス費用の取扱い
 2 「日常生活に要する費用」の取扱い
 3 非課税となる「居宅サービス費の支給に係る居宅サービス」の具体的な範囲
 4 居宅サービスにおける利用者負担の交通費等の費用の取扱い
 5 福祉用具貸与に係る取扱い
 6 施設サービスにおいて提供される自己選択サービスの取扱い
 7 住宅改修費の支給に係る消費税の取扱い
 8 市町村特別給付の取扱い
 9 バス会社が介護サービス事業者からの依頼により、通所介護等の利用者の送迎を行う場合の取扱い
 10 いわゆるNPO法人が介護保険サービス事業を行う場合の消費税の取扱い


それぞれかなり細かいので、逐一見ておく必要がある。詳しくは、都度確認していくのが最善であろう。

春闘 ~ 労使間で決まらなければ、国がやるしかない

2014-03-13 00:15:21 | 日記
先のブログ記事の続編。厚生労働省の「平成25年労働組合基礎調査の概況」では、直近の労働組合の産業別、企業規模別、加盟上部組合別にみた組合員の分布状況などが掲載されている。


<概要>
○労働組合員数:987万5千人(前年比1万7千人減(0.2%減))
○推定組織率:17.7%(前年比0.2ポイント減)
○女性の労働組合員数:303万4千人(前年比4万4千人増(1.5%増))
○女性の推定組織率:12.6%(前年と同水準)
○パートタイム労働者の労働組合員数:91万4千人(前年比7万7千人増(9.2%増))、全体の労働組合員数に占める割合9.3%(前年比0.8ポイント増)、推定組織率6.5%(前年比0.2ポイント増)


こうした構造変化には、正規・非正規比率の変化も反映されているのだろう。労働三権(団結権、団体交渉権、争議権)が憲法で保障された労働者の権利ではあるが、行使しなければ権利の意味をなすことはない。労働者の多くは、こうしたことを知ってか知らずか、近年の春闘は盛り上がりに欠けてきたように感じる。

意外に思うかもしれないが、下の資料1にあるように、推定組織率(労働組合員数を総務省統計局「労働力調査」の雇用者数(6月分の原数値)で除して得られた数値)は、10年前から2割を下回るようになっている。1950年代までは50%以上あったが、それ以降漸減してきた。

今回の春闘にも言えるが、企業規模が大きいほど労使交渉における労働者側の交渉力が強いことは、下の資料2で掲げた企業規模別の推定組織率を見れば、自ずと理解できる。下の資料3によると、パートタイム労働者の推定組織率は過去最高を更新し続けてはいるが、比率としてはまだまだ低い。

多くの場合、争議もせずに待っているだけでは賃上げとはならない。労組の組織率が漸減してきていることの責任の一端が労組側にもあると言われることもある。いずれにせよ、労使間交渉参加者数が減っている現状を直視すると、安全網としての労使間交渉制度や労働組合制度を実態に即すよう改革していく必要がある。

労使間で決めるべきことを労使間で決められない実態が更に広がっていけば、最終的には国が音頭を取るという滑稽な事態になる。現政権は、実際にそこに踏み込んでいる。それは、時代の変化ではなく、時代の悪化としか思えない。



<資料1>

(出所:厚生労働省資料


<資料2>

(出所:厚生労働省資料


<資料3>

(出所:厚生労働省資料

春闘 ~ 賃金改善を体感できそうな人々とまだまだそうでない人々

2014-03-12 19:44:51 | 日記
今夜のNHKニュースでは、今年の春闘でベースアップが相次いでいると報じている。

<報道要旨>
・経団連会長「賃金の改善が必要という認識が共有されたものであり、労使で懸命に話し合って成果を生み出したと考えている」
・連合事務局長「大変よいスタート。大手の回答を土台にして、非正規雇用などすべての働く人の底上げにつなげていきたい」「地域や業種によって業績回復は一律ではなく、予断を許さない。中小企業での賃上げは人材確保の面からも必要」
・官房長官「近年にない賃上げが実現しつつあることは、素直に評価。中小企業や小規模事業者も含め賃金上昇が広く実現することを期待」
・経済再生担当大臣「近年にはない賃上げが実施されつつあり、期待以上に経営側が応えてくれた」「業績がそれほどよくない企業でも、内部留保をはたいて、政府の要請に応えたという話も聞いている」

こうした好調子が経団連傘下の大企業の一部だけの話で終わらないことを祈念したいところだが、実際には今回急にベア・賃上げの動きが大きく広がるとは思えない。全体が底上げされることは、経済構造上からも考えられないし、中小企業や非正規雇用にまで波及するためには好況が相当期間継続していく必要がある。

いつ頃からか、春闘は、一部の大企業についてしか関心の対象にならなくなってきたのかもしれない。もちろん、大企業の一部だけのことであっても、ベアや賃上げが大事なことに決まっている。

現実味のある経済見通しを考えると、どんなに頑張ってもせいぜい『緩やかな成長』しか見越せない。それに見合った政策転換を目指すことが必要となる。そうでないと、“成長戦略資料づくり”という自己満足的なムダを定期的に行い続けることになる。マクロ労働市場の構造は、下の資料1~3のように推移し、変化している。正規比率を高める“是正”に努めるのではなく、この実態に合った社会保障や労使交渉に係る制度改革を行っていくしかない。



<資料1:正規・非正規の推移>

(出所:厚生労働省HP


<資料2:雇用形態別の状況>

(出所:厚生労働省HP


<資料3:非正規雇用労働者の全体像>

(出所:厚生労働省HP

「収益性を確保できる効率性の良いビジネスモデルの検証」を ~ 介護人材確保推進検討委員会

2014-03-11 22:23:28 | 日記
去る3月6日、厚生労働省「介護人材確保の推進に関する検討委員会」(第4回委員会)が開催された。今回は最終回で、報告書案を議論した。介護人材確保策についても課題山積なのだが、今回の提言はこの資料の49ページ以降の第5章で、その構成は次の通り。


 第5章 今後の介護人材確保の推進に向けた提案

  1. 第 6 期介護保険事業(支援)計画期間等の早期に実施が期待される取り組み
  (1) 事業者における自主的な取り組み
  (2) 団体等において期待される取り組み
  (3) 都道府県等の行政に期待される取り組み
  (4) 国に期待される取り組み

  2. 今後さらに検討を要する取り組み


このうち、団体等・都道府県・国に期待される取り組みについては、厚生労働省自ら又はその行政指導により実行に移していくことは可能であろう。しかし、事業者における自主的な取り組みについては、この報告書で書いただけでは何ら実効性を持たないので、真に必要な事項に関しては、団体等・都道府県・国に期待される取り組みとともに、具体的な制度化や予算化を試行していく必要がある。

私としては、介護サービス産業の費用対効果を高めていくことも重要視していくべきと考えており、今後さらに検討を要する取り組みを具体的に進めてもらうよう常に発してきた。特に『介護の質を担保しつつ収益性を確保できる効率性の良いビジネスモデルの検証』と『品質の良い経営の“見える化”や一部の離職率が高い事業所があることを踏まえた離職率等に着目した事業所の経営の“見える化”の推進』は是非とも進めてもらいたい。

介護サービス産業は介護保険を財源の大宗としており、介護保険財政の将来を俯瞰すれば、合理的な財源配分をしていく必要性は論を待たない。その有力な手法の一つが、収益性と効率性を両輪とする介護ビジネスモデルを構築するための介護保険給付システムへの移行である。YS方式やPC方式の導入を真剣に模索していくべきだ。


『貯蓄』の格差 ~ 4000万円以上の貯蓄世帯は全体の1割、貯蓄全体の4割

2014-03-10 20:52:44 | 日記
先のブログ記事の続編。貯蓄高に格差が生じるのは当然のことだが、その分布は下の資料の通りである。この資料から、次のようなことがわかる。

・貯蓄高500万円未満の世帯数は最多の31.7%、その貯蓄額割合は最少の3.8%(いずれも平成24年)。
・貯蓄高4000万円以上の世帯数は最少の10.4%、その貯蓄額割合は最多の40.7%(いずれも平成24年)。
・平成14年と平成24年で比べると、貯蓄高500万円未満の世帯数割合は3.0ポイント上昇でその貯蓄額割合は横這い、貯蓄高4000万円以上の世帯数割合は0.5ポイント上昇でその貯蓄額割合は1.1ポイント上昇。

二人以上世帯については、微妙にではあるが、格差が広がりつつあると読み取れる。ここに年齢別構成比を重ね合わせることができれば、同一世代間扶助に係る財源移転の規模を導き出すことができるはずだ。それは勿論、今はただのシミュレーションに過ぎないが、そのうち必要になってくるだろう。実は、今でも必要ではある。



<資料>

(出所:総務省統計局資料

『負債』の格差 ~ 負債高と負債保有世帯割合が最も高いのは世帯主40~49歳世帯

2014-03-09 23:16:03 | 日記
先のブログ記事の続編。年齢が高いほど『貯蓄』が高いのは当然のことで、『負債』は現役世代のいわゆる働き盛りが最も高いというのも納得できる。下の資料はそれをマクロで端的に現しており、次のようなことが読み取れる。

・1世帯当たりの貯蓄高について、30歳未満世帯が290万円であるのに対して、60歳以上世帯は2171万円。
・1世帯当たりの負債高と負債保有世帯の割合は、40~49歳がピーク。
・純貯蓄額(貯蓄現在高-負債現在高)は、50歳以上では貯蓄高が負債高を上回っており、60歳以上世帯の貯蓄超過額が1976万円最多。

高齢世代に係る社会保障に関しては、若年世代からの所得移転ではなく、同世代間での相互扶助の比率を高めていくことが必要だ。社会保障システムと財政の持続可能性を維持するには、それが唯一の手段となるであろう。消費増税は、その有力な手段と捉えられる。

一方で、資産課税の発想が出てくるのはこうした統計データからは必然のことでもある。同世代間の扶助とは、同世代の他人からの所得移転だけではない。自分のことは自分の貯蓄で賄うというのもある。いずれにせよ、親世代が子ども世代におカネを無心しない世の中に移行していかざるを得ない。



<資料>

(出所:総務省統計局資料

『貯蓄』の格差 ~ 世帯主60歳以上世帯では貯蓄高2500万円以上世帯が3分の1

2014-03-08 22:06:06 | 日記
各世代の経済状態とは、どのようなものなのか。この単純な命題に回答する指標は数多あり、その一つに『貯蓄』がある。直近のデータとしては、総務省統計局の「家計調査年報(貯蓄・負債編)平成24年 貯蓄・負債の概況」を参照されたい。

これと下の資料1~3から、資料本文からの引用も含めて、次のようなことがわかる。

・二人以上の世帯のうち世帯主が60歳以上の世帯(二人以上の世帯に占める割合49.0%)について、二人以上の世帯全体では貯蓄現在高の低い階級に偏っているが、世帯主が60歳以上の世帯では貯蓄現在高が高い階級へも広がっている。
・うち2500万円以上世帯は全体の約3分の1(31.9%)で、二人以上世帯全体における2500万円以上世帯の割合(21.3%)の約1.5倍、二人以上世帯のうち勤労者世帯における2500万円以上世帯の割合(13.7%)の約2.3倍。

財源の在り処としての貯蓄の評価については、貯蓄そのものだけでなく、『負債』についても見ていく必要がある。貯蓄・負債ともに、このブログ記事に記したリンク資料を適宜参照されたい。

財政難が当分続く少子高齢社会への深みに入りつつある日本において、将来の社会保障財源の在り方を考える時、現役世代から退役世代への所得移転だけでは到底賄い切れないことは周知のこと。退役世代にはその退役世代間での相互扶助をしてもらうのが、社会保障システムと財政の持続可能性を維持する唯一の手段なのだろう。



<資料1>

(出所:総務省統計局資料


<資料2>

(出所:総務省統計局資料


<資料3>

(出所:総務省統計局資料

今回も過去最高を更新 ~ 生活保護受給者数(平成25年12月分)

2014-03-05 13:39:15 | 日記
毎度、過去最高を更新し続けている生活保護・被保護者調査。今回は昨年12月分で、下の資料〔=被保護世帯数及び被保護実人員(各月間)〕の通り。ここ最近の傾向を見ていると、被保護世帯数は220万前後、被保護人員数は160万前後で今後当面は推移していくように見込まれる。

これまでの中長期的な推移は、先のブログ記事に掲載した資料1〔=被保護世帯数、被保護人員、保護率の年次推移〕のように急上昇傾向だ。“失われた20年”の間に、政府は幾多の経済対策を打ってきたが、生活保護対策としての効果は見当たらない。

また、好景気の場合には生活保護の被保護者数は改善傾向にあり、不景気の場合には悪化傾向にあることがわかる。経験的な実証では、景気動向は生活保護動向に直結するが、景気対策は生活保護対策に直結しない。

月ごとの統計では過去最高を更新し続けている。短期的には高止まり傾向で、中長期的には上げ止まり傾向にあるようにも見える。日本の政治・行政システムでは、国内での経済格差をなくすことは困難だろうから、一定の経済格差は甘受するしかない。あまりにもその度合いが大きくなっていくと、政治的には、生活保護への公的資金の流れは収縮していくだろう。

過去の景気対策が生活保護対策になってこなかったのは、生活保護受給者が景気対策による公共投資資金の行き着く先になっていないからであろう。労働力になれない生活保護受給者が増えているということだ。これは、少子高齢社会のもう一つの顔なのだろう。経済の牽引役として期待される公共投資資金の行き先は、労働力となる現役世代であるべきだ。



<資料>

(出所:厚生労働省資料

『賃金好転』はまだまだ先 ~ 毎月勤労統計調査(平成26年1月分)

2014-03-04 21:22:08 | 日記
毎月関心を引く統計の一つが厚生労働省の「毎月勤労統計調査」で、今日発表されたのは平成26年1月分結果速報

このうち、賃金に関する結果は次のようなもの。



○現金給与総額:269,195円(前年同月比0.2%減)
○きまって支給する給与:258,364円(前年同月比0.4%増)
○実質賃金指数(現金給与総額):前年同月比1.8%減
 (消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合):前年同月比1.7%上昇)


現金給与総額ときまって支給する給与の前年増減率について、最近の推移を視覚的に示したのが下の資料1である。前民主党政権から現自民党政権に交代してから、対前年で比べた場合においては、全体的には給与水準は上がっていないようだ。

業種別には、下の資料2にある通り、それぞれ増減はまちまちだ。どの業種が景気好転を演出していくかは、まだ定かにはなっていない。『賃金好転』はまだまだ先のことになるだろう。これが好転しなければ、豊かさが回復した実感は湧きようがない。



<資料1>

(出所:厚生労働省資料


<資料2>

(出所:厚生労働省資料

終末期を迎えている“多重債務者問題”

2014-03-03 17:30:33 | 日記
今年1月24日、政府の「多重債務問題及び消費者向け金融等に関する懇談会」が開かれた。多重債務者対策と言うと、国を挙げて取り組んできた大きな施策ではあるものの、一時期の過熱報道はすっかり鳴りを潜めた。もう殆どの人々は興味も関心も失っていることだろう。

貸金業者から5件以上の借入をしている多重債務者は2012年11月末時点で20万人を切り、07年3月末時点の191万人から大幅に減少。ヤミ金融被害が社会問題化した03年以降、20万人を切るのは初めて。その旨、上記の政府懇談会で報告された。

既に記憶にない人々もかなり多いであろうが、「ヤミ金融被害が社会問題化した03年」の前も後も、貸金業者とヤミ金融業者をきちんと区別して語る政治家や有識者は多くないのではないか。貸金業者とは、貸金業法の登録を受けて貸金業を営む者のことで、いわば法律に従って貸金業を営む金融事業者のことを指す。ヤミ金融業者とは、こうした正規の貸金業者ではない金融事業者のことを言う。違法な金融事業者であり、定義も何もあったものではない。

多重債務問題は、貸金業者への債務なのか、ヤミ金融業者への債務なのか、明確な区別なく一緒くたにされたことが不幸の始まりであったように思う。金融庁によると、5件以上の借入がある多重債務者は昨年11月末時点で19万人となり、昨年3月末の29万人から10万人減少したが、借入が3件以上ある人は168万人。

誰も覚えていないだろうが、06年12月の旧貸金業規制法改正による現行貸金業法制定に至る経過の中で、金融庁は多重債務者のことを「5件以上の借入がある人が200万人」という説を流した。今更ながら、この言い方はおかしい。多重債務者にとって本当の苦しみは、自分が何社から借入をしているかではない。何社から借り入れていようが、債務の総額が結局いくらであるかが問題になる。即ち焦点を当てるべきは、「多重債務かどうか」よりも、「過重債務かどうか」なのだ。

「多重債務問題」の定義は「多重債務問題(貸金業を営む者による貸付けに起因して、多数の資金需要者等が重畳的又は累積的な債務を負うことにより、その営む社会的経済的生活に著しい支障が生じている状況をめぐる国民生活上及び国民経済の運営上の諸問題」とされているが、実際の政策対象として数えられる「多重債務者」とは、その借入先が正規の貸金業者である場合に限られている。

ヤミ金融業者は違法業者だから、金融当局も全貌を把握できようがない。ヤミ金融業者を把握する唯一の方法は、警察当局が公開するヤミ金融の摘発件数だけである。例えば、多重債務者が昨年11月末時点で19万人となったわけだが、ヤミ金融業者が借入先である債務を持つ債務者のことは不明なままだ。正規の貸金業者の5社以上が借入先である債務者の数を評価してみても、真の多重債務者数が減ったと喜ぶのは早計である。
 
下の資料1〔=5件以上無担保無保証借入の残高がある人数及び貸金業利用者の一人当たり残高金額〕で書かれている借入先の件数は、借入先である正規の貸金業者の件数であって、それ以外のヤミ金融業者などは含まれていない。下の資料2を見るとすぐにわかるのだが、ヤミ金融業者数は摘発件数でしか出てこない。改めて言うが、借入先として正規の貸金業者が何社になっているのかというのは、多重債務者(より正確には過重債務者)の債務状況を適切に反映しているわけではないということだ。多重債務者数も、過重債務者数も、今は、正確に把握する術はない。

政府のセーフティネット貸付というのがある。これは公的資金による融資制度で、返済能力の乏しい借り手や信用力の著しく低い借り手が対象となっている。だが、どのような貸付制度であっても、返済に窮する場合が少なくない。公的融資制度の資金回収率が民間融資と比べても相当に低いのは、資金が公的なものかどうかではなく、あくまでも借り手の返済能力に依る。そういう借り手には、おカネを貸し付けるべきではない。返す側も、返される側も、大きな苦労を強いられることになる。そういう借り手には、おカネを貸すのではなく、返済不要な補助金のような形で支援するように転換していくべきだ。

いずれにせよ、この問題はもはや終末期を迎えている。新たに黎明期を迎えるのは、正規の貸金業市場が資金需要に応えられなくなっていることが政治問題化する時であろう。



<資料1:5件以上無担保無保証借入の残高がある人数及び貸金業利用者の一人当たり残高金額>

(出所:内閣府資料


<資料2:ヤミ金融事犯の検挙状況の推移>

(出所:警察庁資料

『要介護度が高くなるほど費用が高くなる』のか、『要介護度が高くなるほど費用を高くかけている』のか

2014-03-02 22:07:02 | 日記
今国会に提出されている「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律案」に、2015~2017年度の第6期介護保険事業計画に係る介護保険法改正案が組み込まれている。このような解読不能な文字の羅列こそが、国会で審議対象になる正式な法案そのものである。これを読んでも理解できるわけがない。法案の概要は、先のブログ記事に掲載した資料や「介護保険制度の見直しに関する意見」を参照されたい。

介護保険法改正案に関しては、特別養護老人ホームについて在宅での生活が困難な中重度の要介護者を支える機能に重点化することが柱の一つとなっている。資料1〔=特別養護老人ホームの重点化〕を見ると、要介護3~5(中重度)の認定者の特養入所者割合が要介護1・2(軽度)の認定者のそれよりも増えてきたことがわかる。これについて、資料2〔=要介護度別認定者数の推移〕と対比すると、これまでの介護保険事業における特養入所に関する運用面で、要介護1・2の認定者よりも要介護3~5の認定者を優先させてきたことが見て取れる。

そう考えると、特養入所に当たって中重度の要介護者(要介護3~5)に重点化するという今回の介護保険制度見直しは、これまでの介護保険事業の運用傾向を明確化することと同義だ。介護保険財政の将来を見据えると、こうした制度見直しも止むを得ないとの見方もできる。だが、介護保険制度の持続可能性の維持という本質的課題に立ち向かっていくには、先のブログ記事なども書いたように、介護保険財政の費用対効果を極力合理化する方策を見出していく必要がある。

中重度の要介護者に対する介護サービス事業コストと軽度の要介護者に対する介護サービス事業コストの比較をキメ細かく行っていくべきだ。『要介護度が高くなるほど費用が高くなる』のか、『要介護度が高くなるほど費用を高くかけている』のか、いったいどちらなのだろうか?



<資料1>

(出所:厚生労働省資料


<資料2>

(出所:厚生労働省資料