犬がおるので。

老犬から子犬まで。犬の面倒をみる暮らし。

りくちゃん

2016年04月28日 | 健康・フード・病気・治療・腎不全

昨日のブログの続き、というか、おまけ。
大型連休直前だからか待合室はいつもより若干多めの35人待ち。
診察室のある2Fはいっぱいなので若干静かな1Fで待つことにした。
オレコは(義実家で)留守番、太郎ちゃん(+義母)と一緒。
こんちゃんは誰かの叫び声を聞きつけると、身をのけぞらせ、
「かえるのでかえるのでかえるので!わしはかえるのでーーー!!!」
と大暴れ。服を着ていたにも関わらず、私の体はあらゆるところがみみずばれ。
ちなみにこん暴れの衝撃で壁に打ち付けた後頭部にはたんこぶができている。
老犬のくせに想像を絶する暴れっぷりを披露するのでお待ち合いのみなさんもそらぎょっとする。

すぐ近くにとてもおとなしいお稲荷さんみたいな柴犬がいた。
若いころはいざ知らず、今のこんちゃんは、
柴としては大柄(多分創建なら15キロ以上だっただろう)ではあるが、
おじいわんとなったいまでは体重自体は9キロ弱。
オレコと並ぶと吹けば飛ぶような将棋の駒のようである。

・・・話がそれた。

まあとにかくこんちゃんに比べると違う種類かしら?
と思うようなかわいらしいちんまりとした老柴がいたのである。
その子がとてもおとなしく、賢そうなので、気になっていた。

連れているのは白髪の母とその娘さん。
既にAMの診療(受付)時間は終わっているのだが、
あと1時間半くらいお待ち頂くかも、と、受付スタッフの方に言われて、
(ちょっと離れた町なので)困っていたのだけれども、結局待つことにした様子。
それから犬の話になり、ほんとにおとなしいとか、きっと前の飼い主に厳しくされたんだろうね、とか、
そういうことを言っていたので、おや、この子はもしかして、こんちゃんと同じタイプの・・・と、
思っていたところに、ごくごく自然に他人とにこにこ話ができる義母が話しかける。

「おんなじですね、この子もそうなんですよ」

そこから話が弾んだ。
りくくんというその子は、東京練馬からやってきたそうで、
娘さんのお友達が道を歩いていると、うしろから車がやってきて、
1匹の柴犬を置いて(捨てて)去って行ったという。
その人はパニックになって、娘さんを頼ってきたらしい。

先住犬もいて、ねこも4匹いたんだそうだが、
困った犬を放っておけないお家柄のようで、
その子を預かり、飼うことになったという。

とてもおとなしくて、かしこくて、自己主張がまるでない。
まったく感情を見せない。
「こんな子は初めてで・・・犬ではないような犬なんで」
といいつつ、やさしそうなその人は、心配そうな顔で、
「虐待に近いようなかんじで、おそろしく、厳しくしつけられたのではないか」
と答えない犬を見つめてひとりごちる。
りくくんはじーっとおとなしく黙って座っている。
(こんちゃんのじたばたは相変わらず続いている。)
「お散歩にもろくに連れて行ってもらったことがなかったのではないか」
「(りくくんが好きだった)先住犬が亡くなって、元気がなくなってしまって」
「ここ数日具合が悪そうに見えて」
「ここで歯の手術をしてもらったので、それで」
という流れ。
あー。こんちゃんもまったくおんなじなんですよー、と、義母が話を続ける。

そのうち太郎ちゃんが暴れ出したので、外へ連れ出し、
こんちゃんと、りくくんと、残った人間同士で話をした。
こんちゃんがどうやってうちに来たのか、どんな暮らしをしていたのか(想像だけど)、とか。
そんなような話をしていたら、診察室へと呼ばれたので、さよならをした。
なんだけど、りくくんはとってもかわいくて、私だってお世話したいと思うような子だった。
ちなみに私のかわいいというのは、アイドル犬やスター犬たちのそれとは違っている。
オーソドックスどまんなか、こんちゃんみたいな子である。


りくくんはきっととても大変な目にもあったのだろうけど、今は大丈夫だね。
こんなに心配してくれる人がふたりもいて、見守って、お世話してくれている。

誰かのひどい行いを、一身に受けて、それでも誰のせいにもしない、
ものを言わないどうぶつたちが、時々とても気の毒で、かわいそうで、
やりきれない気持ちになるときがあるけれど、りくくんのご家族のような方たちを見つけることもあり、
そういうときはほんとうに、荒野に花を見つけたような、ほっと明るくなる気持ち。
願わくば、りくくんが、ご家族に心を開いて甘える日が訪れて、それが長く続きますように。
来るのであれば、お迎えは、じゅうぶんに、しあわせな日々を味わってから、と願ってやまない。

それにしても由来が似ているというわりに、待合室では対照的な老犬であった。
おいこんちゃん、わし、たんこぶが痛い。