犬がおるので。

老犬から子犬まで。犬の面倒をみる暮らし。

【柴犬ころ7か月♂】まつとしきかば、いまかえりこむ。

2019年03月22日 | おせわがかり日誌

とっぷり日も暮れ、強風はさらに冷たい。

オットからの『そろそろ捜索から引き上げて会社に戻る(義母も帰宅する)』という連絡を受け、セブンイレブンへ急いだ。借りた自転車を返す。ちなみにレンタルサイクルというのは、借りるときもそうだったけれど、返却作業も若干の手間を要し、こんなときにはちょっとアレだった。

とはいえすごく助かった。今あるアナログ自転車2台はいずれもパンクしていて使い物にならないばかりか、うずたかくほこりつもり、いつ廃車にしてもおかしくない様相だ。最後に使ったのがいつだったかすら思い出せない。そのくらい乗っていない。おまけに鍵もどこにあるのかわからない。その2台をなんとかするより、レンタサイクルに頼れたのはたいへんありがたかった。

走って自宅に戻り、待っていた車に乗り込む。この時点では、ころの捜索がいつまで続くか判断がつかなかったので、自転車を購入することにした。限られた時間、歩いて探すのはどうしても範囲が狭く、効率が悪い。毎度毎度レンタサイクルに頼ってもいられないし、そんなわけで、わたしを(車で)イ×ンに連れてって、とお願いしたのだった。

ついたらすぐに自転車屋へ。見て回るけど、値段もピンキリ、種類が豊富でさっぱりわからない。スタッフの方を捕まえて、「シンプルで、今すぐに乗りたいからバッテリー充電たっぷりのを」と、わがまま要望を伝えると、これはどうか?と紹介してもらったものがイ×ンのオリジナル製品:本体価格 69,800円 (税込価格 75,384円)だった。いかにも小回りがききそう。デザインもすっきりしていて、嫌いじゃない。これにしよう。


すぐにも乗っていきたかったのだが、オプションの前かごをとりつけたり、安全確認に40分はかかるというので、時間がもったいないな、と思ったが、別のにしたからといって、手続きがはやく終わるというのでもなさそうだった。そういえば、なんとなく、食欲とタイミングがあれで、朝から何も食べていなかったことに気づく。警察の登録などの事務手続きが終わったら、ひとまず何か食べよう。時計を見ると20時近かった。

手続きが終わって、さて何か食べようと見てみるけれど、何も食べたくない。おなかはすいているんだけれど、何を食べたいとかそういうことを考えるスペースと活力がもう脳に残っていないらしかった。こんな時は何も考えなくていい。マックへ飛び込め。行列の最後尾に並び、時が来て注文し、出来た商品を受け取り、学生の隣の窓際の席へ。座るなり、自転車を購入したことと、頼んでいた捜索チラシについて、オットに連絡をした。

夕方、ころの迷子の情報をSNSに上げるなり、ものすごいスピードで拡散されていき、普段、やりとりをしている方たちからたくさん連絡がきていた。捜索しながら、親しい人たちにはすぐに返信をし、まだ見つかってないことを告げると『明日わたしも探します!』と、電話番号やメールアドレス、ほか連絡先などを知らせてくれたりした。県内のみならず、大都会東京からも応援にきてくださるというので、脳内のもう一人の自分が、盆踊りとフラメンコを同時に踊っている。血液が沸騰しそうな気持ち。うれしい反面、自分の失態で心配をかけたことがひたすら申し訳なく、ドリル化して穴を掘りながらブラジルまで到達しそうだった。

近くに住む、土地勘のある人が、早速探しに出てくれて『こことここにはいなかったです。これからあっちへ行ってみます』と連絡をくれた。助かったというのもあるけれど、それ以上に、とても心強かった。

 

この人は、4年前の寒い冬に、行き倒れ寸前のこんちゃんを拾ってしまったときにも、手を差し伸べてくれた人である。あの日も、同じようにひどい風の吹き荒れる日で、よぼよぼのこんちゃんを連れ歩きながら、行き交う人に「この子の飼い主を知りませんか?」と尋ね歩いた。そんなとき『使わなくなったハーネスとリードがあるから、届けましょうか?』と写真を送ってくれたのだった。思わず涙がこぼれ、道端で泣いてしまった。こんちゃんが「?」という表情で、見ていたのを覚えている。

 

今でこそこんちゃんは我が家のたからものだけれど、あのときはそうでなかった。自分自身の不安もピークだったし、『どうするの?その犬』という雰囲気の中、無闇に追い詰められていた。そんなタイミングだった。風邪を引いてぶっ倒れ、ひとりで犬たちの世話に奮闘していたときにも『何か届けましょうか?』と声をかけてもらった。いつも見守られ、助けられてきた。そういう人がまた、今回もちからを貸してくれている。ごく短い簡潔な連絡事項に、また泣きそうになる。ありがたかった。ちからになった。

ほとんど味も感じない、ただ咀嚼して飲み込んだだけのような食事(ごめんよマック決しておまえのせいじゃないから)を済ませると、自転車の準備は出来ていて、再び町に繰り出した。借りた自転車は、ひとこぎが重く、ハンドルも操作しにくく、全体的に扱いづらかったのだが、これはすこぶる調子いい。ブオン!という感じで勢いよく進み、とても軽やかなのに、驚くほどスピードが出る。うーん。便利だけれど、これは危険だ。事故らないように気をつけなければ。(ふとセブンのレンタルバイクの各種扱いづらさは事故らないためなのかなと気づく)

駅から家路を急ぐ人たち。マンモスマンションの多いこの地域、この時間帯は帰宅の人の波で、歩道はまるで川のよう。
その川の中に、人好きの小さな柴犬が、誰かにからみついていないか、影を探した。けれどもやっぱり、そう簡単には見つからない。

駐車場、学校の校庭、植え込み、物陰。何周も何周も探す。気がつけば2時間が過ぎており、時計を見ると21時だった。
もうこんな時間か。オレコの散歩にも行かなければ。また、後ろ髪ひかれつつ、自宅に帰ることにした。

家に帰るとオレコがとても喜んだ。それから、背後にころがいないのを確認し、不思議そうにしている。

 

おとうさんかえてちたり、ばあばちたり、どうしちゃったわのんか?

 

(なんでころちゃんいないわのん?またびょういんいったわのんかな?)

ひとり、しかめっつらをして考えている。ぐるぐると頭をなでて、ソファに倒れこむ。

家族、友人、探してくれた人たちと連絡をとり、携帯電話を充電。スマホ⇒iPhone化からご無沙汰していたドコノコをインストール。
簡単にできるというので迷子チラシを制作した。写真をいくつか選び、名前、特徴、いなくなった時の情報や、連絡先などを書き込むだけ。
すぐにわかりやすいチラシ(QRコードや地図も記載されている)が出来て、印刷も出来るし、SNSで拡散も出来る。
できたチラシを急いでSNS各種にアップして、こんなのを作ってネットにアップした、と家族に連絡。

 

オレコの夜のごはんの準備と、お散歩の支度。
それから、いなくなった犬猫がたちまちのうちに帰ってくるという、あのおまじないを思い出した。

『たちわかれ いなばのやまの みねにおふる まつとしきかば いまかえりこむ』

百人一首・在原業平の下の句(まつとしきかば~)を、紙に書く。
ひとつは玄関に張り、いまひとつは、ころの使っている食器の下に、書いた方を下向きにして、置いた。
これで実際に帰ってきたケースをいくつか知っている。身近な人の話だ。
ここからは神頼み。大きな期待を抱いて、オレコと散歩に出かける。

オレコのお散歩は、朝夕のコースが決まっている。
曲がったことが嫌いな子で、自分の決めたコース以外は、基本行かない。
無理にいこうとすれば、ふとめの全体重をかけて、抵抗する。
そういう子だから、出発の前に、目線が同じ高さになるようにして座り、目を見、頭をなで、頼んだ。
おかあさんの不注意で、ころを逃がしてしまったこと。
いなくなってしまって、みんなで探しているけれど、みつからないこと。
手術をしたばかりだし、まだまだ子供で、今夜のうちにみつけないと、とても危険なの。
そのためには、いつもと違うコースにも行かないといけないし、だからって、どの道とどの道へ行こうねっていう約束も出来なくて、いそうなところを目指して、あちこち歩いて探すのよ、と説明。

オレコはいつもの真面目な顔で、わかったわの、と言った(ような気がした)。

オートロックの自動扉を出ると、オレコは足早に駆けていき、いつものコースに背を向けて、オレコの心当たりのあるほう(←なんだと思う)へと走って行った。

真面目な顔で、素早く、じぶんの用事(C&うん子)を済ませ、タッタッタッタッタ、と、駆けていく。
普段なら絶対行かない!といってきかないようなところへも、タッタッタッタッタ、と、駆けていく。

「ありがとうね、オレコが頼りだよ」

時々休んで、いいこいいこ、と頭をなでる。オレコは真面目な顔をしている。
30分ぐらいたった頃。ころ、ころ、と声かけしながら歩いていると、どこかから、

 

「ピィ~」

 

という超音波のよう(ころの鳴き声は超音波のことがある)な、かそけき声が聞こえた気がした。胸が高鳴る。ぐるり、周囲を見渡す。
声に導かれるようにして、いつもは入らない箇所(駐車場と民家の裏庭が繋がってる)に入っていくと、数m先の竹藪の陰に、茶色い、こぎつねの亡霊みたいな、小さないきもののようなモノが、見えるような、見えないような気がしてきた。腰を下ろして、目をこらす。闇に向かって、小さな声で、「ころ?」と、呼びかけた瞬間、藪から、ゴムまりのような物体が、弾け飛んでやって来て、「おかあさーーーーーん!!!」といって、ジャンピングフローターサーブ(痛いすごく痛い)。👉勢い余り、ひっくり返る。しっぽごと、おしりふりふり、泣きながら、オレコとわたしと、交互にぺろぺろラブラブして、こわかったんだじょ、さびしかったんだじょ、と、必死に訴える。ごめん、ごめん、ごめんだよ。ごめんごめんだよ。ぎゅーっと抱きあって、しっかりハーネスを装着し、三人で歩き出す。

 

探すこと11時間、23時すぎ、ようやく、無事に保護。すぐに写真を撮って、家族に連絡した。もちろんみんな、大興奮だ。
結局、自宅から1キロ以内、いや、数百mのおさんぽコース内に落ち着いていたことになる。
散歩コースをさまよったろうとは思うが、車に轢かれなくて、ほんとによかった。

実は昼間、レンタル自転車に乗って探していたときに、発見場所からほど近い神社の森の中で、動く陰を見た。
チャリンコを抱えて土手を駆け上がり、見に行くと、折悪しくほかにも人が来て、小さな陰は散った。見失ってしまった。
そういうことがあったので、その周辺を重点的に再捜査した。近くのどこかにいる気がしていた。(そうはいっても別の場所も探したけれど)
物陰に隠れていたころが、自分から出てきたのは、オレコがいてくれたからだろう。無事に保護できたのは、オレコの存在が一番大きい。 

良かった良かった、喜びあったのもつかの間、急いで写真を撮り、SNS関連にアップ。
またもや通知が爆発しそうになる。混乱を避けるため、取り急ぎ、元の捜索依頼データは消した。
結果、ドコノコの迷子チラシは、作ってすぐに消すことになったが、そんなことはどうでもいい。

今日はやけに交通事故や事件が多く、捜索中、私3件、おとうさんもっと、それぞれ別の場所で、パトカー案件を目撃していた。
そんな中、警察の方たちが2度もパトロールして探してくれたことを思い出す。わざわざ、電話もくれた。
何時と何時にパトロールしたけど、みつからなかった(事故もなかった)と。骨身に沁みる親身。深夜だったが連絡してお礼を告げた。
ひょっとしたら、こんちゃんの丑三つ散歩を見守ってくれていたポリスメンズかもしれない。
丑三つどきや夜明け前、こんちゃんと散歩していると、スーッと近寄って来て、窓を閉めたまま口の動きで「出た?」と聞く。
その度に「まだ(首を振る)」とか、「出た(袋を掲げる)」とか、知らせた。
連れの犬が、こんちゃんから子犬になったのも知っている。初秋の明け方の散歩で「かわいいね」の、親指グーをくれた。 

 
 
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みなさんありがとうございました。ころは朝ごはん夕ご飯を食べてごろごろしています。インスタ警察、ツイッター警察の皆さんのおかげで無事に帰って来ました。最中、不思議なこと、笑っちゃうこと、たくさんありました。老犬ズのハンドパワーのおかげかも。いずれ、ブログに書きます。ひとまずお礼まで💞 #感謝 #見つかりました #薮から号泣で飛んできた #体当たり #母は倒れた #柴犬ころ

にゃう子ちょふさん(@nyaukochev)がシェアした投稿 - <time style=" font-family:Arial,sans-serif; font-size:14px; line-height:17px;" datetime="2019-01-29T15:55:50+00:00">2019年 1月月29日午前7時55分PST</time>


家に帰ると、朝ご飯抜きということもあって、いつもより何倍もの勢いで、ごはんをもりもりたべた。
心配した去勢手術のあとも問題なく、どこもけがをしていなかった。
翌朝はゆっくり1時間散歩し、機嫌良く、元気に過ごした。こんちゃんのガールフレンドにもふたりで御礼を言ってきた。

保護センターにも、朝一で無事に見つかりましたと報告の連絡を入れる。
良かった、と喜んでくれつつ、厳しい声色で、今後は逃がさないように、と注意を受ける。
無事に見つかれば、叱られることも、心地よい。

まさに、全世界に ありがとうなのじゃ、と叫びたい気持ち。
特に、在原業平には、投げキッスを送った。時の流れを超えて。

次回、いよいよ最終回。