犬がおるので。

老犬から子犬まで。犬の面倒をみる暮らし。

読書感想文 『殺処分ゼロ/藤崎童士』

2012年07月14日 | おせわがかり日誌


読む前は、悲しいシーンも出てくるので、

ちゃんと読めないかもしれない、って思った。

のだけど、読み始めたら、一気読み。

1時間くらいで読み上げてしまった。



筆者は、誰に対しても、

根気よくインタビュー(聞き取り)し、

誰にもわかりやすく、丁寧にまとめあげ、

決して安っぽい悲壮感に負けることなく、

多くの人に伝えるために、主観や感情をそぎおとし、

これ以上ない表現で、まとめあげた、力作でした。



本の中でこんなエピソードが出てくるんだけど・・・

「この犬はもう病気で役に立たんけん引き取ってくれ」

中学生くらいの娘さんを連れたおっさんが、

年老いて病気になった犬を連れてきました。

管理センターの窓口で対応するのは、行政の人といっても、

実は獣医の資格を持ってる人もいます。その獣医さんは、

「動物の命を助けるために獣医になったんだ、殺すためになったんじゃない」

という、強い信念を持っていて、安易な飼育放棄などの場合は、簡単には引き取らなかった。

もちろんその無責任な人にも食って掛かって、

大喧嘩になり、犬殺しとか、罵倒されて、大変な目にあいます。

だけどその獣医さんが心の中で思い、本当に言いたかったことは、

「無表情の娘の前で、あんたは将来、自分がこの犬と同じように年をとり、

病気になり、娘の手に余ったら、捨ててもいい、という教育を今してるんだぞ!」

ということだったそうです。・・・胸が熱くなりました。

でも、そういう人って、わかんないんですよね。

そして遠くない将来、娘にそのとおりにされたとしても、うらみこそすれ、

なぜそうなったのか、という理由を見つけることは、おそらく出来ないでしょう。

ただでさえ、こどもたちに「愛情」や「愛」を教えるのは、むずかしい。

「責任感」も同様かと思います。




内容は、動物の安易な殺処分をゼロにするために、

職員たちが立ち上がった「熊本市」の愛護センターの黎明期。

行政、住民、愛護団体、獣医、異なる立場の人たちと一緒に、

ゼロを目指して奮闘する日々を色濃く描いているんだけど。

ただでさえ、火の国熊本、血気盛んな方が多いから、

皆さん自分の主張が強くて、まとまる話もまとまらない。

みな、志はおなじなのに、会議はいつも大喧嘩。

打開できない思われた局面をどんな風に切り開いていったのか、

彼らの力をどうやって最大限に引き出していったのか、すべてが描かれています。

部下のよさを引き出すとか、優秀なリーダーになるとか、

そういうノウハウ本を読むより、よっぽど、勉強になる。

どうすれば目的を達成することができるか、という、本でもあるから。



とても良かったです。

現実を知ることで、先に進むことができるから。

人生の後半の目標は、私が生きてる間に、

動物の『殺処分ゼロ』にすることなのです。

だからこの本は登竜門ともいうべきもので、

今この時期に読むことが出来てよかった。




そして本に登場する大事なキーパーソンがこの方。

民主党、悪く言われているし、確かに悪いところがいっぱいある。

でも自民党ならいいというわけでは絶対にない。

事故の処理はもう少しうまくやったかもしれませんが、

彼らが主導権をとっていたら、今現在、原発はもっと稼動していたと思う。

政党や政治家でひとくくりにしてしまうと、何にも信用できないけれど、

個人個人で見ていくと、この民主党の議員さんは、立派です。

熊本の代議士ですが、この人のおかげで、ほったらかしの、矛盾していた法の改正が進みました。

なんでこの人がこのことに関わるようになったかというと、理由が、

「子供のころから犬を飼っていて、好きだったから」

なんですね。しがらみは何もない。だからできたとも仰ってます。

そして、本に登場する熊本市の市長さんも“犬を飼っていたから”、

もともとなかった予算をつくり、今の熊本市の基礎をつくった。

やっぱり好きがきっかけでないと、本当にやりとげることはできないんだなと思います。



松野頼久

年間約40万匹も殺処分されている犬・猫の問題を採り上げた。
抑留施設側が、殺処分ではなく譲渡しようと思っても、収容するためのスペース確保やエサ代のための財源が不充分である。
そのため、交付税措置を予算要求するよう、具体的な計算方法を示しつつ、若林環境大臣に求めたところ、大臣から「早急に準備し、総務省に対して要求する」との答弁を得た。
殺処分ゼロに向け一歩一歩前に進んでいる。

http://www.matsuno-yorihisa.com/wordpress/?p=217

(日本新党⇒新進党の人たちは、わりあい、まともな気がする。)



わたし、これは個人的な見解ですが、

「保護動物を受け入れて、最後まで一緒に暮らすことが、

こどもたちの心をどれだけ豊かにしてくれるか、計り知れない」と思ってます。

いじめをなくすとか、ひきこもりをなくすとか、大きいところでは、犯罪をなくすとか。

決まり(法律や刑罰)をつくる以前に、まずは情操教育だと思うんです。

「いのち」は「いのち」でなければ、学べません。

文字や決まりなんて~のは、上っ面です。建前です。

それじゃあ、現在の困った問題なんて、どれだけ待っても、なくなりっこない。

動物って、必ず、答えてくれますからね。

中には、大変な子もいるけど、たいていの子は素直です。そして人間が好きです。

そして飼育する側は気付きます。自分たちが守っているようで、実は、守られていること。

心の教育には、やっぱり「いのち」そのものが重要です。

動物嫌いとかアレルギーとか近所の問題とかあると思うけど、

この数年で、日本でも、動物への考え方が、大きく変化しています。

徐々に、暮らしやすくなっていくと思います。保護犬への理解も増すはずです。

家族で一緒に泣いたり笑ったり苦労すること。家族はそれが大事じゃないかしら。

どうかそういう親御さんが増えますように。

そうして、安易な殺処分が減り、やがてゼロになりますように。