読む前は、悲しいシーンも出てくるので、
ちゃんと読めないかもしれない、って思った。
のだけど、読み始めたら、一気読み。
1時間くらいで読み上げてしまった。
筆者は、誰に対しても、
根気よくインタビュー(聞き取り)し、
誰にもわかりやすく、丁寧にまとめあげ、
決して安っぽい悲壮感に負けることなく、
多くの人に伝えるために、主観や感情をそぎおとし、
これ以上ない表現で、まとめあげた、力作でした。
本の中でこんなエピソードが出てくるんだけど・・・
「この犬はもう病気で役に立たんけん引き取ってくれ」
中学生くらいの娘さんを連れたおっさんが、
年老いて病気になった犬を連れてきました。
管理センターの窓口で対応するのは、行政の人といっても、
実は獣医の資格を持ってる人もいます。その獣医さんは、
「動物の命を助けるために獣医になったんだ、殺すためになったんじゃない」
という、強い信念を持っていて、安易な飼育放棄などの場合は、簡単には引き取らなかった。
もちろんその無責任な人にも食って掛かって、
大喧嘩になり、犬殺しとか、罵倒されて、大変な目にあいます。
だけどその獣医さんが心の中で思い、本当に言いたかったことは、
「無表情の娘の前で、あんたは将来、自分がこの犬と同じように年をとり、
病気になり、娘の手に余ったら、捨ててもいい、という教育を今してるんだぞ!」
ということだったそうです。・・・胸が熱くなりました。
でも、そういう人って、わかんないんですよね。
そして遠くない将来、娘にそのとおりにされたとしても、うらみこそすれ、
なぜそうなったのか、という理由を見つけることは、おそらく出来ないでしょう。
ただでさえ、こどもたちに「愛情」や「愛」を教えるのは、むずかしい。
「責任感」も同様かと思います。
内容は、動物の安易な殺処分をゼロにするために、
職員たちが立ち上がった「熊本市」の愛護センターの黎明期。
行政、住民、愛護団体、獣医、異なる立場の人たちと一緒に、
ゼロを目指して奮闘する日々を色濃く描いているんだけど。
ただでさえ、火の国熊本、血気盛んな方が多いから、
皆さん自分の主張が強くて、まとまる話もまとまらない。
みな、志はおなじなのに、会議はいつも大喧嘩。
打開できない思われた局面をどんな風に切り開いていったのか、
彼らの力をどうやって最大限に引き出していったのか、すべてが描かれています。
部下のよさを引き出すとか、優秀なリーダーになるとか、
そういうノウハウ本を読むより、よっぽど、勉強になる。
どうすれば目的を達成することができるか、という、本でもあるから。
とても良かったです。
現実を知ることで、先に進むことができるから。
人生の後半の目標は、私が生きてる間に、
動物の『殺処分ゼロ』にすることなのです。
だからこの本は登竜門ともいうべきもので、
今この時期に読むことが出来てよかった。
そして本に登場する大事なキーパーソンがこの方。
民主党、悪く言われているし、確かに悪いところがいっぱいある。
でも自民党ならいいというわけでは絶対にない。
事故の処理はもう少しうまくやったかもしれませんが、
彼らが主導権をとっていたら、今現在、原発はもっと稼動していたと思う。
政党や政治家でひとくくりにしてしまうと、何にも信用できないけれど、
個人個人で見ていくと、この民主党の議員さんは、立派です。
熊本の代議士ですが、この人のおかげで、ほったらかしの、矛盾していた法の改正が進みました。
なんでこの人がこのことに関わるようになったかというと、理由が、
「子供のころから犬を飼っていて、好きだったから」
なんですね。しがらみは何もない。だからできたとも仰ってます。
そして、本に登場する熊本市の市長さんも“犬を飼っていたから”、
もともとなかった予算をつくり、今の熊本市の基礎をつくった。
やっぱり好きがきっかけでないと、本当にやりとげることはできないんだなと思います。
松野頼久
年間約40万匹も殺処分されている犬・猫の問題を採り上げた。
抑留施設側が、殺処分ではなく譲渡しようと思っても、収容するためのスペース確保やエサ代のための財源が不充分である。
そのため、交付税措置を予算要求するよう、具体的な計算方法を示しつつ、若林環境大臣に求めたところ、大臣から「早急に準備し、総務省に対して要求する」との答弁を得た。
殺処分ゼロに向け一歩一歩前に進んでいる。
http://www.matsuno-yorihisa.com/wordpress/?p=217
(日本新党⇒新進党の人たちは、わりあい、まともな気がする。)
わたし、これは個人的な見解ですが、
「保護動物を受け入れて、最後まで一緒に暮らすことが、
こどもたちの心をどれだけ豊かにしてくれるか、計り知れない」と思ってます。
いじめをなくすとか、ひきこもりをなくすとか、大きいところでは、犯罪をなくすとか。
決まり(法律や刑罰)をつくる以前に、まずは情操教育だと思うんです。
「いのち」は「いのち」でなければ、学べません。
文字や決まりなんて~のは、上っ面です。建前です。
それじゃあ、現在の困った問題なんて、どれだけ待っても、なくなりっこない。
動物って、必ず、答えてくれますからね。
中には、大変な子もいるけど、たいていの子は素直です。そして人間が好きです。
そして飼育する側は気付きます。自分たちが守っているようで、実は、守られていること。
心の教育には、やっぱり「いのち」そのものが重要です。
動物嫌いとかアレルギーとか近所の問題とかあると思うけど、
この数年で、日本でも、動物への考え方が、大きく変化しています。
徐々に、暮らしやすくなっていくと思います。保護犬への理解も増すはずです。
家族で一緒に泣いたり笑ったり苦労すること。家族はそれが大事じゃないかしら。
どうかそういう親御さんが増えますように。
そうして、安易な殺処分が減り、やがてゼロになりますように。