「おうちゃんは、ゆっくりねむりたいのよ~」
最近早起きだ。
遅く寝ても早起きだ。
ものすごく早起きだ。
どのくらいかといわれれば、そのへんの老人にはちょっと負けないくらいの早起きだ。
理由はふたつ。
「だけどなんだか、ねむれないのよね」
ひとつには、寝室の、朝陽の入る小窓のブラインドを、あげっぱなしにしているからである。
丑三つ時を過ぎると、ゆっくりゆっくり明るくなり、やがてまっすぐ部屋に日がさしてくる。
はじめ弱かった白い光は少しずつ力をもって、金色を帯びた輝きになる。
この感じが最近、好きなのである。
ちなみにベランダのカーテンは閉めている。
全部開けるのはさすがに落ち着かない。
これまでここ20年ばかり、あまりに不規則な生活をしてきて、狂いっぱなしの体内時計を調整中である。
それがまた心地よいのだけども。
それもこの季節だからだろう。
いくらすがすがしくても、やっぱり冬にはできんと思う。
「おれこはね、もうちょっと、ねむりますからね」
いまひとつの理由は、目覚めの気配を悟った瞬間、不眠症気味の犬が、嬉々として起こしにくるのである。
しっぽをぶんぶんと振ってね。
数日前までひとつの布団にくるまって一緒に寝ていたものを、ここのところどういうわけか、
別室で睡眠をとるようになったおれこである。
日中はなんとなくぐったりしているような風で、ごはんも少し残したり。(好きなおやつは食べるけど)
毛深い娘は人知れず、暑さにやられているのだね。
おかあさんも夏や暑さは大嫌い。
かといって冬も好きではないけど。
なんといっても春と秋だね。
どっちかというと春だね。
とかいいつつ、夏になると、冬のまるで刺すような痛みの冷たい空気の朝が好き、なんてことを平気でいうのだね。
まあ、しょせん、私なんぞ、そんなもんだ。
ね、おれこ。
あ。
話がそれた。
「むくり。」
というわけで、二度寝しようとしても、状況がそれを許さないのである。
昨日も、朝4時過ぎに起きて、4時半には散歩に行った。
夜中の散歩もそうだけど、人がいない町、犬のうれしさは「倍率ドンさらに倍」だ。
うきうきうき、という言葉が聞こえてきそうな、背中そして歩き方である。
でもって、神社で太極拳をしているじいちゃんに、びくん!とびびって、やだやだ帰ろう帰ろうよ、である。
好きなじいちゃんもいるし、好きなばあちゃんもいるが、いやなじいちゃんもいるんだね。
早朝神社の太極拳、なにがいけなかったんだろう。
毛深い娘は、はあはあぜえぜえ、心拍数をあげて逃げる。
「あんた心臓病なんだから、すぐに焦るのやめなさい、あのじいちゃんはなんでもないよ」
といったところで、おれこに通じる気配なし。
でもさ、実はさ、おれこが恐れるただならぬ理由のとおり、実はじいさんが腕のいいスナイパーだったりしてね。
・・・なわけないだろう。
「おうちゃんの、あんよ、おいしいわのよ~」
朝夕はまだ冷え込むけれど、日中の暑さは初夏のそれ。
しかしさ、今だに冬の格好(Tシャツ・トレーナー・厚めのスエット下)で寝ている夫をみるにつけ、どうよあれ?と思う。
今は毛布1枚だが、それだってもこもこしている冬仕様の毛布だし、つい最近まではその上に羽毛布団をかけていたのである。
信じられないわー。
4月に入ってすぐ早々とTシャツ1枚(下は薄手のパジャマ)となり、
タオルケットと薄手のブランケットだけ(現在はブランケットなし)で寝ている妻のあたくしとは、まったくもって対照的である。
まあ、私の場合、「あんた夏はどうすんのよ?」って感じなんですけどさ。
もう、脱ぐものがないやね。
(・・・あすにつづく)