2日(火)の 『照柿』(講談社) は、p220からp260まで読了。つまり、第二章 帰郷 を読了。ホントはもう3ページほど進んだのだが、第二章が終わって区切りがいいので、ここまでということで。
あ、そういえば今回の再読日記、各章とそのタイトルを添えるのを忘れてる~。(『黄金を抱いて翔べ』(単行本、文庫ともに新潮社) には、章タイトルはない) 明日以降に手直ししておこう。
さて今回のタイトルの意味は、以下の理由から。まずは「隠微」。
1.《又三郎》こと有田三郎さんと合田さんのトイレでのやりとり。
2.公私混同の脱線した行動をとってしまった合田さん。
3.秦野組長と合田さんとの秘密の電話のやりとり。
4.水戸の加納家で七回忌の法要が営まれた後、訪ねていった合田さんと加納さんとのやりとり。
「名言or迷言」は、いつものセレクトでご紹介します。
今回は心のオアシスの二人が登場なので、読んでいて楽しかったわ♪ 特に義兄は、この水戸の場面でしかお姿を現していないので、じっくり堪能、たっぷり満喫。
***
★☆★本日の名文・名台詞 からなのセレクト★☆★
今回は義兄弟、特に加納さんに力を入れてます。だってしばらく出てこないんだもん。隠れた特集は「義兄弟、名言・迷言てんこ盛り」(←期せずして五七五に)
★加納祐介は、紬の着流し姿で広い玄関の上がり框に立っていた。雄一郎が「遅くなって……」と詫びると、「どうせ、何もかも世間の常識を越えている」と義兄はのたもうた。 (p246)
まずは加納さんの台詞。これ、名言と迷言の紙一重のような気がする。いろいろ深い意味が含まれているような、あるいは何気ない天然ボケ気味の言葉のような・・・。
どっちとも想像できて、解釈できるから、高村作品は面白いんですよ。
★愚かだと気付いても、自分の道を曲げることはない。それが祐介という男だ。 (p247)
この部分は、義兄ファンにはたまりませんね。合田さん、ちゃんと解ってるやん♪
★何ひとつ減りもせず、前進もなく、解消の道も見えない。合理主義とは裏腹もいいところだが、それに毅然と耐えているところを見ると、祐介という男の中身は先代とはかなり違う、前世紀のロマン主義に毒された夢想家なのかも知れなかった。 (p248)
「前世紀のロマン主義に毒された夢想家」・・・と思われるのは、今のうちだけ。『レディ・ジョーカー』 では、もう・・・。(分からない方でネタバレOKな方は、レディ・ジョーカー再読日記を参照)
★「また増えたな」先をゆく義兄の後ろ髪を見ながら、雄一郎がそう言うと、「春から十二本増えた。ちゃんと数えてる」という几帳面な返事があった。 (p248)
加納さんの迷言・その1。これは真面目に答えているのか、あるいは冗談なのか、未だに私には判りません~(苦笑)
★「物事には引き際というのもある。登攀と一緒だ」
「それは違う。登山は、退いても何も減らんやないか。刑事の仕事は、一つ退くたびに、確実に何かが減っていく」
「何か、というのは」
「地歩みたいなもの……かな。手柄や地位の話やない。休みなく一歩一歩固めていかないと、己が立つ場所もないような感じだ。事件というのは、毎日毎日起こるからな……。退きたくても退く場所もない。せめてホシを追うことで、自分がやっとどこかに立っているという感じだ……」 (p252~253)
真剣な義兄弟の会話も紹介しておきましょう。この合田さんの台詞、私は大好き。何だか久しぶりに「刑事・合田雄一郎」らしき名言が出てきたわ。
★「雄一郎。身体だけは壊すな。身体さえあれば、人生はどんなふうにでももっていけるんだから」
「そうかな……。多分、そういう時期なのかも知れへんが、俺はいったい悩んだり恨んだりするために、生きてるのかと思うことがある」
「猿でも悩むそうだ」
義兄はさらりとかわして、微笑む。
「俺は猿よりは邪悪だぞ。邪悪に悩んでる」と雄一郎は言い返す。 (p253)
加納さんの名言と迷言が続けて出てきました(苦笑) むきになっているような、合田さんも可愛いなあ
★義兄は俺の邪悪な心根を分かっているのだろうかと訝りながら、雄一郎は義兄の清涼な顔を眺めた。義兄はこちらを見ていた。高潔そのものの精神の上に、貴代子とほぼ同じ造形の顔がのっているというのは偶然だとしても、何よりその目の表情が貴代子と同じなのだ。 (中略)
ああ、この男は分かっているのだなと雄一郎は思う。 (中略) 憐れみと懐疑と愛憎が分かちがたくなっている男の目だ。その目に、理性の靄がかかっている。 (p253~254)
義兄なら、分かっていると思う合田さん。たとえ合田さんであっても、理解はしても、全てをさらけ出さない義兄・・・。対照的だなあ。
★雄一郎は、際限なく自己嫌悪と悪意の螺旋階段を下りながら自分の片手を伸ばし、テーブルの上にのっていた義兄の片手の甲に触れた。ちょっと撫でた。
「邪悪の手か」と義兄は微笑む。「痛恨の手」と雄一郎は応え、手を引っ込めた。そのとたん、何かを引きちぎりたいような衝動に駆られる。 (p254)
『照柿』 中、義兄弟屈指の名場面! ここまで男の持つ危うい官能と色気を感じさせる場面は、他にはなかなかありませんよ!
義兄弟関連はここまで。
★「忘れたわ、もう……。遠い人よ。刑事なんか、遠い人よ……」 (p260)
「これこそが、佐野美保子という女」その3。
達夫さんに抱かれてる時、「あいつと寝たんか……」 (p259) と問われた美保子さんの返答が、これ。ネタバレすると、美保子さんは合田さんとはそういう関係にはありません。ウソついてます。自分を抱いている男の嫉妬心をあおっているかのようですね。
★焼けついてくる額の奥で、達夫は、雄一郎は男としてはそんなに感度のいい方ではなかったはずだと思いつつ、この美保子が雄一郎の鈍い心身をどんなふうに包んだのだろうと想像したりしながら、嫉妬と興奮のお定まりのコースを登り始めた。 (p260)
達夫さんによる合田さん評・その9。「男としては」というのがミソですね(苦笑) 前日の大阪での夜、合田さんと一緒に飛田新地を歩いていた時も、「興味ない」 (p260) と言い切っていた合田さんですからね。
でもこの時は美保子さんのことで頭がいっぱいだったので、その分を差し引いたとしても、合田さんは女性に対しては淡白というか、ストイックというか、いやらしくないというか・・・。
やっと再読日記が追いつきました。残り半分です。
あ、そういえば今回の再読日記、各章とそのタイトルを添えるのを忘れてる~。(『黄金を抱いて翔べ』(単行本、文庫ともに新潮社) には、章タイトルはない) 明日以降に手直ししておこう。
さて今回のタイトルの意味は、以下の理由から。まずは「隠微」。
1.《又三郎》こと有田三郎さんと合田さんのトイレでのやりとり。
2.公私混同の脱線した行動をとってしまった合田さん。
3.秦野組長と合田さんとの秘密の電話のやりとり。
4.水戸の加納家で七回忌の法要が営まれた後、訪ねていった合田さんと加納さんとのやりとり。
「名言or迷言」は、いつものセレクトでご紹介します。
今回は心のオアシスの二人が登場なので、読んでいて楽しかったわ♪ 特に義兄は、この水戸の場面でしかお姿を現していないので、じっくり堪能、たっぷり満喫。
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★☆★本日の名文・名台詞 からなのセレクト★☆★
今回は義兄弟、特に加納さんに力を入れてます。だってしばらく出てこないんだもん。隠れた特集は「義兄弟、名言・迷言てんこ盛り」(←期せずして五七五に)
★加納祐介は、紬の着流し姿で広い玄関の上がり框に立っていた。雄一郎が「遅くなって……」と詫びると、「どうせ、何もかも世間の常識を越えている」と義兄はのたもうた。 (p246)
まずは加納さんの台詞。これ、名言と迷言の紙一重のような気がする。いろいろ深い意味が含まれているような、あるいは何気ない天然ボケ気味の言葉のような・・・。
どっちとも想像できて、解釈できるから、高村作品は面白いんですよ。
★愚かだと気付いても、自分の道を曲げることはない。それが祐介という男だ。 (p247)
この部分は、義兄ファンにはたまりませんね。合田さん、ちゃんと解ってるやん♪
★何ひとつ減りもせず、前進もなく、解消の道も見えない。合理主義とは裏腹もいいところだが、それに毅然と耐えているところを見ると、祐介という男の中身は先代とはかなり違う、前世紀のロマン主義に毒された夢想家なのかも知れなかった。 (p248)
「前世紀のロマン主義に毒された夢想家」・・・と思われるのは、今のうちだけ。『レディ・ジョーカー』 では、もう・・・。(分からない方でネタバレOKな方は、レディ・ジョーカー再読日記を参照)
★「また増えたな」先をゆく義兄の後ろ髪を見ながら、雄一郎がそう言うと、「春から十二本増えた。ちゃんと数えてる」という几帳面な返事があった。 (p248)
加納さんの迷言・その1。これは真面目に答えているのか、あるいは冗談なのか、未だに私には判りません~(苦笑)
★「物事には引き際というのもある。登攀と一緒だ」
「それは違う。登山は、退いても何も減らんやないか。刑事の仕事は、一つ退くたびに、確実に何かが減っていく」
「何か、というのは」
「地歩みたいなもの……かな。手柄や地位の話やない。休みなく一歩一歩固めていかないと、己が立つ場所もないような感じだ。事件というのは、毎日毎日起こるからな……。退きたくても退く場所もない。せめてホシを追うことで、自分がやっとどこかに立っているという感じだ……」 (p252~253)
真剣な義兄弟の会話も紹介しておきましょう。この合田さんの台詞、私は大好き。何だか久しぶりに「刑事・合田雄一郎」らしき名言が出てきたわ。
★「雄一郎。身体だけは壊すな。身体さえあれば、人生はどんなふうにでももっていけるんだから」
「そうかな……。多分、そういう時期なのかも知れへんが、俺はいったい悩んだり恨んだりするために、生きてるのかと思うことがある」
「猿でも悩むそうだ」
義兄はさらりとかわして、微笑む。
「俺は猿よりは邪悪だぞ。邪悪に悩んでる」と雄一郎は言い返す。 (p253)
加納さんの名言と迷言が続けて出てきました(苦笑) むきになっているような、合田さんも可愛いなあ
★義兄は俺の邪悪な心根を分かっているのだろうかと訝りながら、雄一郎は義兄の清涼な顔を眺めた。義兄はこちらを見ていた。高潔そのものの精神の上に、貴代子とほぼ同じ造形の顔がのっているというのは偶然だとしても、何よりその目の表情が貴代子と同じなのだ。 (中略)
ああ、この男は分かっているのだなと雄一郎は思う。 (中略) 憐れみと懐疑と愛憎が分かちがたくなっている男の目だ。その目に、理性の靄がかかっている。 (p253~254)
義兄なら、分かっていると思う合田さん。たとえ合田さんであっても、理解はしても、全てをさらけ出さない義兄・・・。対照的だなあ。
★雄一郎は、際限なく自己嫌悪と悪意の螺旋階段を下りながら自分の片手を伸ばし、テーブルの上にのっていた義兄の片手の甲に触れた。ちょっと撫でた。
「邪悪の手か」と義兄は微笑む。「痛恨の手」と雄一郎は応え、手を引っ込めた。そのとたん、何かを引きちぎりたいような衝動に駆られる。 (p254)
『照柿』 中、義兄弟屈指の名場面! ここまで男の持つ危うい官能と色気を感じさせる場面は、他にはなかなかありませんよ!
義兄弟関連はここまで。
★「忘れたわ、もう……。遠い人よ。刑事なんか、遠い人よ……」 (p260)
「これこそが、佐野美保子という女」その3。
達夫さんに抱かれてる時、「あいつと寝たんか……」 (p259) と問われた美保子さんの返答が、これ。ネタバレすると、美保子さんは合田さんとはそういう関係にはありません。ウソついてます。自分を抱いている男の嫉妬心をあおっているかのようですね。
★焼けついてくる額の奥で、達夫は、雄一郎は男としてはそんなに感度のいい方ではなかったはずだと思いつつ、この美保子が雄一郎の鈍い心身をどんなふうに包んだのだろうと想像したりしながら、嫉妬と興奮のお定まりのコースを登り始めた。 (p260)
達夫さんによる合田さん評・その9。「男としては」というのがミソですね(苦笑) 前日の大阪での夜、合田さんと一緒に飛田新地を歩いていた時も、「興味ない」 (p260) と言い切っていた合田さんですからね。
でもこの時は美保子さんのことで頭がいっぱいだったので、その分を差し引いたとしても、合田さんは女性に対しては淡白というか、ストイックというか、いやらしくないというか・・・。
やっと再読日記が追いつきました。残り半分です。
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