4/28(木)の 『黄金を抱いて翔べ』(新潮文庫) は、p122からp177まで読了。
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★☆★本日の名文・名台詞 からなのセレクト★☆★
入力が大変だけど、セレクトするのは楽しいな~♪
★幸田は改めてモモの顔を見たが、そこにはやはり、何の表情もなかった。あの独特の親しい感じは、夜明けの薄闇の中で街を嗅ぎ回っている間にだけ生まれ、日の出とともに消えるのか。モモはいつも、明るくなっていく日差しの中で、再び何者か分からなくなってしまう。 (p131)
こんなに優しく、柔らかな視点でモモさんを感じ取る幸田さんは、ここが初めてではなかろうか。今までは、「何が悲しくてこんなに冴えねえのか」 (p50)だの、「青臭い」 (p50)だの、「自分の足の裏に貼りついた魚の目」 (p54)だの、「それにしても最悪だな、その髭」 (p79)だの、さんざんボロクソなこと思ったり言ったりしていたのに・・・。この幸田さんの変化は見逃せません!
★もはや、暴力を受けるのも加えるのも、どちらも大差はなかった。どちらも容赦なく興奮していた。獣があえぎ、勃起し、血が飛び散った。耐え難い肉体の臭気が立ち上った。この土地の人間という人間が、この六畳間にひしめいているような臭いだった。
人間のいない土地! (p139~p140)
北川兄がモモさんにヤキを入れているところを、幸田さんが見ている場面(←誤解を招きそうな表現やなあ・・・) ま、表現がこれも「いかにも高村さん!」ですので取り上げました。「人間のいない土地」 は、幸田さんの口癖と思考。幸田さんを語る上で、これも欠かせない単語です。
★だが、それ以上は茫々としていて、ただ胸が詰まる息苦しさと、不快な感じだけが残った。この二十数年の人生が不快であったのだから、昔にあったものどもが不快でないはずでなかった。 (p143)
★何もなく、何も変わらず、怖れも感動もなく、ただひたすら不快だった。 (p153)
「不快」という単語は、幸田さんのみならず、高村作品主要キャラクターを語る時には、ほぼ例外なく出てきますね。しかし幸田さんの場合は、「二十数年」と断言しているから、特にすごいわ・・・。
★……幸田さん。北川さんから聞いた。あんたが聖書を持っているって。
あんたのことは、ほとんど何も知らない。でも、いつか、あんたとは神の話をしたいと思う。あんたとは、心の話をしたいと思う……。 (p166)
「心の話」・・・。モモさんの、心からの真情。もはや何を言うことがありましょう・・・。
★そうだ。ああいう手も、言葉も、自分には馴染まない。優しげに打ちひしがれた眼差しには、自分は応えるものがない。そうだ、モモさん。神の話がしたいんなら、他の奴にするがいい。俺の持っている聖書は、子供の頃、おふくろの引き出しから盗んだやつなのさ。《すべて、悪を行なう者は悟りはない》という言葉が、詩篇の中にあったろう? その通りだ。俺は自分の魂を救うために生きているんじゃない。息をしているのが、精一杯だ。俺も、春樹もだ。貴様だってそうじゃないのか……? (p169)
モモさんの想いを踏みにじるかのような、幸田さんの心情。「変わった」と思ったのは、気のせい? それとも、ちょっと突っ張っているようにも感じるのは、私の贔屓目のせい?
★「俺は違う……。以前は断ち切ることばかり考えてたが、今は違う。いろんなものを引きずったまま、どうやって生きていくか考えてるんだ。どうやって、自分を引きずっていくか……」
「俺はいらねえよ、こんな人生」
「だからって、捨てるところもないのが人生だ。どこかへ、自分を引きずっていかなきゃならないんだ」
「あんたは、それが出来る人だ。俺はだめだよ、きっと……」 (p171)
幸田さんと春樹の会話。上記の2ページ後にでてくるのですが、幸田さん、やっぱりちょっとは「変化」してるのかな? それとも「自分も引きずったまま」で、「人間のいない土地」へ行くおつもりで?
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★幸田は改めてモモの顔を見たが、そこにはやはり、何の表情もなかった。あの独特の親しい感じは、夜明けの薄闇の中で街を嗅ぎ回っている間にだけ生まれ、日の出とともに消えるのか。モモはいつも、明るくなっていく日差しの中で、再び何者か分からなくなってしまう。 (p131)
こんなに優しく、柔らかな視点でモモさんを感じ取る幸田さんは、ここが初めてではなかろうか。今までは、「何が悲しくてこんなに冴えねえのか」 (p50)だの、「青臭い」 (p50)だの、「自分の足の裏に貼りついた魚の目」 (p54)だの、「それにしても最悪だな、その髭」 (p79)だの、さんざんボロクソなこと思ったり言ったりしていたのに・・・。この幸田さんの変化は見逃せません!
★もはや、暴力を受けるのも加えるのも、どちらも大差はなかった。どちらも容赦なく興奮していた。獣があえぎ、勃起し、血が飛び散った。耐え難い肉体の臭気が立ち上った。この土地の人間という人間が、この六畳間にひしめいているような臭いだった。
人間のいない土地! (p139~p140)
北川兄がモモさんにヤキを入れているところを、幸田さんが見ている場面(←誤解を招きそうな表現やなあ・・・) ま、表現がこれも「いかにも高村さん!」ですので取り上げました。「人間のいない土地」 は、幸田さんの口癖と思考。幸田さんを語る上で、これも欠かせない単語です。
★だが、それ以上は茫々としていて、ただ胸が詰まる息苦しさと、不快な感じだけが残った。この二十数年の人生が不快であったのだから、昔にあったものどもが不快でないはずでなかった。 (p143)
★何もなく、何も変わらず、怖れも感動もなく、ただひたすら不快だった。 (p153)
「不快」という単語は、幸田さんのみならず、高村作品主要キャラクターを語る時には、ほぼ例外なく出てきますね。しかし幸田さんの場合は、「二十数年」と断言しているから、特にすごいわ・・・。
★……幸田さん。北川さんから聞いた。あんたが聖書を持っているって。
あんたのことは、ほとんど何も知らない。でも、いつか、あんたとは神の話をしたいと思う。あんたとは、心の話をしたいと思う……。 (p166)
「心の話」・・・。モモさんの、心からの真情。もはや何を言うことがありましょう・・・。
★そうだ。ああいう手も、言葉も、自分には馴染まない。優しげに打ちひしがれた眼差しには、自分は応えるものがない。そうだ、モモさん。神の話がしたいんなら、他の奴にするがいい。俺の持っている聖書は、子供の頃、おふくろの引き出しから盗んだやつなのさ。《すべて、悪を行なう者は悟りはない》という言葉が、詩篇の中にあったろう? その通りだ。俺は自分の魂を救うために生きているんじゃない。息をしているのが、精一杯だ。俺も、春樹もだ。貴様だってそうじゃないのか……? (p169)
モモさんの想いを踏みにじるかのような、幸田さんの心情。「変わった」と思ったのは、気のせい? それとも、ちょっと突っ張っているようにも感じるのは、私の贔屓目のせい?
★「俺は違う……。以前は断ち切ることばかり考えてたが、今は違う。いろんなものを引きずったまま、どうやって生きていくか考えてるんだ。どうやって、自分を引きずっていくか……」
「俺はいらねえよ、こんな人生」
「だからって、捨てるところもないのが人生だ。どこかへ、自分を引きずっていかなきゃならないんだ」
「あんたは、それが出来る人だ。俺はだめだよ、きっと……」 (p171)
幸田さんと春樹の会話。上記の2ページ後にでてくるのですが、幸田さん、やっぱりちょっとは「変化」してるのかな? それとも「自分も引きずったまま」で、「人間のいない土地」へ行くおつもりで?
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