あるタカムラーの墓碑銘

高村薫さんの作品とキャラクターたちをとことん愛し、こよなく愛してくっちゃべります
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心のオアシス、その2・秦野耕三さん♪

2005-07-31 17:03:28 | 照柿(単行本版) 再読日記
「照柿再読日記」、サボっていたわけではなく、ネット落ちにならざるをえない状況でした。3日連続でお通夜とお葬式が2回続いたのです。
一人は、父方の伯父(父の生き残っている内で一番上の姉の旦那さん)。
もう一人は、母方の祖母。

『照柿』(講談社) でも、野田達夫さんの父が亡くなった、という場面とシンクロしていたので・・・何だかシャレにならないんで、イヤなんですが(苦笑) 偶然であっても、気分的には読み辛いものですよ・・・。

しかし、読まなきゃならん。「再読日記」も綴らなアカン。

***

27日(水)の、『照柿』(講談社) は、第一章 女 のp88からp118まで読了。先日が中途半端だったので、キリの良かったp88に後戻りして、もう一度読みました。

前回の予告通り、『照柿』 の「心のオアシス」であるもう一人の人物、「組長」こと秦野耕三さんが初登場。
高村薫作品のキャラクターでは、「東の秦野、西の原口」 と謳われる、二大組長の一人です。
(原口達郎組長は、『わが手に拳銃を』(単行本のみ講談社) 『李歐』(講談社文庫) に登場) 

何で高村さんの描かれる「組長」ってのは、こんなに男気に溢れてて、カッコいいんだか・・・(ため息)

***

★☆★本日の名文・名台詞  からなのセレクト★☆★
今回は秦野組長登場部分だけを取り上げようかと思ったが、そればかりというわけにも・・・。期待していた方、すみません。

★謎のように美しい。美保子こそが謎だ。 (p88)
これは達夫さんの述懐だけど、合田さんから見たとしても、当てはまるんだろうなあ。
「これこそが、佐野美保子という女」その1の部分。(←ネーミングセンスなし)

★嫌悪はそれ自体存在意味があり、なくなるよりはあった方がいいと思うようになったのは、達夫独特の複雑な自己評価と内省の結果だった。 (p89)

★「私ね……」 (中略)
「もう我慢ならないのよ」 (中略)
「私の人生……」 (中略)
「こんな人生……」 (p93)
あえて美保子さんの台詞だけ抜き出してみました。この方が、美保子さんの抱えている深くて暗い情念が、くっきり浮かび上がると思うので。
この拙くも、身体の奥から搾り出したような言葉。「これこそが、佐野美保子という女」その2の部分。

さて、この後は秦野組長絡みの場面を取り上げましょう~  ここはかなり力入れてご紹介(笑) だって登場場面が少ないもん。なのにこれほど強烈な印象を残すってのは・・・秦野組長、侮り難し。

★とたんに、粘りつくような鋭い眼光を放って、男はカッと白い歯を見せた。 (p105)
秦野組長、初登場~。
高村キャラクターの「いい男」の条件の一つは、「白い歯」がポイントかもしれませんね。(後の場面でも出てきます。もちろん他の作品にも)

★男は握手を求めて片手を差し出してきた。そして、雄一郎が片手を出すやいなや、男はすかさず、差し出した自分の手をかわして雄一郎の手首をがっしりと掴んだ。そういう大胆な所業に出てはばかるところもない一種独特の男の威風は、秦野組六代目組長を襲名する前から備っていた。 (p105)
もう、ここらへんで「只者でない」という雰囲気が、プンプン匂ってますね~。

★「下っぱのお上相手に、何をおっしゃる」
「そう言って、あなたはまた逃げる」
「何から」
「この秦野耕三の食指から」
 (p106)
秦野組長の名台詞、その1! いや~ん、シビレます~ 

★刑事一人の手首を掴んだまま、男は直截な物言いをしてにやにやした。金と組織の力をもってしても、こちら側へなびいてこないお上に対してはとりあえず無力だと知っている渡世人の鋭利な自嘲が、その眼光に浮かんでいる。同時に、一介の刑事一人をからかう口の下には、すきあらばと狙っている蛇の舌も光っている。 (p106)
こんな狩人に狙われたら・・・。合田さん、ようかわしきれたなあ・・・(感心&安堵) しかしこれでかわしきれなかったら、私は合田さんを見限っている(苦笑)


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