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あと

テンプレと表示絵がよく変わるのはいつもの事

逃げ腰探偵 13話

2012-12-25 18:50:06 | 小説
13 わわわ~ん!




13

私は怖かった、刃物というものは対峙するだけで、これほどのプレッシャーがあるものだと初めて知った。
だけど、その恐怖という感情とは裏腹に、私の体は動いていたらしい。
「どうして・・・そんなになるまで、誰にも相談しなかったんですか?」
「なんだと? 私の苦悩なんて、誰もわかるはずがないからに決まってるだろ!」
この時の自分の感情なんて、どうなってるかわからなかった。もしかしたら泣いていたかもしれない、鼻水を啜る音で私の声なんて相手に聞こえてなかったかもしれない。
だけど、こんなに思いつめた表情は初めて見た。
探偵という職業柄、追い詰められた人間を多く見てきた。ある人は夫の浮気が心配で、ペットが逃げたなど。
他人からすれば、どうってこと無いような事件だったが。
本人からすれば大問題だという事が、私は知っていた。
「いえ・・、貴方は諦めてただけなんです。どんな辛い目に遭ったかは知りません、だけど、その状況を解決しようとしてた訳じゃない。ただ逃げ回ってただけなんです」
「なんだと・・・、お前・・お前なんかに!!」
「包丁・・・、置いてください」
私に対して包丁を突きつける、このまま近寄れば確実に刺されるだろう。
「置いたら、私を捕まえるんだろ!そうなったら誰も浜松に裁きを与えられない!」
「じゃあ、私が代わりに裁きを与えます」
「そんな事できるはずがない!!」
確かに、私にそんな力はない。だが、話を聞く限り浜松という男を許せない。こういう立場の弱い女性を食い物にする男をよく見てきた、だからこそ短絡的な決断をせず、法的に裁く必要がある。
私は、冴木さんにこの男が裁かれる様を、しっかり見届けて欲しかった。
「そうやって言い訳をする、それが逃げてるって言ってるんですよ!」
その言葉の後、衝動のように彼女に抱きついた。理由はひとつである、彼女は相変わらず鬼のような形相をしていたが、うっすらと涙を流していた。自分の起こした過ちに気づいたのである。
「よし、確保しろ!」
「待って・・ください」
大友さんが動こうとしていたが、私の静止で後ろに下がる。
「おい、何をしてるんだ。おとなしくなってるうちに・・・」
「刑事さん、ちょいとうちの若いのに任せてはくれないですか?」
「悠長に構えて・・、どうなっても知らんぞ」
私はそっと、頭を撫でてから、ゆっくりと椅子へと連れて行き座らせた。
先ほどまでの表情は影を潜めて、今は穏やかな顔をしている。
「どうして、こうなったか。話していただけますか?」
冴木さんは、静かに頷いた。
「私と・・・涼香・・柳涼香さんは、実の姉妹なんです」
私の後ろで待機していてくれている3人は、神妙な面持ちで見ている。
冴木さんの両親は、冴木さんがまだ幼く、そして涼香さんが赤ん坊の時に離婚をしていたらしい。
だが、離婚をきっかけに優しかった父親が暴力を振るうようになってきた、その苦痛は幼少だった冴木さんを苦しめ続けたそうだ。
自分がこれだけ酷い目に遭っている、なら妹も危ないかもしれないと思い、必死に妹の涼香さんを探し続けた。しかし、運命というものは残酷だとしか言いようが無い、中学生の頃にようやく見つけたのだが、妹の涼香の家庭は幸せそのものだった。
現実を目の当たりにした時、冴木さんの心の支えだったものが、壊れた。
それは、愛情が何か別のものになるきっかけとなったのかもしれない。
妹は私とは違う、私よりずっとずっと幸せになる必要がある。いや、ならなければいけない。その為には、私がずっと見守り、そして妹の障害になるものを排除し続けないとならない。
冴木さんの歪んだ愛情は、さらにエスカレートしていった。
その後も涼香さんの事を付けていき、行動を監視し続けていた。
妹の涼香さんもその事に気付き始める、何者かに後を付けられていると自覚し、そして会社に就職して一人暮らしを始めてからも続いたので、困り果てて上司に相談したのだった。
その相手が、今回一緒に旅行に来ている、浜松である。
最初は親身に相談に乗ってくれたのだが、若く綺麗な涼香さんに対して、次第に別の感情が芽生え始めた。若くして出世をして順風満帆な彼にとって、丁度いい火遊び相手として目をつけられてしまった。
浜松はストーカー被害に対して、専門業者がいると言い知人を紹介する。しかし、その業者と浜松はグルで、ロクに仕事もせずに法外な費用を請求してきた。
当然、払い切れるはずもなく、浜松は自分が肩代わりするという名目で金を払う。その事が原因で、毎週のように呼び出しをされ、体の関係を強要されてきたのだった。
その事を知った涼子は、この旅行中に接触をして浜松との縁を切るように言うつもりだったらしい。
「・・・その話が、嘘じゃないという証拠はありますか?」
「証拠、とは言い切れませんが。虐待されていた跡ならあります」
そう言い首筋の髪を書き上げた、そこには何個か火傷の跡がある。涼子さんの父親が付けたものなのかもしれない、生々しい傷跡を見られるのが嫌なのか、直ぐに隠してしまった。
「分かりました、信じましょう」
とても嘘とは思えない、私は自分の直感を信じた。
「なら・・・、なんで殺したんですか。妹さんの過ちを止めるために来た筈でしょう?」
「それは・・・・」
目を伏せる、また首を掻き毟るように触る。
「急に目の前に現れた、姉と名乗る人物の言葉なんて、信じてくれる筈がなかったんです・・・」





寒いですねー




ほんと




キーボードがおかしくなるレベルの寒さですわ






前回間違えて12話って書きましたが

2012-12-18 09:23:02 | 小説
今回が正真正銘の


12話です


orz






12
「犯人を捕まえたっていうのは、本当か?」
「まだ断定はできませんけどね」
「ほほぅ、それにしても俺達を囮にして捕まえるなんてな。大した奴だな」
本当は、ただ逃げようとした先に、同じく逃げようとしていたであろう冴木さんと思われる女性が居ただけである。だが、ここで1つ引っかかる。
ただ逃げようとしているのなら、駐車場の草影などに隠れてないで、さっさと逃げていれば良かったのだと思う。
もしかしたら、隠した死体に何か決定的な証拠が残っていたのだろうか。
それならば、リスクを承知で戻ってくるのもうなずける。
「お嬢さん、アンタはなんで捕まったかわかってるな?」
「・・・知りません」そう言い首の後ろを撫でる、癖のようなものなのかもしれない。
「アンタの本名は、冴木涼子でいいんだな」
「・・・・」
黙秘をして回避するつもりだ。
だが、それも無駄な抵抗である。なぜなら、財布にある身分証で簡単にバレてしまうからだ。
「身分証の提示を願おうか」
半分観念したかよのように、鞄から財布を出す。それは私がフロントに届けたものと、全く同じものだった。
その財布の中にある保険証から、冴木涼子だという事が判明した。
「これは、アンタの持ち物で間違いないのだな?」
「・・・・」
沈黙が既に答えとして成立している。
「アンタ、黙秘を続けてても埒があかんよ。それに冴木涼子という名前は、ここの旅館の宿泊名簿にはないそうだ」
「わ・・私はただ、一人旅を・・・」
「ならなんで、偽名を使う必要がある」
「ぶ・・無用心だと思って、本名を書くのは」
「まあいい、俺が聞きたいのはもっと違うことだ。 なぜ2人を殺したんだ」
「なぜ、私が殺したなんて思うんですか・・?」
状況証拠みたいな物ばかりのこの状況で、彼女をこれ以上問い詰めるのは難しいと思ったが、どうやら切り札もあるらしい。
「あんたが・・・捕まった時に持ってたキーだが・・・、被害者女性の車だと解った。なんで持っていたんだね?」
今度は少しかきむしるように、首を触る。
「それは・・、そこで拾ったんです。だから・・返そうと思って・・・」
「自分が隠そうとした死体に、何か見られてはマズイ物があったんじゃないか?だから、それを隠滅するために車に近づいた、違うか?」
「・・・・」
また沈黙をする、どうやらこの冴木さんがこの事件に関与しているのは、決定的だろう。
「大体の予想はつく、痴情のもつれだろう?」
この平賀という刑事は、男女が事件に関与していれば、それが必ず痴情のもつれだと思っているのだろうか。そうじゃなければ、きっと刑事ドラマの見すぎだろう。
「お前と被害者女性は、不倫相手の浜松を取り合ってた。それで、口論になり・・・」
「誰があんな男とっ!!」
先ほどまでの印象とはまるっきり違う、怒りに満ちた様な表情で睨んでくる。声が裏返り、そしてたった一言しか発してないのにも関わらず、息が切れていた。
「アンタ、あの男の知り合いだったのか」
「・・・いいえ、知り合いではありません」
目線が泳ぐ、これは話をそらそうと考えている可能性がある。だが、言葉が出てこなかったのか、先手を取られてしまった。
「なら、なぜ?」
また沈黙を通すのかと思っていた、だが私の予想は丸っきり外れてしまった。
「あの男が悪いんだ・・・、涼香を、涼香に対して無理やり迫るから・・・。涼香はあの男のおもちゃではない、それなのに、あの男は・・・、家庭がある身でありながら、涼香に対して色目を使いやがて・・・。だから、私は涼香に言ったんだ、別れろと、別れてしまえと・・・。なのに、なのにっ!!!」
その声は狂気を孕んでいた、全身を小刻みに震わせながら。矛先を失った怒りを、誰かに撒き散らすかのように、私たちを一瞥した。
「私は・・、ただ涼香の幸せになって欲しかっただけだ・・、それなのに、お前等に何がわかるんだっ!」
鬼の形相とは良く言ったものである、今まで怒っている顔は何度も見てきたが、これは別格である。
正真正銘の鬼が目の前に存在するかのような表情だった。
「良いか、あの浜松という男を今から殺してやる!」そう言い、鞄から丁寧にカムフラージュされた包丁を取り出した、可愛い小物のようにも見えるが、そこから出てきた刃には尋常ではない恐怖が宿っていた。どうやら、最初から浜松を殺す覚悟があったかもしれない。




いよいよ 終盤!



これを送ったと思うと恥ずかしいなーっておもってるのは内緒だ!





逃げ腰探偵 12話

2012-12-14 10:20:51 | 小説




信じられますか?




もう 12話なんですよ?




でもまあ




50話ちかい話を書く事があるボクにとっては




案外普通かもしれない・・・





11
まず宿泊名簿の中から、冴木涼子という名前が無いか聞いたが、その名前で宿泊している人物は居なく、同じ姓もいなかった。
「そうなると・・・誰かの連れという事になるのか?」
「1人で来たとも断定しづらいですね」
いつになく真剣な面持ちで考えている、こんな表情は滅多にしない。
いつもの仕事などでは、ヘラヘラとごまかすような笑顔をしている。だけど、暇そうにしてる時に限って、こんな表情で何かを考えている。
私はその理由を知りたいが、それを聞いたらマズイような気がして、いつも聞けなかった。
桝谷はその真剣な表情のまま、フロントの職員へ質問をする。
「・・・・ええと、もうチェックアウトした方っていますか?」
「いえ、刑事さんが伺ってからお客様にはお部屋で待機してもらっております」
「ならチェックアウトしに来た人の、部屋の番号を教えてもらえませんか?」
「おい、その中に犯人がいるというのか?」
「わかりません。しかし、犯人ならば、ずっとここに留まっているつもりはないでしょう」
事件に関係ない桝谷でさえ逃げるのだ、犯人が大人しく待ってるつもりはないだろう。
「そうだな、全員を虱潰しに当たってる時間もなさそうだ・・・」
平賀さんも、先ほどまでの間抜けな雰囲気とは打って変わり、本物の刑事らしい顔つきになった。
どうやら、本当に犯人を追い込んでいるようだ。
「お前達の働きは見事なものだが、民間人だ。後の事はコチラがしっかりやるから、ここで大人しく待ってろ!」
「はいはい、わかりました」
このシリアスな雰囲気とはかけ離れたような、気の抜けた声。いつもの桝谷の声である、この状況でこんな軽い返事をしたという事は、何かよからぬことを考えてるに違いない。
そして2人の刑事の姿が見えなくなったことを確認したら、待ってましたという表情で荷物を持った。
「よし、逃げるぞ」
「ええっ!? このタイミングでですか!?」
「そうだよ、のんびり犯人が捕まるのを待ってられないからね」
そう言い腕時計を見る。
どうやら昨日の仕事を済ませたいらしい、事件に巻き込まれても、優先しなければならない事とはなんなのだろうか。
私はつい聞いてしまった、無意識の内に声が出てしまい、少しハッとする。
「連れて行ってくれなくてもいいんで、仕事の内容ぐらい教えてください」
「・・・・ダメだよ」
先ほどまでの軽い表情とはまた変わり、というよりも戻ったという表現が正しいだろうか。
真剣な表情で私を見た。まるで、睨みつけるように。
「奈良君には悪いけど、これだけは手伝わせることは出来ない」
「なんでですか! 私の実力じゃ不満なんですか?」
「違うよ、巻き込みたくはないんだよ。良いかい、君は立派に働いてる、それだけでオレは十分助かってるよ」
「そんなの、答えになってないです」
少しむくれた顔で答えた。
そして、わがままを言って困らせてしまってる自分に腹が立ち、桝谷の事を直視できなかった。
こんな子供っぽいことはやめよう、そう思った私は謝ろうと前を向くと。そこには、桝谷の姿はなかった。
「おーい、置いてくよ」
ロビーを裏口から抜けた場所にある駐車場に出ていた。
「ちょっと! 何やってるんですか!」
桝谷は、時間を気にしながら足早に逃げ去った。
私は鈍足なりに急いで追いかけた、走り方が悪いのだろうか、それとも駐車場の砂利道がいけなのだろうか、何度も転びそうになった。その姿を見て、さすがの桝谷も足を止める。
私はようやく追いつき、桝谷を止ることができた。
「はぁ・・ぜぇ、裏道から逃げても無駄ですよ、捕まりますよ・・・」
「じゃあ、君だけ残っててよ。すぐ戻るから」
「そんな事が通用する筈ないですよ!」
いつも通りの口論、こうなってしまっては私が折れるまで終わらないのだが。今回は折れるつもりはなかった、いつまでもこの男のペースに付き合うつもりはない。
私がいつもより、少し大きな声を出していると、何故か隣の草影から物音が聞こえた。
突然音がしたり、気配があればそちらを向いてしまうのは人間の本能だろう。ふいに見たその先には、刑事さんが探している筈の、冴木涼子と思われるおとなしい感じの女性が居た。
「あっ」
女性は咄嗟に逃げる、足は早くなさそうだが。私の足で追いつけるとは思えない、一生懸命走ってはみるものの、なかなか差が縮まなかった。
「桝谷さん!! 一緒に捕まえてください!!!」
「全く・・・・」
「早くっ!!」
桝谷はめんどくさそうにしていたが、物凄い速さで私の脇を通り抜け、そして女性を捕まえた。
足が早いとは聞いていたが、実際に本気で走る姿を見たのは初めてである。
まるで陸上の選手かと思えるほど、綺麗なフォームだった。
「・・っ、離してください」
「まあまあ、落ち着いて」
手に何かを隠し持っているのだろう、右手が握られたままで抵抗している。しかし、掴まれて振りほどこうとした時、地面に鍵のようなものが落ちた。
「奈良君、刑事さんを読んできてくれないか。オレは彼女をロビーに連れて行くから」
「・・・あ、はい」
あまりの手際の良さに、私は少し呆然としてしまった。





手直ししてないVerなので





誤字脱字はいつものこと・・・







久しぶりの

2012-12-06 13:55:04 | 小説
逃げ腰探偵 10話



いやぁ




最近は 忘れてましたwwww








10
ところが・・・、浜松にはアリバイがあった。疲弊し切った顔で出迎えた浜松は、刑事さんの言葉に対して反論をした。
「殺すだなんて・・・、俺には家族だっている、そんな事をしても得がない・・・。それに、私がここで涼香・・・柳君の死体を見て、慌てて従業員さんに言ってから。ずっとその人と一緒でしたよ」
浜松の証言通り従業員さんもその事を覚えていた、死体発見からの間は殆ど一緒に行動していたらしい。
そうなると、佐藤さんの殺害の時間と、フロントを交換したという時間との辻褄が合わなくなる。
浜松は朝の8時に温泉に行っている、それは連絡通路ですれ違った従業員の証言により明らかになった。
戻ったのが8時30分と言うのも、宿泊客が20分ぐらいまで温泉で浜村の事を見かけたというので、まず間違いないだろう。それから、すぐにフロントにいた従業員を見つけて、それ以降ずっと誰かと一緒だったらしい。
佐藤さんがフロントを離れたのは、朝の9時。
8時30付近からアリバイのある浜松には、佐藤さんの殺害は不可能だった。
「うーん・・・・」
平賀は唸っていた、関係ない人間に対して疑いをかけてしまったのはミスである。口車に乗せたれた事が悪いのだが、最終的な判断は平賀が行なっていた。
「お前達・・・、自分の罪を他人に擦り付けて、逃げようとしたな・・?」
「まさか、とんでもない!」
再度疑われ始めた、明らかに今までで一番の疑いの目である。これだけの事をしてしまえば、例え犯人ではなくても、捜査攪乱などの容疑がかけられても仕方ない。
「そ・・そうだ! その佐藤って女は、どんな人だったんですか」
平賀は無視をしたのだが、大友さんが答えてくれた。
「ここの旅館で結構古い人らしいです」
「古株ってわけですね」
「ええ、面倒見も良くて、評判が悪いわけじゃないらしいですよ」
「なら・・・なんで殺されたのでしょう」
私の口から言葉がこぼれてしまった、人の死など考えたこともない。時間が経つに連れてどんどんと現実にさらされ、名前を知らないとはいえ、自分の身の回りで殺人が起きたという恐怖が頭をよぎったからだ。
私の表情を察してくれたのか、大友さんが小さな声で喋りはじめた。
「・・・基本的には、評判が良かったんですがね。一部の親しい仲の人間からは、違う証言も得られました」
佐藤さんは、昔から独身でホスト通いだったらしい。一時期は相当行き詰めていたらしく、毎週のように仲間内から借金を繰り返していた。
だが、そんな生活も続くわけがなく。周りに咎められて止めたとなっていた。
「しかし、また若い従業員に、少しずつお金をせびってたようなんです」
「というと・・・恨みを結構買ってると?」
「まあ、脅迫をしたなどの証言は得られなかったので、それで恨みを買ってるとは言い切れませんが、借金に困ってたという話はあるみたいです」
ここに来て被害者の一人が借金をしていたという事実、2人の女性の殺害は、偶然同じ場所で起きただけで、全く違う意図があるのかもしれない。
「なら、犯人は金融会社の奴等か」
借金取りと口論になり、殺害された。だが、それも納得のいく推理とは言えない。
「それはおかしいでしょう」
桝谷はすかさずツッコミを入れた。
「なんだと!」
「考えてみてください。相手はプロですよ、荒事には慣れてます。勢い余って殺してしまうなんてことはないでしょう、それに、せっかくの金づるを逃すとも思いません」
「なら、どうして殺されたというのだね?」
「佐藤さんが・・・、誰かを脅していた可能性はないでしょうか?」
「さっきの話を聞いてなかったのか、脅迫などの証言はなかった」
「従業員ではなく、宿泊客だったら」
怪訝な顔で桝谷を見た、それはそうだろう。客を脅す従業員がいたら、そんな旅館はとっくに摘発されている。
私からしても、この推理は無理があった。
「相手が逃げられないような、弱みがあったらどうです?」
「弱み・・・?」
「ええ、例えば偽名で宿泊をしているのがバレたとか」
偽名で宿泊する行為というのは、歴とした違反行為だ。旅館営業法6条に反する事で、発覚した場合など拘留または、科料の刑罰が科せられる。
不倫旅行などをする人間がたまにやる手段ではあるが、場合によっては身分証の提示などを求められるので、大体の人間が本名で宿泊しているだろう。
「どうやって、そいつを絞り込めばいいんだ? 人数が結構いるんだぞ」
「あっ、もしかして・・・」
私は思い出した事がある、何かを必死に探していた女性が居た事。
そして、身分証明書が入ってる物を桝谷が拾っていた。あの女性と財布が全く関係ないとは思えない、もしかしたらあの人が財布の持ち主である、冴木涼子という女性なのかもしれない。
「奈良君も思い出したか」
「はい、もしかして、あの人が・・・」
「あの人?」
「ええ、女性の方なんですが。眼鏡をかけたおとなしい感じの」
「フロントに行って確認してきましょう」
大友さんも顔色を変えた、どうやら事件の真相に近づいてきたらしい。私も今まで味わったことのない、変な緊張感に包まれた。
「また捜査攪乱か?」
「可能性は・・・低いかもしれません。でも・・・」
浜松の件で、すっかり信用を失っている私達の意見など、簡単には信じたもらえる筈はなかった。
ただ、あの女性の事が頭から離れない、全く関係ないとは思えなかった。
「なんだ、はっきり言ってみろ!」
「まあまあ、落ち着いてください。 血圧が上がって倒れても助けませんよ」
「うるさい黙ってろ、今度という今度は・・・」
「・・・か、勘です」
「なんだぁ? そんなもん信用できるか」
私の言葉に対して、興味も無さそうな表情で睨んで来る。
「私はこれでも、探偵として少しは人を見てきました。あの人を何度か見ましたが・・・、何か隠してるような、そんな雰囲気がありました」
「それは署で聞いてやる、さっさとお前等はパトカーに乗れ!」
「冴木涼子って名前は間違いないんですね?」
万事休すかと思われた、そんな時に助けの手を差し伸べてくれたのは大友さんだった。
「ええ、桝谷も確認しています」私が目線を合わせたら、頷きながら答えた。
「おい、さっさと連行しろ」
「全く、そうやって物事を急くからミスるんですよ。取り敢えず宿泊名簿を確認しましょうよ、そんなんだから、昔の同級生にハゲたねって言われるんですよ」
「言われねえよ!ふざけんなよ!」
この毒舌のあとは何故かおとなしくなる、その後、明確な舌打ちが聞こえたがフロントへ向かった。






まぁ




あと 本当にもうちょっとなんで





お付き合いくださいw





逃げ腰探偵 9話

2012-11-21 13:52:35 | 小説



結構長いなあ




この小説




でも




今まで連載してたのが よっぽど長いけどね







9
場所は、1人目の犠牲者とされる女性が見つかった駐車場から、少しだけ離れた場所にある人目につかない場所だった。
従業員なども滅多に通らないらしい、ここなら犯行も可能だろう。
「へえ、よくこんな場所にある遺体が見つかりましたね」
「ああ、被害者の佐藤という女性は、仕事をサボるときはよく、この場所を利用していたらしいからな。従業員が探しに来たら仏さんになってたって訳だ」
「・・・よく見ると地面に、引きずられた様な跡がありませんか?」
ほとんど目立たないが、何かが引きずられた跡がる。
「本当だ、鑑識はこの事を知ってるのか?」
「大至急確認してみます」
大友は携帯を取り出した、これは大きな証拠になり得るだろう。
「・・・・そのような跡は確認されてないようですね」
「でかしたぞ探偵!」
「いやあ、当然の事をしたまでですよ」
褒められて照れている、どうやらこの2人は馬が合うのかもしれない。ダメな上司という共通点もある、このまま2人で探偵ゴッコをやり続けてくれれば、もしかしたら私達の疑いを拭う程度の推理はしてくれるかもしれない。
などと、甘い考えを持ちながら、なかなか終わらない茶番を見ていた。
「となると・・・、別の場所で殺して、ここに連れてきたって事になるのか。なら、犯人は他の従業員の可能性もあるな」
「おお、名推理ですね!」
適当にヨイショをする、それがこの男の得意技であり、切り札でもある。
「しかしですね、ここで遺体を発見された佐藤という女の靴には、泥などは一切ついていなかったようですよ」
しばらく沈黙が流れた。
散々褒め称えられて、のぼせ上がった男が叩き落とされたのだ、気分がいいはずがない。
平賀は桝谷を睨みつけるようにして、咳払いをした。
「あ・・・ええと、じゃあ、1人目の被害者とされる女性の靴には?」
「ええ、引きずられた跡のような傷に、泥も付着していました」
「と・・なると、ここで殺されて。トランクに詰め込まれた」
謎が深まった。
2人も殺しておきながら、なぜ片方だけを隠したのか。それに、朝の騒ぎから察するに犯行から遺体の隠蔽まで、あまり時間が無かったハズだ。
車だって従業員の車も含めると、結構な数が泊まっていたと刑事さんが証言している。その中からすぐさま車を選別して入れた事になる。
そうなると、被害者の乗っている車を知っていた可能性がある。
「やはり・・・、従業員の犯行でしょうか?」
「ん~、俺もそう思うんだがな。何しろ従業員の朝は忙しいらしい、手が空いてたのは佐藤と、フロントを代わったという従業員だけだ」
「フロントを代わった?」
「そうだ、佐藤に言われたから代わったらしい。その時の佐藤は、機嫌が良かったとも証言している」
「時間は?」
「朝の9時だったそうだ、自分の仕事が一段落して時計を見たから間違いないと言ってる」
誰かに呼び出された可能性はあるが、脅されていたなどの類なら、そんなに楽しそうに向かうはずがない。
だとすると・・・・。
「男だな」
平賀が言った。
「わかったぞ、犯人は最初の被害者である。柳涼香(やなぎさやか)の不倫相手である、浜松だ!」
「へえ、柳さんて言うんですか」
「しまった・・、捜査情報を漏らしてしまった」
「いえいえ、聞かなかった事にしますよ。それより、話を進めましょう」
推理に熱中しすぎた平賀は、ついうっかり口にしてしまったようだ。これは、多少なり失態である。
それをきちんと拾った桝谷は、ここに来て一気に攻勢に出るつもりらしい。
「はぁ・・・、被害者の名前を漏らすなんて、幻滅です。ハゲてしまえばいいんです」
「う・・うるさい! こ・・これはな、捜査協力だ、いいな?」
「”協力”ですね?」
「うっ・・・」
また、失言を拾った。
「まあいい、こうやって犯人が解ったんだ。問題はあるまい」
「でも、どうして殺害なんてしたんです?」
「それはおそらく・・・浜松は二股をかけていたのだろう。それから痴情のもつれという奴だ、若い女性と中年の女性の醜い争いの果てだ」
「そう・・・ですね!」
桝谷は何か言いたそうな表情だった、恐らく見立てでは、柳さんはイヤイヤ付き合ってるという感じだと思っている。
その柳さんが、中年の女性と張り合うとは思えない。それこそ、そんな愛人がいる事がわかれば、チャンスと思い別れ話をするだろう。
もし、それで拗れたとしても、柳さんへの殺害の動機はわかるとして。佐藤さんの殺害動機が不明だ。
「よし! では、犯人逮捕と行くか!」
「ついていきます!」
平賀は颯爽と浜松の所へと向かった、犯人が解り上機嫌といった表情だ。この人は感情を隠せないタイプだろう、桝谷も似たところがあり、隠し事をすると表情に現われる。
やはり似た者同士で、仲良くなったようだ。





さて






これを ミステリー小説と呼べるのだろうか・・・?