ぶっちゃけめっちゃ恥ずかしいんですけどね
去年書き上げた小説なんですが
ワリと話がまとまっていて良い作品になったので載せようかなと
ええ・・・
べつに手抜きじゃないですよ
長いので2回から3回にわけて載せますね
タイトルは 幸せになる条件
まさか本当に天使が目の前に現れるなんて思わなかった。
本当に純白の羽が巻き上がりまるで自分の周りだけ浄化されるような感じさえした、だがその天使様が俺に言い放った言葉は信じられないものだった。
「お前はあと一週間で悪魔に殺される」
突然そんなことを言われて信じられるものかと思うが、目の前に写るのそあまりにも美しい存在を否定することは出来ない。
どうやら俺の命はあと1週間しか残されていないようである。
「ま・・・待ってくれ!なんで俺が・・・」
確かに俺はかっこいい、自分でこんなことを言うのも変だと思われるが人並み以上にモテる、だが俺は悪魔に殺されるような悪いようなことをした覚えは無い。
「お前に見に覚えが無いのは仕方ない・・・、だが残念ながらこれは事実だ」
可愛い顔をしてこの天使様はきついことを仰る、プロのモデルだってこれほどの美人はいないだろう。
だが表情一つ変えずにこの冗談にも聞こえる会話を続ける。
「お前の前世は実にいい人間だった、だから幸せをお前が受ける権利がある、だがお前は自分の一生分の幸せを使い切ってしまった」
「何を言ってるんだかわかんねえよ・・・」
確かに俺は運がいい、自分で言うのも変かもしれない、この件を2回も言うのも変だが確かにクジ運などは人並み以上だし悪いことだって滅多に起きない方だろう。
だがその程度で殺されては困ると思った。
「だが安心しろ、お前にも執行猶予として1週間が与えられたわけだ、その間に1人の人間を幸せにしろ」
「へ・・?」
相当無理な課題を言われるのかと思ったが、たった一つ誰かを1人幸せにしろというものだった。
「そんなことでいいのか?」
相変わらず顔色変えずにしゃべりつづける、この人が笑えば1000人いれば1000人が振り向くに違いないと心の中で思ったのだが相手が真面目にしゃべっているのでそのことも言い出せない。
「まぁ・・・真夜中にご苦労様・・・」
時計の音が鳴り響いている、その針はちょうど午前の2時を指している。
とりあえず俺は寝ることにした、最近ゲームを買ってやりすぎて悪い夢を見ているのだろう、俺はそう思ったからであった。
「ん・・・ん~・・・・」
俺は目覚ましが無くても起きれる人間だ、それは体内時計がかなり正常に働いているからだろう。
今まで自分の不本意な時間に起きたことなど滅多になく、目覚ましをかけずに遅刻なんてこともない、だから朝日が差し込みその光で目を覚ますのであった。
朝食は親が用意してくれている、今日はどうやらトーストと目玉焼き、それにポテトサラダにコーヒーのようだ。
「あら? 康臣(やすおみ)・・・顔色悪いわよ?」
「ん・・・・?変な夢をな・・・」
そういわれてから突然思い出した、そういえば変な夢を見た、天使が目の前に来て急にお前は後一週間で死ぬといってきた。
ばかばかしくて笑ってしまうような夢だったが妙にリアルだったのも覚えている。
だがそれも夢から覚めてしまっては意味が無い、どうせならあの天使様をじっくり脳内に焼き付けて置けばよかったと思った、これだけの美人に会えるチャンスはもう二度とないだろう、俺はそう思っていた。
朝のHR、いつも通り収拾が付かない、だが今日は転校生が来るらしくざわつきながらも皆が着席していた。
「今日からお前らと同じクラスになる・・・・」
「天川美歌(あまかわ みか)です、よろしくお願いします」
どう見ても外人のような顔をしてるのに日本名とは不自然、というよりもその素敵な姿をどこかで見たことがあった。
「あぁっ!!!!」
「ん・・・・?日古川(ひこがわ)お前の知り合いか?」
「いえ・・・・なんでもありません・・・・」
周りの女子たちが一斉に騒ぎ始める、どうやら俺が騒いだので驚いたようだった。
「日古川君の知り合いなのかな?」
「でも転校生でしょ?」
「え~・・・でもすっごい美人だし・・・日古川君とならいいカップルって感じ?」
「バカじゃないの?日古川君のほうが美形じゃない?」
などと言う声と引き換えに男子からの冷たい声も聞こえてくる。
「マジかよ・・・転校生はもうチェック済みか・・・」
「かっこいいからって何でもアリですか」
「マジ殺す・・・・」
後半はもう"殺”という一言に尽きるセリフしか聞こえなかった。
「はいはいはいはいはい! 静かに、ええぇと・・・じゃあお前は日古川の隣に座れ」
何の冗談だろうか、俺の隣にはクラスで一番冴えない女子というレッテルが貼られてる、木村という子がいたはず・・・・。
なのだがなぜか一個後ろの席になっている、一体何がなんだかわからなくなってきた。
「よろしくおねがいしますね」
100点満点中120点あげたくなるような笑顔、その笑顔にさらに呆然としてしまった。
朝のHRが終わり即座に昨日のことをしゃべりかける。
「あんた・・・昨日俺の部屋に来なかったか?」
こんなナンパの仕方も無いだろうと言った表情で周りから見られた、それは当然だ。
いまどきこんな口説き方は無いだろう、当然天川という子にもクスクスと笑われてしまった。
俺はさすがに恥ずかしくなって机の上に伏せてしまう、このまま消えてなくなりたい気持ちもあったが毎日が幸せに生活できている俺にとってそれは勿体無いことだと思った。
それから学校が終わるまで通常通りの日だった、ちょっと違うことといえばいつもなら1日1回は告白されるのだが今日に限っては無かった。
たまにはそんな日もあるだろうと思って廊下に落ちていた消しゴムを思いっきり蹴ろうとしたら靴だけ飛んで行き先生の顔面にクリーンヒット、いつもなら何かしらの言い訳で逃れられるのではあるが今日に限って長時間捕まった。
「ったく・・・今日はツイてないなあ・・・・」
たまにはそんな日もあるだろうと思った、なぜなら今日の魚座は12位、良いことが全く無いので覚悟しましょうとのことだった。
「それはそうだ、今朝忠告したはずだが信じてなかったのか?」
突然背後から声が聞こえた、それは今朝の悪夢に出てきた天使様の声であった。
「お前はもう一生分の運勢を使い果たしたんだ、だから悪魔がお前を殺しに来る」
「やっぱり・・・・今朝見えたあの天使様ですかぁ・・・」
ため息交じりのような声でにらみつけるように言った、俺は言い寄るように距離を詰める、だが全く怖気づかない。
「俺が死ぬって本当なのか?全く信じられないけどな」
そういうとまだ理解していないのか?とでも言いたげな表情でこちらを見てきた、当然その表情にはカチンと来るもののとりあえずその場は抑えることにした。
「悪魔が来ている、たとえお前が戦車を用意できたとしても10秒もしないうちに灰にされるぞ」
美人さんがこういう話をするとどうしても笑い話に聞こえた、とにかくいきなりお前は殺されるといわれて本気にうけとれる人間などそんなに多くは無いだろう。
「・・・・まあいいよ、なんだっけ?条件」
「1人の人間を幸せにしろ」
「なら今から1人幸せにしてやるからついてこい」
俺は意気揚々と歩き始めた、超美形である俺にとって一人の人間を幸せにする程度のことは造作もないことだと思った。そのままモテなそうな女子1人を見つけ出した。
「いいか・・・見てろ」そう一言突きつけてからその女子の目の前まで一直線に向かう、当然相手の女子は何がなんだかわからないといった表情でキョトンとしていた、そのまま少しの間を空けて抱きしめてから「好きだ」と言ってみた。
こんなことをいきなり言われた事がないのだろう、相手の思考は停止したかのように立ち止まったままである。
そのまま幸せの絶頂のような状態の女子を置いて戻ってきた。
「よし、1人幸せにしてやったぜ」
「お前は馬鹿か?」
明らかに条件を満たしているものと思っていた俺にとってはその言葉はカチンときた。
「あの娘は今は幸せかもしれない、だがコレは一時のことでしかないのだ」
まあアレぐらいで人が幸せになったら俺はこの方法で今頃城の1つや2つを建てている頃だろう。
「それに見てみろ?」
「ん?」
振り返った瞬間であった、目の前に火花が散る。一瞬はなんだかわからなかったがさっき好きだと言った女子らしい。
俺にキツイ一発をお見舞いしてから激怒したような表情で立ち去っていった。
「今の彼女の状況は幸せといえるのか?」
「ん・・・わるかった・・・、ちゃんと真剣に考えるよ」
死ぬという言葉にはイマイチ現実味がないものの、1人に迷惑をかけてしまったことには深く反省した。
「じゃあ・・・教えてくれよ!人を幸せにする方法をよ!」
「・・え? なんのことでしょうか・・・?」
突然に白を切り始めた、先ほどまでの鋭い眼光など悪い冗談とでも言うように少しおびえているような表情、俺は何故だかわからずに辺りを見回す。どうやら人が通っているので猫を被っているようだった。
「お前なぁ・・・・・・・」
「まあいいだろう、漠然と幸せにしろなどといっても出来るはずが無いしな」
先ほどのおびえた表情から一転、即座に命令口調になる。
「お前が他人に感謝したくなるときはなんだ?」
「それは・・・・助けてもらったりとか・・・」
そうか、困ってる人を助けてやれば幸せに出来るかもしれない。
そんな簡単なことを忘れていたなんて少し恥ずかしかった。だがそうとわかれば簡単なことである、その辺を歩き回り困ってそうな人を助けに行こうと思った。
「あまり無用心に出歩くなよ?」
またもや唐突なことを言い出す、今度は死神が襲いに来るとでも言いかねないと思って適当に返事をしようとした。
後一瞬立ち止まるのが遅かったらおそらく、もうこの世にはいなかっただろう。
猛スピードで目の前スレスレを通り過ぎる大型車、この一瞬さすがに声も出なかった。
「奴等は貴様に与えた猶予時間を快く思ってなどいないからな」
「て・・・はははは、こ、こんなの日常茶飯事だぜ・・・?」
あの世の連中が車で俺をひき殺すなんてのは考えてなかった、しかしそんなことでは死ぬことを待つだけである。男なら行動で示してやるなどと強がりをはいてからまた歩き始めた。
見た目では強気の態度だが内心はビクビクである、次は何に襲われるのかと心配になっている。
そんな状況で人助けなどできるはずも無いと思ったがカラスに襲われている少年を見つけた、明らかにひ弱そうな少年で今助けなければカラスにつれさらわれてしまうのではないかと思うほど華奢な体だった。
俺は近くにあった棒切れを持ちブンブンと振り回しカラスを追い払う、そして少年を助けようと手を差し伸べたのだった。
「大丈夫か?」
一瞬、体が凍りついた、戦慄という言葉が適切なのだろうか。
恐怖のあまりに体と脳がまるで別の場所にいるような感覚だった、多分俺一人で居たら即座に首と体は今生の別れを遂げていただろう。
「・・・・邪魔をしないでもらえますか?」
かわいらしい声の少年、だがその言葉には凄みがある。
その少年の肩には先ほどまで少年を襲っていたカラスが居た、その状況を咄嗟に理解しろというのは常人なら無理なことだろう。
目の前の少年はどうやら俺を殺しに来たらしい。
「邪魔をしたのは貴様達だろう?」
「天界は何を考えてるかわかりませんね、そんな人間殺してしまえばいいんです」
最近の子供は少し過激なことを言うものだと呆気にとられていた、だが次の瞬間即座に自分がピンチだということに気が付いた、それはこの子供の目つきが尋常ではなかったからである。
「猶予期間はいただいたはずだ? それも待てぬというのか」
「何も皆様が穏便に済ませたいとは思っていないんですよ、面倒な事は早めに終わらせておけといわれただけです」
「書類とか順番とかか?案外事務的なんだな・・・地獄の皆様も」
「天使様でも地獄にはいけるんですよ?」
殺気立つ2人、俺はもちろんのこと一般人なのでこの状況には付いていけない、たった一つの不幸があるとすればこのとき恐怖で理性が飛び体が動いてしまったことだろう。
少年はその一瞬の隙を見逃してくれるほど甘くは無かった、あのカラスがまるですべてを飲み込む漆黒の剣のように俺のすぐ背後にまで伸びてきた、コレはきっと俺が想像しているよりもずっとヤバイ代物らしい。だが一命を取り留めることが出来た、その代償は俺を助けてくれると言った人が受け取った。
ポタポタと血が背中から落ちる、どうやら身を挺して護ってくれたらしい。
「あ・・・あんた・・・」
「っく・・・勝手な行動は慎め!」
あまりの迫力に声が出ない、だがそれでも自分の身だけを護ろうと必死になる自分が情けなかった。
「さすが天使様だ・・・うちの”ケルベロス”を傷物にするなんてね」
よく見ると傷を負ったスーツ姿の女性が立っている、歳は大体2~25くらいだろうか。
身なりも姿勢もよく整った美人である。
「そんなものまで使うとは・・・とうとう地獄のお偉いさん方の脳みそからネジが外れたか?」
「ふふふ、おかしなことを言いますね」
そういい俺のほうに指を向ける、その瞬間またしても黒い影が伸び始めた、どうやらこの女性は人の形をした”なにか”であって常識の存在ではないらしい。
もう体も動かすことが出来ずに呆けて突っ立っていることしかできなかった。
またしても助けが入る、今度は力を入れているからなのか血の吹き出方も酷くこのままでは出血多量で死んでしまってもおかしくない。
「ネジなんてもともと無いような連中ですよ」
その表情はまるで悪魔というのが適切であろう、この世の全てを否定しつくした目は畏怖を感じさせるものがあった。
「なら・・・・残念だな・・・」
「この期に及んで力が入る貴方には尊敬すら覚えますよ・・・しかし、もう限界なのでは?」
「きっとそんなズボラな上司じゃ保険も入ってないんだろう?」
目の前で女性が一人の女性を真っ二つにした、信じられない光景としかいいようがない、本当だったらモザイクで修正されるであろう惨劇は目の前で起こった。
「・・・!??」
「はぁ・・はぁ・・・・、大天使ほどではないが見くびるなよ?」
「っち・・・・油断しやがって、まあいいです。ケルベロスなんて備品のようなものですよ」
そういい指を鳴らすと先ほどまで真っ二つになっていた女性がまるで吸い込まれる水のように少年の手元まで戻っていく。
「勝負はお預けです、コイツが元通りになったらすぐにでも貴方たちを殺しに来ます」
「そのときは二度と人の形になれないようにしてやる」
「・・・怖い怖い、本気になさらないでください。ボクもダメな上司の命令でうんざりしてるんですよ・・・・・」
そういい闇へと混じって溶けていったのであった。
そのまま腰を抜かした俺をあざ笑うかのように夕闇が当りを染め始めた、それはいつものさみしい夜というよりも恐怖の象徴に近いものがあった。
目の前で悠然とたたずむ少女の姿はまるで神のような存在に思えた、だがその神も限界に近かったらしい。静かに倒れこむとそれからピクリとも動かなくなった。
「お・・・おい!大丈夫か・・?」
返事をする気配が無い、いくら天使とはいえこのままでは命にかかわるのではと思った俺は自分の部屋へとつれて帰ることにした、だがこれは俺が思った以上に難しい任務であった。
まずは周辺住民に見つからないこと、もし血まみれの少女を担いでたなどと知れ渡ればおそらくこの地域で生活などしていけないだろう。
そして何より親に見つからないこと、クラスメイトが血まみれで倒れてたという言い訳をしたとしてもなぜうちにつれてくる必要があるのかと聞かれたときに返答しようが無い。
親は共働きなのでこの時間に帰っている可能性はかなり低い、だが問題は妹だ。
普通中学生になれば兄離れもするような気もするが日に日に度を増して懐いてくる、ここまでくると一種の病気なのではないかと思うほどであった。
俺は恐る恐る家の側による、今まで奇跡的に地域住民の方々にはお会いすることは無かったのだがここで妹が出てきたらすべてが終わりだった。
さりげなく妹の自転車を見る、どうやら家に帰ってきてるらしい。出かけるときも大体この自転車に乗り込んでいる。
万事休すか?と思った瞬間であった。
ポケットから軽快なリズムが流れた、妹からメールが来たらしい。
”その背中に背負ってる女の人はだれ?”
なんてメールがきたらなんて恐怖に駆られながらメールを見てみた。
”ごめ~ん、今日は友達の家に泊まるね♪ 愛する夕奈より”
今日ほど妹のメールに安心した日は無かった、いつもだとどういう返事をしようか迷っているころである、俺は即座に返信をして部屋へと入った。
それからそこら辺の棚を物色しはじめたとりあえず傷を塞ぐための包帯が必要だと思い探す、だが思ったよりも見つからない。
こういうときに母親がいればものの5秒で取り出すのだが俺には5時間かけても見つけ出す自信が無かった。
とりあえず俺は母親の気持ちになることから始めた、心を無にして母親がまずどこへ向かうかを思い出した。いつもならすぐ廊下のほうへ向かう・・・、そこから数秒で戻ってくることを考えると母親の部屋にある可能性が高い。
俺は一目散に向かった、きちんと整理されているところが几帳面な性格がよく出ているといえる。
この部屋ならすぐに見つかると思い鏡台のほうへと向かった、とりあえず引き出しを物色するとすぐに薬箱が見つかった。
俺はついでにテープとはさみ、そして消毒液も借りた。
めちゃくちゃ長かったので 3回にわけますorz
は・・・はずかしい orz
あ、べつに今まで書いてるのをやめたわけじゃないですよ
去年書き上げた小説なんですが
ワリと話がまとまっていて良い作品になったので載せようかなと
ええ・・・
べつに手抜きじゃないですよ
長いので2回から3回にわけて載せますね
タイトルは 幸せになる条件
まさか本当に天使が目の前に現れるなんて思わなかった。
本当に純白の羽が巻き上がりまるで自分の周りだけ浄化されるような感じさえした、だがその天使様が俺に言い放った言葉は信じられないものだった。
「お前はあと一週間で悪魔に殺される」
突然そんなことを言われて信じられるものかと思うが、目の前に写るのそあまりにも美しい存在を否定することは出来ない。
どうやら俺の命はあと1週間しか残されていないようである。
「ま・・・待ってくれ!なんで俺が・・・」
確かに俺はかっこいい、自分でこんなことを言うのも変だと思われるが人並み以上にモテる、だが俺は悪魔に殺されるような悪いようなことをした覚えは無い。
「お前に見に覚えが無いのは仕方ない・・・、だが残念ながらこれは事実だ」
可愛い顔をしてこの天使様はきついことを仰る、プロのモデルだってこれほどの美人はいないだろう。
だが表情一つ変えずにこの冗談にも聞こえる会話を続ける。
「お前の前世は実にいい人間だった、だから幸せをお前が受ける権利がある、だがお前は自分の一生分の幸せを使い切ってしまった」
「何を言ってるんだかわかんねえよ・・・」
確かに俺は運がいい、自分で言うのも変かもしれない、この件を2回も言うのも変だが確かにクジ運などは人並み以上だし悪いことだって滅多に起きない方だろう。
だがその程度で殺されては困ると思った。
「だが安心しろ、お前にも執行猶予として1週間が与えられたわけだ、その間に1人の人間を幸せにしろ」
「へ・・?」
相当無理な課題を言われるのかと思ったが、たった一つ誰かを1人幸せにしろというものだった。
「そんなことでいいのか?」
相変わらず顔色変えずにしゃべりつづける、この人が笑えば1000人いれば1000人が振り向くに違いないと心の中で思ったのだが相手が真面目にしゃべっているのでそのことも言い出せない。
「まぁ・・・真夜中にご苦労様・・・」
時計の音が鳴り響いている、その針はちょうど午前の2時を指している。
とりあえず俺は寝ることにした、最近ゲームを買ってやりすぎて悪い夢を見ているのだろう、俺はそう思ったからであった。
「ん・・・ん~・・・・」
俺は目覚ましが無くても起きれる人間だ、それは体内時計がかなり正常に働いているからだろう。
今まで自分の不本意な時間に起きたことなど滅多になく、目覚ましをかけずに遅刻なんてこともない、だから朝日が差し込みその光で目を覚ますのであった。
朝食は親が用意してくれている、今日はどうやらトーストと目玉焼き、それにポテトサラダにコーヒーのようだ。
「あら? 康臣(やすおみ)・・・顔色悪いわよ?」
「ん・・・・?変な夢をな・・・」
そういわれてから突然思い出した、そういえば変な夢を見た、天使が目の前に来て急にお前は後一週間で死ぬといってきた。
ばかばかしくて笑ってしまうような夢だったが妙にリアルだったのも覚えている。
だがそれも夢から覚めてしまっては意味が無い、どうせならあの天使様をじっくり脳内に焼き付けて置けばよかったと思った、これだけの美人に会えるチャンスはもう二度とないだろう、俺はそう思っていた。
朝のHR、いつも通り収拾が付かない、だが今日は転校生が来るらしくざわつきながらも皆が着席していた。
「今日からお前らと同じクラスになる・・・・」
「天川美歌(あまかわ みか)です、よろしくお願いします」
どう見ても外人のような顔をしてるのに日本名とは不自然、というよりもその素敵な姿をどこかで見たことがあった。
「あぁっ!!!!」
「ん・・・・?日古川(ひこがわ)お前の知り合いか?」
「いえ・・・・なんでもありません・・・・」
周りの女子たちが一斉に騒ぎ始める、どうやら俺が騒いだので驚いたようだった。
「日古川君の知り合いなのかな?」
「でも転校生でしょ?」
「え~・・・でもすっごい美人だし・・・日古川君とならいいカップルって感じ?」
「バカじゃないの?日古川君のほうが美形じゃない?」
などと言う声と引き換えに男子からの冷たい声も聞こえてくる。
「マジかよ・・・転校生はもうチェック済みか・・・」
「かっこいいからって何でもアリですか」
「マジ殺す・・・・」
後半はもう"殺”という一言に尽きるセリフしか聞こえなかった。
「はいはいはいはいはい! 静かに、ええぇと・・・じゃあお前は日古川の隣に座れ」
何の冗談だろうか、俺の隣にはクラスで一番冴えない女子というレッテルが貼られてる、木村という子がいたはず・・・・。
なのだがなぜか一個後ろの席になっている、一体何がなんだかわからなくなってきた。
「よろしくおねがいしますね」
100点満点中120点あげたくなるような笑顔、その笑顔にさらに呆然としてしまった。
朝のHRが終わり即座に昨日のことをしゃべりかける。
「あんた・・・昨日俺の部屋に来なかったか?」
こんなナンパの仕方も無いだろうと言った表情で周りから見られた、それは当然だ。
いまどきこんな口説き方は無いだろう、当然天川という子にもクスクスと笑われてしまった。
俺はさすがに恥ずかしくなって机の上に伏せてしまう、このまま消えてなくなりたい気持ちもあったが毎日が幸せに生活できている俺にとってそれは勿体無いことだと思った。
それから学校が終わるまで通常通りの日だった、ちょっと違うことといえばいつもなら1日1回は告白されるのだが今日に限っては無かった。
たまにはそんな日もあるだろうと思って廊下に落ちていた消しゴムを思いっきり蹴ろうとしたら靴だけ飛んで行き先生の顔面にクリーンヒット、いつもなら何かしらの言い訳で逃れられるのではあるが今日に限って長時間捕まった。
「ったく・・・今日はツイてないなあ・・・・」
たまにはそんな日もあるだろうと思った、なぜなら今日の魚座は12位、良いことが全く無いので覚悟しましょうとのことだった。
「それはそうだ、今朝忠告したはずだが信じてなかったのか?」
突然背後から声が聞こえた、それは今朝の悪夢に出てきた天使様の声であった。
「お前はもう一生分の運勢を使い果たしたんだ、だから悪魔がお前を殺しに来る」
「やっぱり・・・・今朝見えたあの天使様ですかぁ・・・」
ため息交じりのような声でにらみつけるように言った、俺は言い寄るように距離を詰める、だが全く怖気づかない。
「俺が死ぬって本当なのか?全く信じられないけどな」
そういうとまだ理解していないのか?とでも言いたげな表情でこちらを見てきた、当然その表情にはカチンと来るもののとりあえずその場は抑えることにした。
「悪魔が来ている、たとえお前が戦車を用意できたとしても10秒もしないうちに灰にされるぞ」
美人さんがこういう話をするとどうしても笑い話に聞こえた、とにかくいきなりお前は殺されるといわれて本気にうけとれる人間などそんなに多くは無いだろう。
「・・・・まあいいよ、なんだっけ?条件」
「1人の人間を幸せにしろ」
「なら今から1人幸せにしてやるからついてこい」
俺は意気揚々と歩き始めた、超美形である俺にとって一人の人間を幸せにする程度のことは造作もないことだと思った。そのままモテなそうな女子1人を見つけ出した。
「いいか・・・見てろ」そう一言突きつけてからその女子の目の前まで一直線に向かう、当然相手の女子は何がなんだかわからないといった表情でキョトンとしていた、そのまま少しの間を空けて抱きしめてから「好きだ」と言ってみた。
こんなことをいきなり言われた事がないのだろう、相手の思考は停止したかのように立ち止まったままである。
そのまま幸せの絶頂のような状態の女子を置いて戻ってきた。
「よし、1人幸せにしてやったぜ」
「お前は馬鹿か?」
明らかに条件を満たしているものと思っていた俺にとってはその言葉はカチンときた。
「あの娘は今は幸せかもしれない、だがコレは一時のことでしかないのだ」
まあアレぐらいで人が幸せになったら俺はこの方法で今頃城の1つや2つを建てている頃だろう。
「それに見てみろ?」
「ん?」
振り返った瞬間であった、目の前に火花が散る。一瞬はなんだかわからなかったがさっき好きだと言った女子らしい。
俺にキツイ一発をお見舞いしてから激怒したような表情で立ち去っていった。
「今の彼女の状況は幸せといえるのか?」
「ん・・・わるかった・・・、ちゃんと真剣に考えるよ」
死ぬという言葉にはイマイチ現実味がないものの、1人に迷惑をかけてしまったことには深く反省した。
「じゃあ・・・教えてくれよ!人を幸せにする方法をよ!」
「・・え? なんのことでしょうか・・・?」
突然に白を切り始めた、先ほどまでの鋭い眼光など悪い冗談とでも言うように少しおびえているような表情、俺は何故だかわからずに辺りを見回す。どうやら人が通っているので猫を被っているようだった。
「お前なぁ・・・・・・・」
「まあいいだろう、漠然と幸せにしろなどといっても出来るはずが無いしな」
先ほどのおびえた表情から一転、即座に命令口調になる。
「お前が他人に感謝したくなるときはなんだ?」
「それは・・・・助けてもらったりとか・・・」
そうか、困ってる人を助けてやれば幸せに出来るかもしれない。
そんな簡単なことを忘れていたなんて少し恥ずかしかった。だがそうとわかれば簡単なことである、その辺を歩き回り困ってそうな人を助けに行こうと思った。
「あまり無用心に出歩くなよ?」
またもや唐突なことを言い出す、今度は死神が襲いに来るとでも言いかねないと思って適当に返事をしようとした。
後一瞬立ち止まるのが遅かったらおそらく、もうこの世にはいなかっただろう。
猛スピードで目の前スレスレを通り過ぎる大型車、この一瞬さすがに声も出なかった。
「奴等は貴様に与えた猶予時間を快く思ってなどいないからな」
「て・・・はははは、こ、こんなの日常茶飯事だぜ・・・?」
あの世の連中が車で俺をひき殺すなんてのは考えてなかった、しかしそんなことでは死ぬことを待つだけである。男なら行動で示してやるなどと強がりをはいてからまた歩き始めた。
見た目では強気の態度だが内心はビクビクである、次は何に襲われるのかと心配になっている。
そんな状況で人助けなどできるはずも無いと思ったがカラスに襲われている少年を見つけた、明らかにひ弱そうな少年で今助けなければカラスにつれさらわれてしまうのではないかと思うほど華奢な体だった。
俺は近くにあった棒切れを持ちブンブンと振り回しカラスを追い払う、そして少年を助けようと手を差し伸べたのだった。
「大丈夫か?」
一瞬、体が凍りついた、戦慄という言葉が適切なのだろうか。
恐怖のあまりに体と脳がまるで別の場所にいるような感覚だった、多分俺一人で居たら即座に首と体は今生の別れを遂げていただろう。
「・・・・邪魔をしないでもらえますか?」
かわいらしい声の少年、だがその言葉には凄みがある。
その少年の肩には先ほどまで少年を襲っていたカラスが居た、その状況を咄嗟に理解しろというのは常人なら無理なことだろう。
目の前の少年はどうやら俺を殺しに来たらしい。
「邪魔をしたのは貴様達だろう?」
「天界は何を考えてるかわかりませんね、そんな人間殺してしまえばいいんです」
最近の子供は少し過激なことを言うものだと呆気にとられていた、だが次の瞬間即座に自分がピンチだということに気が付いた、それはこの子供の目つきが尋常ではなかったからである。
「猶予期間はいただいたはずだ? それも待てぬというのか」
「何も皆様が穏便に済ませたいとは思っていないんですよ、面倒な事は早めに終わらせておけといわれただけです」
「書類とか順番とかか?案外事務的なんだな・・・地獄の皆様も」
「天使様でも地獄にはいけるんですよ?」
殺気立つ2人、俺はもちろんのこと一般人なのでこの状況には付いていけない、たった一つの不幸があるとすればこのとき恐怖で理性が飛び体が動いてしまったことだろう。
少年はその一瞬の隙を見逃してくれるほど甘くは無かった、あのカラスがまるですべてを飲み込む漆黒の剣のように俺のすぐ背後にまで伸びてきた、コレはきっと俺が想像しているよりもずっとヤバイ代物らしい。だが一命を取り留めることが出来た、その代償は俺を助けてくれると言った人が受け取った。
ポタポタと血が背中から落ちる、どうやら身を挺して護ってくれたらしい。
「あ・・・あんた・・・」
「っく・・・勝手な行動は慎め!」
あまりの迫力に声が出ない、だがそれでも自分の身だけを護ろうと必死になる自分が情けなかった。
「さすが天使様だ・・・うちの”ケルベロス”を傷物にするなんてね」
よく見ると傷を負ったスーツ姿の女性が立っている、歳は大体2~25くらいだろうか。
身なりも姿勢もよく整った美人である。
「そんなものまで使うとは・・・とうとう地獄のお偉いさん方の脳みそからネジが外れたか?」
「ふふふ、おかしなことを言いますね」
そういい俺のほうに指を向ける、その瞬間またしても黒い影が伸び始めた、どうやらこの女性は人の形をした”なにか”であって常識の存在ではないらしい。
もう体も動かすことが出来ずに呆けて突っ立っていることしかできなかった。
またしても助けが入る、今度は力を入れているからなのか血の吹き出方も酷くこのままでは出血多量で死んでしまってもおかしくない。
「ネジなんてもともと無いような連中ですよ」
その表情はまるで悪魔というのが適切であろう、この世の全てを否定しつくした目は畏怖を感じさせるものがあった。
「なら・・・・残念だな・・・」
「この期に及んで力が入る貴方には尊敬すら覚えますよ・・・しかし、もう限界なのでは?」
「きっとそんなズボラな上司じゃ保険も入ってないんだろう?」
目の前で女性が一人の女性を真っ二つにした、信じられない光景としかいいようがない、本当だったらモザイクで修正されるであろう惨劇は目の前で起こった。
「・・・!??」
「はぁ・・はぁ・・・・、大天使ほどではないが見くびるなよ?」
「っち・・・・油断しやがって、まあいいです。ケルベロスなんて備品のようなものですよ」
そういい指を鳴らすと先ほどまで真っ二つになっていた女性がまるで吸い込まれる水のように少年の手元まで戻っていく。
「勝負はお預けです、コイツが元通りになったらすぐにでも貴方たちを殺しに来ます」
「そのときは二度と人の形になれないようにしてやる」
「・・・怖い怖い、本気になさらないでください。ボクもダメな上司の命令でうんざりしてるんですよ・・・・・」
そういい闇へと混じって溶けていったのであった。
そのまま腰を抜かした俺をあざ笑うかのように夕闇が当りを染め始めた、それはいつものさみしい夜というよりも恐怖の象徴に近いものがあった。
目の前で悠然とたたずむ少女の姿はまるで神のような存在に思えた、だがその神も限界に近かったらしい。静かに倒れこむとそれからピクリとも動かなくなった。
「お・・・おい!大丈夫か・・?」
返事をする気配が無い、いくら天使とはいえこのままでは命にかかわるのではと思った俺は自分の部屋へとつれて帰ることにした、だがこれは俺が思った以上に難しい任務であった。
まずは周辺住民に見つからないこと、もし血まみれの少女を担いでたなどと知れ渡ればおそらくこの地域で生活などしていけないだろう。
そして何より親に見つからないこと、クラスメイトが血まみれで倒れてたという言い訳をしたとしてもなぜうちにつれてくる必要があるのかと聞かれたときに返答しようが無い。
親は共働きなのでこの時間に帰っている可能性はかなり低い、だが問題は妹だ。
普通中学生になれば兄離れもするような気もするが日に日に度を増して懐いてくる、ここまでくると一種の病気なのではないかと思うほどであった。
俺は恐る恐る家の側による、今まで奇跡的に地域住民の方々にはお会いすることは無かったのだがここで妹が出てきたらすべてが終わりだった。
さりげなく妹の自転車を見る、どうやら家に帰ってきてるらしい。出かけるときも大体この自転車に乗り込んでいる。
万事休すか?と思った瞬間であった。
ポケットから軽快なリズムが流れた、妹からメールが来たらしい。
”その背中に背負ってる女の人はだれ?”
なんてメールがきたらなんて恐怖に駆られながらメールを見てみた。
”ごめ~ん、今日は友達の家に泊まるね♪ 愛する夕奈より”
今日ほど妹のメールに安心した日は無かった、いつもだとどういう返事をしようか迷っているころである、俺は即座に返信をして部屋へと入った。
それからそこら辺の棚を物色しはじめたとりあえず傷を塞ぐための包帯が必要だと思い探す、だが思ったよりも見つからない。
こういうときに母親がいればものの5秒で取り出すのだが俺には5時間かけても見つけ出す自信が無かった。
とりあえず俺は母親の気持ちになることから始めた、心を無にして母親がまずどこへ向かうかを思い出した。いつもならすぐ廊下のほうへ向かう・・・、そこから数秒で戻ってくることを考えると母親の部屋にある可能性が高い。
俺は一目散に向かった、きちんと整理されているところが几帳面な性格がよく出ているといえる。
この部屋ならすぐに見つかると思い鏡台のほうへと向かった、とりあえず引き出しを物色するとすぐに薬箱が見つかった。
俺はついでにテープとはさみ、そして消毒液も借りた。
めちゃくちゃ長かったので 3回にわけますorz
は・・・はずかしい orz
あ、べつに今まで書いてるのをやめたわけじゃないですよ