第35話「束の間の時」
シルバーはユズィ達に連れられてアトモスフェアへと来ていた。
「アジスさん・・・アンタがシルバーだったんすね」
「ああ」
だが一番聞きたかったことはそこではなった。
「な・・・なんでオッパーブなんかに加担したんですか!?」
「ああ、それは俺も聞きたいな」
一瞬考えてから、覚悟を決めたような表情で言う。
「・・・・オッパーブに入ったのは俺のミスだ、あの時あいつらの勧誘がとても甘美に見えた・・・俺の弱さのせいだ」
アジスはオッパーブのキャッチーにつかまり偶然クリューの店へと入ってしまった、このときアトモスフェアで少し喧嘩をしてしまい自暴自棄になっていたのも手伝いクリューの経営する”キューティーボックス”へと何度も脚を運んでいった。
それによりクリューに目をつけられ四現神、つまり今の三現神へとなってしまったのである。
「・・・それは確かに俺達も悪かったよ」
「・・・・ああ、はっきり思い出したぜ・・・バナナチップス・・・」
「アジスちゃんがせっかく買ってきてくれたのにね・・・」
アジスはお土産でバナナチップスを大量に買ってきた、だがそのときは皆酔っ払っていてせっかくのお土産を粗末にしてしまったのであった。
「ビリーさんだけが食べてたっすけど・・・・うぇい、俺達全員あの後悪かったと思ってたんすよ?」
「ああ・・・・あの時感情的になった俺も悪いし・・・、だからってオッパーブなんかに・・・」
「いや、いいんだ つらい過去をわざわざ話してくれただけでも・・・」
この言葉で全員無言になる、だが店の奥からいい香りがしてきた。
「・・・・・お帰りなさい」
そういいレイさんがコーヒーを一杯出す。
その一杯のコーヒーを飲み終えた後アジスは涙を流しながら一言だけ言ったのであった。
「・・・・ただいま」
「・・・・なら! これはもう飲みしかないっすね!」
「よし、スーもビリーも強制参加だ ビリーの奴もいつまでもウジウジさせてやんねえよ!」
「そうですよ! 悪いことは飲んでぱ~~っと忘れちゃいましょう」
先ほどまでのしんみりしたムードとは一転していつもの感じになる。
「うぇい、そんならツンデレ日本代表のリーさんが電話っすね」
「っち、仕方ねーな・・・あのバカには俺も言いたいことがいっぱいあるからなっ」
そう言い嬉しそうに携帯を出す。
「うは! リーさん萌え・・・」
レイさんもノリノリ状態である。
「っち・・・ビリーの奴電話でねえ! マジでどこ行きやがったんだ・・・」
「まあ・・・落ち込みたい時もあるんすよ!今日は集まる面子だけで!」
「スーは来るらしいぜ!」
「ならやっぱり・・・」
そういい全員で鳥定へと向かった。
その頃ビリーはオッパーブにつかまっていた。
「・・・・・・・」
「まあ、そんなにらまないでくれよ」
ソファーに縛り付けられているビリーがいた。
「はあい、私メグっていいま~す」
メグという女っがビリーのひざの上に座ってきた。
「お酒は何を飲みますぅ~?」
「・・・・・・・・」
「全く、キミは強情だね・・・・、とりあえずくつろいだらどうだい?」
「ミンスーさん・・・・アンタ敵だったのか?」
「人聞きが悪いな、ただおっパブのすばらしさを世界に広めようとしてるだけじゃないか」
そういい自分のグラスに酒をつぎはじめた、そして一口だけ飲んでから真剣なまなざしでビリーを見た。
「どうだ? 俺と組まないかい?」
「断る」
「そうか・・・・まあ、いきなり言われてもしょうがないよな・・・・、だけどこんな条件ならどうだい?」
「・・・・・・・・」
ビリーは沈黙で対抗した。
「クリューの弱点、それを教えてやると言ったら?」
「・・・!!?」
ビリーは動揺するのであった。
「な・・・なんで仲間なんじゃないのか!?」
「俺はね、アイツのやり方に疑問を感じているんだよ。だからアイツを倒して、オッパーブという組織を強大にしたいんだ」
そういいミンスーは近寄ってきた。
「キミのその力が必要なんだ、キミの力は強大だからね・・・・」
「そ・・・、そんな誘惑なんかにっ・・・」
だが揺らいでいるのも事実だった、ビリーの心の中で人知れず戦うのであった。
「ったら先輩がよ、”わからないから教えてくれよ~”だっていうんだぜ? 俺より何年前から仕事してるんだっつーの」
「さすがリーさん、仕事できるぅ~」
「もー皆のみすぎですよー」
リーとユズィは明らかに飲みすぎているようだった。
「ま・・・まぁ、厳しい戦いの後だしはっちゃけたいんじゃないかな?」
ハッチャケる力が原動力のハンラマンにとって、これ以上はっちゃけてどーするんだという疑問はおいておこう。
「戦士とていっても気を張ってたら疲れちゃうんすよ、遊んで気晴らしするのも立派な仕事っす」
「さすがウィカさん話がわかるぅ~~」
「そんなことよりアジスさん飲んでるんすかぁ?まだグラスが空いてないっすよ~」
「あ・・・もうこれ以上は飲めない・・・」
少し顔色の悪いシルバーもといアジスの姿があった。
「さて・・・っと、俺はこの辺で帰るわ」
「なんだよ~ス~~~、俺を置いてかえっちゃうわけ??」
「うは! ま・・・まさか!」
レイさんはお酒が入ってる影響か、アクセル全開である。
「仕方ないだろ、明日も仕事だしさ。それにピクシーロボも直さないとならないしな」
「うっ・・・・」
リーもユズィもその一言で静かになった、スー司令は忙しい時間を合間縫ってわざわざ付き合ってくれているのであった。
「いつもごめんなさいねスーさん、アトモスフェアに来た時はコーヒーご馳走しますね」
「あ、いや、好きできてるだけだからいいんだけどね」
そういいお金を置いてスーは店を後にした。
「全く・・・スーにばっかり迷惑かけちゃって・・・これも全部ビリーのせいだな、ほんとアイツは」
「もーー今回も飲みに来なかったし、次の日懲らしめちゃうよ~ほんと~」
「だから~、2人は飲みすぎですってば~」
「でも・・・ビリーちゃん今頃どうしてるんだろう」
「うぇーい・・・ちょっと心配なんすよねえ」
「今はそっとしてあげたほうがいいかもですよ」
真剣な表情のところに酔っ払った2人が絡んでくる。
「いいんだよあんなやついらねえ、今日からハンラマンは4人だぜ!」
「そーそー、4人戦隊ハンラマンなんちゃってね」
これじゃビリーが嫌になっても仕方ないなと思う3人であった。
そのまま飲み続けた後5人はカラオケで時間をつぶした。
次の日
「・・・・おはよう」
ユズィはテンションが低い、それに対してリーはケロっとしていた。
「なんだよユズィ、もうダウン?」
「いや・・・昨日は飲みすぎたらしい・・・」
今日もアトモスフェアに司令の姿はなかった、ここのところピクシーロボの修理が忙しいらしい。
アジスはアトモスフェアに顔を出してはいないが、ピンチになったらメールをくれれば必ず向かうから連絡をくれと言っていた。
どうやらアジスにはアジスのやることがあるらしかった。
「そいやビリーちゃんから連絡きた人いる?」
「うぇい、俺は無いっすよ~」
「・・・・・そいや、俺にもないなあ、どうしちゃったんだろ」
「ふん、あんな奴しるかよ」
とは言うもののちゃっかり携帯を確認するリーがいた。
「ん~、ボクもないですよ」
「ビリーちゃんどうしちゃったんだろう」
その言葉の次の瞬間であった、ドアについている鈴がカランと鳴り響いた。
「あ、ビリーさんこんにちは」
「・・・・・・・」
ビリーの表情が硬い、それは気まずさなのだと5人は思った。
「なんだよテメー・・・早く来いよ!!」
「リーちゃんもそんな言い方しちゃダメだってば・・・・」
「モディさん、こいつを甘やかしちゃダメですよ」
「っぷ・・・、リーさん・・・なんかビリーさんの飼い主みたい」
「ちが! 違いますよ・・・レイさん」
皆に促され、ビリーは席に座る。
だが、いつも好んで座る一番右側の席ではなく、なぜかスーがよく座る一番左側の席に座った。
「あれ? ビリーちゃん、今日はそこに座るの?」
「そうだ」
「そ・・・そうならいいんだけど」
皆は少し様子がおかしいなと思ったが、きっと落ち込んでいるんだろうと思ってなるべく触れないようにした。
「昨日どうしちゃったんですか、みんなで飲んで楽しかったですよ」
レイさんがさりげなく昨日の予定を聞く。
「見つけた」
「ん・・?」
ほかの面々は話の筋がよくわかっていない。
「オッパーブのアジトを見つけた」
「な・・・なんだって!?」
「今ならまだクリューがいるはずだ、行こう」
4人は一目散に準備をし始めた。
「ビリーさんレンタカーを!!」
「レンタカー? ん、ああ、運転できないんだ・・・・今はね」
いつものビリーだったら、張り切ってレンタカーを借りに行くハズだが、今回はいつもとノリが違いすぎる。
「そうか・・・ならリーさん!」
「っち・・しょうがねえな」
そういいリーはタクシーを止めた。
「早く行こうぜ!」
「ああ! よしみんな行こう!」
「うぇい!」
「おー!」
そういい足早にタクシーに乗り込むのであった。
次回予告
ユズィ「んー・・・」
モディ「どうしたの?」
ユズィ「ビリーさん変じゃないっすか?」
モディ「んー・・・・」
アジス「いや・・・いつも変だと思うけど」
モディ「それは、まあたしかに変だとは思うよ・・・」
ユズィ「でも確信がもてないんだよなぁ・・・」
次回 第36話 「ブラックの裏切り!?」 お楽しみに
あと・・・・ あと一話は載せたい・・・w