牛歩もそうだが、多数決で可決という結果は変わらないのに単に手続きを遅らせるだけなので無意味、と批判もされる。
衆議院事務官の残業などコストと見合わない、と言う人も。
しかし。
与党が過半数の議席を持っている選挙は、裏金事件のずっと前に行われたものである。与党自民党支持率も今はずいぶん低い。なので、今の多数決は国民の意向をだいたい反映している、とは言えない。
裏金事件の審議が進まず(1番の原因は首相の答弁が当初からずっと同じ内容の繰り返しだったことだ)、予算案についての審議があまりされていない(私が中継を見た限り、担当大臣達には基本的な事柄への質問さえ持ちる人もいた。あれでは議論ははかどらなかったろう)。
また、山井議員が行なった長時間演説も、内容によっては「ただの時間稼ぎ」ではない。
安保法制「改正」の時に枝野議員が同じように本会議場で長い演説をした。
今の岸田首相と同じく、当時の安倍首相も的外れな定型文を延々と繰り返して時間稼ぎをしたので、野党の衆院議員の質問時間の大半を取られていた(衆院と参院で首相の長話の扱い制度が違うのはなぜなんだ)。
なので、枝野議員がこの安保法制「改正」について、説明・反論・提案をするまとまった時間をやっと得られた。私はそういう気持ちであの演説を聞いた。
(望ましい展開は、あの演説を聞いた与党出席議員達が自分の意見を変えること。枝野議員の言う通りと思えば反対票を投じる。
しかし、党議拘束されているから演説の内容がどうあれ起こり得ない。)
・・・というわけで。山井議員の長い演説は、2015年の枝野議員のように中継されていたら「単なる時間稼ぎ」ではなくなるのでは。
もちろん内容は問われる。今回の予算案にはわかりやすい論点もたくさんある(大阪万博なんてとってもわかりやすい)から、山井議員はそれを挙げていき、「これらについての審議は**時間しかなされておらず、不十分だ」と示せばよい。それだけで説得力がある。
しかし、NHKは中継しなかった。他の地上波テレビ局でも、私が見たのは、山井議員が議場の講演台に大きな紙袋を載せたり分厚いドジファイル(?)を開いたりする場面だけだ。なので、議員の演説内容は全く知らない。
政治のことより、「大谷翔平選手の活躍や結婚相手は?」の方に時間を割くべき、そういう時代なのだなあ。
視聴率、視聴者の気持ちを優先。民放はそういうもの、昔からそうだった。
でもNHKには違う判断基準もある、公共放送だから別格。視聴率よりも局の知見・責任において扱う情報を独自に判断する。大谷情報は民放でも見られるのだから(私も、結婚した方との出会い他いろいろ詳しくなりました)。たぶん籾井氏が会長になってから、このへんが明らかに変わった。
首相は「民主主義のコスト」として企業献金をあげるけど。NHKが視聴率取れそうにない中継をするとかせめて012チャンネルを使うとか、それも「民主主義のコスト」だと思わないのかなあ。
「もし自分達が野党になったら」とか「政権交代が普通な日本になったら」と考えれば、当然用意しておくべきなのだけど(考えるまでもなく、自公政権が続くのかもしれないが)。そういう、プランBを考えないところもだめだ、と思うんだ。