なまけもの備忘録

日記ではなく、気が向いたら更新されるらくがきちょうのようなモノ。

妄想文章

2005年12月13日 | その他
『箒と魔女に関して』

「魔女と飛行」
 元来魔女と飛行能力の間には何があるのか、箒の歴史を紐解く前にこれを解明せねばならないだろう。そもそも魔女は生まれたときにふわりと浮き上がると言われる。これは、魔女が先天的に飛行能力を持つことを表している。「22.鳥」が「魔女」を表すように、そもそも魔女は飛ぶものなのである。

「前箒時代」
 ではなぜ、本来飛ぶ能力を持つ魔女が箒に頼り空を飛ぶ必要があるのか。そもそも生まれたときに魔女が宙に浮かぶと言うのは、人間で言うところの産声を上げると言う行為に当たる。これを意識して行えるものはほとんどいないのが現実なのである。したがって、別な方法で飛行能力を発揮する方策を探らなければならない。
 箒の誕生以前にも空を飛ぶ方法が幾つか存在していた。そのどれもが過酷な修行や薬品の投与によって精神をハイな状態にし、「産声」と同じ無意識の飛行を行うと言う方法だった。この方法では飛行のコントロールができないことはおろか、アルカロイド様物質を多く含む薬品によってバッドハイになることも珍しくはなかった。

「箒の誕生」
 これに画期的な流れを生み出したのが、かの高名な魔女「ババ・ヤガー」である。
 彼女が生み出した魔法理論、それは無意識的に発散される飛行のためのエネルギーをひとつのデバイスに集約し、エネルギーを蓄えたデバイスを意識的に操ると言うものだった。この理論は正しく、彼女はこのデバイスとした椅子により飛行に成功している。
 しかし、彼女には不満があった。椅子型のデバイスでは、安定性こそ高いがエネルギーの指向性が弱く速度が出ないのだ。ここで彼女が注目したのが箒である。直線かつ後部に材質が集中する形、これこそが彼女の理想としていた容であった。そして、彼女が開発した箒型飛行デバイスはワルプルギス-ノルウェー間の無着陸飛行に成功し、瞬く間にこの「箒」は魔女界中に広まった。

「箒の変遷」
 ババ・ヤガーの箒以降、飛行デバイスと言えば「箒」と言うほど箒型は一般化していた。しかし、長い年月を経て新たな流れを生む一人の魔女が現れる。その魔女こそが「メリー・ポピンズ」である。
 彼女の飛行デバイスは従来の箒型ではなく、傘の形をしていたのである。これには彼女の仕事のスタイルも関係している。彼女はひとつの街に留まり奉仕活動を行う、この点において上空での滞空性能と降下点への正確な着地能力を要求したのである。この目的において「傘」は「箒」に勝っていた。彼女こそが、飛行装置=箒と固定化した魔女達の意識を改め、用途に応じた最適な形状の「箒」を創ることの意義を世に知らしめた魔女なのである。
 しかしながら、彼女の功績はこれだけではなかった。彼女の傘には形成・量産が容易な金属部品が使用されていたのである。彼女は「箒」の形状だけでなく、材質においても改革を行ったのである。

「箒と魔女戦争」
 ユキリア王没後の混乱期において発生した、魔女と人間の間の戦争において「箒」は多数生産され投入された。悲しいことに魔女の自由を象徴する箒は、魔女たちの自由のための剣として振るわれることとなった。ステルス装置やマジック・ミサイルなど戦いのための装備を積み込んだ箒が次々と生産され人々の命を奪っていった。しかし、この戦争のための箒開発が後の箒技術を大きく発展させたのもまた事実である。

「箒の現在」
 現在において箒は多種多様なものが存在し、そのオプションも多岐にわたっている。実際に箒に乗る魔女の能力以上の航行を可能にするために、長距離用プロペラントや追加ブースター、制御用AIまでもが実用化され。超音速航行や重力圏の離脱までをも可能にした。
 だが、箒テクノロジーの発展はその中で幾つかの悲惨な事故を生み出してきた。箒人口の増大と高速化に対して、事故対応に関する法整備やモラルの向上を促していく必要があるだろう。
 
 (魔女学校高等部飛行科教本より抜粋)

ウィッチクエスト用に書いた文章だが……使えないよなぁ