やんちゃでいこう

5歳の冷めた男の子の独り言

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映画館で誓う

2014-08-20 07:40:50 | 小説
ひとりで映画館のシートに座っていた。

かなり大きめの部屋で数百席はあるだろう。

しかしもう封切り後2週間過ぎているせいなのか、時間なのかお客さんは10人程度しかいない。

ほとんどが空いている。

スリルもないし、SFでもホラ―でもない。

庶民的な映画・・・と言うべきだろう。

ただそのストーリーには人情と小さな笑いが詰まっている。

一人で観るには丁度良い作品だ。

しかも目的は・・・・そこには大きく映った自分がいた。

ここ最近、演技が大袈裟だと叱られた。

少しでも使ってもらおうと、自己アピールが強すぎるのかもしれない。

でも、この映画だけは、それなりに使ってもらっている。

それが嬉しくて、エンドロールが終わった後、一番最後に腰を上げた。

ぼんやりと明るくなった室内に誰ひとりいない座席を眺めて、有名作品でなくても小さな作品の小さな役でも、この座席全部が笑いに包まれれば。。。

昔懐かしい昭和初期を題材にしたヒット作品を、小さな映画館で観たことがある。

老夫婦が経営している段差もない打ちっぱなしのコンクリートの上に、椅子が8列で80人程度しか座れない。

それも皆で笑って皆で泣いて。。。

そんな楽しい映画館だった。

もう無いその映画館のあの雰囲気を。

この映画館をそんな雰囲気でいっぱいにしたい。

たとえわずかでも、自分がその中に居たい。

そんな思いで映画館の扉を閉めた。
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本音

2014-08-19 07:35:17 | 小説
ゴミ当番の日だ。

古い新聞や雑誌を束ねていた。

そこにいつの間にやら、君が立っていた。

何をしているの?

そんな表情でこちらを見ながら立っている。

「よう!」

俺は声をかけた。

「ひとりで束ねたん?」

「そーや」

「頑張ったね~」

そこには12の束がある。

「凄いやろ」

その会話で終わったと思ったが、彼女はその場を離れずにいる。

それを見ていると、つい本音を呟いてしまう。

「おまえ、可愛いよな~」

「えっ?」

「可愛いなって」

「・・・ありがとう」

少し返事に困った顔だ。

それでもじっと彼女を見ていた。

少しおどおどしながら、彼女は次の言葉を探している。

「誉められても何も出ーへんよ」

「何も出ーへんの?期待しとったのに・・・」

「ははは。何も出ませーん」

「仕方ないな。何か貰えそうならもう一度言うよ」

「ちゃんと見てないとわからないよ~」

「見てるわ。いつでもおまえのことを」

思わずもう一度本音が出た。

それを振り返って聞く君。

横に流れるロングヘアーから白い歯がこぼれる。

「ありがとう」

今度は本心からの言葉に聞こえた。

いつか君は・・・・。

俺の横に居ることが普通になると・・・そう信じたくなる。

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ずる休み

2014-08-18 07:36:02 | 小説
ベットのシーツが乱れている。

細く白い足が、そのシーツからはみ出ていた。

赤いマニキュアが艶めかしい。

白いベットの支柱と、白い壁。

白いレースのカーテンが風に揺れる窓。

まるで西洋に居る気分だった。

朝日が気持ち良い。

窓の外を見ると、スーツ姿の男や、ゴミ出しをしている主婦が見える。

現実を見ると、やはり日本。

ズボンを履きながら、彼女の髪の毛を触る。

ライトブラウンのその髪は、柔らかく良い香りがする。

「おはよう」

「おはよう。これから仕事行くよ」

「食事は?」

「いいよ。コンビニで買うから」

「せめて、私の珈琲飲んで行かない?」

下着姿のまま彼女がベットから降りてくる。

その姿がとても艶めかしい。

キッチンに立つ彼女の後姿を見ていると、わずか10時間程度離れることに、後ろ髪を引かれる。

締めたネクタイの窮屈さに、少し嫌気がさした。

よーし決めた。

ネクタイを解いて、彼女の入れたてのコーヒーを口に運ぶ。

「このコーヒーの旨さに、気分が変わった。今日は君と居るよ」

もう一日だけ・・・・盆休みを伸ばしてもいいだろう。


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今も君が

2014-08-17 15:44:20 | 小説
叶わない想いがある。

それは、、、、もう戻らない昔の話。

君と出合ったのは偶然ではないと信じてる。

だけど必然でもないかもしれない。

300kmも離れた場所で、会うこともない2人が、たったひとつの交点で出合った。

そして恋に落ちた。

一目惚れ。。。に近いかもしれない。

でも君自身のことは、何度か仕事の電話で知っていた。

もちろん会う約束も、電話以外での約束も無かった。

君があの場所に来ることも知らない。

そんな2人が出会って、5時間後にはキスをしている。

どうしてあんなことが出来たのか。。。自分でもわからない。

それでも深く愛し合えた。

1年。。。2年。。。。順調に過ぎて結婚なんて考え始めていた。

君との間に子供が欲しいなんて。

君はそれをどう感じていたのだろう。

お互いの気持ちをぶつけあって、いつしかその想いが叶うと思ってた。

そんな君が生まれ育った世界が俺とは違っていたことに、いつしかその夢は裂かれていった。

君は。。。

今は結婚して子供が出来て、幸せに暮らしている。

その姿を僕は観ることが出来る。

君がそれを知ってるだろうか。

知るつもりもないけど、自然と情報が耳や目に入ることを。
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ふわり

2014-08-16 23:00:27 | 小説
大きく君が飛び上がった。

天に届けとばかりに、両手を高く上げて。

膝から足を曲げている姿勢が、まるでCDのジャケットを見るようだった。

その彼女の・・・・飛び上がった勢いでスカートが捲れる。

白い太ももが、その隙間から見える。

思わず興奮してしまう。

普段の彼女は、短パンを履くこともあるので、太ももなんてよく見ている。

なのにどうしてか、スカートが捲れるだけでドキドキ感が半端じゃない。

「どう?高く飛んでた?」

「うん。。。3mぐらい」

「飛べるわけないじゃん!!(笑)」

冗談を言いながらでも、そのドキドキ感が持続していた。

好きと言う感情はずっとある。

だけど男性の視線では、好きとは違う感情だって、それは女性でもなんとなくわかるだろう。

ただ・・・・久しく誰に対してもこんな感情を持ったことはなかった。

大人になった・・・と自分では思っている。

だから余計に彼女を意識してしまう。

こんなにドキドキさせられるなんて。

屈託のない笑顔で、君はふざけてぶつかってくる。

それを胸で受け止めながらも、2歩ほど距離を置きたい気分だ。

こんなに近いと。。。理性を失いそうで。

君は俺にとって天使だから。

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