先山署に捜査本部が立ちあがった。
事件性がある限り、徹底的に調べる必要がある。
鑑識の情報を元に捜査会議が何度か行われた。
その場に、科捜研が調べた結果が届けられる。
「ジェットコースターの支柱が折れていたのは、偶然のようです。事件性は見当たりませんね」
「事件性は無い?しかしビスが何で全部飛んでたんだ?」
「ビスの外れ具合を調べましたが、工具によってではないですね。自然に劣化して落ちたようです」
この報告をもとに、捜査本部は早期解散した。
中村の気持ちはしっくりとはしていない。
あの切り口が事件性が無い・・・・考えられないな。
中村の目から見れば、あのように斜めにカットされることは無いと思う。
しかし科捜研の報告では、重みに耐えかねて偶然に切れたということだ。
「おかしな事件が増えましたね。先日はナタで自分の頭を割ったなんていうのもありましたしね」
「東久世署の件か。あんな自殺をするやつがいるなんて、狂ってるな」
「しかしあれはなぜ自殺になったんだ?」
「科捜研に聞いた話だと、ナタでは無かったらしいですよ」
「なんなんだ?」
「それがですね。聞いてくださいよ」
岡野が前かがみになって話す。
「壁に飾り付けてあったインドのアジャ・カティという刃剣だそうですよ」
「なんだそれは?」
「まぁナタのようなものらしいですが、貴族が所有している刀です。それがですね~不思議なのは壁に固定されてたんですよ。それをわざわざはずして自分の頭を割るなんて・・・正気じゃないですよね」
岡野の言うことはもっともだと思う。
自殺で片づけられたのは、それなりの理由があったと思うが。
ただ余所の所轄の自殺だ。
それ以上に詮索するわけにもいかない。
中村は岡野の肩をポンポンと2回たたき、片付けがほぼ終わった捜査本部を後にした。
「あれ?携帯が光ってるよ」
美智子の声に、慶介はスマホを持った。
「なんだこれ?あなたの死にかた教えますって。気味わり~」
慶介はスマホをソファに投げた。
「うわー私興味ある~。」
美智子はソファに向かう。
スマホを見ると、既に画面には何もなかった。
指で触って、画面を起動させる。
今のアプリは何だろう?
そう思って画面をスクロールさせる。
その時、首筋に生温かいものが触れた。
なんだろうと手で拭う。
見つめた指先は、鮮血で染まっていた。。。
事件性がある限り、徹底的に調べる必要がある。
鑑識の情報を元に捜査会議が何度か行われた。
その場に、科捜研が調べた結果が届けられる。
「ジェットコースターの支柱が折れていたのは、偶然のようです。事件性は見当たりませんね」
「事件性は無い?しかしビスが何で全部飛んでたんだ?」
「ビスの外れ具合を調べましたが、工具によってではないですね。自然に劣化して落ちたようです」
この報告をもとに、捜査本部は早期解散した。
中村の気持ちはしっくりとはしていない。
あの切り口が事件性が無い・・・・考えられないな。
中村の目から見れば、あのように斜めにカットされることは無いと思う。
しかし科捜研の報告では、重みに耐えかねて偶然に切れたということだ。
「おかしな事件が増えましたね。先日はナタで自分の頭を割ったなんていうのもありましたしね」
「東久世署の件か。あんな自殺をするやつがいるなんて、狂ってるな」
「しかしあれはなぜ自殺になったんだ?」
「科捜研に聞いた話だと、ナタでは無かったらしいですよ」
「なんなんだ?」
「それがですね。聞いてくださいよ」
岡野が前かがみになって話す。
「壁に飾り付けてあったインドのアジャ・カティという刃剣だそうですよ」
「なんだそれは?」
「まぁナタのようなものらしいですが、貴族が所有している刀です。それがですね~不思議なのは壁に固定されてたんですよ。それをわざわざはずして自分の頭を割るなんて・・・正気じゃないですよね」
岡野の言うことはもっともだと思う。
自殺で片づけられたのは、それなりの理由があったと思うが。
ただ余所の所轄の自殺だ。
それ以上に詮索するわけにもいかない。
中村は岡野の肩をポンポンと2回たたき、片付けがほぼ終わった捜査本部を後にした。
「あれ?携帯が光ってるよ」
美智子の声に、慶介はスマホを持った。
「なんだこれ?あなたの死にかた教えますって。気味わり~」
慶介はスマホをソファに投げた。
「うわー私興味ある~。」
美智子はソファに向かう。
スマホを見ると、既に画面には何もなかった。
指で触って、画面を起動させる。
今のアプリは何だろう?
そう思って画面をスクロールさせる。
その時、首筋に生温かいものが触れた。
なんだろうと手で拭う。
見つめた指先は、鮮血で染まっていた。。。
先程までと違い、遊園地は悲痛の叫びが響いた。
1時間もしない間に、警察や救急車が押し寄せている。
ちらほらと報道陣も駆けつけている。
ジェットコースターの周りは、おびただしい血と嗚咽で辺り一面の惨状が遊園地とは思えないほどだ。
「こりゃ酷いですね」
「あぁ亡くなったのは高校生。古瀬康一。ジェットコースターの支柱が頭に突き刺さり、頭蓋骨と脳みそが発車口まで飛び散っている。」
「え~あの位置からあそこまでですか。そりゃ酷い」
「同じコースターに乗り合わせた人間も、付近を歩いて人間までも降りかかったらしいぜ。ほとんどのやつらが病院に運ばれたらしい」
「そりゃそーでしょう。新人の吉岡も吐いてましたよ」
「そうだろうな。俺も当分めしが食えそうにない」
「一緒に来ていた女の子がいましたが、廃人のようになってましたよ。たぶん、、、もう元には戻れないでしょう」
「事情聴取は?」
「全く無理でしょう」
「そうか。可哀想にな」
「ジェットコースターの操作はアルバイトの3人でしてたみたいです。2人は病院ですけど、1名だけなんとか話が聞けそうです」
「そうか」
中村係長と岡野刑事が、青白い顔をしながらも気丈に対応している白石という21歳のアルバイト店員の元に向かった。
白石の横には、遊園地の藤倉課長がいた。
「中村と言います。なんでジェットコースターのビスが緩んだんでしょうね」
「すみません。直前に走った乗客には何もなかったですし、おかしな現象もなかったんです。異常があると警告ランプが付くようになってるんですが、ランプが付いた時にはもう手遅れで、坂を下ってました」
おどどしている藤倉と違い、白石という青年はしっかりと受け答えをする。
「しかし、あんなところのビスがなぜはずれたんでしょうかね?ちゃんと点検はされてるんですか?」
「は・・はい。。ジェットコースターはですね。何かあると大変なんで、、、点検は何度もしてるんです」
藤倉がしどろもどろに答える。
「どのようになってたんですか?」
「わかりません・・・ホントわからないんです」
「係長。鑑識の野木さんが、そのあたりを・・・」
その場を岡野に任せて、中村は野木の居る場所に進んだ。
「よぉ。最悪な現場だぜここは」
「どんな事故なんだい?」
「丁度降り切った場所の上の部分の支柱が、ジェットコースターの進行方向から逆に向かって1本垂れ下がってさ。まともに被害者の頭の正面からぶち抜いたみたいだ。あたり一面が脳みそと血で拾うのも大変だぜ」
「即死か」
「あぁ即死だ。しかしな。不思議なことに後ろの座席のやつらは皆無傷だ」
「つまり被害者がぶつかったために、支柱の向きが変わったのか?」
「そうだろうな。ただ・・・」
「ただ?」
「ビスが外れて垂れ下がったのなら、切り口は錆びていたとしてもほぼ垂直なんだけどな。斜めにカットされているように見えるんだ」
「それはもしかして殺人ということか?」
「いや、断定はできないけどな。ビスは1本や2本ではないから、簡単に垂れ下がるとは思えないんだ」
「おいおい。殺人なら直ぐに捜査本部を立ちあげないと」
中村は慌てて署に連絡をした。
1時間もしない間に、警察や救急車が押し寄せている。
ちらほらと報道陣も駆けつけている。
ジェットコースターの周りは、おびただしい血と嗚咽で辺り一面の惨状が遊園地とは思えないほどだ。
「こりゃ酷いですね」
「あぁ亡くなったのは高校生。古瀬康一。ジェットコースターの支柱が頭に突き刺さり、頭蓋骨と脳みそが発車口まで飛び散っている。」
「え~あの位置からあそこまでですか。そりゃ酷い」
「同じコースターに乗り合わせた人間も、付近を歩いて人間までも降りかかったらしいぜ。ほとんどのやつらが病院に運ばれたらしい」
「そりゃそーでしょう。新人の吉岡も吐いてましたよ」
「そうだろうな。俺も当分めしが食えそうにない」
「一緒に来ていた女の子がいましたが、廃人のようになってましたよ。たぶん、、、もう元には戻れないでしょう」
「事情聴取は?」
「全く無理でしょう」
「そうか。可哀想にな」
「ジェットコースターの操作はアルバイトの3人でしてたみたいです。2人は病院ですけど、1名だけなんとか話が聞けそうです」
「そうか」
中村係長と岡野刑事が、青白い顔をしながらも気丈に対応している白石という21歳のアルバイト店員の元に向かった。
白石の横には、遊園地の藤倉課長がいた。
「中村と言います。なんでジェットコースターのビスが緩んだんでしょうね」
「すみません。直前に走った乗客には何もなかったですし、おかしな現象もなかったんです。異常があると警告ランプが付くようになってるんですが、ランプが付いた時にはもう手遅れで、坂を下ってました」
おどどしている藤倉と違い、白石という青年はしっかりと受け答えをする。
「しかし、あんなところのビスがなぜはずれたんでしょうかね?ちゃんと点検はされてるんですか?」
「は・・はい。。ジェットコースターはですね。何かあると大変なんで、、、点検は何度もしてるんです」
藤倉がしどろもどろに答える。
「どのようになってたんですか?」
「わかりません・・・ホントわからないんです」
「係長。鑑識の野木さんが、そのあたりを・・・」
その場を岡野に任せて、中村は野木の居る場所に進んだ。
「よぉ。最悪な現場だぜここは」
「どんな事故なんだい?」
「丁度降り切った場所の上の部分の支柱が、ジェットコースターの進行方向から逆に向かって1本垂れ下がってさ。まともに被害者の頭の正面からぶち抜いたみたいだ。あたり一面が脳みそと血で拾うのも大変だぜ」
「即死か」
「あぁ即死だ。しかしな。不思議なことに後ろの座席のやつらは皆無傷だ」
「つまり被害者がぶつかったために、支柱の向きが変わったのか?」
「そうだろうな。ただ・・・」
「ただ?」
「ビスが外れて垂れ下がったのなら、切り口は錆びていたとしてもほぼ垂直なんだけどな。斜めにカットされているように見えるんだ」
「それはもしかして殺人ということか?」
「いや、断定はできないけどな。ビスは1本や2本ではないから、簡単に垂れ下がるとは思えないんだ」
「おいおい。殺人なら直ぐに捜査本部を立ちあげないと」
中村は慌てて署に連絡をした。
スマホのディスプレイが明るくなる。
ひとりでにアプリが立ちあがった。
TVを見ている背中越しに。
義孝は気付いていなかった。
ビールを片手に、サッカー観戦に没頭している。
アプリは義孝が登録していないものだった。
『あなたの死にかた教えます』
その文字がディスプレイいっぱいに表示され消えて行く。
見たことがある場所が現れる。
そう。
まさに義孝がいる。
この部屋そのものだ。
恐怖に目を見開いた義孝の顔が前面に現れる。
その瞬間。。。
画面が真っ赤に変わる。
プツリ。
ディスプレイの画面が消え、何事もなかったようにテーブルの上で静かになった。
ただ小さく。
何かの液体が滴る音が聞こえていた。
テーブルから落ちる赤黒い液体。
床の上にポツリポツリと。。。
TVから聞こえるゴールの歓声にあわせて、この部屋から歓声は二度と聞こえることはなかった。
慌ただしく人の出入りがあったのは、その2日後。
仕事を無断欠勤したことを気にして、訪れた同僚によって通報された。
多くの鑑識と警官と刑事が訪れた。
「死因は?」
「頭が割られています。たぶんナタでしょうね」
「死亡推定時刻は?」
「一昨日、会社に居たのは間違いないですから、21時~0時の間でしょうね」
殺しには間違いないことから、直ぐさま周辺の聞き込みから被害者の関係者を調べられた。
しかし被害者を殺すほど憎んでいる人物は現れない。
強盗の線も調べたが部屋を荒らされた様子も無いし、アパートの管理会社がドアの鍵を開けた時に、チェーンはしっかりとされていた。
窓と言う窓も内側からロックされている。
つまり密室だ。
そんな中捜査本部に届けられた情報に、誰もが声を失った。
「死因は、どうも自殺のようです」
「ナタで頭を割って?自殺?」
「そうです。ナタが頭に食い込んだ角度と、ナタに付いた指紋。筋肉の硬直具合から考えると、自殺しか考えられないそうです」
「どういうことだ・・・・」
その後数日にわたり裏付け調査も行ったが、自殺する前兆も見当たらなかった。
しかし殺害の線も、何一つ証拠も得られない。
数日後、”自殺”で捜査本部は解散された。
誰もが府に落ちない事件だった。
聞いたこともない。
ナタで頭を割る自殺なんて。
清子は古瀬とデートの待ち合わせをしていた。
これから遊園地で楽しむ予定だ。
初デートだからドキドキする。
まだ17歳。
少し照れながら遊園地の中で、ジェットコースターに並んだ。
次は自分の番だ。
古瀬の顔を見る。
古瀬はスマホを見ていた。
少し引きつった表情をしている。
「どうしたの?」
清子が訪ねた。
「いやなんでも無い。乗ろう」
自分たちの番だった。
清子は少し気にはなったが、ジェットコースターが動き出すと、そんな思いは消えていた。
古瀬の表情もさっきと変り、これからのスリルに胸を高鳴らせているようだった。
レールを登り切り、これからジェットコースターが下っていく。
ただ・・・下りきったところの上側のビスが緩み、支柱の1本が垂れ下がってきた。
誰も気づかないまま。。。
ジェットコースターは一気に下っていく。
ひとりでにアプリが立ちあがった。
TVを見ている背中越しに。
義孝は気付いていなかった。
ビールを片手に、サッカー観戦に没頭している。
アプリは義孝が登録していないものだった。
『あなたの死にかた教えます』
その文字がディスプレイいっぱいに表示され消えて行く。
見たことがある場所が現れる。
そう。
まさに義孝がいる。
この部屋そのものだ。
恐怖に目を見開いた義孝の顔が前面に現れる。
その瞬間。。。
画面が真っ赤に変わる。
プツリ。
ディスプレイの画面が消え、何事もなかったようにテーブルの上で静かになった。
ただ小さく。
何かの液体が滴る音が聞こえていた。
テーブルから落ちる赤黒い液体。
床の上にポツリポツリと。。。
TVから聞こえるゴールの歓声にあわせて、この部屋から歓声は二度と聞こえることはなかった。
慌ただしく人の出入りがあったのは、その2日後。
仕事を無断欠勤したことを気にして、訪れた同僚によって通報された。
多くの鑑識と警官と刑事が訪れた。
「死因は?」
「頭が割られています。たぶんナタでしょうね」
「死亡推定時刻は?」
「一昨日、会社に居たのは間違いないですから、21時~0時の間でしょうね」
殺しには間違いないことから、直ぐさま周辺の聞き込みから被害者の関係者を調べられた。
しかし被害者を殺すほど憎んでいる人物は現れない。
強盗の線も調べたが部屋を荒らされた様子も無いし、アパートの管理会社がドアの鍵を開けた時に、チェーンはしっかりとされていた。
窓と言う窓も内側からロックされている。
つまり密室だ。
そんな中捜査本部に届けられた情報に、誰もが声を失った。
「死因は、どうも自殺のようです」
「ナタで頭を割って?自殺?」
「そうです。ナタが頭に食い込んだ角度と、ナタに付いた指紋。筋肉の硬直具合から考えると、自殺しか考えられないそうです」
「どういうことだ・・・・」
その後数日にわたり裏付け調査も行ったが、自殺する前兆も見当たらなかった。
しかし殺害の線も、何一つ証拠も得られない。
数日後、”自殺”で捜査本部は解散された。
誰もが府に落ちない事件だった。
聞いたこともない。
ナタで頭を割る自殺なんて。
清子は古瀬とデートの待ち合わせをしていた。
これから遊園地で楽しむ予定だ。
初デートだからドキドキする。
まだ17歳。
少し照れながら遊園地の中で、ジェットコースターに並んだ。
次は自分の番だ。
古瀬の顔を見る。
古瀬はスマホを見ていた。
少し引きつった表情をしている。
「どうしたの?」
清子が訪ねた。
「いやなんでも無い。乗ろう」
自分たちの番だった。
清子は少し気にはなったが、ジェットコースターが動き出すと、そんな思いは消えていた。
古瀬の表情もさっきと変り、これからのスリルに胸を高鳴らせているようだった。
レールを登り切り、これからジェットコースターが下っていく。
ただ・・・下りきったところの上側のビスが緩み、支柱の1本が垂れ下がってきた。
誰も気づかないまま。。。
ジェットコースターは一気に下っていく。