今や、パート、派遣社員は企業にとって大事な労働力となっています。
仕事内容も正社員とほとんど変わらないケースが多いですよね。
なのに、給与は正社員の半分という人も多いのが実態です。
今後は、正社員との給与格差の是正が課題となるでしょう。
同一職種、同一賃金の方向へ向かっていくことを期待します。
そんな新聞記事を紹介します。
【NEWS】派遣ワーキングウーマン――変わる非正社員 揺らぐ正社員との境界
転換制度や昇進
「処遇の公平さ」で火種も
働き方で正社員と非正社員の境界線が揺らいでいる。パートや派遣社員などが、主任やチーフなど職場で中心的役割を担ったり、社内の人事評価を一本化し、正社員への転換制度を設けたりする企業が増えているためだ。ただ、給与など処遇格差も改めて浮き彫りとなり、職場では「処遇の公平さ」を巡って火種もくすぶる。
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「この商品は売れ筋だから、手前に並べましょう」。西友・東陽町店(東京・江東)の家電と文具・玩具売り場。
パートに指示する金井喜久子さん(49)は実は4月に正社員になった元パートだ。
出産で食品メーカーの事務職を辞め、いったんは専業主婦に。その後「子育てしながら働きたい」と自宅近くの同店でパートとして働くようになり16年目になる。
西友グループ(全国約四百店舗)で働くのは、正社員約6500人に対し、パート約4万1500人。パートの女性たちを同社は「商品動向も顧客ニーズもつかんでいる貴重な戦力」(小林珠江・人財部担当執行役)と位置づけ、2004年秋、正社員とパートを10段階の統一基準で評価する人事昇進制度を創設。
パートから売り場責任者への昇進や、正社員への転換の仕組みも整えた。
金井さんはパート時代、朝10時から夜6時まで週5日、社員と同様に働いてきたが、「子育ても一段落し、次第に仕事への欲も出てきた」ため、別の店で働く4人とともに正社員への「転換組一期生」になった。
パート時代に比べ早朝や深夜の出勤も増え、担う責任は重い。だが「プレッシャーがあ
る分、やりがいも大きい」と笑う。
平成不況期に削減された正社員の代わりに、パートが代替として活用され、「正社員的パート」は増えている。
りそなグループでは現在、全従業員の約47%がパートだ。窓口応対から金融商品の販売まで「担当業務は正社員とほぼ変わらない」(りそな銀行人事担当者)ため、05年にパートから正社員への転換制度を導入している。
同行上野中央支店で働く杉山貴子さん(35)は昨年12月に正社員になった。それまでは夜7時前には帰宅していたが、今は9時近くに帰ることもざらだ。
それでも「パート時代より給与水準も上がった。以前から正社員として経験や能力を試したいと思っていたので、忙しさは苦にならない」と話す。
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正社員と非正社員の職務の境界線があいまいになるほど、「処遇の公平さ」という問題が焦点になってくる。企業も対策に乗り出している。
イオンでは時間給で働くパート約500人が今春までに月給制に移行、第一生命保険もコールセンターで働く約200人の派遣社員のうち、難易度の高い職務に従事する人の給与を引き上げる制度を今期中に導入する考えという。
資格制度の一本化や、正社員転換制度を含め、こうした一連の動きは、「均衡・均等処遇」の実現が狙いだ。ただ、処遇格差の是正は企業により「温度差」がある。
都内の印刷会社で製版業務を担当する宮原淳子さん(仮名、54)は朝8時半から夕方5時まで働いている。業務内容は正社員と変わらない。
だが、同じ職場の正社員と比べ、月給は半分近い(約17万円)。入社後、正社員にしてほしいと会社側に直訴したことがあるが、「40歳過ぎは採らない」と退けられた。「非正社員というだけで、家族手当や慶弔休暇もない」と宮原さんはぼやく。
パートの労働事情に詳しい、女性のワーキングライフを考えるパート研究会(東京・豊島)の酒井和子さんは「多くの企業の賃金体系はまだ正社員を軸にしており、パートは給与水準が低い。職務評価制度を整備し、雇用区分に関係なく、職務に応じた賃金を受け取れる仕組みを整えるべきだ」と主張する。
ただ、均衡処遇を追求すると、正社員への「しわ寄せ」も生じかねない。
正社員とほぼ同数の契約社員やパートを抱える大手百貨店の場合。以前は同一職務に従事していても、正社員と契約社員とでは2倍ほどの給与の開きがあった。
このため職能給や昇進制度の導入など均衡処遇を推進、正社員と非正社員の格差是正に取り組んできた。その結果、「一部の正社員のなかには年収で100万円近く給与が減る人も現れ、不満が出てきた」(大手百貨店労働組合)。均衡・均等処遇実現の可否を巡る議論は、正社員の賃金制度のあり方とも密接に絡んでくる。
賃金格差、くすぶる不満
21世紀職業財団が実施した「パートタイム労働者実態調査」(05年調査)では、「職務が正社員とほとんど同じパートがいる」との回答が全体の四割強に上った。
正社員並みのパートの増加に伴って、社内の各種制度の整備も進んでいる。例えばパートにも「通勤手当」を出している事業所の割合は約88%。
4年前と比べ21ポイント増えている。「定期健康診断」の実施率も約88%(4年前は51%)と上昇。正社員への転換制度も約47%が導入していた。
とはいえ、福利厚生など手をつけやすい部分で処遇の改善は見られても、賃金面での改善の動きはまだまだ鈍い。
調査では職務内容や、作業レベル、業務上の責任などが正社員並みで、賃金水準も「正社員とほぼ同額」とした事業所は約15%にとどまる。
一方、パート側からは「(職務が同じ正社員に比べ)賃金が低いと感じ、納得できない」という回答が約27%に上った。
同財団の堀木正宏・短時間労働業務部長は「事業主に均衡処遇への意識が定着しつつあるが、正社員との賃金格差への不満は依然、くすぶる。
パート側も納得する制度作りが重要になってくる」と指摘する。
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