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学区コミュニティ

2005年06月15日 | コ ラ ム
自治会と学区コミュニティ

 前回は、自治会とコミュニティとの違いについて調べました。
 今回は、自治会と学区(地区)コミュニティとの違いやその役割について考えてみたいと思います。

 まず、自治会と学区(地区)コミュニティとの違いについて、高槻市の▲「まちづくりハンドブックⅠ~自治会活動編~」(PDF)▲で次のように示されています。

「まちづくりハンドブックⅠ~自治会活動編~」より引用

 「自治会」と「地区コミュニティ」の違いとしては、次のように整理できます。
① 地区コミュニティ組織のエリアのほうが広域であり、単位自治会も地域の各種団体と同様、コミュニティエリア内に含まれることになります。
② 単位自治会は原則として世帯単位での加入ですが、地区コミュニティ組織は団体加入が原則です。
③ 地区コミュニティは、生活充実及び地域のふれあいを深めるための活動だけではなく、各種団体が協力し、単位自治会だけでは解決できない広範な地域課題の解決に取り組む組織です。


 次に、自治会と学区(地区)コミュニティがどのような取り組みを行うのかについて、次のように記述しています。

「まちづくりハンドブックⅠ~自治会活動編~」より引用
 地区コミュニティ組織は、原則として単位自治会・福祉関係団体・老人会・PTA・婦人会・地域商店・事業所等、地域の各種団体を集約した統括的な組織です。この組織は、地域における各種団体・組織に対しての連絡調整や、盆踊り・運動会・文化祭などのふれあいの活動及び防災・防犯・道路維持・地域の清掃・交通整理などという安全や環境整備の活動、道路・公園・集会所などの公共的施設の整備など、地区コミュニティと行政との役割を明確にするなかで、広域的な地域課題に取り組んでいます。
 前記の取り組みは、規模の大きい自治会では単独の実施も可能ですが、小さな自治会では不可能なことが多く、まちづくりの観点からも地区コミュニティ組織の占めるウェートは大きなものがあります。
 



 学区コミュニティは、国の自治省の「モデルコミュニティ構想」を契機として各地で展開されてきました。
 そのことについて、▲「NPOは日本の社会を救えるか」▲(木原勝彬)では、次のように記述しています。

「NPOは日本の社会を救えるか」より引用
 わが国においてコミュニティが政策レベルでとりあげられたのは、1969年に国民生活審議会調査部会が『コミュニティ-生活の場における人間性の回復-』を報告し、71年に自治省が『コミュニティ(近隣社会)に関する対策要綱』を発表してモデルコミュニティ事業を展開するようになった60年代末から70年代初にかけてであった。
 -中略-
 当時の自治省の「モデルコミュニティ構想」は、先導的、予備的な施策として全国にモデルコミュニティ地区を設定して、住民と市町村が中心となって新しいコミュニティづくりのモデルをつくろうとするものであった。特徴をあげれば、地区はおおむね小学校区、住民参加によるコミュニティ計画の策定、コミュニティ施設(コミュニティセンター、集会場、小体育館等)整備を中心とした近隣の生活環境整備、住民によるコミュニティ施設の管理運営、施設整備資金を住民から調達するためのコミュニティ・ボンド(コミュニティ施設整備債)の発行も盛り込まれていた。
 

 


滋賀県の取り組みの方向
 
 滋賀県では、1977年から 「草の根まちづくり」 が盛んに行われ、その実践活動は全国的にも高く評価されていますが、地方型社会が進むことによって 「自分たちができることは自分たちで考え、解決していく。それで解決できない課題は市町村や県が受け持つ」 との考えから、次の5つの構成要素とする 「自治の5重奏」 を提唱しています。

 1.自治会・町内会
 2.学校区などの学区コミュニティ
 3.市町村
 4.県
 5.NPO

 これに基づき、県内の14市町と滋賀県で構成された「身近な自治研究会」
で、学区コミュニティに焦点をあてた「分権時代にふさわしい滋賀ならではの新しい自治の形づくり~自治の五重奏を支える身近な仕組みとしての学区における自治~」と題した報告書が策定されています。
 
 このレポートは、学区コミュニティにスポットをあてて詳しく分析されています。
(ここでいう学区コミュニティとは、自治会よりも大きく、市町村よりも小さい範囲を指しています。)
 

学区コミュニティの可能性について、▲「分権時代にふさわしい滋賀ならではの新しい自治の形づくり」▲(身近な自治研究会)では次のように示しています。


「分権時代にふさわしい滋賀ならではの新しい自治の形づくり」より抜粋

① 自治会でできないこと、取り組みにくいことを行う場として

わたしたちの周りには、身近な地域での取り組みが必要な介護、防災、防犯、環境保全など多くの課題があります。こうした課題に対して、自治会のすべてが同じレベルで取り組んでいくことは容易ではありません。スケールメリットや地理的な広がり、さらには活動を支える担い手の問題等を考えると自治会の枠を越えた、より大きなコミュニティである学区で取り組んだほうが有効と考えられるものがあります。
また、学区では福祉ボランティアや民生委員、PTAなどの団体や専門性を持ったグループがさまざまな活動を行っています。こうした団体やグループがばらばらに活動するのではなく、一体となって意見を出し合い、協力して活動を行うことによってコミュニティ活動に多様性や広がりを生みだし、自治会でできないことや取り組みにくいことが可能になってくると考えられます。

② ボランティアやNPOなどの市民活動との連携の場として

ボランティアやNPOに代表されるような市民活動の動きが高まっています。多くのボランティアグループやNPOは、特定のテーマを持って地域を越えて活動していますが、こうしたテーマ型のコミュニティ活動と、地縁型のコミュニティ活動が接点を持ち、相互に刺激し合えば、地域に新しい風を起こし、住民自治の力をより高めていけるのではないでしょうか。
実際には、双方の活動を連携・調整できる場が必要になります。宝塚市では学区単位に「まちづくり協議会」を設立し、市民活動が自治会等のコミュニティ活動とうまく連携して新しいコミュニティづくりを進めています。また、神戸市須磨区の月見山連合自治会のように学区組織の福祉活動の実践が発展して、福祉NPOを生み出した例もあります。学区は、ボランティアやNPOなどの市民活動と自治会等のコミュニティ活動との連携を実践する場としての可能性を持っています。

③ まちづくりのテーマを広げる活動の場として

多くの自治会では、地域の歴史や自然などの素材を生かして活発なまちづくり活動が行われています。しかし、一方では何か活動に取り組みたいが、自治会のエリアだけではテーマを見出しにくいという自治会もあるのではないでしょうか。特に新興住宅地や集合住宅などの自治会では、学区というより大きな視野で地域を考えることにより、自分たちに合ったまちづくり活動のテーマを見出すことが可能になると考えられます。

④ 子育て環境づくりや青少年の健全育成に取り組む場として

近年、これまでは想像もつかないような青少年による凶悪な事件が相次いで起こっており、青少年の健全育成への関心が高まっています。また、少子化が進むなかで、安心して子どもを生み育てられる環境づくりを地域で進めていくことが求められています。
学区には小学校、中学校、幼稚園、保育園などの学校教育施設や公民館などの社会教育施設があり、それらを拠点としてPTA活動、地域スポーツ活動など子どもに関わる活動が行われています。
学区は、まさに子どものエリアともいえ、子どもの文化・体育活動の場であり、子育て環境づくりや青少年の健全育成に取り組む場として重要であると考えられます。
また、平成14 年度からの「完全学校週5日制」の実施、「総合的な学習」の実施に伴い、地域の人たちが子どものことについて話し合う体制づくりに取り組み、実際に活動することを通して子どもを中心に据えたコミュニティづくりが可能であると考えられます。

⑤ 市町村と住民とを結ぶよりどころの一つとして ~市町村合併との関連~

住民に身近な基礎的自治体である市町村が多様化、高度化する行政需要に対応できるよう、将来にわたって確固とした行財政基盤を整備し、広域的なまちづくりを進めていくうえで、市町村合併は大変重要な選択肢といえます。一方では、合併が進むと「住民の声が届きにくくなるなど行政と住民の関係が薄れる」「地域に対する愛着が薄れる」といった懸念も聞かれますが、市町村の規模が拡大しても、地域に密着した問題を住民の参加や住民との協働のもとに解決していく狭域の自治の仕組みを作り上げていくことにより、住民の健全な帰属意識に基づいた地域社会を形成・維持することができると考えられます。
学区は、自治会よりも大きなコミュニティであるとともに、共通の利害や価値観に基づく共感的人間関係が成立するエリアであり、市町村合併が進んだ場合、市町村と住民とを結ぶ重要なよりどころとなる可能性があると考えられます。

⑥ 個人の楽しみを広げていくエリアとして

自己実現をめざして生涯学習に取り組み、NPO活動などの社会貢献活動に参加する人が多くなってきています。こうした人たちにとって個人の立場で参画することのできる学区は自分自身の楽しみを広げていくエリアとなります。顔のわかる範囲でPTAなどのさまざまな活動が行われている学区はそうした活動仲間や指導者を見つけるにはもってこいのエリアといえるのではないでしょうか。実際に学区では公民館などにおいて趣味の教室の開催やサークル活動などが行われており、こうした既存の活動を足がかりにして個人の楽しみを広げていくことが可能です。

⑦ 自治会と役割分担し、コミュニティ活動をより活発にする場として

自治会活動は、一般的に自治会長をはじめとする役員の負担が大きいといわれています。若い人にとっては「大変そう」というイメージが先行し、近年、地域によっては自治会への加入率が低下し、加入していても活動に消極的な人が増えているという現実があります。
地域の実情に応じて自治会でできることと自治会以外-たとえば学区-でやったほうがいいことを整理し、地域の実情に応じた役割分担によってコミュニティ活動を全体としてより活発にしていくことが可能ではないかと考えられます。

⑧ 住民側からの創造的な政策参加の受け皿として

住民に身近な自治体である市町村では、地域住民の意向を的確に反映し近隣社会レベルでの身近な行政需要にこたえていく必要があり、そのための住民参加の場を作っていくことが求められています。
学区という新たなコミュニティが住民参加の充実を可能にするとともに、住民と行政が協働して新しい政策を創造していく受け皿になれると考えます。
高知市では、小学校区単位に住民がコミュニティ計画の原案を作成し、市はそれをもとにコミュニティ計画を策定し、実施に移すということを行っています。このように、行政への住民参加を学区レベルで進めていくことは、住民にとっても行政にとっても新しい住民参加の経験の場となっていくと考えられます。

⑨ 地域分権の担い手として

地域を包括する組織である町内会・自治会の発展として学区を位置づけ、学区単位の自治活動の充実・発展を基礎にして、地域住民組織の主体的な取り組みと行政との連携の強化によって地域自治を確立していくことが、まちづくり行政の一部を住民が担っていく地域分権の方向といえるでしょう。
したがって多様な領域で展開される学区単位の自治活動の発展は、地域分権の可能性を確実に高めていくことができると考えられます。
地域の住民自治組織は、多様な住民活動グループとともに地域での共同関係を拡大していくことによってその発展可能性を高めています。今日、多くの地域住民自治組織は、行政とパートナー関係を強めつつ地域自治の確立をめざす過程にあるともいえます。




以上で示されているとおり、学区コミュニティにはこれからの分権社会を担う役割が期待されます。(つづく)