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法人格返上の手続きと費用

2005年04月05日 | NPO
官から民へ ~新しい公共を担う主体の一つであるNPOの多様性に関連して~

 どういう訳だか、私たちにとって最も関心事である年金問題ではなく、郵政民営化に向けての議論がヒートアップしています。 ▲郵政民営化準備室▲ 
 
 小泉首相の唯一の政治理念といえる「官から民」には、グローバル時代においてこれから益々増大する「公共」の分野のどの部分を官が担い(現在の役割を再編し)、それ以外の部分を多様な主体によってどのように支えていくのかという創造的要素を見いだすことはできません。
 
 「官から民へ」は、単に従来まで国や行政が担ってきたものを民間企業に移管するということではなく、PPP(PublicPrivatePartnerships)=公民パートナーシップこれまで主に行政が独占してきた社会資本の整備や公共サービスの提供について、行政と民間主体等(民間企業、NPO、住民など多様な主体)が連携して対応するものとして位置づけられるべきものです。
 
 そういう観点から、公共の新たな担い手としてのNPOの役割は益々高まってくるものと思いますが、NPO自体にも多様性があります。
 その多様性の中には、ミッションに関わるものと組織形態に関わるものがあります。
 ミッションに関するものの中で現在不足しているのは、行政を評価したりチェックする機能などで、組織の形態に関わる問題としては法人格を持つNPOや任意団体としてのNPO、財団や社団法人といった制度や選択をどのようにするのかということなどです。
 
 地域通貨おうみ委員会(まちづくり本舗)は、そのミッションや規模から考えて任意団体として活動する方が活動しやすいとの考えから、従来のNPO法人格を返上して任意団体へと移行することにしました。

 しかし、昨日書いたようにNPO法は「簡易な手続きで法人格を付与する」だけで、その後の手続きには全く配慮の無い冷たい制度です。
 というのも、法人格を持ったNPOから任意団体への移行を行う場合、一旦法人を解散するという法的手続きが必要となるのですが、その手続きを行うに際して公告を3回行わなければならないとされています。 ▲広島県のHP「清算の手続き」(PDF)▲ 
 
 官報への公告掲載に必要な費用は、1回につき3万円程(1行22字で2,854円×行数)ですので、3回だと10万円近く必要です。  ▲解散公告申込書▲
 
 法人格取得の際には、申請・審査・縦覧手続き等の費用は無料であるため、法人格をやめる場合も同じようなものだと考えるのが普通だと思いますが、実はそうでは無いのです。
 
 ちなみに、地域通貨おうみ委員会はすべて自前の資金で運営しているため、実際には昨年度ベースで数字で表せるだけでも40万円の赤字決算になりました。
 これは自己責任で納得して対処しているので全く問題ではありませんが、何の生産性も創造性も無い手続きだけに10万円の費用をボランティアベースで活動している団体に求めるのはいかがなものかと思います。少なくとも、申請の際には法人格を持てばこうしたことも義務として生じる旨の説明責任が主務官庁にはある筈ですが、私たちは今になって初めて知りましたし、多くの関係者の方々もご存じ無いと思います。
 まぁ、何を言っても「法律は知らない者が悪い」と言われてチョンでしょうから、これ以上申しませんが・・・・非常に疑問です。
 
 10万円の費用捻出に頭が痛いというのも実際の話ですが、それよりも頭の痛い問題があります。それは、公告文は「特定非営利活動法人地域通貨おうみ委員会を総会の決議で解散した」という表現となるのが一般的ですが、私たちは決して解散する訳ではなく、組織形態を法人格から任意団体へと変更するだけの話しなんです。「解散」という文字だけが広報されると、活動そのものをやめてしまったという誤解が生じる恐れが非常に高い点と考えられます。
 これが最も困るんですよ、NPOも信用第一ですから。
 
 お金だけ解決できるならそれで済ましたいと思うのですが、信用問題に加えて所定の書類を県庁に出したり、法務局に出したり、清算人を選任したり、それを登記したりする必要があり、行政書士にでも頼まなければ処理できないような非常に煩雑な手続きを乗り越えなければなりません。
 
 こうした手続きを躊躇して、休眠状態でいようと思っても例えば事業報告書等の未提出については、20万円以下の過料が課せられるなど、手厳しい処置が待ってます。
 また、3年間に渡り事業報告書等の提出しなければ認証取り消しになるのですが、認証を取り消されたからと言って自動的に法人格が抹消される訳ではなりません。(たぶん)
 
 ふうっ。こんなことに右往左往していないで、本来の活動に専念したいっ!!
 
 思うに、特定非営利活動促進法によってNPO法人格が簡単に付与されるようになったことは喜ばしいことですが、活用方法を一歩間違えれば、NPO活動の促進ではなく阻害要因にもなるようです。
 

ありがちな勘違い

2005年04月04日 | NPO
 先日から、当ブログを開設している地域通貨おうみ委員会が、NPO法人から任意団体へと移行すること至った理由を知っていただくため、その背景を書いています。

 今回のテーマは、NPOに対して「簡易な手続きで法人格を付与する」と広報されていることが、誤解を招きやすいということについて。
 
 内閣府のパンレット「特定非営利活動促進法のあらまし」には、NPO法の趣旨を次のように示しています。

 近年、福祉、環境、国際協力、まちづくりなど様々な分野において、ボランティア活動をはじめとした民間非営利団体による社会貢献活動が活発化し、その活動が期待されているところです。
 これらの団体のなかには、法人格を持たない任意団体として活動しているものも多く、そのため、銀行で口座を開設したり、事務所を借りたり、不動産登記するなど法律行為を行う場合には団体名で行うことができず、その活動上様々な不都合が生じています。
 そこで、これらの市民の自由な社会貢献活動を促進するため、平成10年12月に簡易な手続きで法人格を付与すること等を目的とした特定非営利活動促進法(NPO法)が施行されました。


 昨日のブログで少し触れた法人の必要性の是非もさることながら、私たちは「簡易な手続きで法人格を付与する」ということを少し誤解していたようです。

 というのは、法人登記を行うのは法務局の管轄であり、「簡易」というのは非営利活動法人としての認証を受ける手続きのことであって、法人登記や登記記載事項の変更時などの諸手続については、NPOだからといって他の法人に比して「簡易」という訳ではないということです。日本語は本当に難しいと思います。

 実際に、認証を受けると2週間以内に法務局で登記することになっていますが、その具体的な手続きや必要書類については、滋賀県「NPO法人設立運営の手引き」 ▲手引き▲ 等にはほとんど触れられていません。
 ここには、設立申請時に提出する書類と設立登記完了後に提出する書類が示されていますが、法務局での登記手続きについては管轄外であるため言及していないのです。しかし、実際には法務局での手続きが本当に大変で大きな負担になります。

 しかもこれは、設立当初の登記時だけの話しではありません。事務所の移転や理事の変更等、登記記載事項の変更時にはその都度定款に沿った決議であるとの証明と共に、様々な添付書類が必要となります。

 「簡易な手続きで法人格を付与する」という表現は、民法や法人制度についてあまり知らない者に対する説明としては、誤解を招きやすい表現だと思います。

 今回、特に問題に感じているのは、一旦法人格を取ったNPOが任意団体へ移行しようとしても、設立やその後の煩雑な諸手続以上に・・・いや絶望的な位大変な手続きと費用が必要なことです。(この続きは明日)

NPO法人とNPO

2005年04月03日 | NPO
 地域通貨おうみ委員会は、「NPO法人」から「NPO」へ移行しますが、法人と任意団体はどちらが優れているのでしょうか?
 
 先に答えを言ってしまえば、法人格のあるなしによってその優越が決まる訳ではありません。
 有給スタッフを何人か雇用できるだけの規模を持った事業型NPOの場合は、その必要上の理由で法人化を行うことがメリットとなりますが、例えば市民オンブズマンやアドボカシー活動をボランティアベースで行うNPOなどにとっては法人化のメリットは少なく、その内容の違いから両者を比較することは全く意味がありません。
 
 このことに関して、鳥取県の「協働推進ガイドライン」ではQ&A形式で次のように説明しています。

〈Q〉
NPO法人は、他のNPOより優れているか?
〈A〉
 NPO法人と法人格のないNPOとは、法人格の有無を除く明確な差があるわけではありません。NPOの評価は、法人格のあるなしではなく、活動の内容により判断されるべきであり、またその判断も行政が行うのではなく、市民が判断し評価すべきものです。
 また、所轄庁(都道府県及び内閣府)のNPO法人の認証は、NPO法の基準や手続きに適合しているかを、原則として書面審査だけで判断するようになっており、適合していれば必ず認証するように法律が定めています。つまり、その団体の活動実態を調査して審査しているわけではない(そもそもNPO法人の認証申請に活動実績は必要ない。)ので、所轄庁がお墨付きを与えているわけではありません。よって、NPO法人は他のNPOより優れているということはありません。
 ただし、NPO法人は、法によって情報公開が義務付けられているため、運営や活動内容の透明性が高くなります。


 次に、NPO法人になれば法人として契約が可能となりますが、法人でなければ契約ができないとの誤解もあるようです。
 これについては、自治体がNPOに業務委託する場合のガイドラインに次のように示されています。


【箕面市「NPOとの協働に関するガイドライン」】

 1 NPOへの事業委託の手順
 NPOとの協働にふさわしいと判断した事業のうち、委託によって行う場合について以下に手順を示します。

(1)対象となるNPO
* 委託契約の相手方としては、法人格の有無を問わず、本市における公共サービス等の提供を協働、分担していこうという趣旨のもとに促進条例第10条の規定に基づき登録したものを対象とします。


【滋賀県「NPOへの委託マニュアル」】
 
(2)NPOの選定要件
委託先NPOの選定にあたっては(1)のNPOデータによる検討のほか、事業を確実に遂行するため、団体の活動実績や事務遂行能力等を検討しておく必要があります。このため、次に掲げる「基本要件」を満たすとともに、各所属においては委託事業の規模および実施内容等に応じて「個別要件」を設けて選定することになります。
なお、NPO法人は定款に規定された事業以外は実施することができないので、その確認が必要です。

基本要件
○ NPO法第2条第1項別表に掲げる活動であって、不特定かつ多数のものの利益の増進に寄与することを目的とする活動を行うことを主たる目的とするNPO法人または法人格を有さない任意団体であること(NPO法人以外の法人や、自治会などの共益団体、特定の個人や団体の利益の増進に寄与することを目的とする団体は含まれないものとする。)。 (以下省略)


 また、地方自治法の改正によって全国で導入がすすめられている「指定管理者制度」については、その対象を法人に限らずボランティア団体や地縁団体等民間事業者も指定を受けることができます。

 
 今回は、法人でなければ契約ができないという誤解や、法人か任意団体かということと活動内容が優れているかどうかやどちらに優位性が有るのかというような問題は別物だということに焦点をあてました。時間の都合で、続きは明日にします。

特定非営利活動促進法

2005年04月02日 | NPO
 当ブログを運営している地域通貨おうみ委員会(まちづくり本舗)は、一昨日の総会においてNPO法人から任意団体へ移行することを決議しました。
 何故、法人ではなく任意団体を選択したのかについて、何回かに分けて少しづつ説明していきたいと思います。
 
 まず、今回はありがちな誤解として、「特定非営利活動促進法」という名称から連想されるイメージと現実の違いについて。
 「特定非営利活動促進法」というのは、市民による特定(公益)の非営利活動を促進する法律ですが、ここでいう「促進」の意味は非常に限定的なことを指しています。
 同法第1条を良く読むと、そのことが理解できます。

 この法律は、特定非営利活動を行う団体に法人格を付与すること等により、ボランティア活動をはじめとする市民が行う自由な社会貢献活動としての特定非営利活動の健全な発展を促進し、もって公益の増進に寄与することを目的とする。

 
 分かりやすく言い換えると、公益の増進のために市民による特定の非営利活動の健全な発展を促進するために法人格を付与することがこの法律の目的だとされています。
 すなわち、特定非営利活動促進法は「法人格付与制度」であり、「促進」という意味は市民による非営利の公益活動に対してそれを支援したり協働していこうというものではなく、法人格を取得しやすくするということにほぼ限定されたものです。 (「・・・等」となっている意味については、ここでは触れないでおきます。)

 法人格を取得することによる一番の法的なメリットは、権利能力の主体となれることです。具体的には団体名義で契約を締結したりすることができるようになって、個人ではなく団体として権利義務の関係を処理できるようになります。
 しかし、権利能力の主体となることが必要とされる前提条件が、果たして今の状況において本当にあるのかどうかを考える必要があります。介護保険事業者となる場合などは、法人格を持っていることが必須条件となりますが、市民によるパブリックな活動を行う上では、法人格を取ることが出発点でも無いし、それ以前に整えるべき問題が山積しているのが現状ではないでしょうか。

 例えば、労働関係諸法には「労組法」「労働基準法」「労働関係調整法」「労働者派遣法」「男女雇用機会均等法」「育児・介護休業法」「職安法」などといったものがあり、こうした様々な法律によって、憲法で保障されている「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」や労働者の保護が確保されているのですが、さしずめNPO法が仮に「労組法」的なものだとするならば、その他の法整備(本当は法律ではなく、状況や条件整備といったもの)が未確立の状況だと言えるような気がします。 (というか「これからその必要性について考えていきましょう」というのが実際のところではないでしょうか。)

 そうした中で、当委員会にとっては法人である必然性が無いので、任意団体(「NPO法人」ではなく「NPO」)として活動していくことになったというだけのことなのです。しかし、どういう訳だか「解散した」「活動をやめた」というような誤解もあるようです。

 まぁ、とりあえず今回は、「特定非営利活動促進法」=NPO法人格付与法であり、それ以上でもそれ以下でも無いことと、当委員会は法人であることの必要性が無いので、一般の市民活動団体へと移行して、今後も今までと何ら変わらず(法人であることによって生じる制約を受けずに、より自由に)活動を続けていくということをご理解いただければ幸いです。(つづく)

NPO法人格

2004年11月22日 | NPO
 特定非営利活動法人地域通貨おうみ委員会は、NPO法人格を返上する方向で検討していますが、このことを「活動をやめる」「NPOを解散する」と誤解している方が以外と沢山おられます。

 法人格を返上するということは、特定非営利活動法人としての登記を抹消することであって、NPOとしての活動は、事務手続きや制約がはずれるのでこれまで以上に積極的に展開していきたいと考えています。

 ちなみに、NPO(任意団体)からNPO法人に移行する場合の手続きは、一旦任意団体を解散してNPO法人を新規に立ち上げるのが一般的です。
 当委員会は、2000年10月に任意団体として発足し2002年4月に任意団体を解散して同時にNPO法人として再スタートしました。 そして、特定非営利活動法の枠組みで活動を続けることにあまり意味が無いと判断し、200×年に任意団体に戻るということになります。
 ややこしいですね・・・誤解されるのも無理はないなぁ。


(追記)11月19日に「公益法人制度改革に関する有識者会議報告書」が出ましたが、特定非営利活動法人(NPO法人)制度は「抜本的に見直すべきとの社会的要請が乏しい」として存続させるとしています。【記事】