官から民へ ~新しい公共を担う主体の一つであるNPOの多様性に関連して~
どういう訳だか、私たちにとって最も関心事である年金問題ではなく、郵政民営化に向けての議論がヒートアップしています。
▲郵政民営化準備室▲
小泉首相の唯一の政治理念といえる「官から民」には、グローバル時代においてこれから益々増大する「公共」の分野のどの部分を官が担い(現在の役割を再編し)、それ以外の部分を多様な主体によってどのように支えていくのかという創造的要素を見いだすことはできません。
「官から民へ」は、単に従来まで国や行政が担ってきたものを民間企業に移管するということではなく、PPP(PublicPrivatePartnerships)=公民パートナーシップこれまで主に行政が独占してきた社会資本の整備や公共サービスの提供について、行政と民間主体等(民間企業、NPO、住民など多様な主体)が連携して対応するものとして位置づけられるべきものです。
そういう観点から、公共の新たな担い手としてのNPOの役割は益々高まってくるものと思いますが、NPO自体にも多様性があります。
その多様性の中には、ミッションに関わるものと組織形態に関わるものがあります。
ミッションに関するものの中で現在不足しているのは、行政を評価したりチェックする機能などで、組織の形態に関わる問題としては法人格を持つNPOや任意団体としてのNPO、財団や社団法人といった制度や選択をどのようにするのかということなどです。
地域通貨おうみ委員会(まちづくり本舗)は、そのミッションや規模から考えて任意団体として活動する方が活動しやすいとの考えから、従来のNPO法人格を返上して任意団体へと移行することにしました。
しかし、昨日書いたようにNPO法は「簡易な手続きで法人格を付与する」だけで、その後の手続きには全く配慮の無い冷たい制度です。
というのも、法人格を持ったNPOから任意団体への移行を行う場合、一旦法人を解散するという法的手続きが必要となるのですが、その手続きを行うに際して公告を3回行わなければならないとされています。
▲広島県のHP「清算の手続き」(PDF)▲
官報への公告掲載に必要な費用は、1回につき3万円程(1行22字で2,854円×行数)ですので、3回だと10万円近く必要です。
▲解散公告申込書▲
法人格取得の際には、申請・審査・縦覧手続き等の費用は無料であるため、法人格をやめる場合も同じようなものだと考えるのが普通だと思いますが、実はそうでは無いのです。
ちなみに、地域通貨おうみ委員会はすべて自前の資金で運営しているため、実際には昨年度ベースで数字で表せるだけでも40万円の赤字決算になりました。
これは自己責任で納得して対処しているので全く問題ではありませんが、何の生産性も創造性も無い手続きだけに10万円の費用をボランティアベースで活動している団体に求めるのはいかがなものかと思います。少なくとも、申請の際には法人格を持てばこうしたことも義務として生じる旨の説明責任が主務官庁にはある筈ですが、私たちは今になって初めて知りましたし、多くの関係者の方々もご存じ無いと思います。
まぁ、何を言っても「法律は知らない者が悪い」と言われてチョンでしょうから、これ以上申しませんが・・・・非常に疑問です。
10万円の費用捻出に頭が痛いというのも実際の話ですが、それよりも頭の痛い問題があります。それは、公告文は「特定非営利活動法人地域通貨おうみ委員会を総会の決議で解散した」という表現となるのが一般的ですが、私たちは決して解散する訳ではなく、組織形態を法人格から任意団体へと変更するだけの話しなんです。「解散」という文字だけが広報されると、活動そのものをやめてしまったという誤解が生じる恐れが非常に高い点と考えられます。
これが最も困るんですよ、NPOも信用第一ですから。
お金だけ解決できるならそれで済ましたいと思うのですが、信用問題に加えて所定の書類を県庁に出したり、法務局に出したり、清算人を選任したり、それを登記したりする必要があり、行政書士にでも頼まなければ処理できないような非常に煩雑な手続きを乗り越えなければなりません。
こうした手続きを躊躇して、休眠状態でいようと思っても例えば事業報告書等の未提出については、20万円以下の過料が課せられるなど、手厳しい処置が待ってます。
また、3年間に渡り事業報告書等の提出しなければ認証取り消しになるのですが、認証を取り消されたからと言って自動的に法人格が抹消される訳ではなりません。(たぶん)
ふうっ。こんなことに右往左往していないで、本来の活動に専念したいっ!!
思うに、特定非営利活動促進法によってNPO法人格が簡単に付与されるようになったことは喜ばしいことですが、活用方法を一歩間違えれば、NPO活動の促進ではなく阻害要因にもなるようです。