滋賀県の近江八幡市で、市職員が他人の論文の引用先を示さずに盗用し、市のホームページに掲載したことが問題になっています。
▲京都新聞記事▲
本ブログでも、問題点を整理したり主張を裏付けたりするために色々な著書から引用させていただいていますので、ちょっと気になりました。
最近、「著作権」とか「特許」とかが厳しく問われることが多くなりましたが、一方で社会の共有財産を私的に独占するような「商標登録」や「意匠登録」などの問題もあり、非常に微妙で難しい世の中になりました。
▲弁理士試験に出ない知的財産権▲

私は、趣味でJAZZを楽しんでいますが、JAZZの原点を学ぶためには著名なミュージシャンのアドリブ(即興演奏)をコピー(模倣・引用)することから始めて手法や感性を学び、その上にオリジナリティを創造していくということが身についています。即興演奏をしている時に、「そのフレーズは、~の演奏の盗用だ!」と言われても困るんですよね、実際。
コピーは黒人の民族音楽的性格を持っているJAZZの歴史と伝統・技法を学ぶ基礎学習であると同時にそのミュージシャンへの敬意の象徴だったりするんです。でも、コピーばっかりでオリジナリティの無いミュージシャンは、結局あまり評価されませんから、そんなに目くじら立てることでもありません。
人類の英知や知的資源を私的に独占せず、どのように先人の知恵を積み重ねていくのかという指向が無いと、これだけ複雑な状況下で多くの問題や情報を処理し次世代を築く創造性を高めるという作業は難しくなるのではないでしょうか。
さて、今回は町内会に関する勉強の続きです。
念のため先に申し上げておきますが、以下はNHKの放送大学院教材の「地方自治政策Ⅱ 自治体・住民・地域社会」(編著者:倉沢進)を参考にしています。
これまで町内会について調べてきた中で、色々なことが分かってきました。
町内会の主な特徴は、基本的には特定のエリア内に存在する「排他的地域独占」の組織であるが故に一定の地域代表性を持ち、活動内容は地域環境整備事業や防犯・防災事業を始め親睦事業、行政補完事業など多岐に渡り、「包括機能的な集団」ということができます。
また、組織上の特徴としては、NPOなどのように個人の自由意思ではなく地縁による自動(半強制)的加入で、加入単位は世帯であるということです。
こうした特長は、町内会という性格上不可避なものと、過去の政策などによって形作られたものとがあります。
このことについて著書「自治体・住民・地域社会」では、次のとおり示しています。
著書「自治体・住民・地域社会」から抜粋
加入が世帯単位、自動的加入、包括的機能、行政補完機能、排他的地域独占であることの、以上五つが、町内会の組織原理の特徴である。これらの特徴は、歴史的に変化してきた部分と、本来的な部分とがある。例えば本来的な特徴と考えられている全戸加入の原則は、実は戦時中に形成されたものである。 |
町内会が行政にとって存在価値があるのは、基本的には全戸加入という地域代表性をもった団体であることから、政策上で地域住民との協議や了解を得る場合には町内会をその相手方として認定するに一定の合理性があることから、住民代表団体として位置づけることができる点にあります。このことから、各種審議会や委員会などへの人材供給源として活用することにより、市民参加によるまちづくりの形式を保つことができます。
また、行政水準の低かった時代には、相互扶助によってその穴を埋める組織であったし、近年の多様なニーズを満たすためには住民協力無くして成り立たない状況となっており、行政コスト削減のためにも不可欠な協力団体となっています。
一方、町内会が行政の要請を引き受けるのはそれなりの理由があります。
行政に協力することは、地域の生活環境や福祉を向上させる上で不可欠なことであり相互扶助団体として当たり前のことなのかも知れませんが、行政に協力することによって得ることができるメリットも見逃すことができません。
それは、補助金や委託費といった活動資金に関わるものだけではありません。
先に行政側のニーズとして掲げたように、町内会を地域住民を代表する組織して活用することは、逆に言えば町内会の役員は地域を代表するボランティアという名誉職となり、また住民代表としての地域を付与されることによるメリットも大きい要素だと思います。
以上を踏まえて、本書ではこれからのコミュニティ施策のありようを次のように示しています。
著書「自治体・住民・地域社会」から抜粋
結論を先に述べるなら、行政は町内会がこれからのコミュニティ形成の一翼を担う組織として体質改善が図られるよう、これまでの全面的依存とは違った行政⇔住民関係の構築を進めるべきであろう。
町内会はもはや、地域住民を代表する唯一の正統的団体として認められるべきではなく、多様な住民集団ないしコミュニティ活動集団のひとつとして、位置づけられるべきであろう。
町内会の問題点のひとつは、上述のようなリーダー層の性格から生じる、行政依存ないし権威主義的傾向ゆえに、他の住民層、とくに、ホワイトカラーや新規来住住民層、若年層などから、遊離している点にある。そして行政側からの協力要請の多さと役員層への地位付与とが、このような傾向を一層促進しているのである。
町内会を新しい機能を果たせるよう脱皮させるには、これまで習慣化している末端行政補完機能から解放することが不可欠の課題である。これまでの慣習だからといって、あるいは安上がりで便利だからといって、さまざまな末端行政の手足として従来のように町内会を利用することは、町内会という貴重な社会的資源を、今日の地域社会に生かして活用する道とはいえないであろう。
現在多くの自治体では、町内会を経由して配布される回覧資料は膨大な量に及ぶ。それは無限定の負担を町内会に強い、このため町内会は本来の活動エネルギーを行政協力のために使い果たしてしまう。また町内会の役員層は、この負担の重さゆえに、行政側からの見返りを求めるようになり、行政依存的体質を一層強化することになるのである。
このような因習的な行政末端機能から町内会を解放し、ホワイトカラー層や新住民層を含む広範な住民層が、参加しやすい環境をつくること、その新しい役割遂行を支援するよう行政との新しい関係を構築することが、これからの課題であろう。 |
私は、著者の主張である
「行政は町内会がこれからのコミュニティ形成の一翼を担う組織として体質改善が図られるよう、これまでの全面的依存とは違った行政⇔住民関係の構築を進めるべきであろう。町内会はもはや、地域住民を代表する唯一の正統的団体として認められるべきではなく、多様な住民集団ないしコミュニティ活動集団のひとつとして、位置づけられるべきであろう。」 との意見と同じ考えで、これからのコミュニティ施策の視点にしなければならない視点だと思っています。
ところで、
▲草津市パートナーシップまちづくり研究会からの提言(平成13年3月)▲では、「草津市におけるパートナーシップまちづくりの基本的考え方」として次のように記述しています。
「草津市パートナーシップまちづくり研究会からの提言」より抜粋
(2) 地域コミュニティ活動の多様な展開
○ 自治のシステムの基本を継承し、新しい時代に対応できる運営を進める
自治会、町内会等の地域コミュニティは、地域で発生する生活上の課題を解決するため住民が協力して取り組む身近な自治の実践の場であるので、これまでに自治会活動等で培われた自治の基本的なしくみを継承しながら、さらに広範な市民参加を促すため、新しい発想や活動をうまく生かしながら時代に対応できるコミュニティ運営を進めていきます。
○ 多様な地域単位の市民自治のまちづくりを進める
地域課題が複雑、多様化し、自治会、町内会だけでは対応できない分野がでてきており、広域的な対応や専門グループとの連携などが求められています。小・中学校の学区単位や河川の流域など、多様な地域単位での市民主体のまちづくり活動を進め、互いに補完できるような関係を形づくっていきます。
○ NPOや市民活動のエネルギーを活かし、地域コミュニティ活動を飛躍させる
公民館活動やコミュニティ活動等の場面に、テーマを持って活動している市民団体やNPOが関われる機会づくりを促し、地域コミュニティ活動の新たな可能性を追求していきます。また環境や防災まちづくりの推進など、市民活動やNPOと自治会、町内会等の地縁団体との協働によるモデル的な活動にも取り組んでいきます。 |
この提言で示されている、町内会の運営改善や学区単位や流域などの多様な単位での連携、さらにはNPOとの協働などは、今後の町内会活動を考える上で参考になるのではないでしょうか。