TRIVIAL JUNK Blog

ダラダラコスプレイヤー”克晴”の、コスと映画とその他諸々。

江戸川乱歩全集

2009-02-24 22:53:56 | 映画
本日の日記は差別的表現を連発している上に、表題映画のネタバレもしまくりですのでご注意下さい










さて、「江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間」という映画があります。
タイトルの時点で既に危険なオーラが全力で噴き出してますが、まぁあの日本が誇るエログロ大王の「全集」を冠するだけあって中身の方も推して知るべしということで、現在地上波放送はもちろん、国内でのソフト化も全くされておりません。
最近になって海外でDVD化され、リージョンフリーなので一応国内で観ることも可能にはなったのですが、本作がアングラ的存在であることは未だ変わらず、リバイバル上映などでひっそりと鑑賞され続けているカルト的作品、だそうです。

そんな作品が銀座の片隅で上映されると聞いてホイホイ観に行っちゃったのだv
上映館は銀座という立地条件ながら昭和の臭いを色濃く残し、普段から貧乏臭いホラーやしょっぱいアクションなどカルト映画ばっか流してる「銀座シネパトス」。
地下鉄の音と振動が鑑賞の邪魔をしたりするお茶目な映画館です。

…まぁオイラ正直乱歩には詳しくないですし、フィンチャーばりのフリークスマニアというわけでもないのですが、「国内で未ソフト化」なんて聞いたらつい心躍らされちゃうのがB級好きの悲しいサガでして。

ちなみにわずか1週間の上映かつ1日1回しか流さないせいか、場内はなかなかの大入り。
見るからにリア充っぽい若いカップルが楽しげに入ってきた時はお前らせっかくのデートでなんちゅうチョイスを、とほっこりした気分になりました。

前置きが長くなりましたが本編です。
開幕いきなり毒々しい色の蜘蛛がくんずほぐれつな光景が流れ蜘蛛嫌いな人の神経を逆撫でした後、精神病院の女性房で半裸の女性が乱舞するという各方面に差し障りのありそうなシーンでスタートを切ります。

以後主人公の男が自分の出自を探りつつも得体の知れない妨害に遭うという、どちらかというとサスペンス要素の強い展開が続きますが、なにぶん作られた時代が時代ですのでなにかにつけて「ダァーン!」と大仰な効果音が入ったりして現代人としては一抹の笑いが。

中盤から舞台は無人島に移ります。
手に水掻きを持つ親父が日夜人工的に奇形人間を量産し、島全体を奇形の園に仕立て上げていた、ともうこの時点で地上波は絶対無理な設定なのですが、更に台詞で「奇形」「キチガイ」「片輪」「裏日本」「せむし男」とデンジャラスな単語が飛び出しまくるので冷や汗が止まりません。
そんな状況ですので画面は自然と奇形様大披露会となり、お子様の情操教育に悪すぎる光景が延々と続きます。
特に親父役の土方巽と、奇形の皆様役の暗黒舞踏塾の面々が、見るからに不安を煽る不気味な動きで夜のトイレを遠くさせます。

終盤では唐突に明智小五郎が登場し親父一味の悪事を暴露、なにかとショックを受けまくった主人公は愛する人とともに花火に乗ってビバ自害。妙にしっかり原型を留めた腕や生首がクルクル舞うという狂った夜空をバックに、「おか~~さ~ん」という切なげな叫びがこだまするという異様にシュールなシーンで映画は終わります。

というわけでとんでもない衝撃作なのは事実でしたが、まぁ「恐怖奇形人間」とウルトラQのタイトルなみの勢いで”奇形人間”を謳ったわりには、肝心の奇形さんたちの存在感はかなり薄く、奇形っていうよりは単に白塗り(たまに金色)のキモい人たちが乱舞してたって印象です。
アングラという意味では、所業が見るからにキ印ですので充分雰囲気出ていましたが、フリークスの皆様が大挙して右往左往…という想像は肩透かし食らった感じ。
別にそういう光景が大好物ってわけでもありませんが。

しかしまぁ、あのエログロ大魔王が原作だけあって「見世物」の持つ妖しさ・いかがわしさはやっぱり強烈で、観た直後は「こんなもんかー」と冷めていたものの、時間が経つにつれなんとなくクセになりそうな気分になってきましたよ。
一応わたくしもマトモな倫理観は持ち合わせているつもりですが、だからこそこういう「倫理の向こう側」を見せられる作品には何か惹きつけられるものを感じてしまうのでしょうねぇ。

あとはアクの抜けた藤岡弘、みたいな冴えない風体の明智小五郎が面白かった。いじょ。