インテグラな日々

本、音楽、そしてスポーツ…!

歴史小説の読み方5

2008-01-06 00:52:43 | そのほか
最終章の吉川英治の章です。

オレは「上杉謙信」しか読んだことありません。

ここでは「宮本武蔵」「新・平家物語」「神州天馬侠」などが紹介されています。
「神州~」は忍者の果心居士らが出るらしいので、読もうかなと思っている作品です。

<内容>
日本の歴史小説を作ったのは、吉川英治さんだと書かれています。それこそ「宮本武蔵」は当時の大ベストセラーだったそうです。現在はそれほど熱狂的に読まれていないようですが、海外ではいまだにものすごい人気のようです。

会田さんは小さい頃「神州」などを熱狂的に読んだそうですが「宮本武蔵」あたりはダメだったそうです。これは歴史学者の梅原猛さんも言っていますが、説教くさいところがあるからだそうです。

これは苦労人・吉川さんが国民作家となったのと関係があるそうです。つまり「努力すればオレのようになれる」という若い人たちへの激励の意味もこめられていたそうです。

これ、ちょっと分かるな~。

オレも、ちょっとたたき上げのところがあるので、若いやつらにがんばってほしくて何か言うと、それが若い人にはうるさく感じてしまうんですよね。親切心なんだけど。

ただ「新・平家物語」は、ちょっと晩年で説教臭もなくなり、しかも非常に大きな意味のある作品になっていると書かれています。興味にある方は、読んでみてください。

オレ的に面白かったのは、吉川さんの初期は全くフィクション的な作品を書いているということ。「神州~」などもそうだし、武蔵もそうらしいです。

オレは司馬さんの「梟の城」に対して「歴史を勉強しろ」と言った印象が強いので、意外な感じがします。

これなぞは、国民作家・吉川さんが、脅威の新人・司馬さんの才能にジェラシーを感じたということなのでしょうか。

そう考えると、海音寺さんの姿勢というのはどういうことなんでしょうか。海音寺さんは司馬さんのデビュー作「梟の城」を直木賞に選びましたし(海音寺さんが強行に主張しなければ取れなかったはず)、司馬さんの本当のデビュー作「ペルシャの幻術師」を「読売なんとか賞」(失念!)にも選んでいます。そして、その後は司馬さんに激励(激賞?)の手紙も送っています。

面白いことに、天才・司馬さんは海音寺さんがいなければ世に出ることがなかったのかもしれませんね。

これは「コブラ」の寺沢武一と手塚治虫の関係に似ています。

そう考えると、海音寺さんは「いいものはいい」という無私の人だったと思います。普通、人間は新しい才能をねたむものだと思いますが。

だからでしょうか、当時フジテレビの海音寺さんの娘さんが、海音寺さんのことを伏せて、ドラマ化の話を持っていったことがあったそうです。断られるのを覚悟で行ったそうですが、司馬さんはすぐに海音寺さんの娘さんだと気づき、快諾したそうです。何とも、心温まる話ですね。

ま、脱線しまくりですが、いつか「宮本武蔵」は絶対読みたいですね。面白いことに、歴史好きのオヤジの本棚に吉川英治さんの本はなかったんですよね。

だから、なんとなく読まずに来ましたが、人生長い(と思うの)で、いろんな人の本を読んで生きたいと思います。

歴史小説の読み方4

2008-01-06 00:08:58 | そのほか
第4章の子母沢寛です。

「新撰組」3部作と「勝海舟」「親子鷹」が紹介されています。

<内容>
やはり子母沢さんの生い立ちが紹介されています。有名な話ですが、子母沢の祖父は彰義隊の生き残りで、けっこうやくざな人だったらしいです。子母沢さんは、この祖父に育てられたそうです。

だからか、子母沢さんの初期は「股旅物」ばかり書いていたそうです。いわゆる祖母の面影を追い求めていたようなことが書かれていました。

その後「新撰組」や勝の小説「勝海舟」「親子鷹」を書かれたそうです。

会田さんは子母沢さんがいなければ新撰組の真実は分からなかったようなことを話しております。事実、新聞記者時代の子母沢さんが新撰組の生き残りに取材したものを三部作として発表したわけですから。

司馬さんも、この三部作を大いに参考にしたと言っています。

ただ、会田さんは、子母沢さんは残念ながら祖父の影響からか、反体制の人物しか描けなかったというております。新撰組、勝海舟…と。

確かに、これなどは「書きたいものを書く」という本人の自由とも思いますが、会田さんはそう言うております。

傑作「親子鷹」は海舟と父の話ですが、まさに子母沢さんと祖父の関係と同じとありました。そして、最後に海舟が明治政府で役職をもらう前で筆を置いているのも残念だとありました。

<新聞記者>
司馬さんや松本清張さんもそうですね。記者というのは、自ら足を運び、取材し、事件の本質を見抜き、事実を書く。一方で、簡潔に面白く書く作業が求められます。歴史小説家には向いている職種かもしれないですね。

この評論を読んで「親子鷹」「勝海舟」を読みたくなりました。ま、新撰組三部作は絶対読みます。

あと2作か…。