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インテグラな日々

本、音楽、そしてスポーツ…!

藪の中

2008-02-25 01:28:31 | 芥川龍之介
芥川龍之介さんの「地獄変・偸盗」から「藪の中」を紹介します。

ちょっとジャンル的に違うかもしれませんが、久々に黒澤明さんの「羅生門」を見たので。

この作品は映画が先で、その後に原作を買いました。

映画☆☆★ 本☆★ という感じです。

映画はDVDを持ってますし、何度も見て、人にも勧めてますので☆☆☆と言っていいかもしれません。

本の評価が低いのは、単純に古文が苦手で、あまりよく分からないからです。つまり、自分の実力不足。もっと勉強しとけば良かったな、と悔やんでおる次第です。

<内容>
ある男が殺され、事件を目撃したきこりの証言から話が始まります。

彼は、世に悪名高い盗人・多襄丸が武士を殺し、その美しい妻を犯した一部始終を語ります。

この話の面白く、ミステリアスなところは関係者の証言がみんな違うところです。

多襄丸は「おれが男を殺した」と言います。

美しい妻は「私が殺した」と言います。

死んだ男は霊媒者の力を借りて「自殺した」と言います。

そして、真相は明かされません。

つまり、真相は藪の中…。ノーバディノー。神のみぞ知る…ということです。

<感想>
これは芥川さんが平安時代の史実を脚色したもので、元ネタはロシアの作家の話などとも言われています。

で「羅生門」は「藪の中」より複雑になっています。

上の3人のほか、もう3人が主要人物として登場します。

一人が小説に出てくる、きこり。もう一人も小説に出てくるお坊さん。

そして、この二人から話を聞く下人です。

この3人が深い話をしていきます。

いわく、

「人間は都合のいい嘘をつく」

「都合の悪い真実は隠す」

などなど。

そして、映画は多襄丸、妻、夫のほか、一部始終を目撃したきこりも事件について語ります。

きこりも3人と違うことを言います。そして、下人がきこりに突っ込みます。

「お前も嘘ついてるじゃねえかと…」

う~ん、いったい真実はどうなんでしょうね。

毎回、DVDを見るたびに推理しますが、分かりそうで分からない。

最初から答えはないのかもしれませんね。

<羅生門シンドローム>
この作品は日本で酷評されたそうですが、海外では絶賛の嵐でベネチア国際映画祭やアカデミーで賞を取っています。

となると、日本で騒がれるのはいつものことですね。

以後「羅生門」のプロットはさまざまな国内外の映画で使われてきましたし、証言が食い違うことを羅生門シンドロームと海外ではいうそうです。

この作品の影響力の強さを感じます。

なんか、小説より、映画の話になりましたが、だれかに事件の全容を解いてもらいたいですね。

<次は>
松本清張シリーズということで、「ひとりの武将」です。

調略

2008-02-25 00:51:48 | 松本清張
本日も、松本清張さんの全集36「地方紙を買う女」に収録されている「調略」を紹介します。

これは、戦国大名・毛利元就の話です。

<内容>
元就の二つの調略を軸に書いた話です。

一つは、大内義隆を滅ぼした陶晴賢に対するもの。

二つ目は、山陰の尼子晴久に対するものです。

<感想>☆☆★
この作品はあわあわと進んでいきますが、よくよく考えると深いですね。

どちらの調略も有名な話ですが、あらためて読むと、元就の謀略というものは恐ろしいものです。

見事さで言えば、北条早雲や斉藤道三以上であり、悪辣さから言えば、竜造寺隆信や松永久秀、宇喜多直家、最上義光らより上かもしれませんね。

元就の智謀により、陶家と尼子は踊らされ、自家の第一の重臣(忠臣)を殺してしまい、やがて元就と戦う力をなくしていきます。

この辺の智謀はすごいです。

殺された重臣はお家のために奮闘してきて、突然あらぬ疑いをかけられ殺されるわけですから。

彼らは「この世に神も仏もいないのか…」と愕然となったことでしょう。

<余談1>
冒頭に元就の家訓があります。

そこには、

我らは思いのほか、人を殺している。この応報は必ずやってくるものと思っている…。

とあります。

この出だしに引き込まれましたね。

三本の矢などのエピソードから、英雄・元就や人格者・元就を考えてしまいますが、「そういえば元就はこういう人でもあったんだな~」と。

戦国時代はまさに弱肉強食。人をだましてでも生き残ることが求められた時代ですもんね。じゃないと、殺されちゃうわけですから。すごい時代だったんですね。

<余談2>
元就は尼子家を滅ぼすため、尼子の重臣(忠臣)・尼子国久に目をつけます。

そして、流言を流し、嘘をでっち上げ、だまされた尼子晴久は国久を謀殺します。

その後、尼子は毛利家に滅ぼされるのですが、面白いのはその後ですね。

尼子の頭領・晴久に殺された国久の一族が、山中鹿之介に擁立され、打倒・毛利、尼子家再興の運動をするわけですから。

歴史って面白いですね。

明治金沢事件

2008-02-20 03:03:09 | 松本清張
「松本清張全集36」の「地方紙を買う女」から短編「明治金沢事件」です。

これは最初に発表した時のタイトルは「明治忠臣蔵譚」だったそうです。

そういう話です。

<内容>
明治2年、金沢藩が舞台です。

金沢藩とは加賀前田100万石のお家のことで、明治となり、藩主は藩知事となっていた頃の話です。

藩の執政・本多政均はもともと加賀藩の家老で、前田家の近代化を進めていた人で
明治新政府からも評価されていた人だそうです。

ところが、彼は藩庁で二人の男に「奸賊」として刺され、絶命します。

実行犯は二人でしたが、仲間は8人いました。

一人は切腹し、9人がつかまります。

彼らの言い分は、国賊・本多はいたずらに藩の近代化を進め、前田家の家風を貶めた、ということでした。

衝撃的な事件にもかかわらず、9人には寛大な処置が取られます。

そんななか、黙っていない人たちもいました。

本多家の人間です。

彼らが騒ぎたてたため、実行犯二人は切腹。残りは謹慎になります。

しかし、それでも収まらない本多家の弥一らは夜な夜な会合を開き、あだ討ちを誓います…。

<感想>☆☆★
これは深い話ですね~。清張さんはこの話にメッセージらしきものを入れています。

それが考えさせられますね。

そもそも、先見の明がある藩執政・本多政均を、時代錯誤ともいえる認識で天誅を下した10人の武士からして考えさせられます。

先見の明がある政均にしても、自分が殺される危険性を感じていなかった…。

それよりも、あだ討ちをした本多弥一らの考え方ですね。

彼らは殿のあだ討ちを考え、実行に移します。

彼らの頭にあったのは、赤穂浪士のあだ討ち。彼らのように世論が評価してくれる義挙を目指したわけです。

清張さんは最後、こんな言葉で筆を置いています。

「彼は死ぬまで赤穂義士の意識が頭から離れなかった。

嗤うことはない。

人間は演技の模本がなければ、思い切ったことが出来ぬものである。」

つまり、彼らは殿のためにやったわけではない…ということですね。

<不平不満>
本文中に書いてありましたが、彼らにしても赤穂浪士にしても、果たして真のあだ討ちだったのか…のようなことが書かれています。

二つの事件に共通しているのは、社会からはみ出された人間の不平不満が原因だったとあります。

赤穂浪士は、お家断絶がなければあだ討ちはしなかったはずとあります。

金沢の事件も、明治となり、武士から平民となり、不遇の身の上の本多弥一らの不満が爆発し、事件になったのではないかとあります。

そういえば、明治は西南戦争など元武士による反乱(といえるか分かりませんが)が多いですね。

清張さんにしろ、司馬さんにしろ、ただの話に終わらず、社会の縮図や深い意味が込められているのが、面白いのかもしれませんね。

<次は…>
同じ本に収録されている「調略」です。

















<関係ない話>
本日は会社をずる休みし、AC/DCのフィルムコンサート行ってきました!

本日(昨日?)がボン・スコットの命日です。合掌。

で、伊藤政則氏の話は面白かったです。

知らない話をいっぱい聞けて、行って良かったな~。

AC/DCショップにも行ったし、明日(本日?)発売の再発CD第3弾もタワレコで買ったし。

しかし、同じアルバムを何枚も持ってるオレって、本当にAC/DCに命を捧げているな~と思います。

コンサート行きて~。

AC/DCサイコー。

しかし、日本人はいつになったら世界ナンバー1バンドの良さに気づくのでしょうか…。

やはりビジュアルが良くないとダメなんでしょうか~。超絶テクを見せないとダメなんでしょうか~。

伊藤氏言っておりました。「本当に日本じゃ売れてないよ」と。

アンガスよ、いっちょ早弾きを見せたれ! 小学生スタイルをやめて、DCブランドをまとえ!

ブライアンよ、帽子を取って髪を紫に染めろ~!

でも、そんなの見たくね~。

やはりAC/DCはAC/DCだからサイコーなんです!!

秀頼走路

2008-02-18 01:18:50 | 松本清張
「松本清張全集36」などに収録されている短編「秀吉走路」を紹介します。

<内容>
主人公は、豊臣秀頼ではなく、大坂の陣で、大坂方に組した武将・山上順助。

順助は関が原で取り潰しにあった家の男で、病の兄の命令でいやいや大坂城にこもった。

やる気のない順助だけに、大坂落城とともに逃亡する。

そんななか、大坂城から逃げ出したと思われる女性を見つける。

彼女は順助が徳川方だと思い、金の棒をやるから藤堂家へ案内してほしいという。

順助は徳川家の武将に成りすまし、金をもらい、案内するふりをしながら大阪城を離れていく。

やがて順助の素性が女にばれるが、順助は女を犯し、さらに彼女が持っていた秀頼から拝領したと思われる桐の紋のある服を奪い逃走する。

その後、順助は摂津の豪農家に匿われ、豪農の愛人とわりない仲に。まもなく豪農にばれ激怒されるが、豪農は何を勘違いしたのか、桐の紋の服を見て順助を秀頼と思う。

小悪党の順助は肯定も否定もせず、やがて秀頼らしき人物として薩摩を目指す…。

<秀頼の薩摩行>
今作は、秀頼が大阪城で死なず、薩摩へ落ち延びた伝説を基に書いているそうです。

しかし、落ち延びたのは秀頼ではなく、秀頼のふりをした男ということですが。

確かに、清張さんが参考にした資料によると、とても秀頼とは思えない無頼の徒のような男の逃避行という感じがします。

寺で酒をただで所望し、いつか褒美を与える…というような。

順助がそんな人物かどうか、はたまた実在した人物かは分かりませんが、当時は秀頼のふりをしていい目を見た詐欺師的な人物も何人かはいたかもしれないですね。

もちろん、秀頼本人が薩摩へ逃げたということも否定はできませんが。

ま~なかったでしょうが…。

<感想>☆☆★
歴史小説というより、ただの小悪党の話で新鮮でした。

えてしてこういう人物が詐欺師というか、とんでもないことをやるんでしょうね。

ただ、本人は酒が飲みたい、女を抱きたい、楽をしたい…それしか考えていない。

決してだまそうとか、悪いことをしようと思ってやっていない。

相手が勘違いしただけ…ということです。
何かの本で読みましたが、詐欺師というのは人をだますことを何とも思ってないそうです。

自分たちは頭がいい。だまされるのは頭が悪いということです。

なんか最近、こういう人たちが多くなってきましたね~。世の中…。

<次は>
続いて、松本清張さんの「明治金沢事件」です。

武将不振

2008-02-13 01:09:25 | 松本清張
松本清張さんの短編「武将不信」を紹介します。

「松本清張全集」の36巻などに収録されています。

<内容>
出羽の戦国大名・最上義光が、徳川家康の命をうけ、長男・義康を廃し、次男・家親を跡取りにする話です。

この作品では、義光は長男・義康を愛しているものの殺害し、あまり好きではない次男・家親を跡取りにする様子が描かれています。

<武将不信>
「武将不信」の武将は、義光のことです。

義光は秀吉時代から家康に接近し、数々の贈り物を届け、次男を預け、大地震が起きた時には秀吉のもとではなく、家康のもとに駆けつけるなど、常に家康の機嫌を伺っていた人です。

そして、家康のためにかわいい長男を殺し、次男をたてた。

臨終間際には、老体にムチ打って家康にいとまごいをして、後事をたくしています。

ところが、義光が死んだ数年後、最上家は取り潰しに遭います。

彼が生きていたら「世のすべてを不信とするだろう」ということです。

<感想>☆☆★
義光の心情の葛藤がいいですね。

「長男を殺したくないのに、殺さないといけない。次男は好きではないのに、次男を跡取りにしないといけない…」

ではどうするか。

仕方ないので長男をだんだん遠ざけて、長男に非があるような世論を作っていく。
長男は必死に義光に弁明しようとするが、(内心苦しいながらも)義光は会おうとしない…。

家を守るためには謀略をいとわない義光の生き方がいかにも戦国生き残りの武将という感じがしました。

<次回は>
やはり松本清張さんの短編「秀頼走路」です。

最上義光

2008-02-09 03:21:11 | そのほか
中村晃さんの「最上義光 伊達・上杉と死闘を演じた出羽の勇将」を紹介します。

PHP文庫の本で、伊達政宗が大好きな自分としては思わず手が出た本ですね。

ほか、佐竹親子、蒲生氏郷、片倉景綱の本も出てて、全部買いました。

タイトルに「伊達・上杉と戦った」とありますが、そういうシーンはほとんど出てきません。

<内容>
義光が父・義守と骨肉の争いを始めたころから、出羽57万石の太守になるまでの半生が描かれていきます。

甥の伊達政宗との因縁や東北の関が原の戦いといわれた上杉軍の直江兼続との戦い、義光の徳川家康への接近、そして義光とは切っても切れない数々の陰謀が描かれています。

<感想>☆☆★
普通に面白かったですね。

もともと義光に興味を持っていて、彼の小説を読むのも初めてだったので。

いつもは政宗を主人公にした話の中の義光でしたが、今回はその逆で新鮮でした。

個人的には、もっと政宗や義姫との絡みがほしかったかなと。

<感想2>
気になったのは、義光の人間像ですね。作者が山形出身というのもあるのかもしれませんが、義光が人格者で英雄として描かれているところ。

義光の一般的イメージは、陰謀家だと思います。戦国時代では、松永久秀や竜造寺隆信、宇喜多直家らと並んで有名です。

本書では悪謀家ではないとあります。

多くの歴史書は伊達家側の資料のため、負のイメージが付けられたと。

ウィキペディアを見ると、まさに作者と同じことが書かれています。

ただ…、どうなんでしょうか。

本書では最初から最後まで陰謀、だまし討ちのオンパレードですが…。

家臣がかってにだまし討ちしたとか出てきてもね。

何か、義光が人格者で英雄として描こうとしているのは無理がある気がします。

そこは読んでて気になりました。

<義光の人物像>
僕は謀略家だったような気がします。

本書やウィキペディアには奥羽永慶軍記に義光は謀略家ではないようなことが書かれているそうです。

この書物は出羽の人が書いたそうですし、信憑性が疑われる内容も多いそうです。

義光は父と対立し、弟を殺し、周辺地域を謀略で併呑し、最後は息子も謀殺。
この事実だけで十分、謀略家だと思います。

もちろん政宗も弟を殺してます。戦国時代はそういう時代でしょうけど、戦いでの痛快な勝利や颯爽とした行動などがあれば謀略をしてても負のイメージはつかなかったのではないでしょうか。

義光は秀吉や家康が統一した後も、息子を殺していますし、彼の死後、家来や息子たちが謀殺や謀略をしすぎてお家取り潰しにあったわけで、最上家(義光)にそういう家風があったといえるんじゃないでしょうか。

<政宗と義光>
二人の跡取り選びは性格が出てて面白いですね。

政宗の長男は秀宗で、次男は忠宗。

義光の長男は義康で、次男は家親。

政宗の長男の秀宗は秀吉のそばで成長。「秀」は秀吉の秀です。政宗は家康の世になると、秀宗を退け、次男の忠宗を跡取りにします。「忠」は秀忠の忠。

家康は政宗が忠宗に跡を継がせたことを評価し、宙に浮いた秀宗を分家として宇和島に土地を与えるわけです。

一方の義光。

長男・義康を跡取りにしようとしたものの、家康は次男・家親を跡取りにすることを望んだそうです。

家親の「家」は家康の家で、義光が家康に接近するため、家親を家康に預けていたそうです。

義光は家康の意にかなうため、家親に家督を譲ることにします。それも長男・義康を謀略で殺すという方法で。

ここが政宗と義光の違いだと思います。

政宗は堂々と次男を継がせ、家康に恩を売る。義光は姑息な方法で次男に継がせる。

英雄・政宗と謀将・義光の差ではないでしょうか。

とはいえ、政宗の長男の秀宗は妾腹の子で、忠宗は正妻の子で、代えやすかったとは思いますが。

<次は…>
最上義光を描いた、松本清張さんの短編「武将不信」を紹介したいと思います。

2008-02-08 02:22:00 | 池波正太郎



池波正太郎さんの短編集「炎の武士」収録の「色」を紹介します。

新撰組副長・土方歳三の話で、映画にもなっているそうです。

この本は新撰組の本を探している時に見つけて、最初の1ページを読んで即買いました。

最初から非常に引き込まれました。すごく面白かったです。

でも、内容を全く覚えていなかったので今回読み返しました。いや~あたらためて面白かったです。

<内容>
新撰組入隊後の土方歳三の半生を描いた作品です。

そこに、恋人・お房との「色事」を絡めながら物語が進んでいきます。

<感想>☆☆★
この短編の面白いところは、あの土方が一瞬だけ人間らしい弱さを見せるところじゃないでしょうか。

もちろん、今作も、怖い土方が描かれています。

出だしでは、

近藤はあれで親しみやすいところがあったが、
土方だけはいただけなかった…

とあります。

怖い上に欠点がないのが土方ですね。

美男子だけに町で見初めたお房とすぐに恋仲になります。

完璧な土方がいるわけです。

どの小説でも、土方はこうですね。

ところが…。

<弱い土方>
物語も終盤に差し掛かり、薩長に押され、新撰組は京都を離れることになります。

そこで、土方はお房と久しぶりに会います。

二人の間では、約束事がありました。

それはプライベートなことや仕事について語らないこと。会うときは、男と女の関係を純粋に楽しもうということだったわけです。

そんななか、常に突っ張って生きてきた土方が折れます。

お房に向かって泣き言を言い、慰めてもらおうとするのです。

ここ、いいですね~。

だって土方だって人間です。ぜったいこういう面もあったはずです。

しかし、お房はピシャリ撥ね付けます。それはルール違反だと…。

う~ん。

男と女ってこうかもね。

このあと土方はお房に詫び、別れます。

そして、とことん薩長と戦い、五稜郭で散ります。

近藤が死んだとき、また取り乱しますが…。

最後にまたお房さんが登場します。

<池波さんの新撰組>
けっこう書かれてますね。自分は、今作しか読んでいませんけど。

面白いのは、真田もの&忍者ものと違って、難しい漢字がけっこう出てきます。
あと、やはり資料が多いせいでしょうか、史実っぽい感じで書かれています。

ウィキペディアによると、司馬さんと同じで、子母沢さんの新撰組3部作を参考にしているらしいですね。

いつか池波さんの新撰組シリーズも読もうと思っています。

<次回は…>
たぶん読み終わりそうな、中村晃さんの「最上義光」です。出羽の戦国大名で、伊達政宗の小説にはよく出てくる人です。

燃えよ剣

2008-02-06 02:35:16 | 司馬遼太郎

司馬遼太郎さんの代表作「燃えよ剣」を紹介します。上下2巻で、新撰組副長・土方歳三の話です。

え~最初に言い訳するわけじゃありませんが、感想は人それぞれということで…。

<多くの人の座右の書>
あの江夏豊さんも、テレビ朝日の大木アナも本書を座右の書と言っております。

しかも、新撰組の代表小説というと、本書をあげる人が多いですね。

自分は、ドトールやベローチェというサテンで、美人のお姉さんがカバーもつけずに本書を読んでいたのを見たことがあります。

カバーをつけないということは、周りの一般ピーポーに、私は「燃えよ剣」を読んでますよと、アピールしていると考えていいですよね。

つまり、それだけ面白い + 私は大好き、ということです。

若いOLさえもひきつけるものが本書にあるんでしょうね。

で、内容です。

<内容>
百姓の子「バラガキのトシ」こと土方歳三が、新撰組副長として近藤勇を助け、かつ新撰組を最強の集団に作り上げていく様が描かれていきます。

そして、近藤が投降し、新撰組が瓦解した後も、一人で戦い続け、やがて五稜郭に立てこもり新政府と戦って壮絶な最期を迎えます。

一方で、お雪との恋が描かれていきます。

<感想>
自分は1回挫折しています。

めちゃくちゃ面白かった「新撰組血風録」の後に、めちゃくちゃ期待して読みました。

なんたって、誰もが面白いと絶賛している本です。

その期待に押しつぶされたのでしょうか。自分の感想は☆★★です。

はじめから、土方の恋人のお雪やライバル七里研之助が実在しない人物だと知っていたから冷めた目で見ていたからかもしれません。

それに上巻がほとんど新撰組入隊前の話(フィクション?)というのも原因かも知れません。

もちろん、新撰組入隊後の話は手に汗握るほど興奮しました。

五稜郭での戦いもそうですし、敵艦を襲撃したアンビリーバブルな戦いもぶったまげました。

<土方>
しかし、彼の妥協のない壮絶な生き方に圧倒されて、ちょっと引きもしました。

みなさんは、その土方の生き方がカッコいいと思ったのでしょうが、自分は壮絶すぎて「なぜ、そこまで…」と思ってしまいました。

だからこそ、土方の写真は(美男子ですが)どことなく、(その生き方ゆえ)寂しい顔をしているのかな、と思ったしだいです。

<感想2>
本日、会社の先輩と飲んでおりました。その人も司馬さんのファンで、自分と同じで「梟の城」や「坂の上の雲」が大好きだそうです。

驚いたことに、その人は本書はイマイチだったと言ってました。

<有名な話>
有名な女性歴史作家が、土方のことを調べていて、どうしてもお雪さんのことが分からなかったそうです。

つまり、どの歴史書を読んでも出てこないと。

で、思い切って司馬さんに電話すると「いや~」と言って司馬さんが婉曲にフィクションだと言ったということです。

おもろいすね。

実際の土方は女遊びをけっこうしていて、あの顔ですのでモテモテだったそうです。

<次回は>
ここいらで、池波正太郎さんが土方を描いた短編「色」を紹介します。けっこう、面白かったです。

寺田屋騒動

2008-02-05 02:27:19 | 海音寺潮五郎


本日は、海音寺潮五郎さんの「寺田屋騒動」を紹介します。

これは「列藩騒動録」が面白かったので、続けて買った本です。小説ではなく、史伝ですね。

<内容>
幕末の有名な事件、寺田屋騒動について検証しています。

寺田屋騒動は、有馬新七ら薩摩藩尊皇派たちが伏見の寺田屋に集結し、
関白九条尚忠や京都所司代酒井忠義を襲撃しようと企てますが、

倒幕など頭になかった島津久光によって粛清される凄惨な事件です。

本作は、事件に触れる前に、そもそも天皇と幕府との関係、そして島津のお由羅騒動、安政の大獄など当時の時代背景などを説明してからスタートします。

そして、島津久光、大久保利通、西郷隆盛ら薩摩の主要メンバーの動きと、寺田屋騒動の薩摩内外の主要メンバー(真木和泉、田中河内介ら)、彼らを上意討ちしたメンバー(奈良原繁ら)の動きが描かれていきます。

<感想>☆☆★
あまり知らなかった寺田屋騒動がよく分かりました。

それ以上に大きかったのが、大久保と西郷の人間像を知ったことですね。

今までは、二人は幼なじみで、西郷は器が大きく、人望がある。大久保は策士で、実務肌というような印象しかありませんでした。

そんな正反対の二人が、なぜ仲が良いのか、イマイチ分かりませんでした。

ところが本作を読んで分かった気がします。

大久保は策士ですが、ただの策士ではなかったんですね。

西郷は口先だけの男が嫌いだったようですし、大久保は口と行動が伴い、さらに死を恐れない男だったから親友といえる関係だったんでしょうね。

一番インパクトを受けたのは、

桜田門外の変のあと、水戸藩の人間が薩摩を頼って現れた時のことです。

薩摩の人間は水戸藩の人間を助けようとしますが、大久保一人は反対します。

「見殺しにしろというのか」と迫る血気盛んな仲間に対し、

「そうだ。見殺しにすべきだ。大事の前の小事だ」と言います。

「そして、今後もこういう人間は来るが、見殺しにすべきだ」と言います。

自分はこれに衝撃を受けましたね。

海音寺さんは「大久保はあっぱれ」と言っていますが、自分もそう思いました。

客観的に見て大久保の発言は非常に正しいわけですからね。つまり情や意地に流されず、大局を考えろと言っているわけです。そして、その行為を非難されてもいいじゃないかと。そんなものは小事だと。

しかも、大久保は仲間に斬られるのも覚悟で言っているわけですからね。

このくだりを知るだけでも本書を読む価値はありますね。

<大久保>
彼が薩摩にいなかったら、久光は倒幕には動かなかった。

薩長同盟もなく、(本書を読む限り)西郷も動かず、明治時代はいつか来たでしょうが、かなり遅いものになっていた気がします。

そう考えると、大久保という男の功績は非常に大きいものだったのですね。

大久保という男に興味を覚えました。

<翔ぶが如く>
本書を読んで、幕末の薩摩藩の動きが手に取るように分かりました。

だから、本書を読んでいる時、たびたび、司馬さんの「飛ぶが如く」を読みたいと思いました。

前は挫折しましたが、今読んだらぜったい面白いと思うよなと…。

<余談>
あと面白かったのは、長州藩の有名なエピソードのことが書かれていたことです。

長州藩主と家老が「そろそろ倒幕を…」「いや、まだ早い」みたいなことを言う有名な話です。

海音寺さんはこれは作り話ではないかと言っています。その理由は割愛しますが、本当か嘘か分からないのも歴史の面白さですね。

<次回は>
新撰組に戻り、司馬さんの「燃えよ剣」を紹介します。

薩摩浄福寺党

2008-02-04 01:57:20 | 司馬遼太郎
司馬遼太郎さんの短編集「アームストロング砲」から「薩摩浄福寺党」を紹介します。土方歳三や大石鍬次郎らが登場する話です。

<内容>
薩摩藩士の肝月又助は、京の浄福寺に常駐する薩摩藩士の中でも特に人騒がせな男だった。

当時は幕府と薩摩はいい関係にあり、新撰組はもっぱら長州をはじめとする不逞浪士の取り締まりに当たっていた。

ところが、又助は、土方らの一行を鉄砲で驚かせたりとやりたい放題。

近藤勇は薩摩藩に苦情を言うのがやっとで、薩摩との関係上どうすることもできなかった。そのため、新撰組は又助と顔を合わせるのを避けるようになっていった。

そんな中、土方は又助の闇討ちを計画する。

やがて薩長同盟が成立。新撰組は薩摩に対する気兼ねがなくなる。

そんなある時、新撰組の大石鍬次郎一行は又助を見かけ、ここぞとばかりに切り捨てようとする…。

<感想>☆☆★
司馬さんは幕末という時代には無意味な死がいっぱいあったが、又助の死もその一つだと言っています。

この話が本当かどうか知りませんが、この話のようなことはあったろうし、現実にもありそうな話ですね。

蛮勇のような度胸を持つ男が、権力を持つ者に対して嫌がらせをする。

微妙なバランスの中、生きながらえてきたものの、やがて墓穴を掘る。

味方でさえも「そりゃ、しょうがないよな」となってしまうわけですね。

ただ、あの新撰組さえも避けたりするのは痛快とも言えますね。

<次回は…>
読み終わったばかりの海音寺潮五郎さんの「寺田屋騒動」です。