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インテグラな日々

本、音楽、そしてスポーツ…!

夏草の賦

2015-10-20 01:19:21 | 司馬遼太郎
連ちゃんで「夏草の賦」上下巻です。

久しぶりに読みましたね。浪人時代以来ですから、25、6年ぶりくらいでしょうか。月日がたつのは恐ろしいですね…(苦笑)

<内容>
四国を統一した戦国大名、長曾我部元親の半生を描いた作品です。司馬さんの戦国高知三部作の一作目ですね。いま、思い付きました(笑)。「竜馬がゆく」を入れると高知四部作ですね~。

序盤は元親と妻の奈々の両方の目線で描かれています。

<感想>☆☆☆☆
あらためて、面白かったです。何といっても悲痛なのは、終盤の信親の死ですね。たまたま、上司に無能な人間が来たために悲劇に見舞われる。仙石権兵衛のことですが…。今回読んでて思ったのは、元親にしろ、信親にしろ、ほかにやりようがなかったのかな、ということです。とくに元親は四国を統一した英雄なわけですから、権兵衛の言うことをきかず、もっと独断で動けなかったのかと同情してしまいました。

<元親>
この人について考えたことはあまりありませんが、あらためて思うのは四国を統一したものの、秀吉に敗れ、土佐一国だけにされたのはかわいそうということ。4カ国を1国とは少ない。信長からも土佐1国だけにされる予定だったわけですから、確かに元親は本編でも書かれていましたが、運が悪い感じがします。割合的には島津家と同じくらい削られたんでしょうが、やはり1国というのは少ない気がしますね。

<伊達政宗>
要所、要所で政宗の名前が出て、政宗好きとしてはうれしかったのですが、あれ?と思った箇所がありました。

もしかしたら気のせいかもしれませんが…。土佐一国を安堵された元親が、政宗も悔しさは同じだろう的なことを考えるシーンがあったと思います。たぶん。この時は、確かにそうだと思いました。ただ、その後、元親が島津攻めに参加するシーンがあります。

あれ…。

とすると、時代的に政宗はまだ秀吉に屈服してないのでは…。あれ、なんかおかしいような…。まあ、いっか、という感じです(笑)

この国のかたち

2015-10-19 23:59:39 | 司馬遼太郎
<感想>☆☆☆
星三つというところでしょうか。全6巻ですが、薄いですし、一気に読めます。

序盤は、司馬さんの昭和軍閥への恨み節といったところです。いろんなところで書かれている内容ですね。明治時代までは誇れる日本の歴史だが、太平洋戦争を引き起こした時代だけは日本として異質だったと嘆いていらっしゃいます。ゆえに、韓国、中国に永遠と恨まれることになったと…。

<未完>
裏書にありますが、この作品は「文芸春秋」の巻頭随筆で、司馬さんの死で未完になっています。そのため、最終の6巻には、本編のほかに、講演記録などが入っています。

<余談>
面白いというか、全然面白くありませんが、何巻か忘れましたが、朝鮮は江戸時代とか、さまざまな時代で日本を見下していたことが書かれています。反日のお国柄ですが、もともとそういう素養というか、お国柄なのかなと思ってしまいました。

もちろん、太平洋戦争に関しては日本がさまざまな国にご迷惑をおかけしたことは事実であり、正当化するつもりはありません。まあ、ただ昔から見下す(見下したい?)傾向はあったのかと…。

まあ、これに関しては難しい問題ですしね。

まあ、日韓問題、日中問題はみなさん意見があり、僕もありますし、親父もあります。韓国の方の言い分、中国の方の言い分。日本人の言い分、さらには反日ではない台湾、東南アジアの国々の人々の言い分も…。教育、政治、いろいろ入ってきます。ただ、危険な話題でもありますし、このへんでやめときましょう。

ちなみに、うちの嫁さんの友達は韓国の方と結婚され、とても大事にされ、僕ら日本人より男らしいそうです。と、嫁さんが言っております(苦笑)。

あと、ひとつ…。

うちの亡くなったじいちゃん、ばあちゃんは福岡で炭坑を経営してたとかで、それは裕福だったそうです。しかし、炭坑がつぶれたら、借金抱えて大変な目にあったそうですが。

ぼくは最近、知ったのですが、戦時中はあちらの方をばあちゃんたちがかくまってあげたそうです。ちょっと、詳細は忘れてしまったので、おやじかおじさんたちにまた聞きます。

そしたら終戦直後、あちらの方たちは相当、恨みが積もっていたのでしょう。日本人を襲撃したそうです。もちろん、福岡の出来事です。しかし、うちは襲われなかったそうです。

何が言いたいかということではなく、そういうことがあったそうです。ぜんぜん、本書とは関係ありませんが…。

<巨星、墜つ>
裏書に書いてあります。まさに巨星、墜つですね。

個人的に昔の方は今の人たちより、教養があり、勉強ができた気がします。漫画も昔の作家の方がレベルが高かった気がします。いわんや、小説家も…。ま、そんなことはないという意見もあると思います。このへんは個人的な感想です。

だからこそ、司馬さんのような国民作家は二度と出てこない気がします。

小説だけでなく、エッセイ、提言も深い気がします。

果たして、今の時代に生きておられたら、どんなことを言うのでしょうか。



花妖譚

2015-09-18 01:01:13 | 司馬遼太郎
記念すべき、久しぶりのレビューが司馬さんの「花妖譚」。

まあ、地味な作品ですが、直近で読んだのがたまたまこれだったので…(笑)

なぜか、文春文庫の司馬作品を完全制覇しようと思い立ち、読んでない作品を片っ端というほどでもないですが、読んでます。

と、いうことで…

<内容>
司馬さんが福田さん時代に書いた短編集で、花にまつわる妖しい10篇の話です。

「森の美少年」     ナルキソス 水仙
「チューリップの城主」 別所長治  チューリップ
「黒色の牡丹」     蒲松齢   牡丹
「烏江の月」      項羽    虞美人草
「匂い沼」       子青    沈丁花
「睡蓮」        役ノ小角  睡蓮
「菊の典侍」      菊の典侍  菊
「白椿」        塩売長次郎 白椿
「サフラン」      山猫    サフラン
「蒙古桜」       男     蒙古桜

左からタイトル、主人公、花ですね。

まあ、ほんとに薄い本なので、あっという間に読み終わります。

ギリシャあり、中国あり、モンゴルあり。日本も戦国大名、忍者のおおもとといわれる小角や幻術師の話もあります。

<感想>☆☆
AMAZONの評価はめちゃくちゃ高いですね。もちろん、つまらなくはないですが、まあ無理に花に結び付けたりしてますし、何より一遍一遍が短いというのもあって、この評価です。読み応えというところで、ちょっと低めです。福田さん時代ですし…汗





英雄児

2008-11-12 00:55:51 | 司馬遼太郎


せっかくなので、河井継之助の短編「英雄児」も紹介します。

めちゃめちゃ面白いです。☆☆☆の満点です。

<内容>
これは鈴木虎太郎という、継之助が通う塾の後輩?の話を基にした作品です。虎太郎は風変わりな先輩である継之助に驚きます。

年は取っているのに勉強はしない。しかも、自分に宿題をしてくれと言ってくる。しかし、虎太郎は徐々に継之助の魅力に取り付かれ、彼に師事します。

やがて、継之助は藩の家老となり、悲惨な北越戦争に藩を引っ張り込みます。長岡の人は相当、継之助に対して思うところがあったようで、彼の死後、継之助の墓は長岡の人に何度もこわされたそうです。

それほど、彼に対する地元の人たちの恨みは尋常じゃなかったようです。

ただ、自分の周りにいる長岡の人は継之助を英雄のように尊敬しています。時代は変わったというところでしょうか。

<虎太郎>
この人はのちに無隠と名乗ったそうですが、最後の話が涙を誘います。

継之助の墓は何度も壊され、居たたまれなくなった妻は北海道に居を移します。

無隠は何度も長岡を訪れ、壊された継之助の墓を何度も直したそうです。

そして、彼は何度も言ったそうです。

あの男の罪ではない。藩が小さ過ぎたのだ、と。

大きな藩にいれば大きな成果を残せたが、小さい藩にいたため悲惨な結果に終わったというのです。

そして、司馬さんはこういう言葉で結んでいます。

英雄というのは、時と置きどころを天が誤ると、天災のような害をすることがあるらしい、と。

2008-11-12 00:31:55 | 司馬遼太郎


司馬さんの「峠」を読みました。幕末の長岡藩の宰相・河井継之助が主人公で、上、中、下の3巻です。全然、長さを感じない面白さです。

短編「英雄児」は何度も読んだことがあり、興味をそそられていました。名作と評判の作品でもありますし。

<物語>
越後長岡藩という小藩の武士・継之助が、いつかは自分が家老になる時代が来ると信じて、勉学に励みます。とはいえ、学問を一生懸命やるわけではなく、遊女に入れ込んだり、放蕩三昧。学門は自分が気に入った本しか読まないというような…。

そんな彼が強烈なキャラクターと行動力、時代を読む力を認められ、本当に家老に昇進。そして、小藩ながら、薩長でさえ持ってなかった最新兵器のガトリング砲など近代兵器を大量に購入。

やがて、薩長率いる官軍に対し、幕末最大の戦いともいわれた北越戦争を引き起こす。

<感想>☆☆★
いや~面白かったです。残念なのは、後半の途中から仕事が忙しく、本を読んでも頭に入らなかったこと。一番いいところなのに。それまではめちゃくちゃ面白かったので、仕事が一息ついたら、そこからまた読みたいと思っています。

ただ「英雄児」に書かれていたガトリング砲をぶっ放して町人たちが大量に死ぬ場面がなく、あれ?というのもありました。「英雄児」でのその凄惨なシーンは、とくに印象に残っていたので。

<継之助>
しかし、すごい人ですね~。生き方が破天荒。そして、その行動力。とてもまねできません。また、写真で見るとおり、目力がすごいですね。継之助はその目力で人を圧倒するのが常だったそうですが、こういう人、たまにいますね。

そういえば自分の知り合いで、同じ苗…の人がいます(汗)。すべてが似てる!(汗)


<短編と長編>
長編「峠」はヒーローとして、短編「英雄児」はアンチヒーローとして描かれています。どちらも面白く、読み応えはあります。

この人も司馬さんが小説にして有名になったような気がしますね。そういえば、昨年でしたっけ、年末に河井継之助のドラマがありましたね。

京の剣客

2008-08-11 23:53:33 | 司馬遼太郎


続いて「真説宮本武蔵」に収録されている「京の剣客」です。

<内容>
これは、武蔵が倒したとされる吉岡憲法の話です。

まず出だしから引き込まれます。

剣の達人・憲法は、弟・又市郎に対してどこまでも酷薄です。

しかし、又市郎には一つの思いがあります。オレは兄を超えたのではないかと。

事実、憲法は道場に来なくなり、太りだします。そして、対外試合は全部自分に任せる…。

弟の鬱屈した思いがたまります。

そんな中、二つの事件が起こります。

一つは、兄・憲法が夜な夜な森に出没しては鳥が騒ぐといううわさ。

もう一つは、宮本武蔵の挑戦状。

当然、又市郎が戦うつもりでいたのに、今回ばかりは憲法が闘うという。

又市郎は怒る。アニキに勝てるのか?と。

アニキは言う。

負けるかもしれない。しかし、お前なら確実に負けるだろう。

弟は言う。

では、ここでどちらが強いか勝負しろ!と。

<感想>☆☆☆
これは面白いですね。

まず第一に弟の兄への鬱屈した思い。この二人のやりとりが面白い。

次に、憲法の深夜の謎の行動。憲法は深夜何をしているのか。なぜ、鳥が騒ぐのか。

さらに、憲法と武蔵の戦い。

審判は引き分けを宣告する。

しかし、武蔵は自分の勝ちを譲らない。なぜなら、憲法の白いハチマキは血ににじんでいるではないかと。

しかし、審判は言う。なら、おぬしの赤いハチマキを取ってみろと。武蔵は最後までハチマキを取らなかった…。

<最後のエピ>
これがまたいいんですよね。

それから数十年後。時は江戸時代。武蔵が熊本で暮らしていた時のこと。

当時、辻斬りが流行っていたとのこと。

そこへ、酔っ払った商人のオヤジがふらふらと通りかかった。

そこで、2人の辻斬りが斬りかかると、オヤジは扇子で軽くいなして歌を歌いながら去っていく。

驚く辻斬りが「あなたはだれだ?」と問うと「けんぽうさ」と答えたとか。

う~ん、いいね、これ。

武蔵は肥後の国で憲法を殺したと言いながら、当の憲法は京で伝説を作っていた。

思うに、すごい人は年を取ってもすごいということ。マサカリ村田がいまだに140キロ出すわけですからね。

真説宮本武蔵

2008-08-11 23:07:49 | 司馬遼太郎


短編「真説宮本武蔵」です。

これもけっこう読んだ話です。6回くらい読んだかな~。今、気づいたけど「宮本武蔵」とかぶってる箇所があります。気づくの遅い!

<内容>
130歳まで生きた渡辺幸庵の覚書を基に、武蔵の実像に迫っています。
130歳という時点で、なんか怪しい気はしますが…。

この人は徳川家光の弟の家老だった人で、武蔵に2度会ったことがあるそうです。

で、武蔵は柳生宗矩より強かったといっています。

<その実力は?>
今作は武蔵の実像に迫ろうとする短編です。

そこで書かれているのは、なぜ武蔵は二流、三流の剣客としか戦わなかったのか。なぜ、柳生宗矩や利巌、小野次郎左衛門といった有名な剣客と戦わなかったのか、とあります。

吉岡一門との戦いにおいても、武蔵は吉岡兄を廃人に、弟を殺したと言っているが、二人は天寿を全うしているとあります。

ま、どちらの言葉が正しいかは分かりません。お互い、自分の都合のいいことしか言わないわけですからね。

ただ、武蔵がかなりの剣の使い手だったものの、強い相手とは戦わなかったのは事実のようです。しかも、弱い相手でも尋常には勝負しない。少しでも負ける可能性があれば、戦わずに逃げたりしていたようです。

<感想>☆☆★
今作は武蔵の悲しい一面も描かれています。

武蔵は幕府や尾張藩などの大藩で3千石以上の知行をもらいたいと運動しますが、もちろんかないません。

そんななか、小藩の小笠原10万石から仕官の声がかかります。しかし、プライドの高い武蔵は断ります。たかが、10万石の家来にはなりたくないと。

代わりに養子の伊織を推挙します。伊織はのちに家老となり武蔵が要求していた以上の4千石!を賜ります。

侍大将になりたかった武蔵は死んでから念願がかないます。墓の中で侍大将の鎧を身につけたそうです。

ここに天才・武蔵の悲しみというか、滑稽さを感じてしまいました。

宮本武蔵

2008-08-11 13:39:43 | 司馬遼太郎

やっぱり、個人的にはこちらの武蔵の方があってますね。

この本を読むのは4回目くらいですけど、吉川さんの「宮本武蔵」を読んだ後だったので、今までよりすんなり頭に入ってきました。

<内容>
武蔵の生い立ちと吉岡一門との戦い。佐々木小次郎との戦い、そして吉川武蔵では語られなかった晩年が描かれています。

基本的には吉川武蔵と流れは一緒で、吉川武蔵の主要キャラクターのお通さん、お杉ばば、又八、城太郎、伊織も登場します。ほかに、沢庵和尚に夢想権之介、北条安房守らも。

この本を読むたびに権之介ってWHO?と思ってたので、吉川武蔵を読んで権之介がどういう人物か分かりました。

権之介は実在の棒術の使い手で、武蔵とは晩年も交流があったそうです。

<感想>☆☆★
司馬さんが冒頭と最後に書いた言葉が印象に残っています。

冒頭 「武蔵には、天才がおうおうにして持ついやらしさがある」
最後 「武蔵の晩年は、緩慢な悲劇であった」

この本を読んで思うのは、武蔵は剣豪というより、戦術家。だから、相手とは正々堂々と戦わない(笑)。相手をじらし、怒らせ、そのスキをつく。

また、勝てると思うまでとことん相手を研究し、自分は姿を隠して研究させない。

確かに、負けたら、それで終わりですしね~。

戦術家だからこそ、晩年は剣客として仕官するより、武将として高禄で召抱えられたいと思うようになったのでしょうか。これが司馬さんがいう緩慢な悲劇につながります。

<宮本武蔵・解説>
吉川さんの「宮本武蔵」の本文の後の解説に書かれたことが印象に残ってます。司馬武蔵は吉川武蔵より説得力があると。一方で「それは魅力につながるか」とあります。

解説を書かれた方は吉川武蔵の解説なのに、全体的に司馬武蔵の方がいいと書いているようで、「それは魅力につながるか」の個所だけ、吉川さんをフォローしている感じがします。

僕なんぞは「人間くささ」という意味でも、司馬武蔵に魅力を感じますが。

無名な男が有名になるには、才能はもちろんのこと、運も必要でしょう。時にははったりやずるさも必要でしょう。

吉川武蔵のように、クソまじめやバカ正直で頂点を極めることは難しいのではないでしょうか。また、それだけでは人間的魅力もないような気がします。

<本書>
僕が思うのは、本書や「真説宮本武蔵」というのは、吉川さんに対する挑戦状ではなかったのかと…

というのも、二人には直木賞受賞の時の因縁があるので。司馬さんは口で言わない分、本書で吉川さんを切ったのではないかと。 

本書で吉川武蔵に触れているところがあります。

小次郎の髪型を少年の髪型で描写しているのは、さすが天才・吉川さんといいながら、現実ではありえないと一刀両断する司馬さん。

よくよく考えてみると、本書は吉川武蔵とはまるっきり正反対の内容で「真説宮本武蔵」に至っては吉川武蔵のハイライトである武蔵が倒した(殺した)吉岡一門は誰も死んでいないと書いています。

短編「京の剣客」では、武蔵が殺したとされる吉岡憲法が主人公で、晩年のエピソードがつづられています。

歴史小説というのは、ほとんどフィクションだったりしますが、「歴史を勉強しろ」といわれた司馬さんが、「あなたもフィクションを書いているじゃないですか」というメッセージを本書や「真説宮本武蔵」に込めた気がします。

燃えよ剣

2008-02-06 02:35:16 | 司馬遼太郎

司馬遼太郎さんの代表作「燃えよ剣」を紹介します。上下2巻で、新撰組副長・土方歳三の話です。

え~最初に言い訳するわけじゃありませんが、感想は人それぞれということで…。

<多くの人の座右の書>
あの江夏豊さんも、テレビ朝日の大木アナも本書を座右の書と言っております。

しかも、新撰組の代表小説というと、本書をあげる人が多いですね。

自分は、ドトールやベローチェというサテンで、美人のお姉さんがカバーもつけずに本書を読んでいたのを見たことがあります。

カバーをつけないということは、周りの一般ピーポーに、私は「燃えよ剣」を読んでますよと、アピールしていると考えていいですよね。

つまり、それだけ面白い + 私は大好き、ということです。

若いOLさえもひきつけるものが本書にあるんでしょうね。

で、内容です。

<内容>
百姓の子「バラガキのトシ」こと土方歳三が、新撰組副長として近藤勇を助け、かつ新撰組を最強の集団に作り上げていく様が描かれていきます。

そして、近藤が投降し、新撰組が瓦解した後も、一人で戦い続け、やがて五稜郭に立てこもり新政府と戦って壮絶な最期を迎えます。

一方で、お雪との恋が描かれていきます。

<感想>
自分は1回挫折しています。

めちゃくちゃ面白かった「新撰組血風録」の後に、めちゃくちゃ期待して読みました。

なんたって、誰もが面白いと絶賛している本です。

その期待に押しつぶされたのでしょうか。自分の感想は☆★★です。

はじめから、土方の恋人のお雪やライバル七里研之助が実在しない人物だと知っていたから冷めた目で見ていたからかもしれません。

それに上巻がほとんど新撰組入隊前の話(フィクション?)というのも原因かも知れません。

もちろん、新撰組入隊後の話は手に汗握るほど興奮しました。

五稜郭での戦いもそうですし、敵艦を襲撃したアンビリーバブルな戦いもぶったまげました。

<土方>
しかし、彼の妥協のない壮絶な生き方に圧倒されて、ちょっと引きもしました。

みなさんは、その土方の生き方がカッコいいと思ったのでしょうが、自分は壮絶すぎて「なぜ、そこまで…」と思ってしまいました。

だからこそ、土方の写真は(美男子ですが)どことなく、(その生き方ゆえ)寂しい顔をしているのかな、と思ったしだいです。

<感想2>
本日、会社の先輩と飲んでおりました。その人も司馬さんのファンで、自分と同じで「梟の城」や「坂の上の雲」が大好きだそうです。

驚いたことに、その人は本書はイマイチだったと言ってました。

<有名な話>
有名な女性歴史作家が、土方のことを調べていて、どうしてもお雪さんのことが分からなかったそうです。

つまり、どの歴史書を読んでも出てこないと。

で、思い切って司馬さんに電話すると「いや~」と言って司馬さんが婉曲にフィクションだと言ったということです。

おもろいすね。

実際の土方は女遊びをけっこうしていて、あの顔ですのでモテモテだったそうです。

<次回は>
ここいらで、池波正太郎さんが土方を描いた短編「色」を紹介します。けっこう、面白かったです。

薩摩浄福寺党

2008-02-04 01:57:20 | 司馬遼太郎
司馬遼太郎さんの短編集「アームストロング砲」から「薩摩浄福寺党」を紹介します。土方歳三や大石鍬次郎らが登場する話です。

<内容>
薩摩藩士の肝月又助は、京の浄福寺に常駐する薩摩藩士の中でも特に人騒がせな男だった。

当時は幕府と薩摩はいい関係にあり、新撰組はもっぱら長州をはじめとする不逞浪士の取り締まりに当たっていた。

ところが、又助は、土方らの一行を鉄砲で驚かせたりとやりたい放題。

近藤勇は薩摩藩に苦情を言うのがやっとで、薩摩との関係上どうすることもできなかった。そのため、新撰組は又助と顔を合わせるのを避けるようになっていった。

そんな中、土方は又助の闇討ちを計画する。

やがて薩長同盟が成立。新撰組は薩摩に対する気兼ねがなくなる。

そんなある時、新撰組の大石鍬次郎一行は又助を見かけ、ここぞとばかりに切り捨てようとする…。

<感想>☆☆★
司馬さんは幕末という時代には無意味な死がいっぱいあったが、又助の死もその一つだと言っています。

この話が本当かどうか知りませんが、この話のようなことはあったろうし、現実にもありそうな話ですね。

蛮勇のような度胸を持つ男が、権力を持つ者に対して嫌がらせをする。

微妙なバランスの中、生きながらえてきたものの、やがて墓穴を掘る。

味方でさえも「そりゃ、しょうがないよな」となってしまうわけですね。

ただ、あの新撰組さえも避けたりするのは痛快とも言えますね。

<次回は…>
読み終わったばかりの海音寺潮五郎さんの「寺田屋騒動」です。