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インテグラな日々

本、音楽、そしてスポーツ…!

隊士絶命記8

2008-03-30 23:04:04 | 子母澤寛

「隊士絶命記」最後の話です。第10章から第11章までで、槍の谷三十郎の話です。

<内容>
平同士の田内知が不祥事を起こし、切腹することに。

介錯は、谷3兄弟の二男・三十郎が務める。

三十郎は槍術師範で、近藤の養子になっている弟・周平の存在などで、日ごろから新撰組内で存在感を示していた。

ところが、三十郎は人を斬ったことがないのか、切腹の介錯をうまく務めることができず、醜態をさらす。そして斉藤一が実質、介錯を務める。

この事件を機に、新撰組内の三十郎の評価が急落。やがて三十郎は何者かに惨殺される…。

<感想>☆☆★
谷三十郎の評価が新撰組内で落ち、その後、謎の死を遂げるという…新撰組ものでは意外と多い感じの話です。

篠原泰之進が谷を殺したのは…○○じゃないのか…というくだりが面白いですね。

<次は>
読み終わった吉川英治の「宮本武蔵」の第1巻です。

隊士絶命記7

2008-03-23 15:21:44 | 子母澤寛

「隊士絶命記」から、第7、8、9章の河合耆三郎の話です。

「隊士絶命記」で初めて3章にまたがる話です。主人公の河合耆三郎という人は知りませんでした。

悲しい話ですね。

「隊士絶命記」の中で最も涙を誘う話です。それゆえ、1章で終わらなかったのかもしれません。

<内容>
大金持ちの商人の息子・河合耆三郎が新撰組に入隊。気は優しいものの、金回りがよく、そろばんもでき、几帳面な男だった。

近藤は河合を重宝し、会計方の第二席、実際に金を扱う役職につける。

やがて父親が郷里から現れ、惜しみなく金を使い、近藤と土方に息子のことを頼んで、そのまま帰郷する。

ある日、河合は隊の金が50両紛失していることに気づく。

驚く河合は誰にも言えず、郷里の父に50両をすぐ送るよう飛脚を立てる。

河合が隊に戻ると、土方から呼び出しが…。

<感想>☆☆★
いや~、河合の気持ちが痛いほど分かります。

彼は金に困っていない。しかし、隊の金はない。かといって、誰かに告げれば、あらぬ疑いをかけられてしまう。

だから、父に金を送ってもらって補填すれば誰にも分からない。金はすぐに届くだろう…。

そんな時、土方から呼び出しがある…。

間が悪いというか、こういう不運なことってありますね…。

しかも、タイミングを逸すると、本当のことを告げても嘘にしか聞こえない。

そんな河合に待っているのは最悪の結末しかないわけで。

河合のオヤジが激怒するのも分かります。

河合の気の弱さが招いた不運ともいえるでしょうね。

<次は…>
「隊士絶命記」最後の話です。

新選組始末記

2008-03-22 00:39:52 | 子母澤寛


子母澤寛さんの新撰組三部作の第1作「新選組始末記」を紹介します。

これは…はっきり言って難易度☆☆☆MAXです!

自分は過去、1回挫折しています。

漢文に漢詩、古文、時世の句、難解な漢字…。とくに漢文は2P以上にわたるのもあります。もちろん、現代語訳はなしです…。

自分は第2作の「新選組異聞」は読んだことはないのですが、新撰組三部作に興味を持っている方は、まず「新選組物語」を読むのをお薦めします。

もちろん、漢文、古文が得意というレベルの高い方は今作を読んでみてください。

<内容>
この本は、近藤勇の天然理心流時代、いわゆる新撰組誕生前から、近藤、土方が死ぬまでが描かれています。

第66章まであり、時間軸は前後などしますが、新撰組のほとんど(すべて?)の出来事が網羅されています。

<感想>☆☆★
読み終わるのにかなり時間がかかりました。

とくに漢文ですね…。

だから、はっきり言って頭に入ってないところもあります…。

それでも、油小路の決闘や竜馬の暗殺など、それぞれの章は短いですが、かなり面白かったです。

しかし、これは事実なんだ…と思っていたら、新撰組三部作は創作もかなりあると知り驚いています。

いったい何を信じればいいんだ~。

子母澤さんが、本当の話に本当っぽい嘘をまぜたのはどういう意図からだったのでしょうか。子母澤さんは新聞記者だったのに…。う~ん、凡人には分かりません。

確実にいえることは、今作を読んで自分の漢字力があがったことですね。どうでもいいことですが。

<次は>
再び「隊士絶命記」から、第7、8、9章の河合耆三郎の話です。

隊士絶命記6

2008-03-21 01:29:44 | 子母澤寛

子母澤寛さんの「新選組物語」の「隊士絶命記」の第6章です。

主人公は、永倉新八と鈴木三樹三郎です。この章だけ異色で、死ぬ話ではなく、隊士の因縁話が展開します。

<内容>
新撰組が崩壊し、隊屈指の剣の使い手・永倉新八は、近藤勇と袂を分かち、旧縁を頼って、松前藩に帰参が許される。

そんなある日、永倉が町を歩いていると、鈴木三樹三郎とばったり出会う。

鈴木は元新撰組で、永倉らがだまし討ちした伊東甲子太郎の弟だった。

落ち目の永倉と、今や日の出の勢いの官軍の鈴木。

剣の腕は段違いの永倉だったが、死を覚悟する…。

<感想>☆☆★
この話も深いですね~。

人の勢いについて考えさせられます。

肩に風を切って歩いていた新撰組時代の永倉は、死を恐れず、相手が何人いようが、無敵の剣をふるって相手を血祭りにあげていた。

ところが、新撰組は賊軍となり、落ち目になった永倉。出くわした鈴木は剣の腕前は大したことはない。
しかし、日の出の勢いの官軍に属していた。

すると永倉は死を覚悟する。

永倉は「今でもよく思い出すが、弱い鈴木とこの両国橋の出会いの時の、拙者の気持ちはよく人生の本当の姿というものを見せてるんじゃアなかったかとな」と語っております。

永倉が語るだけに説得力がありますね。

<次は>
読み終わったばかりの、子母澤寛さんの三部作の一発目「新選組始末記」です。

隊士絶命記5

2008-03-19 01:25:35 | 子母澤寛

「壬生義士伝」で有名な吉村貫一郎の話です。

浅田次郎さんの小説は読んだことはありませんが、映画は見ました。

映画を見た後にこの話を読んで「まんまじゃん!」と思わず思ってしまいました…。

(浅田さんの)小説は、まんまじゃないんでしょうけど…。

<内容>
南部の浪人・吉村貫一郎は家族を養うため、新撰組に入隊。隊で得た金は使わず、家族に送金していた。

近藤や土方は性格も温厚で家族思いの彼に一目置いていた。

まもなく鳥羽伏見の戦いが勃発。

逃げ遅れた吉村は仕方なくツテを頼りに南部の仮屋敷へ逃げ込む…。

<感想>☆☆★
この話のハイライトは、映画同様、南部の屋敷に逃げ込んだ吉村と、吉村を応対した旧知の南部藩留守居役・大野次郎右衛門との対決でしょう。

吉村の切実な訴えに対し、非情な発言で吉村を死に追い込む大野。

それは家族第一の吉村と、藩が大事な大野の考えの違いが生んだ悲劇でもあるでしょうね。

<情報源>
子母澤さんは以下の人から話を聞いて、この章を書いたそうです。

前半は、

新撰組の宿だった八木源之丞の次男・為三郎から。為三郎は新撰組隊士の島田魁から聞いたそう

後半の南部屋敷の話は、

南部留守居役・大野氏の孫娘・満女から。満女は祖父から聞いたそう

ちなみに、
子母澤さんは吉村貫一郎の子供を探したそうですが、見つからなかったと言っています。

<次回は>
第6章。永倉新八と伊東甲子太郎の弟・鈴木三樹三郎の因縁話です。

隊士絶命記4

2008-03-16 23:30:27 | 子母澤寛



子母澤寛さんの「新選組物語」から「隊士絶命記」の第4章です。

この章だけ、主人公は新撰組の人間ではありません。

<内容>
主人公は、新撰組の密偵を務めた父娘です。

父は床屋の大工杢兵衛で、娘はおみのです。

杢兵衛は床見世「床伝」の腕のいい髪結い。近くに勤皇志士が集まる寄り合い所があり、杢兵衛は寄り合い所に行っては志士たちの髪を結う。

一方で、新撰組のために、言葉巧みに情報を入手していく…。

おみのの方は、志士に誘われるまま一夜をともにし、やはり情報を入手していく。

そんなある日、志士たちは杢兵衛父娘がくさいと睨む。

<感想>☆☆★
ラストが壮絶ですね。

杢兵衛は惨殺されます。

この話を語ったのが、後の篠原泰之進の奥さんになった人だそうです。

おみのさんは、関係を持った志士たちに川原に呼ばれ、そこで惨殺される運命にあったそうです。

しかし、志士たちになぶられているすきに逃げ出し、家に帰ると、父が惨殺されている…。

そして彼女はまた逃げ出してその後は分からないそうです。

そして、泰之進の妻は

「このおみのさんと関係した罪深い若い武士の中には、今伯爵だ、子爵だと、ときめいている人も少なくないそうですよ」

と語ったそうです。

<次は>
第5章は「壬生義士伝」で有名な吉村貫一郎です。

隊士絶命記3

2008-03-12 02:16:29 | 子母澤寛
子母澤寛さんの「隊士絶命記」の中でも最も印象に残る作品です。

それが第3章の山南敬介の話です。

<内容>
新撰組NO2の山南敬介が隊を脱走し、沖田総司につかまり、切腹するまでが描かれています。

<感想>☆☆☆

冒頭からぐいぐいきます。

山南が財布をなくして呆然としていると

「お困りでしょう。用立てしましょうか?」

という人が現れた。

しかし「ありがたいが、あなたから借りたことがばれたら切腹ですよ。近藤先生の後ろには悪い狐がついているからね」

です…。

悪い狐とは土方のこと。

そして脱走する山南。その山南を見つけたのは、仲の良い沖田。ところが沖田は山南を責めるわけでもなく、山南と一晩を泣きながら過ごす。

山南を連れて帰りたくない沖田と、沖田のために逃げたくない山南…。

結局、山南は沖田のために隊に戻る。

僚友の永倉新八は新撰組に戻ってきた山南を脱走させようと行動を開始する。

ところが、山南は逃げないと言い、代わりに自分の女に手紙を渡してほしいという。

さらに「切腹する時には近藤さんが現れてくれるかな」と心配し、「介錯は永倉か沖田にやってもらいたい」と希望する。

切腹の日。山南は近藤が現れ、永倉も現れ、介錯は沖田と知り、元気がないながらも喜ぶ。

そんな山南が豹変したのは、土方が現れた時。

「おお、やってきたか九尾の狐!」と叫び、さらに悪態をつこうとした時、沖田が首を落とす…。


この作品は土方と山南の権力争いと、その敗者の悲劇。

一方で、近藤の人望の厚さと土方の人望の無さを如実に現している作品だと思います。

深いっすね~。

<次は>
「隊士絶命記」の第4章、新撰組の密偵を務めた親娘の悲劇を描いた作品です。

隊士絶命記2

2008-03-11 02:01:09 | 子母澤寛

子母澤寛さんの「新選組物語」収録の「隊士絶命記」の第2章です。

<内容>
新撰組局長・芹沢鴨の死が描かれています。

といっても、2ページちょっとですけど。

近藤や土方、沖田らが芹沢を襲撃した場面と、芹沢の愛人のお梅の不幸話が書かれています。

<感想>☆☆★
「隊士絶命記」の中では一番短い話です。

おそらく、司馬さんの「芹沢鴨の暗殺」の元ネタになった話でしょう。

芹沢鴨の暗殺は有名ですが、この短いページの中でお梅の悲劇は印象に残ります。

菱屋のめかけだった美人の彼女は無理やり芹沢の愛人にさせられ、しかも芹沢と共に殺されてしまう。

近藤は芹沢の葬式は執り行ったもののお梅のことは無視。当然、菱屋も無視し、彼女の死体はしばらく放置されていたといいます。

まさに、佳人薄命のお梅さんですね。

<次は>
第3章の山南敬介です。

新選組物語

2008-03-09 11:03:57 | 子母澤寛


子母澤寛さんの新選組三部作の最終巻「新選組物語」を紹介します。

この本は三部作の最初の「新選組始末記」と違い、短編集です。

「始末記」は漢文や古文、難解な漢字が多く、読むのにかなり大変ですが、今作は漢文もなく、非常に読みやすいです。

本作は小説形式ですが、だいたい最後には「だれだれから聞いた話」とあり、実際にあった話なんですね。

もともと…

司馬さんが子母澤さんの「三部作」を基に新撰組関連の本を書いたと知り、興味を持っていました。

どの話も面白いです。

まずは、最初の短編「隊士絶命記」を紹介します。

これは11章からなり、新撰組にかかわった8組の人間の死が書かれています。

で、第1章の沖田総司を紹介します。


<内容>
第1章はわずか5ページです。

沖田の死ぬ直前の黒猫との有名な絡みが描かれています。


<感想>☆☆☆
これはなんと言うんでしょうか…。

どうってことのない話です。

ただ、寝たきりの沖田がどうしても家の前に現れる猫が気になってしょうがない、という話です。

どうってことのない話なんですが、すごくインパクトがあり、読んだ後も強烈に残ります。

沖田の死ぬ間際の行動と思考が黒猫一点に集中しているわけです。最後の言葉も猫に関してです。

この猫ってなんだったのでしょうか。死神のような気もします。沖田は斬りたいのに、斬れなかったわけです。

もし、斬っていたら、死は訪れなかったのか。そうとも受け取れます。

この作品と司馬さんの「菊一文字」を一緒に読むと、沖田ファンは泣きたくなるかもしれないですね。


<次回は>
第2章の芹沢鴨です。