2008年最後に読んだ海音寺潮五郎さんの代表作「天と地と」を紹介します。上、中、下巻からなり、映画にもなっていますね。
<感想>☆☆☆
正直、ここまで面白いとは思っていなかったです。油断しました。自分にとって上杉謙信という人が特別な存在になりそうです。読み終わった後、一度読んだことがある吉川英治さんの「上杉謙信」を読み始めましたし、「天と地と」の中でどれが史実でどれがフィクションかを調べるため、学研から出ている謙信の本も買ってしまいました。
自分は歴史上の人物は小学生のころから伊達政宗が好きなんですが、この本の謙信に出会って、自分の中で政宗を抜く存在になるのではないかと驚いたぐらいです。
<どこがいいのか>
謙信の生き方がいいですね。正義というものがなかった時代に、ひたすら義を貫いた謙信。しかし、それは常人と違うだけに、異常ともいえたかもしれません。なんか、その辺の不器用さがいいですね。しかも、海音寺さんはそこに乃美という女性とのプラトニックというか、不器用な恋を絡めていきます。ここがまた良かったですね。
謙信は望めば何でも手に入れられる身分なのに、あえて自分の欲望を通そうとしなかった。家来たちの争いに嫌気がさして出家しようとしたところも驚きました。そのように清廉潔白に生きようとしたのは、謙信の複雑な生い立ちにもよるのでしょうね。
<物語>
謙信の父親時代から始まり、謙信が生まれ、やがては成長し、武田信玄と川中島で死闘を繰り広げるまでが描かれていきます。また、謙信のもう一つのハイライトである、北条家の小田原城を包囲したエピソードも描かれています。有名な忍者、飛び加藤の話も登場します。残念なのは織田信長とのかかわりがないこと、川中島の戦いで物語が終わるところですかね。
<天と地と>
2008年に読んだ本の中で、この作品が自分のナンバーワンです。正直なところ、近年面白かった本は「坂の上の雲」とか「おろしや国酔夢譚」など、物語の主人公のことを詳しく知らなかった人のものばかりでした。なので、謙信という知識としてよく知っている人物の小説で面白いと感じるとは思ってもみなかったです。まして、吉川さんの「上杉謙信」を読んだ時はそれほど印象に残らなかったので。
今作を読んで、ますます多くの作家の多くの作品を読みたいと思うようになりました。
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