インテグラな日々

本、音楽、そしてスポーツ…!

図解雑学 剣豪列伝

2007-10-30 01:30:08 | そのほか


幕末剣豪伝を読んだので、ついでに本棚から本書を取り出して一気に読みました。
司馬さんの剣豪ものを読むうち、剣豪を勉強しようと思い、買った本です。

前読んだ時は、剣豪といえば宮本武蔵、柳生一族、新撰組、千葉周作しか知らず、かなり苦痛を感じました。

しかし、今回はかなり知識が増えていたのでスラスラ読めました。

<内容>☆☆
イラストとともに、日本の剣豪を2ページずつ紹介しています。なかには、徳川家康や豊臣秀吉など剣豪? と言いたくなる人も紹介されています。

個人的にはそんな有名人を載せるよりは、さまざまな剣豪を紹介してほしかった感じもします。

たとえば、司馬さんの短編で出てくる「上総の剣客」の主人公「おだやかさま」こと森要蔵なんかも紹介してほしかったですね。

<気になる剣豪>
本書で一番気になったのは、欄外で紹介されていた明治の剣豪・得能関四郎という人です。

彼は井上馨の警護をしていて、彼を殺そうと10人ぐらいの人間が真剣を持って鹿鳴館に乱入したことがあったそうです。

得能関四郎という人は、近くにあったステッキを使い、賊10人の小手をうち、刀をことごとく打ち落としたそうです。

すごい使い手ですね。欄外ではなく、きちんと紹介してほしかった気もします。

<武蔵と吉岡憲法>
宮本武蔵といえば、京の剣術の名家・吉岡憲法を破り、復讐しようとした彼の一族を破ったことで有名です。

司馬さんの短編「真説宮本武蔵」や長編「宮本武蔵」では、この有名なエピソードは武蔵の嘘で、吉岡憲法は江戸時代まで生きていたし、武蔵が殺したという吉岡一族の名前は実在していないというくだりがあります。

これは、吉岡憲法の短編「京の剣客」でも触れられていたと思います。

もちろん、オレにはどちらが正しいのか分かりませんが。

ただ、本書は武蔵も憲法も、司馬説ではなく、一般的な説が採られています。

幕末剣豪伝

2007-10-26 02:18:30 | そのほか


本屋で見かけて面白そうだなと思い、買ってしまいました。けっこう、こういう本を買ってしまいます。

なんか、マンガ感覚で音楽を聴きながら読めるんですよね。「真田太平記」はいつ読み終わることやら…。

<内容>
幕末の剣豪を紹介した雑誌です。4章からなり、

1章 江戸三大道場編
千葉周作、斉藤弥九郎、桃井春蔵といった道場主
桂小五郎、武市半平太といた師範代

2章 新撰組

3章 暗殺者

4章 幕府側の剣客

からなっております。

<買った決め手>
なぜか、鏡新明智流の上田馬之助です、プロレスラーではありません!

司馬さんの短編で「斬ってはみたが」という話があります。馬之助の話で、非情に興味深い内容です。いつか、ここでも紹介したいと思います。

その馬之助の話を思い出し、買いました。彼は練習では無類の強さを見せるのに、真剣ではからっきし弱かったという内容だったと思います。

あと松田屋での戦いの真偽を知りたったのも決め手です。

小説では、馬之助は世話になっている商家の子供とウナギの松田屋に食べに行ったところ、絡んできた天童藩の剣術指南役が階段で襲ってきたところを返り討ちにします。

ここで、馬之助は「剣の奥義をつかんだ」と思ったものの、何もつかんでいなかったという話で終わります。

本書では、馬之助の剣の達人としてのエピソードだけが語られ、松田屋事件は彼の名前を轟かせた事件として紹介されています。

<ほか>
興味深かったのは、神道無念流の仏生寺弥助(この人知りませんでした)と、斉藤&桃井、新撰組、人斬り河上彦斎でした。

<感想>☆☆
前に読んだ剣豪本より、読みやすく、分かりやすかったです。

意外と、岡田以蔵や河上彦斎、田中新兵衛、中村半次郎ら「人斬り○○」が、単独で暗殺をしていないのは驚きでした。しかも、そんなに殺していないんですね。

長州の間者

2007-10-23 01:43:47 | 司馬遼太郎



久しぶりの更新です…!

本日は「新撰組血風録」から「長州の間者」です。

今作のキーマンは沖田総司です。

<内容>
京都浪人・深町新作が主人公。新作はふとしたことから小間物屋のおそのと良い仲に。

おそのは、新作に武士をやめてもらい、小間物屋を一緒にやってもらいたかった。

一方、
新作は父の遺言で武士に未練があった。実は、新作の亡き父は長州藩士であった。

そんななか、新作はおそのの姉・小善に呼ばれ、長州藩士・吉田稔磨を紹介される。稔磨は新作の父が長州藩士だったことを知っており、ぜひ新撰組に入隊し、スパイ活動をしてもらいたいと話す。成功した暁には、長州藩士にするという…。

<感想>☆☆
今作の面白さは3つあると思います。

一つは主人公・新作のスパイ活動。
 彼は内部粛清の嵐が吹き荒れる新撰組のなかで生き残ろうと奮闘します。かつ、長州藩士になるため、立派に諜報活動をしようと躍起になります。

二つめは長州の間者がもう一人いるという点。
 新作は吉田稔麿に「もう一人長州の間者がいる」と告げられます。それは誰なのか…。新作はいろいろ推理してもう一人の仲間を探そうとします。

三つ目は新作とおそのの恋。
 新作はおそのと夫婦になりたいが、商人にはなりたくない。おそのは新作と夫婦になりたいが浪人の妻にはなりたくない。そこで新作は、吉田稔麿の長州藩士にするとの約束で新撰組に入隊します。しかし、おそのは新撰組のことが嫌い。しかし、新作は口止めされているため、スパイ活動のために入隊したとは言えない…。

<沖田総司>
前にも書きましたが、沖田の存在は一服の清涼剤のようなものです。彼の明るさと純真さが殺伐とした話の中で救いになっているところが多々あります。

しかし、今作では新作とおそのの幸せを壊す役回りです。いつもなら土方がスパイを見抜くところを、沖田が新作は怪しいと入隊試験で気づきます。しかも、今作では土方は「そんなことあらへんやろ~」と一蹴します。しかし、沖田はずっと新作の行動に注目する…。う~ん、怖い!

やはり沖田も新撰組の主要メンバーなんだなとつくづく感じるエピソードですね。

<新作>
とにかく、この男に感情移入してしまいますね。彼はただ武士として、おそのと夫婦になりたいだけで、尊皇攘夷も倒幕もない。

ただ、自分の意地をつらぬき、目の前にふってきた甘い誘いに乗り、破滅の道へ突き進む。

オレはこの話は本当だと思って、新撰組の本を読み漁りました。しかし、どの歴史書を見ても、新撰組に深町新作なる人物はいませんでした。いたら、ごめんなさい。

この「血風録」は、フィクションとノンフィクションがないまぜになった短編集ですね。


<関係のない話→音楽→ハードロック>
本日、ヘブン&ヘルのコンサートに行ってきました。けっこう、いい席でした。しかし、いまひとつ乗れませんでした。土曜のラウドパークと同じセットリストだったからですね。

ちゃんとしたコンサートで10曲足らずって少なすぎやしませんか! 1万円ぐらい払っているのに。

ま、でも良かったです!

ネオンナ~イト!

勘兵衛奉公記

2007-10-18 01:38:06 | 池波正太郎


「黒幕」収録の作品です。有名な戦国時代の武将・渡辺勘兵衛の物語です。やっぱり、池波さんらしく長編も書いています。タイトルは「戦国幻想曲」です。

池波さんは基本的に長編と短編で1セットという感じがしますね。

司馬さんも短編を書いています。「侍大将の胸毛」という作品です。

<内容>
「槍の勘兵衛」といわれた一匹狼の武将・渡辺勘兵衛の話です。異名がつくほど勇猛な武将でしたが、一面偏屈なところがあり、主を何度も変えたことで有名です。

そんな彼の生い立ちと生涯を描いた作品です。

<ハイライト>
彼の物語のハイライトは、当時は近江国水口城主で、のち駿河国駿府城主となり、中老になった中村一氏に仕えていた時代です。

勘兵衛は北条攻めで大活躍するのですが、一氏がすべて自分の手柄にしてしまいます。こんな上司よくいます。うちにも!

勘兵衛は「こんなヤツの下でやっていられるか!」と中村家を退散します。慌てた一氏は引き止めますが、あまりにせこい引きとめだったので、勘兵衛はあきれるだけだったとか。

この後は藤堂高虎に仕官するも、結局はそのプライドの高さと偏屈さで一介の男として寂しく世を終えます。

<評価>☆☆
今作から学ぶことが多いですね…。

とくに中村一氏と勘兵衛の関係です。

けっこう会社のオレと上司の関係をダブらせてしまいます。どこの会社でもそうでしょうが、下の手柄をすべて自分のものにする上司というのはどうなんでしょうか。

彼はバイトがやった仕事も自分がやったとみんなの前で言ってしまえる厚顔な男ですから。どんな神経をしてるのやら。

かといって、勘兵衛みたいに、うまく立ち回らず、すぐふてくされていては結局寂しく何も残らず世を終える…。そんなことになりそうです。

う~ん、こんなところでグチを言ってもしょうがないですね。ようはオレも勘兵衛も子供だというところでしょうか。

勘兵衛と比べるのは100年早いですけど…。

とにかく、考えさせられる話です!

<プロ野球>
話は変わりますが、今日から中日×巨人ですね。

ということで、ガンバレ、中日!!

芹沢鴨の暗殺

2007-10-17 01:44:03 | 司馬遼太郎



「油小路の決闘」の次の作品です。暗殺の次も暗殺です。暗殺というより、粛清といった方がいいかもしれませんね。

時間軸としては、こちらの方が先です。

<内容>
有名な芹沢鴨暗殺の話です。

新撰組局長・芹沢の傍若無人さは目に余るものがあり、
副長・近藤勇は土方歳三、沖田総司、原田、井上ら理心流時代の仲間と芹沢一派暗殺を決行する…。

<評価>☆☆
とにかくハードです。

まず芹沢鴨。とにかく傍若無人でやりたい放題。もちろん、どこまで彼が悪人だったか分かりませんが、借金を取り立てにきた女性を力ずくで愛人にする。

言うこときかないと殺す、しまいには大砲をぶっ放す…など。

そして、近藤、土方の芹沢暗殺。しかも、自分たちで殺しておきながら長州藩のせいにして、新撰組で盛大に芹沢の葬式をする。

本書では、芹沢暗殺において、土方は山南や藤堂ら江戸の理心流の仲間すべてに声をかけていない。ここに、ある種、土方の怖さ、陰湿さが描かれている気がします。

ま、ウィキペディアによると、山南も参加したという記事もありますが…。

<救い?>
こんな殺伐とした話の中で、唯一の救いは沖田です。彼だけが天真爛漫に描かれ、猜疑心や妬みなどが一切ない人物として登場します。

だから、芹沢の横暴な行為に対し、土方らが舌打ちしても、一人「芹沢さんはすごい人だと思うな」と子供のようなことを言います。

本書や「燃えよ剣」などでも、沖田はそんな無邪気な人間として描かれています。だから、時に近藤や土方が陰謀をめぐらしても、沖田は「ひどいことをしようとしてますね。あの人は、そんな悪い人じゃないですよ」と言い、近藤や土方を驚かせます。

ところが、沖田は彼らを決して裏切らず、暗殺に加担します。そのギャップがまた味があっていいですね。

油小路の決闘

2007-10-16 02:40:30 | 司馬遼太郎



さあ、いよいよ「新選組血風録」です! 司馬さんの新撰組ものでは一番好きな本です。しかも、この本も2冊ありました。う~ん、ムダ金使ってますね。気づかずに2冊買ったパターンです。

<物申す…?>
司馬さんの小説をレビューしたサイトは数多くあります。その多くが短編ものも細かくレビューされているのですが、本書や「幕末」はそれぞれの話をレビューしたものはないようです。ほとんど1冊としてレビューされています。ちょっと残念ですね。なので、しっかりレビューしたいと思います。

<内容>
これは有名な油小路の決闘を描いた作品です。

近藤勇一派が芹沢鴨一派を暗殺し、新撰組を自分たちのものします。しばらくは近藤一派でかためていましたが、やがて伊東甲子太郎一派ができます。彼らは近藤らとは主義思想が違いましたが、近藤らの勧めもあり入隊します。

しかし、徐々に薩摩に組するようになり、弟の鈴木三樹三郎や篠原泰之進、さらには藤堂平助といった近藤子飼いの者とともに隊を離れます。

ところが、近藤や土方らは言葉巧みに伊東を呼び寄せ暗殺。死体を油小路に置き捨て、篠原らが伊東の死骸を取りに来たところ、彼らを襲撃するというものです。

主人公は、篠原泰之進です。

<評価>☆☆
新撰組がいかに殺しと死が身近にあったのか。それが如実に分かる作品です。血風録の最初の話が、この暗殺と殺戮の話ですからね。この壮絶さに一気に引き込まれました。

土方の伊東暗殺と伊東一派殲滅のシナリオには背筋が凍るような恐ろしさを感じます。一方、篠原らが土方の陰謀に対して完全と立ち向かう気迫もすさまじい。まさに乱世ですね。

<伊東甲子太郎>
伊東は剣の達人で教養もあり、弁舌も巧みで、近藤勇はかなり買っていたようです。しかし、土方は早くから彼を警戒し、注意を払っていたそうです。

土方恐るべし…!

ただ、彼は多少甘いところがあったそうです。近藤や土方を甘く見、御陵衛士を結成して新撰組を脱退。脱退後、近藤に呼ばれても、篠原の助言を聞かず、会いに行き、結局は暗殺されてしまいます。

ま、その暗殺の方法は土方らしく用意周到です。

<篠原泰之進>
彼がすごいのは、油小路の決闘で生き残った数少ない人物であること。そして、その後に近藤を襲撃するという事件も起こしています。これは子母澤寛さんの小説に面白いのがあった気がします、何だったっけ。

それはそうと、ウキペディアによると、本書はフィクション要素があるそうです。特に泰之進が耳を水で洗う癖があり、これが基で死んだとありますが、泰之進の長男の嫁の話では、そんなことは一切なかったそうです。

司馬さんがこの挿話を入れた理由はなんだったのでしょうか…。知りたい!

<新撰組の「せん」の字>
二つの説があります。「撰」と「選」ですね。どちらが正しいかは分からないようです。隊士はどちらも使っていたそうです。本書は「選」ですね。

猛婦

2007-10-15 01:43:17 | 池波正太郎


池波さんの「黒幕」収録の作品です。

<評価>☆☆
これはすごい話です。途中で読むのを躊躇したぐらい鬼気迫る話です。こういう話を書かせたら池波さんは天下一品ですね。

よく司馬さんは女ものを書けないといいますが、それはとんでもない誤りです。

しかし、池波さんは司馬さんより、女ものは深い感じがしますね。司馬さんはどちらかというと、男目線の女ですが、池波さんは女目線の女が出てくる感じがします。

今作も、そんな女を描いた、人間の根本というか、建前なしの人間が描かれています。

<内容>
武田勝頼の家臣・秋山兵蔵の妻・お津那が主人公。彼女は父から武術を鍛えられた達人であり、やはり剣の達人である夫と仲良く暮らしていた。

そんなある日、武田の臣・谷七九郎が出奔する。彼は徳川家康の間者だった。兵蔵は七九郎を追いかけるが、返り討ちに遭い、命を落とした。

そして、お津那はあだ討ちを誓う…。

<猛婦>
猛婦の意味はあだ討ちを誓うからではありません。彼女はこの後、主人の敵である七九郎の腕を切り落とします。

まさに猛婦ですが。

しかし、彼女はここからある行動に出ます。そして…。

この後の行動がすごいです。この後の行動と行為が猛婦といえるのでしょう。

<猛婦2>
こんな女性はなかなかいないと思います。ただ、彼女のあだ討ち後のある行動というのは純文学などで出てきそうな感じですね。しかし、その後の行動は…。まさに池波さんらしい小説だと思います。

<猛婦3>
池波さんの封建時代の女性観というのは勉強になりますね。彼女たちは政略結婚の道具とされていたわけですが、池波さんはそれでも女の幸せがあったといっています。彼女たちは運命に翻弄されながらも、精一杯、女の幸せを感じていたはずだと…。

オレもそう思いますね。だから、来年の大河の主人公もそうですし、伊達政宗の叔母なんかもそうで、彼女たちは実家に逆らい、嫁ぎ先に殉じたわけですから。

理心流異聞

2007-10-14 02:47:24 | 司馬遼太郎


司馬さんの短編集「アームストロング砲」に収録されている作品です。主人公は新撰組の沖田総司です。

<いきなり余談>
「理心流」というのは、沖田を含め、近藤勇、土方歳三が修めていた流派です。近藤がトップで、そのまま新撰組の本流になったのは有名な話ですね。

ちなみに、新撰組の人間が主人公ながら、短編集「新撰組血風録」に収められていないのは今作だけじゃないでしょうか。

↑と書きましたが、近藤勇の「ただいま16歳」もありました。「血風録」は新撰組の話で、「異聞」「16歳」は入隊前の話がメーンでもありますね。


<内容>
近藤が経営する理心流は江戸では流行らず、多摩へ出稽古に出かけていた。

ある日、沖田は柳剛流・平岡松月斎と知り合う。彼は理心流の縄張りを奪おうとしていた。沖田は近藤の要請もあり、柳剛流を探るうち、松月斎に狙われ、やがて柳剛流を破る旅に出かける。

月日は流れ、沖田らは新撰組として京へ。そして、再び松月斎と再会する…。

<評価>☆☆
この作品は最近まで本当の話だと思っていました。たぶん、フィクションだと思います。

初めて読んだ新撰組の話だったので、非情に興味深く読んだのを覚えています。奇妙な流派の柳剛流のことや、近藤、土方、沖田の新撰組加入前の関係などが知れて、新撰組に興味を持つきっかけになった作品でもあります。

<流剛流>
この流派は新撰組ものでは必ずといっていいほど出てきますし、「竜馬がゆく」や千葉周作ものでも出てきたと思います。

江戸期に一時流行った田舎剣法で、ひところは無敵で、北辰一刀流などもかなわなかったそうです。

これは長い刀を持ち、ひたすら相手のスネめがけて振り落とす流派だったそうです。

ただ、あまりにかっこ悪く、対処方を知られてからは一気に廃れたということです。

<沖田総司>
けっこう有名な話ですが、沖田総司が美男子だったというのは司馬さんのフィクションです。今じゃ、すっかり本当のことと思われていますね。最近の小説や漫画では当たり前のように沖田=美男子になっています。

本当はヒラメのような顔だったそうです。司馬さんの沖田や土方のキャラクター設定がそのまま歴史になってしまった観があります。あらためて、司馬さんの影響力の強さを感じます。

総司は「そうじ」というらしいですね。オレは「そうし」の方がしっくりきますが。

<最後>
新撰組ものといっても、テイストは剣客ものといってもいいかもしれませんね。理心流の達人・沖田総司がいかにして柳剛流を破ったのか…。そこが見所です。

そういえば、沖田の話は「血風録」に二つあります。どちらも非情に物悲しい作品ですが、今作は青春真っ只中のハツラツとした沖田が描かれているのがうれしいですね。

太夫殿坂

2007-10-13 02:28:31 | 司馬遼太郎



司馬さんの「人斬り以蔵」収録の作品を紹介します。厳密には新撰組ものとは言えないかもしれませんが、新撰組によって人生を狂わせた兄弟の話です。

<内容>
主人公は井沢斧八郎という作州津山藩の大阪蔵屋敷に勤める武士。彼は倹約令が敷かれる津山藩で暮らしてきたが、兄の病死とともに大阪蔵屋敷に勤めるように。

彼はある情報を手に入れる。

「兄は秘密裏に殺された…」

斧八郎は留守居役・郷田左門が怪しいと睨む。

大阪蔵屋敷では、金を湯水のように使い、放蕩三昧。斧八郎は「正義を正そうとした兄は殺された。オレが秘密を暴き、兄の敵を討とう」と誓う…。

<評価>☆☆
これは何というか…。

上の内容だけ見ると、正義感に燃える男が、藩を敵に回し、正義のために死んだ兄のために一人立ち向かうという感じです。

<以下ネタバレ>
え~気をつけて書こうと思いますが、ネタバレしそうなので読みたくない人は読まないでください。

斧八郎本人は上の通り、思っています。

この辺が人間の悲しさと滑稽さですね。司馬さんは一見、完全無欠のヒーローものの話を、これほど愚かで、ばかばかしい話にしています。

人間ってのは、意外とこんな生き物で、勝手にいろいろと物事をいい方に思い込み、実はマヌケに生きているのかもしれませんね。

これ、深いです!

<太夫殿坂>
タイトルの意味は、福島左衛門太夫正則の屋敷があったところから付けられた坂の名前で、本編の最後の舞台となるところです。

<新撰組>
今のところ、まったく触れていませんね。今回は触れません。とりあえず、出てきます。


ぜひ、本編を読んで、新撰組がどのようにして出てくるかを読んでもらいたいです。

ま、それより、斧八郎兄弟の方が重要ですね。

雲州英雄記

2007-10-12 02:12:51 | 池波正太郎


新撰組もののほか、最近読んだ池波さんの短編も紹介したいと思います。本書は「黒幕」に収録されています。

<内容>
有名な戦国時代の武将・山中鹿之介の話です。鹿之介は山陰地方の戦国大名・尼子氏の家来で、尼子復活のために生涯を捧げていきます。

<評価>☆☆
鹿之介という名前は知っていましたが、実は何をして、どんな人だったかは知りませんでした。だから、非常に気になっていた人物です。

池波さんて、オレの中で、ほとんど知らないけど、実は知りたいと思っている歴史的人物や出来事を書いています。前に紹介した「宇都宮釣り天井」もそうですし、堀部安兵衛も鹿之介同様に気になっています。司馬さんは意外とそういうのはないんですよね。

だから、本書を読んで、
へ~こんな人だったんだと目からウロコが落ちた感じがしました。なので、堀部安兵衛の話も間違いなく読みます。

<山中鹿之介>
オレのイメージでは、単純に中国地方で活躍した人物だと思っていましたが、そうではなかったんですね。本書を読むと、ずっと信長の庇護を受け、お家再興のために活動していたことが分かります。

彼は義に生き、そして美男子で、悲劇的な最期を迎えます。いかにも江戸時代の人が好きそうな人物ですね。だから講談やら歌舞伎になって有名になったんでしょうね。

オレは真田幸村が人気があったのも、その活躍以上に鹿之介のような人物(義に生き、悲劇的な最期を迎え、何より徳川家に逆らった)だったからではないかなと思います。

司馬さんの「軍師二人」を読むと、当時の評価(司馬さんの評価)は幸村より、後藤又兵衛だったと受け取れます。「逆だろ?」と思う人には、「軍師二人」をぜひ読んでもらいたいです。こういう意見もあるのかと思えるはずです。

<織田信長>
本書を読んで、信長のまた別の一面を感じることができました。今作では、信長が言葉巧みに鹿之介を懐柔し、自分の手足として毛利攻めの先鋒にしようと動かしていきます。

読者からすると、みえみえの甘言で、鹿之介をうまいこと使っているな、と思えるのですが。しかし、鹿之介にしてみると、体よく利用されていようと、お家再興のためには従うしかなかったのでしょうね。

「真田太平記」にもありましたが、謀略というのは力が強いものと弱いものでは効き目がまったく違うそうです。権力者(家康)なら謀略は見え透いててもうまくいくそうです。しかし、力のないもの(三成)の謀略というものはなかなかうまくいかないそうです。確かに、人間というものは利で動き、力の強いものの言うことは従ってしまいますからね。

<最後に>
本書は短編ですが、池波さんらしく長編も書いておられます。すぐに読むとアレなので、本書の内容を忘れたころにもう一度読みたいと思います。