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インテグラな日々

本、音楽、そしてスポーツ…!

池波忍者

2007-12-31 01:54:41 | 池波正太郎



池波さんの忍者ものをすべて読んだので総評します。

もちろん、オレの個人的な意見です。反論、異論いっぱいあると思いますが、ご勘弁ください。

<もともと>
…は、司馬さんの忍者ものが好きで、池波さんの忍者ものを読み始めました。だから、どうしても違和感が出てしまいました。

過去、それで挫折しています。ですので、今回一気に読んだのは固定観念なしに…(つまり、司馬忍者ものを一切頭から消して)読みました。

(池波さんには非常に失礼なことをしたと思います。ま、逆に池波忍者の延長で、司馬忍者を読んだ人もいるんじゃないでしょうか)

断っておきますが、司馬さんの忍者ものが正しいわけではありません。司馬さんの話は司馬色が強い、やはりオリジナリティーが強い話であるわけです。

<感想>
何度も書いてきましたが、もちろんオレ個人の意見ですが、

やはり主人公の忍者(主人公以外も)が当たり前のように甲賀を裏切ることに非常に違和感を覚えます。

そりゃー、中には伊賀や甲賀を裏切る忍者はいたでしょう。

ただ、池波さんの忍者は、ほとんど裏切る。それを「忍者とて、熱い血は流れてる。本当(昔の)の忍びはその血に従うのが常だ」などと、裏切りを肯定するコメントをよく忍びに語らせます。

オレは、このコメントもダメでした。なぜなら、裏切るスパイなんて2流だし、(二流のスパイの話なんて読みたくない→「じゃ、読むなよ!」と言われそうですが)

裏切るスパイをたくさん輩出するなら、スパイ機関として成り立たないと思います。

しかも読んでる読者(オレだけ…)に、話の筋そっちのけで「今回は裏切らないでくれ…」と思わせたらダメだと思うんですよね。

あと、もう一つ気になったのは「偶然」の多さ。

とにかく、偶然が多い。

一つは主人公が窮地に陥る場面。これはどの話でも必ずある場面です。司馬忍者は①何なく敵の忍びを破る②敵の忍びの襲撃をかわすが、重傷を負う。という二つのパターンが主です。

池波さんは「必ず、誰かが偶然助ける」の一つです。読んでて、主人公が敵に囲まれると「あ~、また誰かが偶然助けるんだろうな」と思って読んでました。中には、そうでないものもありました。しかし、それは偶然地震が起きた、というのものでした。

もう一つは、偶然敵と出会う、こと。こんな広い世の中、偶然出会わないでしょ。たとえば、相手を探索して網をかけて、出くわすなら分かりますが。とにかく、偶然出会うことが多すぎる。

池波さんは、忍者もので気を使ったのはリアリティと言っていますが、ある意味リアリティがないところがオレはダメでした。もちろん、オレの個人的な意見ですけど。

さらに、何度も語っていますが、登場人物や設定が話しによって違うところですね。
これは、忍者ものに限ったことではありませんけど、読んで混乱しました。

池波さんの忍者小説が司馬さんと違って、テレビドラマや映画になってないのも分かる気がします。池波さんの真骨頂は「鬼平」や「剣客」「梅安」のような作風にある気がします。

ただ、何度も言いますが、これはオレの個人的な意見であって、皆さんは自分で読んで確かめてほしいですね。オレとは逆の意見の人の方が多いかもしれませんし。

真田太平記

2007-12-27 01:47:54 | 池波正太郎


いや~、ついに読み終わりました。といっても、3カ月ぐらいまったく読んでいませんでしたけど。と、いうことで、オレ的には、そこまでグッとは来なかったということになりますね。

<全12巻>
歴史小説好きは、1度は読みたいと思う作品でしょう。しかし、皆さんが恐れるのは12巻という多さ。でも、大丈夫です。池波さんの作品なので、じっさい12巻というボリュームは感じません。だから、気楽に読んでいただけると思います。

<感想>
オレ的には、池波忍者ものの集大成として読ませていただきました。もともと、知人が、歴史もので山本周五郎の「樅の木は残った」と今作は抜群に面白かったと言っていたことも読んだ一因です。

<興奮>
オレが一番興奮したのは、真田昌幸が関が原の戦い前に反徳川家康となる決断を下したあたりです。

めちゃくちゃ興奮しました。オレはDVDを見ていて興奮すると一時停止を押して興奮を鎮める癖があります。しかし、小説で一時読むのをやめたのは今作が初めてです。それほど、このあたりの話は面白かったです。

ただ、そこまで興奮させといて、その後があっけなかったですけど。

あとは幸村が大阪の陣に向かう直前も良かったですね。ここの2カ所は満点の☆☆☆というか、満点を超えて☆☆☆☆☆です。

<最後>
の信之の話も興奮しました。ただ、2つのエピソードも他の短編で何度も語られたエピソードなので真新しさは感じませんでしたけど。

違うキャラが出たり、微妙に違う設定になっているのは毎度のことですけどね。

<感想>☆☆
トータルでは、こんな感じです。でも、オレ的には☆1・5に限りなく近いですけど。

たぶん、今作だけ読んでいたら、知人のように☆は3つの満点だったと思います。

しかし、池波さんの真田ものの短編をすべて読んでいた後なので「あ、この章の話は、あの短編とまったく同じじゃん」とか「あれ、あの短編と話が食い違っている」などと思い、純粋に楽しめなかったところも多かったです。

<後藤又兵衛>
気になったのは、又兵衛のくだりもです。オレは司馬さんの「軍師二人」が好きなので、どうしても幸村より又兵衛に親近感を抱いてしまいます。

池波さんは真田が大好きなので、どうしても又兵衛より幸村を上に持ってきます。もちろん、それは概ね正しいでしょうし、多くの人がそう考えています。

それはそれでいいのですが、文中で「又兵衛は幸村に遠く及ばない」というくだりがけっこう出ますが、その理由が述べられていない。

池波さんの得意な「ところで…」と話を急に変えたりする箇所もあります。

さらに、幸村が濃霧で遅れて又兵衛が討ち死にした有名なエピソードも、必死に幸村を擁護していますが、それがどうにも説得力がない。

たとえば

(1)幸村は又兵衛に前線に出過ぎないよう何度も忠告した。
(暗に、又兵衛は幸村の忠告を聞かなかった。だから、幸村が遅れたのではなく、又兵衛が先に行き過ぎた)

(2)又兵衛が徳川軍と戦いの火蓋を切り、忍者・佐助がそのことを幸村に伝えようとしたが敵の忍びと遭遇した。
(暗に、佐助は敵の忍びの襲撃に遭い、又兵衛が窮地に陥ったことを幸村に伝えられなかった)

などが出てきます。

(2)はまったくのフィクションですし、(1)にいたっては刻一刻と戦況が変わる戦場にあっては幸村の発言こそナンセンスそのものだと思います。事実、又兵衛の機転があったからこそ、(徳川が見落とした小松山を奪取して戦局を有利に)又兵衛の戦いは人数が少ないにもかかわらず善戦できたと思います。

「軍師二人」の中にあるように、「幸村はわざと遅れたのではないか」。それは「又兵衛は又兵衛の考える作戦で死ね」。「オレは自分の思うように戦って死ぬ」と書いたほうが現実的だった気がします。なにせ、この時の幸村の仕事は又兵衛の指示の下で働くことだったわけですから。

<内容>
真田昌幸、子の真田幸村、幸村の家来・向井佐平次、佐平次の息子で忍びの佐助、佐助の頭領格の女忍び、お江の目線で描く壮大な真田絵巻。最後の12巻は幸村の兄・信之が主人公。

前髪の惣三郎

2007-12-26 01:27:33 | 司馬遼太郎


いや~、この話は真実だと思い、一生懸命主人公の加納惣三郎について調べました。しかし、どこにも載っていない! フィクションなんですね~。

惣三郎のモデルはいたようです。その人物は女にハマって身を崩します。この主人公は男にハマって…と、なりますが。

<内容>
新撰組で隊員を募集したところ、美貌の惣三郎と浪人・田代が仲間に加わる。

やがて、二人は妖しい仲に。まもなく、隊の湯沢も惣三郎に懸想するように。

そんななか、湯沢が何者かに殺され、土方は山崎に調査を命じる。

山崎は事件を調べる一方、惣三郎に女の良さを分からせようとするが、惣三郎は山崎に好意を寄せるようになり…。

<感想>☆☆
非常に妖しい話です。いわゆる、ホモの話です。そして、そこに事件が起こります。そして、くだんのごとく、土方が山崎に調査を命じます。そして、山崎が事件の核心に迫っていきます。

これは映画にもなっています。大島渚の「御法度」です。同じく「血風録」収録の「三条磧乱刃」との合作です。しかし「三条磧乱刃」のくだりってありましたっけ?

ほとんど「前髪の惣三郎」の内容しか覚えていません。

個人的には、美貌の青年が松田龍平というのが気になりました。彼は決してハンサムではないような…。タッキーあたりなら分かりますが。

虎徹

2007-12-24 22:41:33 | 司馬遼太郎


久しぶり、「新撰組血風録」収録作です。

これは、新撰組局長・近藤勇の話です。

<内容>
新撰組入隊を決めた近藤は、山南敬助の助言もあり、名刀・虎徹を購入しようと刀屋に手配を頼む。

刀屋は近藤の用意した金の少なさに驚き、偽物の刀を虎徹と偽り、近藤に渡した…。

<感想>☆☆☆
これは面白い! 血風録の中でも1、2位を争うぐらいです。

これも史実かフィクションかは分かりませんが、とにかく近藤の偏屈な考え方がいい。

「偽者が本物で、本物が偽者」という、

読んでない人にはまったく分からないでしょうが、このエピソードが秀逸です。

もし、これがフィクションなら、やはり司馬さんという人はスゴいですね。

五十四万石の嘘

2007-12-23 22:48:36 | 松本清張


本作も「張込み」収録の短編です。

加藤清正が築いた肥後五十四万石がお家取り潰しになるまでの話です。

主人公は清正の孫・光正です。

<内容>
清正の孫・光正は江戸で人質として暮らし、日々退屈をもてあましていた。
武芸も学問も興味がなかった。

そんななか、光正はある楽しみを覚える。それは臆病な茶坊主・玄斎をいじめることだった…。


<感想>☆☆
加藤家取り潰しは有名で、清正の息子・忠広の時代です。司馬さんの短編にもあるように、忠広はかなりダメな人だったようで、冒頭は忠広の話です。

ところが一転、忠広の子・光正の話となります。この話が事実とするならば、お家取り潰しは光正のせいということになります。

そして、読んでて気になったのはタイトルの「嘘」。嘘って一体なんだろうと。
このへんは「さすが松本清張!」というところです。

<光正>
しかし、光正という人は、けっこうアレな人ですね。清正はお家存続のために、考えうる策をろうして五十四万石を守り通したのに、孫の光正は…というところですね。清正も浮かばれないすね。

腹中の敵

2007-12-19 02:39:58 | 松本清張


松本清張の短編集「張込み」から本作を紹介します。

これはオヤジから薦められて読みましたが、いや~面白かったです!

☆☆☆の満点ですね。これは織田信長の家臣で、秀吉の同僚・丹羽長秀の話です。

<内容>
天下統一を目指す信長には、有能な軍団長がいた。一人が重鎮・柴田勝家。そして、浪人上がりの明智光秀と滝川一益。さらに、台頭著しい羽柴秀吉。

最後の一人が本編の主人公・丹羽長秀だった。

彼らの関係は最悪だった。特に、一益は秀吉の悪口を何度となく長秀に漏らしていた。

一方、長秀は鷹揚な態度を崩さなかった。自分を慕う秀吉に対し、好意さえ感じていた。

そんな長秀だったが…。


<感想>
清張らしく、短編とはいえ伏線が張り巡らされています。まず「腹中の敵」というタイトル。

これは、一益や勝家にとっての秀吉をさしています。そして、長秀の腹中の敵ともなります。さらに…。ここから先は言えませんが、「そう来るか」というラストが来ます。

さらに長秀の心情の描写がスゴイ! オレはドキドキしながら、長秀の気持ちになって一気に読みました。

歴史小説ながら、清張らしいサスペンス的なアプローチはさすが、というところでしょうか。

<松本清張>
まあ「点と線」ぐらいは読んだことありましたが、そんなに読んでいません。

確か、司馬さんのなんかの本で「近代の日本語の文章を確立したのは松本清張だ」みたいな記述があったような気がします。違ったかな…。

司馬さんも清張さんも元新聞記者ですね。

歴史小説は短編「奥羽の二人」を読みました。これは大好きな伊達政宗の話です。

話は面白かったのですが、1カ所人物設定が史実とまったく違ってて(基礎中の基礎ともいえるところですが…)、やはり清張さんは推理小説の人なんだな…と勝手に思っていました。

ただ、清張さんは歴史ものをいっぱい書いていますし、本当は推理作家より、歴史作家(専門)になりたかったそうですしね。「奥羽の二人」も確信犯的に嘘を書いているのかもしれません。

<丹羽長秀>
歴史ファンはみんな知っていますが、じゃ彼が具体的に何をしたかというと、あまり知らないんじゃないでしょうか。

本書でも、彼の功績や活躍の記述はあまり述べられていませんが、やはり長秀が主人公というのは新鮮ですね。

この話を読んで、長秀を身近に考えることができるようになりました。