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<健康>「セクハラ失業」で非正規・貧困に直面する女性たち(2018.6.16毎日新聞より)

2018-06-16 18:14:52 | 性犯罪についての記事
<健康>「セクハラ失業」で非正規・貧困に直面する女性たち
6/16(土) 9:30配信
 
いまだに、セクハラを職場の潤滑油、あるいは悪意のない冗談と主張する人がいます。しかし、セクハラは被害者の心と体に深い傷を負わせる悪質な行為です。メンタルヘルスや家族問題、働き方に詳しいライターの西川敦子さんが、「セクハラ失業」の悲しい実態を調べました。
 
◇セクハラ上司に抗議したらむごい嫌がらせが
 セクハラ被害者が人知れず心を病み、その結果会社を辞めていくケースが多いことをご存じだろうか。「辞めたくないから声をあげられない」「上下関係を壊したくないから黙っているしかない」と思い詰めて心を病み、なぜか被害者が「セクハラ失業」してしまう。セクハラにまつわる日本的組織の息苦しさは、想像以上だ。
 「はっきり言って気持ち悪いです。いいかげんにしてください」
 強い口調に驚いたのか、前の座席の乗客がこちらを振り返った。出張帰りの東海道新幹線車内。松本沙織さん(30代、仮名)は上司と並んで座っていた。
 「ビールを数缶あけ、酔っぱらった上司は私の太ももに手を置いたり、肩を抱いたり。あげくの果てに『東京に着いたら静かなところでゆっくり話さない?』などと言い始めました」
 強く突っぱねると、上司は仏頂面になってそっぽを向き、東京に着くまで押し黙っていた。そして翌日から、「会議で無視される」「仕事のメールに返信してもらえない」などなどの嫌がらせが始まった。
 「上司の機嫌を損ねまいとしてか、ほかのメンバーも私に冷たい態度を取るようになったんです。会社に行くのがつらく、精神的に不安定になりました。結局、3カ月後に退職しました」
 
職場のセクシュアルハラスメントの被害者が心を病み、仕事を続けられなくなる「セクハラ失業」は後を絶たない。
日本労働組合総連合会(連合)が2017年、会社でセクハラを含むいじめ、嫌がらせを受けた人を対象に調査したところ、3割強の人が心と体に不調をきたし、およそ2割の人が退職していたことが分かった。
 
また、都道府県労働局にあっせん申請があったいじめ・嫌がらせ事案284件(11年)を独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)が調べた結果からも、メンタルヘルスに不調をきたした人が3割強いるなど、同様の傾向がみられた。不調はうつ病、自律神経失調症、PTSD、パニック障害、不安障害、適応障害、てんかんのほか、不眠、自殺願望、体重減など多岐にわたっていた。
 
JILPTの内藤忍副主任研究員は、「とくにセクハラを受けた人にヒアリングをすると、ほぼ全員がメンタル面のダメージを受けていました。『家から出られない』『人に会えない』という人もいて、調査が難航したほどです。結果的にほとんどの人が退職を余儀なくされました」と語る。
 
労働局に相談した時点で事態が相当深刻化していたと想像できるが、これらが氷山の一角である可能性もある。誰にも相談できず、休職、退職を余儀なくされる被害者は他に相当いるのではないか。
 
「性的な嫌がらせは上司、先輩が部下、後輩に対して行うことが多い。つまり、背景には組織の上下関係が隠れています。実際、被害者の話を聞くとパワハラ被害も受けていたケースがあります」と内藤さんは説明する。
つまり上記の例のように、「セクハラに抗議したら今度はパワハラを受けるようになった」「パワハラが怖いのでセクハラをがまんしている」というように、複数のハラスメントを同時に、あるいは連続して受けやすい構造が組織内にあるというのだ。
 
◇「セクハラ禁止」を定めた法律はない
 悩み、それでもがまんする被害者たち。なぜ心を病む前に声を上げられないのだろうか。
 理由のひとつは前述のとおり、「加害者が上の立場」のケースが圧倒的に多いからだ。さらに、上下関係を重視する日本の組織では立場の強い上司が守られやすく、部下や契約・派遣社員など、立場の弱い被害者の訴えが軽視されがちな構造がある。「ハニートラップ」「モンスター」などと、被害者が逆に周囲から非難されることすらある。
被害者が非難されるのは、「セクハラはするほうが悪い」という世の中の認識がそもそも薄いからだろう。組織のトップは「セクハラは絶対にやってはいけない行為である」ということをもっと周知すべきだ。とはいえ、日本にはセクハラを禁じた法律自体が存在しない。
今のところ、職場の性的な言動について定めた法律は、男女雇用機会均等法第11条のみ。会社が取るべきセクハラの防止措置などを定めている。
 
<男女雇用機会均等法第11条>「事業主は、職場で行われる性的な言動に対する労働者の対応により、その労働者が労働条件で不利益を受け、または性的言動で就業環境が害されることのないよう労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない」
 
さらに、事業主が講じるべき措置について指針で別に定めている。その項目は大きく分けて以下の三つだ。
 (1)セクハラがあってはならないという事業主の方針の明確化とその周知・啓発(2)セクハラ相談(苦情)に応じ、適切に対応するための窓口の整備(3)職場でセクハラが起きた際の迅速かつ適切な対応
しかしこの法律は事業主の義務を定めたものだ。セクハラそのものを禁じてはいないし、セクハラ加害者を対象ともしていない。さらに措置義務違反に対する制裁である「企業名の公表」は、ことセクハラに関しては実施されたことがない。
会社の使用者責任を民事裁判で問う方法はある。また、民法上の不法行為に相当する場合は加害者に損害賠償を求めることもできる。傷害や強要、強制わいせつにあたる言動があれば刑法などの刑罰法令を適用し、捜査機関が検挙などを行うこともある。
「とはいえ、民事裁判には費用がかかるし、被害内容を詳細に説明する必要がある。そもそも心身の不調を抱える人には大きなハードルです。また、刑事手続きになった場合には、思い出すことすらつらい被害内容について詳細に検事に聞かれ、二重に傷つく被害者もいます」
 
◇法制度の不備をすぐにでも見直すべき
セクハラが原因で心身にダメージを負い、退職したあと、再就職がうまくいかず経済的に困窮する人も少なくないという。
「正社員だったのにセクハラが原因で退職し、その後、転職に失敗して派遣先を転々としている例もあります。再就職の面接で前の仕事を辞めた理由を聞かれても、『セクハラで心の病気を発症したから』とは言いにくい。過去に職場でハラスメントを経験したために、派遣などの働き方を選ばざるを得なくなった非正規労働者も一定数いるとみています」(内藤さん)
 
被害者なのに人間関係を壊すことを恐れたり、職を失うかもしれないとおびえたりと、セクハラは働く人の心と体、労働環境をむしばむ。上の立場の人を敵に回すことを恐れ、被害者を助けられない同僚もいるだろう。
 
職場のセクハラを放置せず、被害者が病んだり失業したりしないようにするにはどうすればいいか。
まず、「セクハラをしてはいけない」と明確にうたっていない、今の法制度の不備を見直すべきだ、と内藤さんは言う。
 
「セクハラは性差別であると同時に、健康被害を生む行為であり、労働者の安全衛生に直結する問題です。実際、海外ではセクハラは安全衛生の問題としても扱われています。国内でも、すでにセクハラによる精神障害が労災認定されていることを考えると、今後は、“差別禁止”と“労働安全衛生”の両方の観点から、ハラスメント問題にアプローチする方向性が望ましいと思います」
 
男女雇用機会均等法だけでなく、労働安全衛生法でもセクハラについて規定すべきではないだろうか。
事後対応だけでなく防止策も必要だ。まず、労働安全衛生法が設置を義務づけている衛生委員会で実態を把握。セクハラが起きる構造についてみんなで考え、職場の意識を変える。うわさになる心配のない、いつでも相談に駆け込める、中立的で信頼できる相談窓口を社外に作る。
 
深刻な精神障害を抱え、さらに失業にまで追い込まれる--セクハラ被害は、他人に相談しづらいだけに、その深刻さは広く知られることが少ない。だからこそ、誰もが心と体の健康を脅かされることなく働けるよう、防止措置や事後の救済態勢を整えることが必要だろう。
 
内藤忍(ないとう・しの):早稲田大学大学院法学研究科労働法専修博士後期課程単位取得。独立行政法人労働政策研究・研修機構副主任研究員。専門分野は労働法。特にハラスメント、イギリス労働法、労働紛争処理、ジェンダー法、雇用性差別、LGBT差別に詳しい。
 
 


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