醸楽庵(じょうらくあん)だより 

主に芭蕉の俳句、紀行文の鑑賞、お酒、蔵元の話、政治、社会問題、短編小説、文学批評など

醸楽庵だより  223号   聖海(白井一道)

2016-03-01 12:33:57 | 随筆・小説

  tppは日本の富をアメリカが奪う(6)

呑助 ISD条項に断固反対と掲げた自民党のポスターを見たような気がしますね。これは何ですか。
侘助Investor-State Dispute Settlementの略のようだ。Investorというのは「投資家」という意味でね、Stateというのは「国」だよね、Dispute は「紛争」Settlementは「解決」だから、投資家と国との間の紛争を解決する仕組みをいうようだ。
呑助 具体的にはどのような紛争が予想されるんでしようかね。
侘助 アメリカが発展途上国に侵出し、工場を建設した。その後、発展途上国の政権が変わり、外国資本の侵出は許さないと政策が変わったりすると投資家は大損をしてしまう。このような損害を事前に防ぐための仕組みがISD条項なんだ。その際にはWTO(世界貿易機関)に設置された紛争調停機関に提訴し、投資家は損害を受けた額をその国から保障してもらえると言う条項なんだ。
呑助 投資家の投資リスクを回避する条項なんですね。
侘助 そうなんだ。投資家を保護する条項なんだ。例えば、企業活動で出た排水が投資先国の基準に反した結果、投資家が損害を被った場合も、その損害を補償してもらえるような条項になっているようなんだ。1994年米国・カナダ・メキシコは北米自由貿易協定(NAFTA・ナフタ)を結び、この協定が発効されると仲裁事件が急増しているようだ。メキシコ政府はサトウキビで作った砂糖である蔗糖(Sucrose)以外の他の甘味料を使った炭酸飲料に消費税20%を賦課していた。輸入産液状果糖から自国の蔗糖産業を保護するための措置だったんだ。 しかし液状果糖を生産する米国企業3ヶ所が「自由貿易協定違反だ」とメキシコ政府を仲裁裁判所に訴え、仲裁審判部は1億9180万ドルを賠償しろと判定した。
呑助 メキシコ政府にとっちゃ、たまったもんじゃないですね。
侘助 発展途上国には、発展途上国なりの経済政策があってしかるべきでしよう。その企業活動についての規制があって当然だと思うんだむけども、その規制が企業活動を阻害し、損害を与えたと投資家が進出先国政府を訴え、損害を補償してもらえるという条項がISD条項のようだ。
呑助 毒素条項といわれる由縁ですね。
侘助 まさにその通りだと思うな。
呑助 グローバル企業というのは発展途上国の政府より大きく、強いような存在なんですね。
侘助 企業が国を選ぶ時代だ。こんなことを言う経済学者がいるみたいだからね。
呑助 今の自公政権はtppに積極的になっているんでしよう。自分たちは先進国のつもりになってアジアの発展途上国に侵出するつもりになっているのとちがいますかね。
侘助 対アメリカに対してはペコペコしているがアジアの発展途上国には対してはアメリカの威をかりて大きな顔をしようということなのかもしれないな。
呑助 だから選挙の時には国内の中小業者や庶民、農民に配慮し、tpp断固反対とポスターに掲げても政権を取った後はそんなことしたことはなかったかのごとくに行動しているのかもしれませんね。
侘助 そうなんじゃないかと思う。はっきり言っていたからね。NHKの日曜政治討論番組に出演した経済学者だという人が言っていた。アジアの成長を取り込むのがtppだとね。アジアの成長を取り込むとは、何を意味しているんだと思う?
呑助 アジアは世界で最も経済成長の可能性を秘めたところなんでしよう。
侘助 そのようだね。なにしろアジアは人口が巨大だからね。アジアの需要を奪う。これがアジアの成長を取り込むという事なんじゃないかと思うんだ。日本製品をアジア諸国に売りさばく。