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ヤコブ・ヴェゲリウス『曲芸師ハリドン』(再読版)

2008-09-03 01:24:49 | 読書
先日紹介したヤコブ・ヴェゲリウス『曲芸師ハリドン』の記事にたくさんコメントをいただいたので

自分がどのように読んでみたかを、書いてみました。


読んでみて、自分なりに考えた感想は先日の記事に書いてありますので、そちらをお読みください。




私は、この本の重要なテーマは、主人公ハリドンの成長だと考えました。

ですから、まず、主人公ハリドンや彼を取り巻く登場人物たちの性格・気持ちを理解しようと思いました。

そして、そのためには、ただ読むだけでなく

「なんでこうなるんだろう」と疑問を持ちながら読み、何度も読み返すことにしました。


もちろん、そのようにしなくても物語を読むことはできますし、
あらすじを頭に入れることができます。

しかし、それでは書いてあることを読んだだけで

登場人物や物語を理解したことにはなりません。

私は、理解するには、〈考える〉ことが欠かせないと考えます。



では、登場人物について〈考える〉にはどうするのか?

私は文章を読んでいて、不思議に思うことを〈考える〉きっかけにします。


私が不思議に思ったのは、たとえば次のようなことです。


なぜ、ハリドンは新しいウォーキングシューズをはかなかったのか?

ハリドンはどうして、暗闇を怖いと思ったことがないのか?


こうした疑問に答える手がかりも、文章の中に探します。

しかし、それはそのページに書かれているとは限りません。

ですから、色んなページを読み返すことが必要になります。


また、〈考える〉ための手がかりは文章だけではありません。

本書は挿絵も、作者ヤコブ・ヴェゲリウスが手掛けています。

ですから、挿絵も物語の重要な一部として見ることができると思いました。


しかも、ヴェゲリウスの挿絵は

警察官の机の上にあるエンピツは、長い順番に並べられている

など、細部も考えて描いています。

そこで、挿絵の中に文章には描かれていない手がかりを見つけ、

これを〈考える〉手がかりとすることも考えました。


たとえば、エッラは

「(アメリカに行くという夢をかなえたら)そしたらその先、なんの夢を見ればいいのよね?」

と言いますが、

これを読んで私は、作者は「夢はかなえなくてもいい」と言いたいのかなと疑問に思いました。

そしてこのセリフだけ見ると、エッラは暗い雰囲気の人とも読めるそうです。


しかし、挿絵を見るとそうではない―やさしそうな人で、それなりに仕合せそうな人だだという印象を持ちました。


そこで、

やさしそうで、しかも、それなりに仕合せそうなエッラがなぜ、

「そしたらその先、なんの夢を見ればいいのよね?」

というセリフを言うのか?

という疑問を持ち、これについて考えてみました。


このように考え続けることで、エッラの性格や

この本の重要なテーマと考える「希望」について、自分なり(=それなり?)の答えを見つけることができました。



逆に、絵が無いことにも注意します。

この本には、重要な人物である船長の絵がありません。



これには、船長がどんな人物なのかをはっきり示さないことで


船長がハリドンを捨ててしまうかもしれない


と、読者に思わせる効果もあるでしょう。




しかし、私はあえて船長の顔を描かないことで
>
>
船長について読者に積極的に想像してもらう、


ことが筆者の一番のねらいだろうと考えました。



そこで、本に書かれた情報を元に、


船長はどんな性格なのか、どんな雰囲気の人なのか


について考えてみました。

そうすると、船長の人柄だけでなく、ハリドンとの関係、
さらには物語全体についても、自分なにの理解できたように思います。



登場人物について考えてみる方法には、

他の登場人物と比較する方法も有効でした。


たとえば、ハリドンとイヌを比べてみます。

私は、

なんとかハリドンの役に立とうとするイヌは、

人を疑うことを知らなかった昔のハリドンに似ていると考えました。

こう考えてみると、


イヌはこれまでどんな風に生きてきたのか?


なぜハリドンはあのような性格になったのか?


ハリドンはなぜ、イヌに少しずつ親切になるのか?


などの疑問について、理解しやすくなったと思います。


同じように、ハリドンが成長したらこうなるかもしれない、という人物はいないだろうか?と考えたり

船長やエッラと他の人物(たとえばニセ船長や金持ちの男)を比べてみたりもしました。



こうやって登場人物を比べていくと、


その人物がどういう性格なのか

どうして、そういう性格になったのか?、


という登場人物についての疑問だけでなく


作者は人間を、どのように描こうとしているのか


という、より難しい疑問についても考える手助けになったと思います。

そして、登場人物について色々考えることは、物語全体についてを自分なりの理解をすることにつながったと思います。


最後に、

コメントにラストシーンについて質問がありましたので、ラストシーンについて。





最終章のタイトルは、この本のもとのタイトルと同じ「エスペランサ」です。

これは「希望」という意味です


そして、最終章を読むと、ふたつの「エスペランサ」が登場します。



私は、この場面では「希望」がキーワードだと考え


一夜の冒険の末、ハリドンは希望を見つけれたのか?

それはどんな希望か

その場にいる他の登場人物にとっての希望とは何か



などと考えてみました。



また二つの「エスペランサ」の登場の仕方も印象的なので、

これは何かの『比喩』ではないかな、とも考えてみました。




以上が、私なりの『曲芸師ハリドン』の読み方です。


もちろん、この本を読む方法はこれ以外にもあります。

私の読み方は間違いだらけかもしれません


でも、もしこのブログを読んで、

『曲芸師ハリドン』を深く読むきっかけを少しでも得ていただけたら、

とても嬉しいです☆

長い記事を読んでいただきありがとうございます


~おまけ~

バーの名前は、登場人物たちの未来をほのめかしていると思います