333ノテッペンカラトビウツレ

 奇跡は 誰にでも 一度おきる だが おきたことには 誰も気がつかない

人形使いの焦燥

2009-06-20 23:45:56 | SP(Standard Program)
●もう公開になったから言ってもいいよね。『トランスフォーマー/リベンジ』、ヒドいよ!前作がそこそこ面白かったから期待できるかと思ったけど、やっぱマイケル・ベイはマイケル・ベイのままだな。つーか、今回はスピルバーグは何もしてないんじゃないか。あの内容で関与してたとしたら、それこそ大問題だろ?

●先日のブログのコメントに「舞台上の仕掛けで足場に待機していたらトイレに行きたくなった」というものがありましたが、このコメントを読んで思い出したことがあります。まず簡単に説明すると、一部の劇場には照明を設置するために天井付近に鉄のパイプが多数、設置されており、その隣に人がひとり歩けるぐらいの足場が設置されています。照明さんはこの狭い足場を通って、照明を設置するわけですね。

●その昔、ある公演にスタッフで参加した時に「ある場面で上空から巨大な人形が舞い降りてくる」という演出がありました。実際は舞台上空の足場からロープをつけた人形をスルスルと降ろすわけです。金持ちだったら電動で降ろすんでしょうが、その時は金がなかったので、足場に人を待機させて、良いタイミングで人形を降ろすことにしました。足場に上ったのは同級生のAくん。筆者は通称“人形使い”と呼んでいました(←本当)。

●大きな劇場だったらソロリソロリと足場を歩いていけば客にバレませんが、その劇場は小さかったので、上演中に足場を歩くとバレます。そこで、人形使いは「上空から人形が降りて来る」という演出ためだけに、客が会場に入ってくる前に所定の位置にスタンバイして、上演後も最後の客が劇場を去るまで、その位置にとどまる事になりました。ここまで読んで多くの方がお気づきでしょうが、この仕事、相当にツラいです。暗くて高い場所で、危うい足場でジッとしていなければならず、当然ながらトイレにも行けません。そこで人形使いは何を考えたのか「スタンバイして、劇が始まるまでの間に足場で弁当を食おう」と考えました。たぶん、メシを食う時間がなかったんでしょう。そこで彼は人形とカラアゲ弁当を持って足場にのぼり、スタンバイしました。彼の位置は舞台中央の上空にあります。時間になり、会場にお客さんが入ってきました。当然ながら観客は舞台上空に人形使いがいることを知りません。開演前なので幕はありませんでしたが舞台は暗いままです。

●人形使いは「ではメシだ」と弁当を開けました。以下は人形使いの回想です。「フタを開けるとカラアゲが3個入っていました。私はまずカラアゲをひとつ口の中に入れました。連日の寝不足と空腹で疲れきっていたので、カラアゲの味が全身に行き渡るようです。次に米をかきこみ、付け合わせを食べました。開演まではまだまだ時間があります。で、ふと弁当を見ると、カラアゲが1個しかありません。最初は3個だった。ひとつ食べた。米を食って、弁当を見たらカラアゲはひとつ残っていた。おかしいです。何かおかしいです。それって

舞台上にカラアゲを落とした

ってこと?人形使いはパニックになりました。もし、カラアゲを落としたとすれば、開演時間になり、舞台が照明に照らされると、舞台上に何の脈略もなくカラアゲがひとつ置いてあることになります。ちなみにこの公演はダンス公演です。ダンス公演の舞台に鳥のカラアゲがひとつ。

●人形使いは大パニックです。足場から下を覗いてみましたが、暗くて何も見えません。足場を降りてカラアゲがないか確認に行きたいところですが、それもできません。公演が始まり、照明が灯り、ド派手な音楽が鳴り、観客が最初に目にするものは

鳥のカラアゲ

えー!ダンス公演って言ったじゃん!それから開演になるまでの短い時間、それは人形使いにとって無限の時間でした。「カラアゲは自分で食った気もする。でも、もし落としていたら……

●開演時間になりました。人形使いは早速、足場から下を覗きます。……ない!カラアゲがない!ないよ!やっぱ俺が食ったんだよ!なかった!なかった!クララが立った!人形使いは足場で動かぬまま、心の中で狂喜乱舞したそうです。「どんなに忙しくともメシは椅子に座って食え」このエピソードはそんな当たり前のことを我々に教えてくれるのです。

●『…リベンジ』より、こっちの方がよっぽど面白いと思う。


最新の画像もっと見る