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税制メールマガジン 第10号

2004年12月01日 | 税制メルマガ
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税制メールマガジン 第10号           2004/12/1

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◆  目次

  1 巻頭言 ~ノーベル賞受賞式を前に~

  2 税制をめぐる最近の動き

  3 課長のひとりごと ~「実像把握」レポートから(その2)~

  4 特集 ~税制調査会「平成17年度の税制改正に関する答申」~

  5 若手はこう見る ~社会保障制度を支える社会保険料と税~

  6 編集後記

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1 巻頭言 ~ノーベル賞授賞式を前に~ 



 11月25日に税制調査会は「平成17年度の税制改正に関する答申」をとり

まとめ、石会長が小泉総理大臣に提出しました。これから年末にかけて歳

入も含め予算編成が本格化していくことになります。



 ところで、例年予算編成もまっさかりとなる、12月10日、この日はノー

ベルの命日で、ノーベル賞授賞式・晩餐会がはれやかに行なわれます。ノ

ーベル賞、今年は、日本の受賞者がでなかったのは残念でしたね。



 経済関連の、ノーベル経済学賞受賞者は、10月11日に公表されています。

90年代に先進国の経済政策で主流となった、財政政策や金融政策で、健全

なルールないし目標を設定し、その枠組みの中で政策を運営していくとい

う「目的・ルール設定型マクロ経済政策」の普及などに大きな理論的貢献

のあったキドランド・米国カーネギーメロン大学教授とプレスコット・ア

リゾナ州立大学教授に授与されるとのことです。



 この今年のノーベル経済学賞受賞者のご研究とも関連しますが、昨年末

に出版された『マクロ経済政策の「技術」』(林伴子著)は、著者(現在

内閣府経済社会総合研究所主任研究官)の経済開発協力機構(OECD)

経済動向審査委員会でのご活躍を踏まえた好著として、また、よく新聞な

どでも話題になるインフレターゲッティングや財政再建の「技術」につい

て諸外国の実例を手際よく紹介されていて、その実務者的な筆致が魅力的

なこともあり、われわれのような仕事をしている者の間で広く読まれてい

ると思います。「技術」は、努力によって身につけることも可能であると

いうことで、将来にも希望が持てそうです。



 最近、仕事柄、日本の財政問題についてエコノミストの方々などと意見

交換したりする必要もあって、この本を読み返していますが、「財政再建

開始のタイミング」という章で、以下のような記述にぶつかりました。日

本の財政再建のタイミングに関する指摘です。



 『財政再建のタイミングはいつか。それは、カナダなどの例でもみたよ

うに景気が底を打ったらすぐである。ただ、最近の日本の景気は輸出に左

右されやすく、米国経済のリスクなど下ぶれリスク要因に注意しなければ

ならず、景気の潮目を読むのは必ずしも容易ではない。』(同書169ペー

ジ)とされ、結局、『・・現在、景気判断は非常に難しい局面にある。た

だ、財政再建に向けて必要な準備の期間を考えると、少なくとも今から具

体的な準備を始めるべきである。景気が底を打ったのを確認してから準備

する「バックワード・ルッキングな政策運営」では遅い。ましてや、例え

ば「物価上昇率がプラスになるまで財政再建を待つ」といった余裕が今の

日本の財政にあるとは恩われない。「危機的状況」に追い込まれて財政再

建するよりも、手堅い経済見通しときっちりしたリスク要因判断に基づく

「フォワード・ルッキングな財政政策運営」を強く期待したい。』(同書

170ページ)と昨年末に指摘されていたのです。

 

 税制調査会での議論を振り返ると、日本の財政が持つマクロ経済へのリ

スクの側面の議論がかなり時間をさいて行われたと思います。10月1日の

税制調査会基礎問題小委員会では、『国債暴落』などの著作でも著名なみ

ずほ証券投資戦略部チーフストラテジストの高田創氏がプレゼンテーショ

ンをされ、日本において、国債を含めての財政問題について、いまのとこ

ろ、資金的には国内で完結し、「外圧」などが存在しないということを踏

まえ、「日本人というものがある面ではガバナンスが問われている」とい

うお話がありました。



 私にとっては、今年の税制調査会の議論の中で最も強く印象が残った場

面の1つでしたが、前述の林氏の指摘とあわせ、今回の税制調査会答申は、

日本の財政について、時期的にもいろいろ考えてみるよい契機となるので

はないでしょうか。今後、マクロ経済政策の「技術」が浸透し、「日本人

のガバナンス」による経済政策運営が世界的に高く評価され、その結果と

して、ノーベル経済学賞受賞者が日本から出たというようになれば、本当

にいいですね。



                 主税局広報担当企画官  渡部 晶



・ノーベル賞について(国立科学博物館「ノーベル賞100周年記念展」

(2002年3月から6月)より)

http://www.kahaku.go.jp/special/past/nobel/index.html



・ノーベル財団(英語のHP)

http://nobelprize.org/



・日本経済新聞10月19日付朝刊29面「経済教室」(河合正弘東大教授

「2004年ノーベル経済学賞」)



・『マクロ経済政策の「技術」』(林伴子著 日本評論社 2003年12月)



・税制調査会第20回基礎問題小委員会(平成16年10月1日)議事録・資料

http://www.mof.go.jp/singikai/zeicho/top_zei3.htm

(「基礎問題小委員会」をクリックして下さい。)



・『国債暴落』(高田創・住友謙一著 中公新書クラレ 中央公論新社

 2001年11月)



・カナダの財政再建「カナダの財政再建について」(刀禰俊哉)

(財務省広報誌「ファイナンス」平成16年5月号)

http://www.mof.go.jp/finance/f1605.htmから、ご覧下さい。

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2 税制をめぐる最近の動き



 政府税制調査会の11月の審議状況をお伝えします。



 11月の税制調査会は、個人所得課税(国・地方)の課題、企業年金課税、

組合事業における課税関係及び環境税などについて議論がなされ、その後

「平成17年度の税制改正に関する答申」(平成16年11月25日)のとりまと

めに向け、審議がなされました。



 ※ なお、これまでの審議の概要は下記URLにてご覧いただけます。

http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/sy012.htm

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3 課長のひとりごと ~「実像把握」レポートから(その2)~



 今回は経済と国民負担についてご紹介します。政府(国と地方公共団体)

は、皆さんに納めていただく税と社会保険料を財源として、公共サービス

を提供しています。それぞれが国民所得に占める割合を租税負担率、社会

保障負担率といい、合わせて国民負担率といっています。日本経済を家計

にたとえれば、家計の収入のうちどれくらいを政府が行う公共サービスの

ために負担しているかという数字です。



 「実像把握」レポートでは、戦後の日本の経済社会を大きく3つの時代

に分けてとらえています。終戦から1970年代半ばまでが第一期で高度成長

の時代、1970年代半ばから1990年までが第二期で安定成長の時代、1990年

以降が第三期でバブル崩壊以降の低成長の時代です。社会保障負担率は、

社会保障の充実と近年の高齢化の進展で、戦後、一貫して少しずつ上昇し

てきていますが、租税負担率は時代とともに変化しています。



 第一期は、高度経済成長に伴う自然増収を減税で相殺したため、18~19

%程度でほぼ安定していました。石油ショックを経て第二期に入ると、福

祉国家への転換や景気対策などもあって財政需要が拡大し、自然増収を取

り込んでいったため、租税負担率は上昇し、1990年頃には28%程度と第一

期よりも10%程度高まりました。その後、第三期に入ると、株・土地など

バブル的要因による税収の落ち込み、景気の低迷、累次の減税により、租

税負担率は低下傾向をたどり、2004年度には約21%となっています。



 そこで、これに社会保障負担率を加えた国民負担率は、第一期に微増、

第二期に上昇して約38%まで達しましたが、第三期は微減で、現在約36%

という動きです。1982年、臨時行政調査会(いわゆる土光臨調)は、将来、

国民負担率が50%よりかなり低位にとどめることが必要と提言しましたが、

当時から20年経った現在もまだ36%ですから、余裕しゃくしゃくのように

も見えます。



 ところが、実は、日本は財政赤字が大きいのです。これは将来、税で賄

わなければならないので、潜在的な国民負担だと考えられます。そこで、

これを加えた「財政赤字を含む国民負担率」をみると、約45%と50%に近

づいているのです。



 国家のあり方として、アメリカは「低福祉・低負担」、イギリス、ドイ

ツ、フランスは「中福祉・中負担」、スウェーデン等の北欧諸国は「高福

祉・高負担」といわれますが、この並びで考えれば、日本は「中福祉・低

負担」で、「中」と「低」の差が財政赤字ということになります。財政赤

字が拡大していけば潜在的「負担(ふたん)」が顕在化して「破綻(はた

ん)」になってしまいます。経済・社会への影響をにらみながら、一歩ず

つ着実に財政赤字を減らしていくことが求められていると思います。



                   主税局調査課長  羽深 成樹

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4 特集 ~税制調査会「平成17年度の税制改正に関する答申」~



 税制調査会では、昨年10月の小泉総理大臣の諮問を受け、本年9月から、

平成17年度税制改正について中期的な課題も視野に入れながら審議をして

きました。その審議の結果が、11月25日の総会において「平成17年度の税

制改正に関する答申」としてとりまとめられ、小泉総理大臣に提出されま

したので、その概要をご紹介します。



 今回の答申は、向こう数年間にわたり取り組むべき税制改革を展望しつ

つ、平成17年度税制改正にあたっての指針を示したものであり、これを受

けて、現在、政府・与党で具体的な議論が始まっています。今月中旬には

平成17年度税制改正についての案が固まり、来年の通常国会において審議

がなされることになります。



(1)基本的考え方

○経済及び財政の現状

 近年、さまざまな構造改革の推進により、民間経済の体質強化が実現さ

れつつある。原油価格の動向等に留意する必要はあるが、国内民間需要が

着実に増加していることから、今後とも景気回復が続くと期待される。

 他方で、わが国の財政は、長期債務残高が増大し、先進国中最悪の危機

的状況にある。このような財政状況を放置すれば、財政の持続可能性に対

する信認低下を背景とした金利上昇によって、経済全体の健全な発展が阻

害されることとなりかねない。



○持続可能な公的部門の構築に向けて

 ①聖域なき歳出削減とともに、広く公平に負担を分かち合い、安定的な

歳入構造を確立するなど「歳出・歳入両面からの財政構造改革」、②地方

行財政の効率化とともに、補助金改革、交付税改革、税源移譲を含む税源

配分の見直しからなる「国・地方の三位一体改革」、③受益と負担のバラ

ンスを図る観点から、給付面の抜本的見直しとあわせ、現在世代の負担水

準の引上げを図るなど「税・社会保障負担のあり方の改革」を進め、21世

紀にわたり持続可能な公的部門を構築していくことが重要。



○今後の税制改革

 歳出改革や民需主導の持続的な経済成長を実現していくこととあわせ、

必要な公的サービスの費用を広く公平に分かち合うため、所得・消費・資

産等の多様な課税ベースに適切な負担を求めつつ、全体としての税負担水

準の引上げが必要。個人所得課税の本来の機能(財源調達機能と所得再分

配機能)の回復と、消費税率の引上げが今後の税体系構築の基本となる。



(2)個別税目の課題

○個人所得課税

 ・税源移譲

 三位一体改革の一環として、平成18年度までに、所得税から個人住民税

への本格的な税源移譲を行うこととされている。応益性などが求められる

個人住民税については所得割の税率のフラット化を行うことを基本に、所

得税については税率構造・控除双方の見直しを視野に、具体的な移譲の方

法について今後検討を重ねていく必要がある。



 ・定率減税

 現在の経済状況は、定率減税が導入された平成11年当時と比べ、著しく

好転してきており、引き続き各般の構造改革が実を結んでいけば、民需主

導の経済成長が持続することが期待される。また、税源移譲とあわせて、

国・地方を通じた個人所得課税の抜本的見直しを平成18年度までに行う必

要がある。

 したがって、定率減税は平成18年度までに廃止すべきである。その際、

経済への影響を考慮すると、平成18年度税制改正において一度に廃止する

よりも、段階的に取り組むことが適当であり、平成17年度税制改正におい

ても縮減を図る必要がある。



○消費税

 今後の税体系構築にあたっては、国民の理解を得る努力を払いつつ、消

費税の税率を引き上げていくことが必要である。

 消費税率の水準が欧州諸国並みである二桁税率になった場合には、軽減

税率の採用の是非が検討課題となる。しかし、制度の簡素化等の観点から

は極力単一税率が望ましい。

 税率を引き上げる際には、社会保障の給付水準との関係を明確に説明す

ることが必要である。



○環境税

 環境税導入の是非については、国・地方の温暖化対策全体の中での具体

的な位置付けを踏まえて検討する必要がある。今後、温暖化対策全体の議

論の進展を踏まえ、国民経済や産業の国際競争力に与える影響をはじめと

する多くの論点をできる限り早急に検討しなければならない。



 ※ 以上の概要は、税制調査会「平成17年度の税制改正に関する答申」

の主なポイントをまとめたものです。このほか、金融所得課税の一体化、

相続税、法人課税、国際課税、酒税、企業年金等に関する税制などについ

ても提言がなされています。詳しくは、答申本文をご覧下さい。

http://www.mof.go.jp/singikai/zeicho/tosin/161125a.htm

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5 若手はこう見る ~社会保障制度を支える社会保険料と税~



 年金、医療、介護、生活保護など社会保障制度は私たちが安心して暮ら

していくための大切な基盤であり、私たちは社会保険料と税の負担を通じ

てこの制度を支えています。



 ところで、「社会保険料」と「税」にはどのような違いがあるでしょう

か。どちらも負担をするという点において同じようなものだと答える友人

がいました。本論とは離れた回答ですが、ある意味重要なポイントを指摘

しています。社会保障制度の負担を議論する際には、税・保険料ともに国

民の負担であるという大前提を忘れてはいけないからです。



 この点に関して、10月の税制調査会での田近教授(一橋大)のプレゼン

テーション「日本の社会保障と財政」は、非常に興味深い内容でした。

「国庫負担は収入だという考え方が、日本の社会保障財政と人々の真に求

めている保障の提供を困難にしている」という副題がその内容を端的に物

語っています。社会保険の財源として投入される国庫負担は、国民の負担

である税によってまかなわれているにもかかわらず、負担感を直接感じな

いことが、社会保険制度の過大な給付や財政悪化の問題を引き起こす原因

になっているというものです。



・田近教授のプレゼンテーション資料

http://www.mof.go.jp/singikai/zeicho/siryou/kiso_b20c.pdf



 再び、「社会保険料」と「税」の違いに話を戻します。税制調査会の答

申「わが国税制の現状と課題」(2000年7月)では、

『社会保険料は、国民生活の安定を損なうリスクに対して、自立した個人

が社会連帯の精神を基礎として支え合うもので、給付を受けるために納付

が求められるなど、給付と負担が強く関連付けられている点で、租税とは

異なる性格を有しています。』と整理しています。



 社会保険料は負担しない限り給付を受けることができないので、制度に

対する国民の自主性が確保できると言われています。一方、税は負担能力

に応じた課税が可能であり、また負担した水準に関係なく、国民が給付を

受けることができます。



 現在政府は、社会保障制度について一体的な見直しを行い、平成18年度

を目途に結論を得るため様々な議論をしています。見直しの論点の1つに、

「税・保険料の負担や給付のあり方」が挙げられています。これは、「社

会保険料」と「税」の特徴を十分踏まえた上で、経済や社会のあり方など

様々な観点から税・社会保険料の負担と給付を検討し、社会保障制度を将

来にわたって持続可能なものにしていくという大変難しい問題です。私た

ち、そして将来世代が安心して暮らしていくための大切な基盤を守ってい

くために、現在行われている議論はとても重要な意味を持っています。



                     主税局調査課  角田享介

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6 編集後記



 12月は来年度の国の予算や税制の案が決定される時期であり、みなさん

も新聞やテレビでこうした話題を目にすることが多くなるのではないかと

思います。税制改正案の具体化の作業が最終段階に入るこの時期は、主税

局にとって一段と緊張感が増し、また活気づく時でもあります。まさに

「師走」という言葉がぴったりあてはまるかもしれません。次回のメルマ

ガ(12月下旬発行予定)では、平成17年度税制改正案の概要についてお届

けする予定です。(あられ)



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