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税制メールマガジン 第47号

2008年01月07日 | 税制メルマガ
税制メールマガジン 第47号             2007/12/28

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◆ 目次

1 巻頭言 
2 税制をめぐる最近の動き
3 特集 平成20年度税制改正案の概要
4 主税局職員コラム
5 諸外国における税制の動き~アメリカ税制:『お子さま税』拡大!~
6 編集後記

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1 巻頭言

 財務省では12月19日、平成20年度税制改正案について、「財務大
綱」をとりまとめ、同月20日、予算の財務原案とともに閣議に提出しま
した。

 「財務大綱」では、平成20年度税制改正において、現下の経済・財政
状況等を踏まえ、持続的な経済社会の活性化を実現する等の観点から、
・ 将来の発展の基盤となるイノベーションを創出するため、研究開発投
 資へのインセンティブをより高めるよう、研究開発税制の拡充
・ 我が国の経済成長の原動力である中小企業の生産性の向上や人材育成
 などを促進するため、情報基盤強化税制や教育訓練費に係る税額控除制
 度の見直し
・ 起業期のベンチャー企業に資金を広く呼び込むため、エンジェル税制
 を大幅に拡充し、設立3年目までの一定のベンチャー企業に出資した場
 合に寄附金控除の適用を認める制度の創設
等を行うこととしています。また、あわせて、民間が担う公益活動の推進
や地域間の財政力格差の縮小等の措置を講じることとしています。
 
 今後、この大綱を基にして平成20年度税制改正の詳細について検討し
ていくこととなります。
 「財務大綱」の概要は、3の特集をご覧ください。

 なお、これまで、当メルマガの巻頭言では、「受益と負担」などに関す
るグラフや表などを連載してまいりました。前号と今号の巻頭言は、政府
税制調査会の答申や平成20年度税制改正案の御紹介でしたので、連載は
お休みさせていただきましたが、年明け以降は引き続き、今後の税制を考
えるに当たっての一助になるような素材としていろいろ資料をお示しして
いきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。

      主税企画官 田島 淳志

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2 税制をめぐる最近の動き

(1)日本国政府はメキシコ政府から、日メキシコ租税条約の対象税目に
  関する規定について、通知を受けました。
  ・概要は、下記URLにてご覧いただけます。
   http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/sy1912me.htm

(2)財務省では12月19日、平成20年度税制改正案について、
  「財務大綱」をとりまとめました。(3の特集をご覧ください)。

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3 特集 平成20年度税制改正案の概要

 平成20年度税制改正案について、12月19日に「財務大綱」をとり
まとめ、同月20日、予算の財務原案とともに閣議に提出しましたので、
その概要をご紹介いたします。
 今後、この大綱を基にして平成20年度税制改正の詳細について検討し
ていくこととなります。

        「平成20年度税制改正案の概要」

 現下の経済・財政状況等を踏まえ、持続的な経済社会の活性化を実現す
る等の観点から、法人関係税制、中小企業関係税制、金融・証券税制、土
地・住宅税制等について適切な措置を講ずる。また、民間が担う公益活動
を推進する観点から、公益法人制度改革に対応する税制措置を講ずるとと
もに寄附税制の見直しを行う。併せて、地域間の財政力格差の縮小の観点
から所要の措置を講ずる。具体的には、次のとおり。

〔経済活性化・競争力の強化、中小企業・ベンチャー支援〕
(1)研究開発税制・情報基盤強化税制
○ 研究開発税制について、投資のインセンティブをより高める観点から、
 試験研究費の総額に係る税額控除(法人税額の20%を限度)に追加し
 て、試験研究費の増加額に係る税額控除と売上高に占める割合が10%
 を超える試験研究費に係る税額控除とを選択適用できる制度を創設(法
 人税額の10%を限度)。
○ 情報基盤強化税制について、対象となるソフトウェアの範囲を拡大。
 また、大企業については対象となる投資額に上限を設ける一方、中小企
 業の情報基盤への投資を促進するため、中小企業については投資下限額
 を70万円に引下げ(現行300万円)。

(2)中小企業・ベンチャー支援
○ 教育訓練費が増加した場合の特別税額控除の特例について、中小企業
 の人材育成に資する観点から、対象を中小企業に集中するとともに、中
 小企業が利用しやすいよう、労働費用に占める教育訓練費の割合が0.15
 %以上の場合に、教育訓練費の総額の一定割合を税額控除できる制度に
 改組。
○ 起業期のベンチャー企業に対する資金を広く呼び込むため、エンジェ
 ル税制を大幅に拡充し、設立3年目までの一定の特定中小会社に出資し
 た場合に寄附金控除の適用を認める制度を創設(1,000万円を限度)。

(3)事業承継税制
○ 中小企業の事業承継の円滑化に資するため、取引相場のない株式等に
 係る相続税の納税猶予制度(相続等により取得した一定の議決権株式等
 に係る課税価格の80%に対応する相続税の納税を猶予)を創設(21
 年度税制改正で対応し、「事業継続円滑化法(仮称)」施行日(平成20
 年10月1日を予定)以後の相続等に遡って適用)。

(4)トン数標準税制
○ 安定的な国際海上輸送を確保する観点から、日本籍船等の計画的増加
 を図るため、日本籍船に係るみなし利益課税(いわゆるトン数標準税制)
 を創設。

(5)減価償却制度
○ 項目数の多い機械・装置を中心に資産区分を整理するとともに、使用
 実態を踏まえ、法定耐用年数を見直し。併せて、耐用年数の短縮特例制
 度について、承認申請の事務負担に配慮し、手続を簡素化。

〔民間が担う公益活動の推進・寄附税制の拡充〕
○ 公益社団・財団法人について、公益目的事業から生じる所得を非課税
 とするとともに、全ての公益社団・財団法人を寄附優遇の対象となる特
 定公益増進法人とする。併せて、公益目的事業の実施のために使用され
 る収益事業からの繰入れについては、全額の損金算入を容認。
○ 特定公益増進法人等に対する寄附金の損金算入限度額を、昭和36年
 以来初めて大幅に拡大(所得基準を所得金額の5%に引上げ(現行2.5
 %))。
○ 認定NPO法人制度について、認定要件を緩和。また、認定の有効期
 間を5年に延長する(現行2年)等、申請手続の負担を軽減。

〔地域の活性化〕
○ 地域間の税源偏在の是正に対応するため、暫定措置として、法人事業
 税の一部を分離し、地方法人特別税及び地方法人特別譲与税を創設。
○ 農林水産業と商工業の連携等を図り、地域の活力を引き出す事業活動
 を行う者の取組みを支援するための税制上の措置を整備(「中小農商工
 連携促進法」(仮称)の制定に伴う中小企業等基盤強化税制の拡充等)。

〔金融・証券税制〕
○ 金融所得の一体化に向け、上場株式等の譲渡益・配当に係る7%(住
 民税とあわせて10%)軽減税率を平成20年末をもって廃止(平成21
 年以降15%(住民税とあわせて20%))。その際、円滑に新制度へ
 移行する観点から、特例措置として、平成21年及び平成22年の2年
 間、500万円以下の譲渡益及び100万円以下の配当について7%
 (住民税とあわせて10%)の税率を適用。
○ 個人投資家の株式投資リスクを軽減するため、平成21年より、上場
 株式等の譲渡損失と配当との間の損益通算の仕組みを導入。

〔土地・住宅税制〕
○ 住宅の省エネ改修促進税制(住宅ローン控除制度の特例)を創設。
○ 新築の長期耐用住宅(「200年住宅」)に係る登録免許税の軽減制
 度を創設。
  ・所有権の保存登記:1/1000(本則 4/1000)
  ・所有権の移転登記:1/1000(本則20/1000)
○ 土地の売買に係る登録免許税(本則20/1000)について、以下
 の通り3年間軽減税率を適用。
  ・平成21年3月31日まで:10/1000 
  ・平成22年3月31日まで:13/1000
  ・平成23年3月31日まで:15/1000

〔道路特定財源〕
○ 「道路特定財源の見直しについて」(平成19年12月7日 政府・
 与党合意)に沿って、揮発油税、地方道路税、自動車重量税の税率の特
 例措置の適用期限を10年延長。

〔円滑・適正な納税のための環境整備〕
○ 納税者利便の向上を図るため、将来行う予定の取引を事前照会の範囲
 へ追加する等、事前照会に対する文書回答手続を改善。
○ 電子申告において、添付を省略できる書類の範囲を拡大。
○ 課税の適正化を図る観点から、外国為替証拠金取引(FX取引)等に
 関する資料情報制度を整備。

※ 平成20年度税制改正案全文については、こちらからご覧いただけます。
 「平成20年度税制改正の大綱」(平成19年12月19日財務省)
  http://www.mof.go.jp/genan20/zei001.htm

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4 主税局職員コラム

 この7月から主税局調査課に異動してきました。税制に携わる仕事は初
めての経験です。9月以降、主に政府税制調査会での抜本的な税制改革に
向けた議論に関わってきましたが、率直に言って、税制の議論というのは
なかなかに難しい。もちろん、そもそも制度の仕組みが難しいという面も
ありますが、価値判断そのものも、なかなかに難しいという印象です。

 政府税制調査会では、11月20日に「抜本的な税制改革に向けた基本
的考え方」という答申がとりまとめられました。立場や経験が異なれば、
様々な見方があるのは当たり前ですが、所得税、法人税、消費税などにつ
いて様々なご意見を一つの考え方に収斂させていく作業は、はた目に見て
も、相当な難事であったように思います。とりまとめの最後には、香西会
長が、「37人という大人数で、いつ行っても新しい意見が出てくる」と
つぶやかれ、ご苦労のほどが伺われました。

 最終的に、答申では、今後の税制改革の視点として、「国民の安心」、
「経済・社会・地域の活力」という改革に向けた二つの柱が示され、これ
に「国民・納税者の信頼」を加えた3つのキーワードに沿った具体的な提
言がとりまとめられました。

 たまたまその週末に、前のFRB議長であるアラン・グリーンスパン氏
の回顧録である「波乱の時代」を読んでいて、印象的な一節を見つけまし
た。1997年の6月に、グリーンスパン夫妻がイタリアのベネツィアに
新婚旅行に出かけるシーンです。

 71歳のグリーンスパン氏は、エコノミストの習性から、(ベネツィア
そのものは、物的な生産性という意味での効率性の概念からはほど遠い都
市なのですが、)「ベネツィアが生み出している付加価値は何なのだろう」
と妻に問いかけます。妻からは、「この街がどんなに美しいかを見ていれ
ばいいの」と諭されます。グリーンスパン氏は、「ベネツィアに人気があ
るのは、人間性の矛盾のうち、一方の極を代表するものだからだ。人間は
物質的に豊かになりたいと望む一方で、変化とそれに伴うストレスを避け
たいと望んでいるのである。」というコメントを述べます。

 変わることによって初めて手に入れられる豊かさもあれば、変わらない
ことに価値が見出されるものもある。人間が望むものには、根本的な矛盾
があるのかもしれません。政府税調の答申の「安心」と「活力」という言
葉も、グリーンスパン氏の言う「人間性の矛盾」を体現しているのかもし
れません。これらは、どちらが正しいか、あるいはどちらが優先されるべ
きかという性質のものではなく、したがって価値判断も一筋縄ではいきま
せん。むしろ、それらを両立させていく「知恵」が問われるのでしょう。

 先日、平成20年度の税制改正について、財務省としての税制改正案で
ある「財務大綱」がとりまとめられました。20年度改正のキーワードは、
「持続的な経済社会の活性化」。研究開発税制について新たな制度の創設
や、エンジェル税制の大幅な拡充、事業承継の円滑化の仕組みなど、将来
への発展の種を育てることに、力が込められた内容になっています。これ
から国会での審議が行われることになりますが、豊かで安心できる社会の
実現に向けて、真摯な知恵を出し合う議論が行われることを期待したいと
思います。

               主税局調査課税制調査室長 上田 淳二

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5 諸外国における税制の動き~アメリカ税制:『お子さま税』拡大!~

 2007年も、はや年の瀬になりました。子どもがいらっしゃる方には、
子どもから、クリスマス・プレゼントにお年玉に…、といろいろとせがま
れる季節になったのではないでしょうか。

 さて、アメリカでは、子どもに対するプレゼントやお年玉ならぬ『お子
さま税(“Kiddie Tax”)』というものが、通常の所得税とは別に、子ど
もに対してかけられる特別な税金として存在するのをご存じでしょうか。
 この『お子さま税』、どういう仕組みになっているかと申しますと、あ
る年齢以下の子どもが、一定金額以上の配当や利子など投資から得られる
所得を受け取った場合、本来子どもの所得に対応する税率ではなく、その
親が支払う所得税の最高税率が適用される、というものです。子どもが多
額の投資を行うなどということは、日本ではあまり一般的ではないことで
すが、これは投資大国といわれるアメリカについても、もちろん、必ずし
も一般的なことではありません。であるのになぜ…と思われるのですが、
ここには実は、租税回避行動を防ぐという重要な目的があるのです。

 この『お子さま税』が創設されたのは、レーガン政権の下、抜本的な税
制改革が行われた1986年のことでした。それまで、アメリカでは、多
額の配当や利子などを受け取る投資家が、高い税率が適用されるのを回避
するため、投資所得を所得のない自分の子どもにつけかえて確定申告を行
うことが問題となっていたのです。自分の子どもを租税回避の目的で利用
しようといったことは、素人からすると、日本ではあまり一般的でない
(むしろ非常識な(?))発想のように見えますが、それはお国柄の違い
といったところでしょうか(?)。当時のレーガン政権は、そうした問題
に対処するため、ある年齢以下の子どもに対して、その子どもの名義で一
定以上の投資所得が申告されている場合、その部分について新たに『お子
さま税』として通常よりも事実上高い税率を適用することとしたのです(※)。

 さて、そんな『お子さま税』ですが、『2005年増税防止及び調整法
(“Tax Increase Prevention and Reconciliation Act of 2005”)』及
び『2007年小規模事業及び就業機会法(“Small Business and Work Opportunity Act of 2007”)』
の成立によって、断続的に適用範囲が拡大される形で改正が行われました。
それまで『お子さま税』が適用される上限年齢は長らく14歳だったので
すが、2007年5月以降は、原則19歳にまで引き上げられることにな
ります。
 『2007年小規模事業及び就業機会法』における『お子さま税』の強
化による増税規模は、アメリカ合同租税委員会の見積もりによれば、10
年間で14.3億ドルに上るということです。

(※)ちなみに、日本では、仮に親の投資所得を子どもの名義につけかえ
た場合、実質所得者課税の原則(所得税法第十二条)により、当該投資所
得はあくまで親の所得とみなされ、課税されることがあります。
 
                  主税局調査課課長補佐 向井 豪

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6 編集後記

 本年も税制メルマガをお読みくださいまして、ありがとうございます。
1年の締めくくりの12月は、皆様お忙しいことと思います。主税局では、
特集でご紹介しました平成20年度税制改正案を基に、法案化作業を進め
ているところです。来年が皆様にとってよい年となるようお祈り申し上げ
ます。 
                             (高宮)

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