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税制メールマガジン 第56号              2008/10/10

2008年10月10日 | 税制メルマガ
税制メールマガジン 第56号              2008/10/10

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◆ 目次
1 巻頭言
2 主税局職員コラム~租税条約担当官の決意表明~
3 諸外国における税制の動き
  ~シンガポールの予算案からみた国際比較:税制の自己分析~
4 編集後記

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1 巻頭言
 
 9月24日に麻生新内閣が発足しました。29日には所信表明演説が行
われ、その後、代表質問など国会での論戦が始まっています。今回は、麻
生新内閣の経済財政政策の方針について、所信表明等を引用しながら御紹
介したいと思います(引用箇所には二重カギ括弧を付しました)。
 麻生総理は、所信表明で、当面の経済財政政策の方針について、『日本
経済の立て直しは三段階を踏んで臨みます』と述べられました。当面は景
気対策、中期的に財政再建、中長期的には改革による経済成長、です。

 まず、景気対策については、8月29日に政府・与党が合意した「安心
実現のための緊急総合対策」があり、これに基づいて策定した補正予算
(緊急総合対策関連の歳出1.8兆円)を今国会に提出しています。まず
は、この補正予算の早期成立を図ることが重要であると考えています。ま
た、総理は、所信表明の中で、『米国の経済と国際金融市場の行方から目
を離さず実体経済への影響を見定め、必要に応じ更なる対応も弾力的に行
う』と述べられています。なお、税制については、「安心実現のための緊
急総合対策」に盛り込まれた定額減税を今年度内に実施します。政策減税
の在り方については、総理は、国会答弁の中で『税制の課題は、定額減税
に加え、省エネ設備等の投資促進や、海外子会社利益の国内還流のための
環境整備など、多岐にわたります。今後、財源を明確にしつつ、年末に向
けて検討を進めます』と述べておられます。
 次に、財政再建については、『経済や社会保障に悪い影響を与えないた
め、当然の課題』であるとし、『2011年度までに、国・地方の基礎的
財政収支を黒字化する目標を達成すべく、努力してまいります』と述べて
おられます。重要な課題である社会保障を支える財源問題については、
『年金等の社会保障の財源をどう安定させるのか、その道筋を明確化すべ
く、検討を急ぎます』と所信表明で述べておられます。この道筋の明確化
については、『年末までに結論を得たい』と答弁されており、今後、政府・
与党において、検討が進められることになります。
 最後に、改革による経済成長については、所信表明において、『新たな
産業や技術を生み出し、新規の需要と雇用を生み出すことにほかならない』
として、「新経済成長戦略」の推進、規制改革、税制改革に言及されてい
ます。

 当面、米国経済や国際金融市場の動向をはじめ、内外の情勢から目を離
さない緊張した状況が続きますが、政府としては、新内閣の下で、現下の
経済・財政運営に的確に対応するとともに、財政の健全化、構造改革に向
けた取り組みを進めていきます。

                  主税局総務課企画官 宇波 弘貴

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2 主税局職員コラム~租税条約担当官の決意表明~
 
 この夏から租税条約の交渉を担当する主税局参事官室の補佐になりまし
た。租税条約とは何か、といった話は別に譲るとして、今回はこの月に私
が初めて経験した某Q国との交渉での体験をご紹介します。

 まずその前に、租税条約交渉の一般的なプロセスのイメージを説明して
おきます。租税条約ネットワークの整備というのは、日本も含め多くの国
が進めている政策の1つであることから、大臣レベルをはじめとする二国
間の意見交換の場でよく出る話題であり、時として条約締結の要望を受け
たり、逆にこちらから出したりします。そうした要望を踏まえ、まずは担
当レベルが租税条約に関するお互いの考え方を説明し合う予備的な接触を
行います。その中で、租税条約の締結(あるいは既存の条約の改正)をし
ようという基本的な方向性で一致することができると、次に条文に関する
意見交換、細部にわたる交渉へと進んでいきます。このようなプロセスを
経るため、普通は1度の交渉でまとまることはなく、数か月の検討期間を
置いて1週間程度の交渉を何度か繰り返すことになります。公平を期する
ため、交渉はホーム・アンド・アウェイ方式で、つまり東京と相手国とで
交互に行われることが習わしになっています。

 さて、先日、私にとっての初めての租税条約交渉が東京で開催されまし
た。国際会議への出席経験は何度かあるものの、二国間での交渉は経験し
たことがなく、少し緊張して、数週間前から準備をして過ごしました。と
ころが、いよいよ翌週月曜日から交渉開始という木曜日の夕方、突然Q国
大使館の職員から電話があり、延期して欲しいとのこと・・・。このタイ
ミングで中止かと腹立ち半分、残念半分で、次の業務に気持ちを切り替え
ていました。ところが(x2)、翌日の金曜日。「やはり上層部から行け
と言われたので行くことにした(ただし、火曜日からの開始としてほしい)。」
との連絡・・・。仕方なく、ばたばたと再び準備作業。ところが(x3)、
来日予定だった月曜日夕方、またもQ国大使館職員から電話が入り、室内
に不穏な空気が・・・。案の定、「キャンセル待ちをしていたが空席が出
ず、結局飛行機に乗れなかった。明日には必ず行くから。」もはや絶句です。

 そんなこんなで、当初予定より2日遅れで水曜日から3日間、Q国代表
団との交渉を行いました。今回は、日程的に厳しいこともあり、双方の方
針を一通り説明するところまでで、譲歩を迫ったり迫られたりといった場
面までには至らず、次回の約束をして、彼らは去っていきました。後日、
外務省のQ国担当者にことの顛末を話すと、さもありなんというリアクシ
ョン。そういうお国柄のようです。
 今回の交渉を通じ、個人的には、日本人のビジネスの常識が通じないこ
とについて、ある種の覚悟ができました。今後も(とくにアウェイで交渉
する際には)交渉相手に振り回されることになると思いますが、日本の代
表として、きちんと準備をし、両国の経済関係の発展と日本の国益に資す
るような租税条約を結ぶことができるよう、誠意を持って交渉に臨みたい
と考えています。応援(?)、宜しくお願いします。

                    主税局参事官室 小多 章裕

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3 諸外国における税制の動き
  ~シンガポールの予算案からみた国際比較:税制の自己分析~
   
 先日、シンガポールの税制について調査する機会がありました。シンガ
ポールの税制改正は毎年の予算案の中で提案されますが、例えば、2007
年度予算案では、「将来への準備、世界への準備」をキャッチフレーズに、
国際競争力強化のための法人税率の引下げ(20→18%)や将来に向け
た投資、社会保障の強化といった歳出増の要請に備えるためのGST
(Goods and Service Tax:日本の消費税に相当)の引上げ(5→7%)
などが提案され、昨年から実施されています。

 このような税制改正の内容も興味深いのですが、予算の解説の中でコラ
ムや図が多く設けられている点も印象的でした。諸外国の財務省が公表し
ている資料を見てみると、アメリカやイギリス、フランスでは諸外国と自
国を比較したような資料はほとんど目にしたことがありません。ところが、
この年のシンガポール予算の解説では、特に税制に関する部分には国際比
較のグラフやコラムがいくつか掲載されおり、例を挙げると…

・税収構成比の国際比較
・消費税率の国際比較
・租税負担率の国際比較

などです。

 これらの国際比較を通じてなされたシンガポール政府の税制に関する
「自己分析」を見てみると、

・シンガポールは世界で最も小さな政府をもつ国のひとつ
・シンガポールは総税収に占めるGSTの割合が最も低く、所得課税の割
 合が最も高い水準
・シンガポールはGSTの税率が国際的に最低水準

などとされています。

 ちなみに、「シンガポールのGST税収のGDP比は、消費課税が存在
する国々の中で最も低く、日本でさえシンガポールよりも高い」とされて
います。(「日本でさえ」という書き方の含意は定かではありません。)

 このように、「国際比較」は自国が世界の中でどのような位置にいるの
かを客観的に把握するのに役立つため、財務省でも税制ホームページの中
に多くの国際比較資料を掲載しています(上に挙げた国際比較資料も掲載
しています)。もとより、諸外国の制度を単純に真似したからといって必
ずしもうまくいくとは限りませんが、こうしたことも踏まえ、今後とも我
が国の税制を考える際の参考となるような国際比較資料を提供していこう
と思います。

(参考)
・シンガポール財務省ウェブサイト(英語):
http://app.mof.gov.sg
・財務省 税制ホームページ(国際比較に関する資料):
http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/siryou/hikaku.htm

                      主税局調査課 篠原 健

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4 編集後記

 税制メールマガジン第56号を発行させていただきます。
 秋も深まり、急に寒くなってきましたが、皆さま、体調を崩されたりし
ていないでしょうか。是非、御自愛くださいませ。
 さて、先日、私達の係の職員に、新しい命が誕生いたしました。子ども
が産まれるということは大変嬉しいことであり、周囲もそれに対してでき
る限りサポートしてあげたいと思います。日々の仕事を通じても、これか
ら産まれてくる子どもたちのために良い日本を作っていきたいと、気持ち
を新たにするところです。
 次回は11月上旬発行予定です。毎年11月11日~17日は、「税を
考える週間」となっています。次回はそれに関するトピックをお届けした
いと思い、構想を練っているところですので、是非、お楽しみに。

                             (和田)

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