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税制メールマガジン 第48号

2008年02月08日 | 税制メルマガ
税制メールマガジン 第48号               2008/2/8 

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◆ 目次
1 巻頭言
2 税制をめぐる最近の動き
3 主税局職員コラム ~夢に向かっての地道な努力~
4 諸外国における税制の動き~税制改革:新興国の取組み~
5 編集後記


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1 巻頭言

 本号は、今年最初の号となります。引き続きご愛読のほどよろしくお願
いいたします。

 さて、巻頭言では、昨年に続き、税制を考えるに当たって興味あるデー
タなどをお示ししていきたいと思っております。これまでは、「受益と負
担」などに関する資料について、我が国の現状を中心にご紹介してまいり
ましたが、少し視点を変えて、世界各国との比較で見ていきます。各国と
もそれぞれの制度や巡る事情に違いがあり、そうした違いにも留意する必
要はありますが、国内の状況だけでなく諸外国の状況にも視野を広げてお
くことは、税制を考える際にも有益です。

 財政や税制に関し、「大きい政府か、小さい政府か」、「大きな負担か
小さな負担か」という議論があります。これについてはいろいろな見方が
ありますが、各国の比較でどうかという観点から見てみましょう。資料は、
先進国などが加盟する国際機関であるOECD(Organisation for Economic
Co-operation and Development:経済協力開発機構)の定期刊行物である、
「OECD Economic Outlook」2007年上半期版(81号)や「Revenue
Statistics 1965-2005」などで見てみます。

 まず、「政府の大きさ」ですが、政府支出(一般政府総支出)の対GDP
比の大きさをOECD加盟国(加盟30カ国のうち28カ国)ごとに比較して
みます。
 ・ 全体として、比率は30%~50%強の範囲にあります。
 ・ 大きい方では、スウェーデンの54.1%が最も大きく、次いでフ
  ランス、ハンガリー、デンマークで50%を超えています。
 ・ 小さい方では、韓国が30.1%と一番低く、次いでオーストラリ
  ア、アイルランドとなっています。
 ・ 日本は、36.0%と、下から6番目の水準にあります。
 このデータを見ると、日本の政府支出規模は国際的にみて小さい水準に
あることがわかります。

 他方、政府支出に対応する国民負担はどうでしょうか。各国における租
税負担の対国民所得比の大きさを見てみます。
 ・ 全体として、比率は18%~70%弱の範囲にあります。
 ・ 大きい方では、デンマークの69.4%(04年)がもっとも大き
  く、次いでアイスランド、ニュージーランドが50%を超えています。
 ・ 小さい方では、メキシコが18.7%(02年)と一番低く、次い
  でアメリカ、スイスとなっており、日本は、25.1%(07年)と、
  下から4番目の水準にあります。
 このデータを見ると、日本における租税負担率の水準は政府支出の水
準よりもさらに低いことがわかります。

 さらに、政府支出と、租税等の政府収入のバランス(財政収支(収入-支出)
の対GDP比)についてもみてみます。これによると、
 ・ 全体として、財政収支が赤字の国と黒字の国と半数ずつとなってい
  ます。
 ・ 財政収支の黒字国をみると、ノルウェーの+19.0%が黒字幅が
  最も大きく、次いでデンマーク、フィンランドと、北欧諸国が続きま
  す。
 ・ 財政収支の赤字国をみると、ハンガリーが▲6.7%と赤字幅が最
  も大きく、次いで、アメリカ、チェコとなっています。
 ・ 日本は、▲2.7%と収支の悪い方から6番目の水準にあります。

 いろいろな数字をご紹介しましたが、日本は、「国際的に見て政府支出
(国民の受益)は低いが、租税負担はさらに低い水準にある。また、財政
収支赤字が大きい水準」ということが見て取れようかと思います。これに
対し、例えば、政府財政収支の黒字幅が国際的にみて突出して高いノルウェー
では、政府支出の大きさは加盟国の中で中位ですが租税負担率は高い水準
にあり、対照的な状況にあります。

 さらに言えば、今回のデータは単年度で見たものですが、毎年の財政収
支の赤字が国債として積み上がるわけで、以前ご紹介したとおり、日本の
債務残高の水準は主要先進国中突出して最悪であることにも留意する必要
があります。

 次号も引き続き、国際的にみた日本の状況についていろいろとご紹介し
ていきたいと思います。

※今回ご紹介したデータについては、パンフレット『日本の財政を考える』
 (http://www.mof.go.jp/jouhou/syukei/sy014_1909.pdf)43ページを
 ご覧ください。

                      主税企画官 田島 淳志

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2 税制をめぐる最近の動き
 
(1)「平成20年度税制改正の要綱」が1月11日に閣議決定されました。
・内容は、下記URLにてご覧いただけます。
http://www.mof.go.jp/seifuan20/zei001_a1.htm


(2)日本とパキスタンとの間で新しい租税条約が署名されました。
・概要は、下記URLにてご覧いただけます。
http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/sy200123pa.htm


(3)日本とオーストラリアとの間で新しい租税協約が署名されました。
・概要は、下記URLにてご覧いただけます。
http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/sy200131au.htm


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3 主税局職員コラム ~夢に向かっての地道な努力~

 今年は年男(もう四回目になりますが・・・)、何かいいことがないか
なぁと思っていたら、元旦に近くの氷川神社で引いたおみくじが大吉でし
た。今年は、占いどおり、私も含め、我が国にとって良い年になればいい
なと思っています。

 ところで、私は二回目の年男の時に主税局に配属され、以来税制改正に
関する仕事に携わっていますが、いつも心に願っていることがあります。
それは、税制が国民に信頼され、皆が気持ちよく納税できるような世の中
にしていくことです。そのためには、国民の皆さんが安心感を持ってスムー
ズに納税できる環境を整えていくことや、租税回避や脱税防止に向けた施
策を考えていく必要があります。

 現実の仕事は、税は内容的にも難しい事柄が多く、勤務時間も長時間勤
務を余儀なくされ、かなりハードな勤務を強いられてくじけそうにもなり
ます。しかし、日本を良くするんだという信念の下、志を高くもって、皆
で助け合い、一歩ずつ確実に前に進んでいくという地道な努力が、やがて
少しずつ実を結ぶという気持ちで毎日を送ることが、大きな力となってい
くのだと信じています。

 そんなことを考えながら、一主税局職員は今日も一日を過ごしています。

 最近の納税者の信頼確保に向けた施策をご紹介します。

 平成20年度改正では、電子申告において添付を省略できる書類の範囲
の拡大、電子納税についてインターネットバンキングを経由しない新たな
納付手段の創設等の電子化促進措置の他、適正申告のための資料情報制度
の整備も行うこととしています。

 このうち、電子納税に関しては、納税者によるインターネットバンキン
グの契約やその契約に係る手数料の負担が必要であること等から利用しづ
らい面がありましたが、インターネットバンキングを使わず、e-Taxと金
融機関のシステムを介して、指定した預貯金口座から即時に納税が完了す
る収納方式を創設することとしています(平成21年9月から適用)。こ
れにより電子納税の手続がとても簡単になり、税理士の代理送信による電
子申告の場合に、税理士が納税者に代わって電子納税の手続もすることが
できることになります。
 
 昨年秋に提出された政府税制調査会の答申では、公正な税制を実現する
ため、罰則全般に関する整備が検討課題とされ、脱税犯に対する懲役刑や
各種の罰金刑についての議論が今後深まっていくものと思われます。

 以上、一部しかご紹介できませんでしたが、この他にも様々な施策を行っ
ています。私の願いである、税制が国民に信頼され、皆が気持ちよく納税
できるような世の中にしていくために、今後とも、頑張って行きたいと思
います。

                   主税局主税調査官 松崎 啓介
  
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4 諸外国における税制の動き~税制改革:新興国の取組み~

 「28万円」

 この価格を耳にしたとき、皆さんは何の価格を想像しますか?実はこの
価格、何と車の値段なのです。先月、インドの自動車会社が世界で最も安
いと思われる1台10万ルピー、日本円にして28万円の超低価格車を発
表し、世界の注目を集めました。インドの「国民車」となることを狙い、
今年中にも発売されるとのことです。

 昨今、新興国と呼ばれる国々の世界における存在感が増してきています
が、中でも中国と並び特に注目されているのが、世界で最も安い乗用車を
発表したインドではないでしょうか。

 インドは、世界平均を超える8~9%の高い経済成長率を達成し、急速
な発展を遂げています。IT・情報通信関連の欧米企業や自動車・二輪車関
連の日本企業が数多く進出しているほか、日本からインドへの直接投資額
が2005年から2006年のわずか1年の間に倍増を記録するなど、イ
ンドに対する世界の期待がうかがえます。11億人の人口を抱えるインド
の市場がますます拡大し、現在は世界の10位以下の水準にあるGDPが、
2050年にはアメリカ、中国に次ぐ世界3位になるとの予測もあるよう
です。

 このように世界の注目を集めるインドですが、その社会構成は極めて複
雑です。憲法で公認されている言語だけで22、そのほか100以上の言
語があるといわれ、多様な民族、宗教、文化が混在し巨大な人口を擁する
インド。潜在的な市場の大きさに加え、その複雑さもこの国の魅力なのか
もしれません。

 インドにおいて複雑なのはその言語や民族構成だけではなく、実は税制
も極めて複雑です。特に取引に対する課税が多く、製造段階における売上
げには中央物品税、金融など特定のサービスにはサービス税、事業者が州
を越えて物品を販売した場合には中央販売税が課されており、取引に対す
る中央政府の税目だけで3つも存在しています。更には、多くの州におい
て州付加価値税が別途課されるほか、その税を導入していない州では州販
売税という別の税が課されるなど、なかなか複雑です。

 多くの外国企業がインドの経済成長に伴い進出する一方で、この複雑な
税制は足枷になっているとの意見がありました。そこでインド政府は、取
引や州によって課税が異なる複雑な現状を打開し、より簡素な税制を構築
するため、中央政府による統一的な付加価値税の導入を計画するなど、将
来を見据えた税制改革に取り組んでいます。

 税制の整備を急いでいる新興国はインドだけではありません。1995
年にASEANに加盟し、昨年1月にはWTOに加盟したベトナム。世界経済との
結び付きがより強まっていく今後を見据え、1999年には付加価値税を
導入し、2004年には国内企業と外国企業に適用される法人税率を統一
するなど、包括的な税制改革を実施してきました。

 自国の現状そして世界の動向を見極め、将来を見据えた税制改革を断行
していかなければならないのは、日本も例外ではありません。今後の日本
にとって、税制はどうあるべきか。議論の高まりを期待したいと思います。

                     主税局調査課 佐藤 智紀

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5 編集後記
 あけましておめでとうございます、、、と、もう2月ですね。1月末に
発行しようと思っていたメルマガが、こんな時期になってしまいました。
こんなことではいけません。やはり何事も期限を守ることが重要です。
                             (高宮)


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ご意見募集のコーナー

 政府税制調査会では、今後の審議の参考にさせていただくため、広く国
民の皆様から、御意見を募集しております。

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