税制メルマガ

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税制メールマガジン 第61号              2009/4/14

2009年04月26日 | 税制メルマガ
税制メールマガジン 第61号              2009/4/14

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◆ 目次

1 巻頭言
2 税制をめぐる最近の動き
3 主税局職員コラム ~環境にやさしい自動車の減税~
4 諸外国における税制について ~フランスの租税法と税制改正法~
5 編集後記

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1 巻頭言
 
 4月になって主税局にも初々しい新人が入ってきました。自分もついこ
の間のように思いますが、気づくとこの4月で社会人になってから丸20
年が経ちました。
 そこで(というわけではないのですが)、20年前の財政の姿を今と比
較して見て思うことがあったので御紹介します。
 第49号などでも御紹介したことがありますが、国民全体の所得に占め
る「公的負担の大きさ」をみるマクロの指標として、「国民負担率」があ
ります。計算式は以下のとおりで、いわば月給から払う税金と社会保険料
の割合を、国全体で捉えたものです。租税負担、社会保障負担それぞれの
国民所得に占める割合は「租税負担率」「社会保障負担率」といいます。

国民負担率(%)={(租税負担+社会保障負担)÷国民所得}×100

 20年前と現在を比較してみました。国民負担率は景気変動による影響
を受けますので、単年度で比較せずにその時期の景気の谷から山までの複
数年の平均値で見ています。

・1986年~91年
  租税負担率   26.7%
+ 社会保障負担率 10.6%
―――――――――――――――
= 国民負担率   37.3%

・2002年~07年 
  租税負担率   23.2%
+ 社会保障負担率 14.6%
―――――――――――――――
= 国民負担率   37.8%

 意外に思われたかもしれませんが、この20年間、国民負担率はほとん
ど変わっていません。またその内訳を見ると、社会保障負担率が4ポイン
ト上がっているのに対して、租税負担率は1990年代の累次の減税など
によって3.5ポイント減少しています。

 ところが、国民負担率の計算に財政赤字(つまり将来世代に先送りして
いる租税負担)を加味すると、ずいぶんと違う姿になります。この指標は
「潜在的国民負担率」と呼ばれ、実際の政府の歳出規模を示しています。

・1986年~91年
  租税負担率(+財政赤字)28.3% 
+ 社会保障負担率     10.6%
―――――――――――――――――――
= 潜在的国民負担率    38.9%
         
・2002年~07年          
  租税負担率(+財政赤字)31.0%
+ 社会保障負担率     14.6%
―――――――――――――――――――
= 潜在的国民負担率    45.6%


 上記の比較について、特に社会保障に着目して、以下のことが言えると
思います。
 まず、この20年間、国民負担率はほぼ不変ですが、政府の歳出規模
(潜在的国民負担率)は、6.7ポイントも増大しています。この歳出増
の主因は社会保障であり、社会保障給付費の対国民所得比は、13.6%
(90年)から24.9%(08年)へと、11ポイント以上上昇してい
ます。つまり、我が国では、人口の高齢化等により急速に社会保障給付が
膨らむ一方で、その費用については、負担増に反映されずにその増加分の
約6割を将来世代へ先送りすることで賄っています(残り約4割は他経費
の削減等によって捻出しています)。負担の先送りは主として赤字公債に
拠っており、給付と負担のミスマッチは上記の2つのケースにおける租税
負担率の変化の違いに表れています。こうしたことから、社会保障制度を
持続可能で安心できるものとするためには、税制抜本改革による安定財源
確保が必要と考えられているわけです。
 また、社会保障の財源の組み合わせという点でも、租税負担・社会保障
負担それぞれが社会保障給付の実態を反映するようにすることは重要です。
紙面の制約上、詳細説明を省略させて頂きますが、社会保障財源について
公費(税金)・保険料・自己負担をどのように組み合わせて賄うのかとい
う論点は、福祉社会の在り方の問題、すなわち、疾病や老後の所得保障と
いったリスクについて自助・共助・公助のいずれに重点を置いて制度的対
応を行うかという問題です。高齢化の進展や格差の拡大といった社会構造
の変化に伴い、我が国の社会保障は、世代間あるいは所得階層間での所得
移転の程度が大きくなりつつあり、公費財源に対する要請が強くなってい
ます。今後少子高齢化が進む中で、社会福祉のあるべき姿を考えるために
は、赤字公債によって見かけの租税負担率が下がっている現状を改め、給
付に見合った租税負担・社会保障負担に向き合った上で、どのような財源
構成が望ましいのか、自助・共助・公助をどのように組み合わせるべきな
のかという議論を行っていく必要があるのではないかと思います。
 
                  主税局総務課企画官 宇波 弘貴

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2 税制をめぐる最近の動き
 
(1)平成21年度税制改正に関する法律「所得税法等の一部を改正する
 法律」が3月27日に国会にて可決・成立し、同31日に公布、4月1
 日より施行されました。
  
 ・「所得税法等の一部を改正する法律」は以下のURLにてご覧いただ
  けます。
  http://www.mof.go.jp/houan/171/houan.htm

(2)4月10日、「経済危機対策」(「経済危機対策」に関する政府・
 与党会議、経済対策閣僚会議合同会議)がとりまとめられました。「経
 済危機対策」においては、税制に関して以下の措置を講じることとして
 います。

 ○ 住宅取得のための時限的な贈与税の軽減
 ・生前贈与の促進により高齢者の資産を活用した需要の創出を図るため、
  平成22年末までの時限措置として、直系尊属から居住用家屋の取得
  に充てるために金銭の贈与を受けた場合には、500万円まで贈与税
  を課さないこととする。この特例は、暦年課税又は相続時精算課税の
  従来の非課税枠にあわせて適用可能とする。
 ○ 中小企業の交際費課税の軽減
 ・交際費等の損金不算入制度について、資本金1億円以下の法人に係る
  定額控除限度額を400万円から600万円に引き上げる。
 ○ 研究開発税制の拡充
 ・試験研究費の総額に係る税額控除制度等について、平成21、22年
  度において税額控除ができる限度額を時限的に引き上げるとともに、
  平成21、22年度に生じる税額控除限度超過額について、平成23、
  24年度において税額控除の対象とすることを可能とする。

 ・「経済危機対策」については以下のURLにてご覧いただけます。
  http://www.kantei.go.jp/jp/keizai/index.html(首相官邸HP)

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3 主税局職員コラム ~環境にやさしい自動車の減税~

 皆さんは、自動車を選ぶときに何を基準にしていらっしゃるでしょうか。
価格は当然として、ボディの形状、内装といった見た目重視でしょうか。
それとも、加速の良さや乗車人数といった機能面重視でしょうか。

 最近は、「環境へのやさしさ」もクルマ選びの大きな基準の一つになっ
ていると聞きます。環境にやさしい自動車を選ぶことは、国際的に重要な
課題となっている地球温暖化問題の解決にも貢献しますし、一人ひとりに
とってはガソリン代の節約にもなります。

 一方で、最近の厳しい経済状況の中で自動車の販売台数が急速に落ち込
んでおり、景気対策の観点から、自動車の購入や買換えを促すような施策
も必要となっています。

 こうした状況の中、環境対策と景気対策を両立させるものとして、本年
4月1日より3年間、(1)国税である自動車重量税についてはこの3年
間のうちに初めて受ける車検時に、(2)都道府県税である自動車取得税
については新車取得時に、それぞれ環境性能に優れた自動車に対する思い
切った減免措置を実施することになりました。

 乗用車について大雑把にいうと、次世代自動車は免税、排気ガスがきれ
いでガソリン消費量が少ない(=二酸化炭素排出量が少ない)乗用車は
75%又は50%の税額軽減を行うことにしており、具体的な条件や2つ
の税を合わせた納税額の試算は次のとおりです。

(1)電気自動車、一定条件を満たすハイブリッド自動車・天然ガス自動
車、クリーンディーゼル車等(いわゆる次世代自動車)
 ⇒ 本来の税額をすべて免除
〔車両価格200万円、1.3トンの自動車を新車で購入した場合、納税
額は0円で、一般の自動車に比べ14万6,700円の減税〕

(2)平成17年排出ガス基準比75%低減を達成し(いわゆる☆☆☆☆
認定車)、平成22年度燃費基準を25%超過達成している乗用車
 ⇒ 本来の税額の75%を軽減
〔車両価格200万円、1.3トンの自動車を新車で購入した場合、納税
額は3万6,600円で、一般の自動車に比べ11万100円の減税〕

(3)平成17年排出ガス基準比75%低減を達成し(いわゆる☆☆☆☆
認定車)、平成22年度燃費基準を15%超過達成している乗用車
 ⇒ 本来の税額の50%を軽減
〔車両価格200万円、1.3トンの自動車を新車で購入した場合、納税
額は7万3,300円で、一般の自動車に比べ7万3,400円の減税〕

 これからは、こうした税の減免措置も考えあわせながら、クルマ選びを
してみてはいかがでしょうか。

※ 具体的な減免対象車種などの情報は、国土交通省の以下のページに掲
載されておりますので、参考にしてみて下さい。
 http://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_fr1_000005.html

                  主税局税制第二課 有利 浩一郎 

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4 諸外国における税制について ~フランスの租税法と税制改正法~

 わが国では、去る3月27日に平成21年度税制改正に関する「所得税
法等の一部を改正する法律」が国会で可決・成立しました。今回のコラム
では日本とフランスの租税法及び税制改正法の仕組みについて比べてみた
いと思います。

 日本では、授業科目に「租税法」という科目のある大学もあり、「租税
法」というタイトルの法律書も存在します。しかし、日本には、「租税法」
という名前の法律があるわけではありません。所得税法や消費税法、法人
税法といったように、各税目ごとに個別の法律が存在し、それらの総称を
講学上、「租税法」と呼んでいます。
 一方、フランスでは、「租税一般法典」と呼ばれる一本の法典の中に所
得税、法人税、付加価値税といった各種税目が定められています。この点
は日本とフランスとの大きな違いであると言えます。この「租税一般法典」
は多くの税目に関して規定しているため、非常に分量が多くなっていると
いった特徴があります。

 次に、税制改正法の仕組みについてですが、日本では、上述のような
「所得税法等の一部を改正する法律」を制定し、改正を行います。この法
律は、「改め文」というものによって構成されます。「改め文」とは、
「第○条中「△△」を「□□」に改める」、「第○条中「△△」の下に
「□□」を加える」、「第○条中「□□」を削る」といったように、改め、
加え、削る箇所のみを改正法中に示すものです。
 フランスにおける年次税制改正は、例年12月末に成立する「予算法」
によって行われます。日本の「所得税法等の一部を改正する法律」が税制
改正のみに対応した法律であることとは異なり、フランスの「予算法」に
は、その年度の歳出部分と歳入部分の両方に関する条文が規定されていま
す。例えば、09年予算法第70条では09年度一般会計予算の歳出額と
歳入額が規定され、第2条では所得税の税率表に関する税制改正について
規定されています。また、フランスの「予算法」における税制改正部分は、
日本と同様に「改め文」で構成されています。フランスの「予算法」を読
んでいくと、日本の「改め文」と同様の書きぶりになっているため、親し
みが感じられます。

 日本とフランスの租税法及び税制改正法は、中身や法の枠組みこそ違い
ますが、改め文方式のように共通点もあり、両者を比較しながら学んでい
くことには面白さがあります。フランスの租税法を読み、その制度を参考
にしつつ、税制の議論を日々深めていきたいと思っています。

                    主税局調査課 樫野 壮一郎

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5 編集後記

 春は出会いと別れの季節です。皆様の中にも、新しい環境で4月を迎え
られた方もいらっしゃるかと思います。主税局にも新人がやってきました。
初々しい姿を見ると、迎える側もフレッシュな気分になりますね。
 税制メールマガジンは今号で発行5周年を迎えました。登録数も順調に
増加し、現在、約2万2千人の方に登録していただいております。これだ
けの方に読んでいただいているということで、編者も常に喜びと緊張の下
で編集作業を行っております。これからも内容の充実に努めていきますの
で、変わらぬ御愛顧の程、よろしくお願い申し上げます。
 次回は5月上旬発行予定です。お楽しみに。

                             (和田)

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政府税制調査会では、今後の審議の参考にさせていただくため、広く国民
の皆様から、ご意見を募集しております。

http://www.cao.go.jp/zeicho/iken/iken.html

当メールマガジンについてのご意見、ご感想はこちらへお願いします。

mailto:mg_tax@mof.go.jp

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税制メールマガジン 第60号               2009/3/4

2009年04月26日 | 税制メルマガ
税制メールマガジン 第60号               2009/3/4

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◆ 目次
1 巻頭言
2 税制をめぐる最近の動き
3 振り込め詐欺・還付金詐欺にご注意!
4 主税局職員コラム~分水嶺世代?~
5 主税局職員コラム~法人税って何でしょう?~
6 諸外国における税制について
  ~イギリス:2008年度プレ・バジェット・レポート~
7 編集後記

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1 巻頭言
 
 3月になりました。税制でも多くの制度が年度末を区切りにしています
が、学生さんやお子さんをお持ちの家庭では、卒業・進学・入学の季節を
お迎えのことと思います。
 今回はその学校に関連して、租税教育の活動を御紹介します。国税庁で
は、毎年、学校当局との連携により、社会科活動の一環として税務署など
から講師を派遣して租税教室を実施しています。平成19年度は小中学校
を中心に39,160回開催しました。中学生・高校生の皆さんからは、
毎年、税に関する作文も募集しており、昨年度は約62万件の応募をいた
だきました。また、租税教育に関連して、財務省のホームページには、税・
財政について学べるキッズコーナー(http://www.mof.go.jp/kids.htm)
があり、そちらにも年間30万回を超えるアクセスをいただいています。
 租税教室は基本的に1回の講義形式ですが、みなさん熱心に聴いて下さ
います。さらに研究を続けている学校もあって、例えばI県のM小学校で
は毎年、6年生100余名全員で財政再建に向けた提言書をとりまとめて
送ってきてくださっており、一昨年には、非公式ながら御礼の手紙を財務
大臣から子供達宛てにお送りしました。
 税金とその使途、日本の財政の姿を知る中で、将来をみつめる子ども達
の眼は確かです。税のムダづかいをまずやめるべきという意見、国の財政
状況をしっかりと国民に説明すれば協力してくれるという意見、国民みん
なが我慢し力を合わせていくことが大切という意見、そして、現実的・具
体的な提言の数々。
 税は民主主義の根幹といわれますが、その原点を改めて教わる思いです。
政策作りの一端を担う者として、このような活動を大切にするとともに、
子ども達の意見や想いを重く受け止めて仕事をしていきたいと思っています。

                  主税局総務課企画官 宇波 弘貴


・・・・・・・・・・・・・・・お知らせ・・・・・・・・・・・・・・
 
 2月27日(金)、財務省ホームページに租税教育用コンテンツ「はっ
ぴぃ★タウン」を公開しました。
 小学校高学年を対象としたコンテンツですが、“税”について楽しく学
べる内容としておりますので、是非、ご覧ください。
 
「はっぴぃ★タウン」は、下記URLにてご覧いただけます。
http://www.mof.go.jp/kids/index.html

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2 税制をめぐる最近の動き
 
 平成21年度税制改正に関する法案「所得税法等の一部を改正する法律
案」については、国会で審議されています。

・法案の内容は、下記URLにてご覧いただけます。
http://www.mof.go.jp/houan/171/houan.htm

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3 振り込め詐欺・還付金詐欺にご注意!

 警察庁では2月を振り込め詐欺の撲滅月間とし、被害防止と詐欺グルー
プ摘発を目指すとの発表がありました。その効果もあってか、先日も、だ
まされたふりをして詐欺グループを逮捕し、また、被害口座から現金を引
き出そうとした男を逮捕したとの報道がありました。
 「振り込め詐欺・還付金詐欺にご注意を」という広報を昨年もこのメル
マガに掲載しましたが、警察庁ホームページによりますと、平成20年の
一年間で、振り込め詐欺の発生件数が2万件超(認知件数)、被害金額も
275億円超と、いずれも平成19年より増加していているとのことです。
(警察庁HP:http://www.npa.go.jp/safetylife/seianki31/1_hurikome.htm)
 
 詐欺グループは次々と新しい手口を編み出して、皆様の大切なお金をだ
まし取ろうとしています。税務署への確定申告書の提出期限(今年は3月
16日)も近づき、納税や還付に絡み、詐欺事件が発生する恐れもありま
すので、引き続き十分ご注意ください。

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4 主税局職員コラム~分水嶺世代?~

 主税局調査課長の新川です。

 まずは、当課のご紹介。課員の平均年齢は、40代後半の私を除いて計
算すれば、20代という大変若い世代で内外の租税制度などの調査を実施
しています。かく言う私も世間的にはまだまだ若輩ですし、気分だけは2
0代のままなので課員諸君と同世代のつもりでいます(とはいえ、遠目に
も色鮮やかなコートを着て出勤してくる男性職員がいたり、奥様とほっぺ
をくっつけあった仲睦まじいツーショット写真を何枚も見せてもらったり
すると、なかなか勝負にかなわない部分があることも事実です)。

 さて、「世代」をめぐって一つの興味深い試算があります。少し前のも
のになりますが、平成17年度の年次経済財政報告(経済白書)で、一人
当たりの生涯を通じた税制や社会保障などの公的サービスに関する受益と
負担の状況を世代ごとに推計した試算(※)が示されました。

 これによると、昭和30年代生まれの私はちょうど生涯を通算した受益
と負担の差し引きがほぼゼロ、すなわち、税や保険料で支払う負担と年金
や医療など政府から受ける受益の合計を一生分で平均すればトントンとい
うことになります。他方、わが調査課職員の大半を占める74年~83年
生まれのグループでみると、生涯を通じた受益と負担は一世帯あたり差し
引き1,660万円のマイナスとなるのだそうです。

 前提の置き方によって試算結果は変わりうるものなので、数字の水準そ
のものにとらわれて損得勘定でものごとを云々するのは適当でないと思い
ますが、受益と負担がトントンとなる私の世代を分水嶺として、それより
先輩世代となるほど受益超過の程度が大きく、逆に若手世代となるほど、
負担超過の度合いが大きくなるという結果が得られています。

 この試算結果をみて、皆さんはどのような感想をお持ちになったでしょ
うか。分水嶺世代の私としては、戦後の復興を支え、今日の繁栄と平和な
日本を築いていただいた長寿世代の方々にはその御労苦に感謝せねばなり
ませんし、他方、これからの日本を支える将来世代に過度な負担をかける
ことは偲びないことです。この試算は、世代間の損得勘定や対立を示すと
いうよりは、少子高齢化の進展という現実の前で、世代間の支えあいや負
担の公平についてどのように調和を図っていったらよいかという問題提起
を私に迫るものでした。読者の皆さまが税や社会保障の問題を考える際の
一助になればと思います。

(※)試算結果について詳しくお知りになりたい方は内閣府のホームペー
ジをご覧ください。
http://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je05/pdf/05-00303.pdf 227ページ

                    主税局調査課長 新川 浩嗣 

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5 主税局職員コラム~法人税って何でしょう?~

 皆さんは「法人税」と聞いてどんなことを想像されますか。企業の経営
者の方ならともかく、自分とは縁がないと思われている方も多いのではな
いでしょうか。
 でも、そんな思いをひとまず脇において、私が普段仕事をしながら目に
したり、耳にしたりする、以下のような議論について考えてみて頂けませ
んか。 

 まずは、法人税率を巡る議論を紹介しましょう。

(グローバル企業の経営企画部に勤務するAさん)
 法人税は企業にとってコストです。外国と比べて日本の法人税は高すぎ
るので、日本企業は国際的な競争に勝てなくなってしまいます。国際的な
競争に勝てなければ従業員に十分な還元もできなくなってしまいます。今
の税率は引き下げるべきだと思います。
(主婦のBさん)
 法人税は国の大切な収入源のはずです。多くの所得を上げている企業が
税を負担すべきであり、税率を引き下げるべきでないと思います。

 両者の意見は全く相反する議論ですが、今後の税制改革を進めるうえで
は、一定の方向性を出さなければいけない課題です。

 次に、寄附税制を巡る議論です。

(公益活動に取り組もうとしているCさん)
 自分たちの活動を支えるための資金が必要です。法人に寄附を求めてい
ますが、なかなか寄附が進まないため、寄附を促すために優遇措置を拡大
していく必要があると思います。
(投資家のDさん)
 そもそも、企業は利益の極大化といった目標に縛られているのではない
でしょうか。社会的貢献が求められる風潮はありますが、税制で企業に働
きかけるべきものなのでしょうか。

 公益活動の重要性はいうまでもありませんが、よくよく考えてみると
「法人の寄附」をどう考えるかは悩ましい問題です。
 昨年、話題になった本に、クリントン政権で労働長官を務めたロバート・
ライシュ氏の『暴走する資本主義』がありますが、そこには次のような一
節があります。

 “超資本主義の下で利益にも影響が及びそうなことを企業にさせるには、
規制するしかないのである。 (中略) 企業は、宣伝効果があってそれ
によって利益増に貢献する範囲内なら、まさにその範囲内でのみ、カネを
寄付する。 (中略) 超資本主義の下では、企業は消費者に仕えるため、
そして投資家のもうけのためのみに存在する。これが企業が行う唯一の
「奉仕」なのだ。”

 皆さんは、こういう意見をどう思われますか。
 こうした議論は、まさしく「企業」観に関わる問題といえましょう。

 さて、最後に、法人税の必要性を巡る議論です。もう1度ライシュ氏に
登場願いましょう。

 “間違った人格化の結果、正確には人間に帰属しているはずの義務と権
利が企業にも与えられている。 (中略) 法人税については、一般の人
々は企業が支払っているという間違った印象を持っている。 (中略) 
しかし、税金を払うことができるのは人間のみである。つまり現実には、
法人税は(間接的に)その企業の消費者や株主や従業員が払っているのだ。”

 氏は、こうした考え方に基づいて、法人税を廃止し、全ての法人所得を
株主の個人所得と同じように扱うことを提唱しています。更に、その副次
的効果として、“企業は税金を支払っているのだから政治のプロセスに参
加する資格があるのだという、広く流布している間違った概念に風穴を開
けることができる”とまで踏み込みます。

 以上、色々な議論を紹介しましたが、法人税のあり方には、単に○○と
いう企業がいくらの税金を払ったといった話だけにとどまらない、企業と
は一体どういう存在であり、我が国の中でどういう役割を期待していく必
要があるのか、といった思想・哲学が投影されているものだという実感を
改めて強くする今日この頃です。

 果たして“正解”が存在しうるのか、私には分かりません。
 ただ、日々、企業活動が行われている中、経済の状況等に応じて法人税
制の見直しを求める声がやむことはありません。そうした声に応えてどの
ような法人税制改革を行うか、は優れて政治的な判断によるところも大き
いわけですが、その背景にどのような企業観・価値判断があるのか、分か
りやすく示していくことが大切なことだと感じています。

               主税局税制第三課審査室長 関 禎一郎

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6 諸外国における税制について
  ~イギリス:2008年度プレ・バジェット・レポート~

 2008年11月24日、イギリス財務省は、今般の世界経済危機を受
けた経済対策を盛り込んだ2008年度プレ・バジェット・レポートを発
表しました。新聞等でも大きく報道されたのでご存知の方も多いかと思い
ますが、経済対策の中には、付加価値税(日本の消費税に相当)の一時的
な引下げ(17.5%から15%)が含まれていました。経済対策の一環
として付加価値税を引き下げたのは、主要国の中でイギリスしかなく、
EUの他の加盟国や国際機関からの批判を受けました。今回の外国税制コ
ラムでは、このイギリスの付加価値税の引下げについて取り上げたいと思
います。

(1)1週間で税率を引き下げられる理由
 付加価値税の引下げの発表が、昨年11月24日、実際に税率が引き下
げられたのは、同12月1日です。発表から引下げまで、ちょうど1週間
ということになります。
 なぜ、このような短期間での税率引下げが可能だったのか、不思議に思
われる方も多いのではないかと思います。実は、イギリスでは、付加価値
税法において、付加価値税率を引き上げたり引き下げたりする権限が財務
大臣に与えられているのです(ただし、税率の変更幅や有効期間は一定の
範囲に限定されています)。

(2)事業者の負担
 税率自体は、財務省令により引下げが可能であるとしても、発表から短
期間での税率引下げに伴う事業者の事務負担(値札の貼替え等)はどうな
るのでしょうか。短期間で税率が変わると値札を貼り替えなければならな
くなり、事業者に相当の事務負担をかけることになります。このため、イ
ギリスにおいては、今回の税率引下げに際して、値札はそのままで、レジ
の計算段階で付加価値税額の調整を行うことが認められましたが、消費者
がいくら支払えばその商品やサービスが購入できるか、値札や広告を見た
だけではわからないというトラブルも報道されました。

(3)税率引下げに伴う税収減の財源
 今回の付加価値税率の引下げは、2008年12月1日から2009年
12月31日まで(13か月間)の時限措置です。イギリス財務省による
と、13か月間の引下げによる減収額は、124億ポンドになります。
 国の財政も家計と同様に、その健全性が問題となります。この点につい
て、イギリス政府は、中期的な財政の持続可能性を維持するため、経済が
回復局面に入ると見込まれる2010年度以降に財政の健全化(所得増税、
国民保険料引上げ等)に取り組み、2015年度までに財政収支を均衡さ
せる、中期の財政健全化目標を設定しています。

 各国の経済対策は、それぞれの国の政治・経済的事情やそれぞれの国の
制度的な仕組みを背景として実施されていると考えられますが、今回、イ
ギリスで実施された付加価値税の引下げについては、巨額の財政負担にも
かかわらず、消費刺激効果は限定的との批判も聞かれます。いずれにせよ、
各国で行われている様々な経済対策の背景にある政治・経済的事情や制度
的背景等を研究してみると、様々な新しい発見があり、楽しいものです。

                     主税局調査課 加藤 隆宏

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7 編集後記

 暖かかったり寒かったり、季節の変わり目を実感する日々が続いており
ますが、皆様、いかがお過ごしでしょうか。私は先週風邪を引いてしまい、
辛い日々を過ごしていましたが、そろそろ花粉症に苦しんでおられる方も
多いのではないかと思います。お体にはお気をつけくださいませ。
 さて、お知らせにもありますが、先週より、財務省ホームページのキッ
ズコーナーを刷新し、新しく「はっぴぃ★タウン」を公開しました。税の
意義と役割を勉強できる「はっぴぃ★タウンストーリー」と、ゲーム形式
で税を勉強できる「はっぴい★らいふルーレット」の二つのコンテンツが
あります。特にルーレットは人生ゲームのような形式で、クイズを順番に
解いていって人生を体験するというものになっており、かなり凝った造り
になっているのではないかと思います。楽しみながら税について学び考え
られるよう、いろいろと工夫しましたので、是非お子さんたちにも御紹介
していただければ嬉しく思います。ご覧になられた感想なども是非お待ち
しております。
 次回は4月上旬に発行予定です。

                             (和田)

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