税制メルマガ

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税制メールマガジン 第44号

2007年10月05日 | 税制メルマガ
税制メールマガジン 第44号             2007/10/05 

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◆ 目次

1 巻頭言 
2 税制をめぐる最近の動き
3 主税局職員コラム~「海釣り公園」で考えたこと~
4 コラム公的部門(その3)
  ~何のために勉強すんのかな?・・寅さんの勉強論~
5 諸外国における税制の動き~イギリスの税制改正~
6 編集後記

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1 巻頭言

 前号で、講演会等で多くの方に関心を持っていただける資料の一つとし
て、「世代毎の生涯を通じた受益と負担」を御紹介しました。今回も「受
益と負担」に関する資料を御紹介しますが、少し視点を変えて、所得階級
別の「受益と負担」の現状をみてみたいと思います。
 参考となる資料として、厚生労働省で行っている「所得再分配調査」が
あります。これは、社会保障による給付と、社会保険料負担や税負担が、
所得の配分にどういう影響を与えているかを調査したものです。(昭和37
年度以降、ほぼ3年周期で実施。直近では、平成17年度についての調査
結果が本年8月に公表。)
 
 調査では、各世帯ごとに、元々の所得(「当初所得」)から、支払った
税金と社会保険料を差し引き、受け取った社会保障給付(年金、医療、介
護、その他)を加えた所得(「再分配所得」)を算定し、当初所得と比較
しています。再分配所得が当初所得を上回っていればその世帯は受益超、
下回っていれば負担超ということになります。
 この調査は標本調査(17年度調査では約6千世帯への調査)であり、
また、一定の前提を置いた調査ですので、調査結果は幅を持ってみる必要
がありますが、受益と負担のイメージをつかむのには有益です。

 本調査によると、当初所得を階級別にみた場合、例えば、当初所得が
150~200万円の世帯では、税・社会保険料負担(以下、「負担」)
が約38万円に対して、社会保障給付総額(以下、「給付」)が約172
万円であり、差引約134万円の受益超となっています。
 同様に、当初所得500~550万円の世帯では、負担が約98万円、
給付が約153万円、差引約55万円の受益超であり、当初所得850~
900万円の世帯では、負担が約165万円、給付が約132万円、差引
約33万円の負担超となっています。
 全体を見ると、当初所得が概ね650~750万円の層を境に、それ以
下の所得層で受益超となっており、また、総じて当初所得が低いほど、受
益超の額、および再分配所得の当初所得に対する比率が高くなっています。
 所得に対する負担の重さを考える際には、ややもすれば、単に負担の軽
重だけに注目しがちですが、こうした資料も参考にしながら、受益・負担
両面から考える必要があると思います。

 もう一点申し上げれば、こうした資料をご覧になると、所得別の負担と
受益のバランスや、受益超と負担超の分岐する所得水準などについて、様々
な御感想をお持ちになると思います。そうした点を含め社会保障制度や税
制をどう考えていくかは、将来の国の在り方につながる大きな課題ですが、
その際留意すべきは、膨大な財政赤字の存在です。受益・負担の観点から
言えば、毎年度の財政赤字のもと、国民全体でみて現世代は「負担」を上
回る「受益」を享受し、その差が結果的に将来世代に先送りされていると
いうべき状態にあるといえます。歳出のムダは徹底的に排除しつつ、こう
した「受益」と「負担」のアンバランスを是正し、少子高齢化が進む中で
どのように持続可能な制度を確立していくのか、現世代が考え実現してい
かなければならない課題だと思います。

 今回御紹介した「所得再分配調査」では、ほかに、
・所得再分配効果の過去からの推移
 (再分配によるジニ係数の改善度は今回過去最大)、
・税と社会保障の再分配によるジニ係数の改善度
 (社会保障による改善度が大きい)
・年齢別の所得再分配の状況や、地域別の所得再分配の状況
など、いろいろな調査結果が報告されていますので、興味のある方は是非
御覧ください。

所得再分配調査(厚生労働省ホームページ)
・結果の概要
 http://wwwdbtk.mhlw.go.jp/toukei/kouhyo/data-kou6/data17/H17gai.pdf
・所得再分配調査結果
 http://wwwdbtk.mhlw.go.jp/toukei/kouhyo/data-kou6/data17/H17hou.pdf

      主税企画官 田島 淳志

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2 税制をめぐる最近の動き

 下記のとおり、税制調査会が開催されました。
  【9月11日(火)】
   第14回企画会合
   ・今後の審議の進め方について 等
  【9月18日(火)】
   第15回企画会合
   ・個人所得課税について
  【10月2日(火)】
   第16回企画会合
   ・法人課税について

  ・税制調査会の資料等は、下記URLにてご覧いただけます。
   http://www.cao.go.jp/zeicho/index.html

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3 主税局職員コラム~「海釣り公園」で考えたこと~

 この夏、海や川で何回か釣りをしました。これまで一度も行ったことは
なかった「海釣り公園」にも何度か行きました。「海釣り公園」は釣り場
として足場がよいことはもちろん、ライフジャケットが貸与され、また、
トイレも整備されています。さらには、子供が安心して遊べる(=親が安
心して釣りに専念できる)ように、柵に囲まれた子供の遊び場もあります。
小さな子供がいる私にとって、「安全・安心」に趣味を楽しめる場です。
 肝心の釣果は今ひとつであるため、場所を変えようか、と出発直前まで
毎回迷いました。ただ、「安全・安心」は何ものにも代え難く、入場料を
支払う必要がありますが、何度も足を運ぶこととなりました。

 現在、我が国では、経済、社会、自然環境など様々な面で、安全・安心
が揺らいでおり、国民生活の安全・安心の回復・確保が行政に対して強く
求められています。
 「海釣り公園」の入場料のようなものとは違い、税金は、行政サービス
と一対一の対応関係にないのが通常であり、納税者にとって、負担に対応
した受益が実感しにくい構造であることは否定できません。
 年金、医療、介護、福祉といった社会保障関係費だけでも国の歳出の
1/4強(約21兆円)を占めていますが、こうした社会保障制度は、少
子高齢社会を支えるセーフティーネットの役割を果たしています。「自分
が納めた貴重な税金が、生活の安全・安心のために確かに使われている。」
という実感を納税者に持っていただけるよう、行政に携わる人間として説
明責任を果たしていくことが必要であると思っています。もちろん、その
前提として、無駄・非効率な行政サービスについてはこれを是正する必要
があり、これまでの閣議決定等にあるように、歳出改革・行政改革に徹底
して取組むことが重要です。

 「釣り談議」から「行政のあり方」へと話が膨らんでしまいましたが、
富士山を横目にのんびりと釣糸を垂れながら、そんなことを考えることが
できるひとときは、私にとって充実した、リフレッシュの機会となってい
ます。
                       
                主税局総務課税制企画室長 堀内 斉

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4 コラム公的部門(その3)
  ~何のために勉強すんのかな?・・寅さんの勉強論~

 洋画を見ていますと、よくコインを投げて表か裏かを当てることで白黒
つけるという場面があります。仮に、表が6回続けて出ていたとしましょ
う。次は表でしょうか、裏でしょうか?・・・。
 つい「そろそろ裏かな」と言いたくなりますが、それまで何が出ていた
かは、次の勝負に全く関係ありません。印象論は別として、表も裏も、出
る確率は1/2です。
 同じように、あるご夫婦に3人続けて女の子が生まれていた時、4人目
はそろそろ男が生まれるような気がするかもしれません。しかし、これも
気のせいです。
          ・・・・・・・・・・・・・
 筆者が担当する「教育」の分野においても、往々にして、個人的経験を
普遍化した印象論が語られたり、「教育の効果はすぐにはわからないから・・」
といった先入観がみられたりしています。でも、教育の効果は本当にわか
らないものなのでしょうか?。
 昔の家庭の方がしつけがしっかりしていたのか?。少人数学級の方が本
当によい教育ができるのか?、少年犯罪は最近の方がひどくなっているの
か?・・・。印象論にとらわれず、事実はどうなのか、ひとつひとつ検証
してみると、また違う様相が見えてくることがあります。
          ・・・・・・・・・・・・・ 
 昨年NHKで「男はつらいよ」シリーズ全48作を放送していたとき、
「男はつらいよ 寅次郎サラダ記念日」のなかで、こういうせりふがあり
ました。

 受験勉強に悩み、大学へ行く意味に不安を感じた満男が、寅さんに
「・・・何のために勉強すんのかな?・・・」と尋ねます。

 寅さんの答えは・・・

寅さん: え? そういう難しいことを聞くなって言ったろう、おまえ。
 つまり...あれだよ。ほら、人間 ながーい間生きてりゃ いろんな
事にぶつかるだろう。な?。そんなときにオレみたいに勉強していないや
つは、振ったサイコロで出た目で決めるとか、その時の気分で決めるより、
しょうがない。な?。ところが勉強したヤツは自分の頭でキチンと筋道を
立てて、ハテ、こういう時はどうしたらいいかな、と考える事が出来るん
だ。だからみんな大学へ行くんじゃないか。そうだろう。
 久しぶりにキチンとした事考えたから頭痛くなって来ちゃった・・・。
          ・・・・・・・・・・・・・
 9月から各省の概算要求に基づいて、予算編成作業が始まりました。ヒ
アリングを通じた勉強も一巡し、これから、さらに議論を深めていくとこ
ろです。
 個々の政策の必要性や有効性などについて、寅さんの言うようにキチン
と筋道をたてた議論を行い、我々も年末に向けて勉強の成果が出せればと
思っています。
 
              主計局主計官(文部科学担当) 藤城 眞
  
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5 諸外国における税制の動き~イギリスの税制改正~

 前回は2008年夏季オリンピック開催国である中国の話でしたが、今
回は、2012年開催国であるイギリスの税制改正の話です。

 イギリスでは、去る7月19日、エリザベス女王の裁可により、2008
年度税制改正の内容を盛り込んだ2007年度歳入法(Finance Act 2007)
が成立しました。そこで、今回は、イギリスの税制改正の過程についてお
話しようと思います。

 税制改正の内容は、まず、前年11~12月に財務大臣により発表され
るプレ・バジェット(Pre-budget)において明らかにされます。プレ・バ
ジェットは、1997年のブレア労働党政権成立以後、経済見通しや税制
改正の内容に関する議論を促すために、後述するバジェットの前段階とし
て発表するようになったものです。

 次に、毎年3~4月に財務大臣による予算報告書(バジェット Budget)
において、さらに詳細な内容が発表されます。バジェットの発表は、財務
大臣の予算演説という形式で行われますが、政府の財政収支や経済見通し、
税制改正の内容を国民に伝える大切な役割を果たしており、社会の高い関
心を集めます。

 ところで、プレ・バジェットは1997年から発表されるようになりま
したが、バジェットの歴史はいつから始まったのでしょうか。
 「バジェット」という言葉は、古いフランス語で「小さな革袋」を意味
する ‘bougette’に由来しており、イギリスでは1733年に当時の首
相ウォルポールが使用したのが最初であると言われています。さらに、国
の予算自体は「バジェット」と呼ばれる以前から作られており、国王エド
ワード3世により1362年に作られたものが最初であるとされています。

 バジェット発表後は、税制改正関連部分が歳入法案(Finance Bill)と
してまとめられ、イギリス下院・上院での審議(下院には上院に対する優
越が認められています。)を経て、毎年7月頃、女王の裁可により、歳入
法(Finance Act)として成立します。

 以上、イギリスの税制改正の過程をご紹介しましたが、日本の税制改正
の過程と比べていかがでしたでしょうか。今回は、イギリスの税制改正に
ついて簡単にしかご紹介できませんでしたが、さらに興味を持たれた方は
下記ホームページをご覧ください。

(参考) イギリス財務省ホームページ(英語)
http://www.hm-treasury.gov.uk/

       主税局調査課 加藤 隆宏

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6 編集後記

 「コラム公的部門」で9月から予算編成作業が始まったことが紹介され
ていますが、税制についても、8月末に各省から主税局に平成20年度税
制改正に関する要望書が提出され、9月11日の税制調査会において、今
後の税制改革に向けた議論が始まりました。10月1日の総理の所信表明
演説では、「歳出改革・行政改革を実施した上で、それでも対応しきれな
い社会保障や少子化などに伴う負担増に対しては、安定的な財源を確保し、
将来世代への負担の先送りを行わないようにしなければなりません。今後、
早急に、国民的な合意を目指して、本格的な議論を進め、消費税を含む税
体系の抜本的改革を実現させるべく取り組んでまいります。」とされてい
ます。これからの税制をめぐる動きにご注目ください。 
                           
・税制調査会の資料等
http://www.cao.go.jp/zeicho/index.html
・各省の平成20年度税制改正に関する要望書
http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/h20kaisei/h20kaisei_top.htm

                             (高宮)

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ご意見募集のコーナー

 政府税制調査会では、今後の審議の参考にさせていただくため、広く国
民の皆様から、御意見を募集しております。

http://www.iijnet.or.jp/cao/kanbou/opinion-zeicho.html

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