税制メルマガ

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税制メールマガジン 第97号   平成29年2月6日

2017年02月07日 | 税制メルマガ
税制メールマガジン 第97号   平成29年2月6日

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◆目次
1 はじめに
2 「所得税法等の一部を改正する法律案」について
3 パンフレット「平成29年度税制改正(案)のポイント」について
4 政府税制調査会の最近の動き
5 若手コラム 〜法律のよみかた〜
6 編集後記

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1 はじめに

 今号は、今年最初の配信です。先週末に、29年度税制改正案の内容を盛り込んだ「所得税法等の一部を改正する等の法律案」が閣議決定されました。今年は、所得税が明治20年(1887年)に創設されてからちょうど130年。偶然にも個人所得税改革の第一弾となる改革が盛り込まれた法案が提出されました。改正案のパンフレットを今年も作成していますので参考にしていただければ幸いです。若手コラムもあります。ちょうど法案作成作業の話です。
 政府税調は今年最初の会議がペーパレス化の下で開催されました。
 本年もよろしくお願い申し上げます。

主税局総務課 企画官  梶野 友樹

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2 「所得税法等の一部を改正する法律案」について

 「平成29年度税制改正の大綱」(平成28年12月22日閣議決定)を踏まえた「所得税法等の一部を改正する等の法律案」が、平成29年2月3日に閣議決定され、国会に提出されました。法律案の本体やその関連資料は、以下のURLからご覧いただけます。

http://www.mof.go.jp/about_mof/bills/193diet/index.htm

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3 パンフレット「平成29年度税制改正(案)のポイント」について

 「平成29年度税制改正の大綱」(平成28年12月22日閣議決定)や、先ほどの「所得税法等の一部を改正する等の法律案」の内容を分かりやすくまとめたパンフレット「平成29年度税制改正(案)のポイント」を作成しましたので、是非、ご一読ください。

 以下のページからダウンロードいただけます。

http://www.mof.go.jp/tax_policy/publication/brochure/zeiseian17.htm

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4 政府税制調査会の最近の動き

 政府税調第9回総会が1月27日に開催されました。
 総会では、平成29年度税制改正の内容について事務方から説明があったのち、昨年まで行ってきた「納税実務等を巡る近年の環境変化への対応」についての議論に関連して、今後行う海外調査の内容に関して委員の皆様にご確認いただきました。

 経済活動のICT化や多様化を踏まえ、税務手続の利便性向上や、適正公平な課税の実現に向けた検討のため、諸外国における取組みを参考とする必要があります。このため、各国の納税実務に係る諸制度やその実際の運用について、委員数名を海外に派遣して調査を行い、今後の議論に役立てることを予定しています。

 具体的には、4月下旬〜5月上旬頃にかけて、まだ検討中ですが、米国、カナダ、英国、フランス、エストニア、スウェーデン、韓国といった国々を対象に調査を行う予定です。

 主な調査内容としては、「税務手続の電子化など、納税者の利便性向上に係る諸制度とその運用状況」と「情報収集のあり方など、適正公平な課税の実現に係る諸制度とその運用状況」という大きく2つのテーマに関し、各国でどのような制度が整備され、どのような取組がなされているのかについて調査する予定です。

 その後、海外調査の結果を報告した上で、調査結果から見えてくる新たな論点なども踏まえながら、議論をさらに深めていく予定です。

 なお、今回の総会から、効率化の観点や、霞が関の働き方改革の観点から、この政府税制調査会についても、資料のペーパーレス化を行っています。

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5 若手コラム 〜法律のよみかた〜

 こんにちは、今回の若手コラムを担当します松井と申します。昨年は主税局調査課にてドイツ税制調査、OECD関連業務等に携わり、現在は主税局税制第二課(=2課)にて、消費税関連の年度改正業務、法制業務を行っております。今回ついに若手コラム執筆が回ってきた!ということで、お題に非常に悩んだのですが、せっかく原課にいるのですから、今の自分にしか書けないことを書こう、と思い、「法律のよみかた」をテーマとしてみました。最後までおつきあい頂けましたら幸いです。

 法制を担当しているというと省内でよく言われる一言があります。
 「『若しくは』を『わかしくわ』とか読んでるんだよね?」

 法制作業の中では、読み手が条文を超高速で音読し、それを他の人が条文を見ながら確認する「読み合わせ」という作業が頻繁に行われます。これは、誤字脱字がないかだけでなく、作成した法律の内容等に不備がないかを確認するための1つの作業であり、独特な読み方がされることで知られています。例として、昨年成立した延期法の案文を見てみます:

 「(同項」を「(同条第二項」に、「同条まで」を「この項」に改め、「及び附則第四十二条」を削る。

 これが、以下のように読まれます。
 かぎ かっこ どうこう とじかぎ を かぎ かっこ どうじょう だいにこう とじかぎ に ぽつ かぎ どうじょう まで とじかぎ を かぎ この こう とじかぎ に かいめ ぽつ かぎ きゅうび ふそく だいよんじゅうにじょう とじかぎ を さくる まる かいぎょう

 このように、独特な記号の読み方、音読みに日々触れるため、気を抜くと普通の文章も音読みで読んでしまいそうになっている自分に気づきます(!) そして、ところ変われば読み方も変わり、同じ課内でさえ、例えば酒税係と消費税係では、読みのルールが微妙に違うのです。

 冒頭で少々触れましたが、現在私が担当している消費税関連の年度改正業務、法制業務においては、12月頃までは調査、ヒアリング等を行い、改正内容が固まった後には、法制に属して法律作成に携わります。一口に法律作成といっても、法案(案文・新旧)作成、読み合わせ、審査・・・といったプロセスがあり、年末から3月末にかけて、法律・政令・省令を作り上げていくこととなります。法律を作る、というと、やはり税制調査会や業界調整といった税制改正プロセスを思い浮かべることが多いかと思いますが、私自身、法制に携わる機会を頂いたことで、法律を書くという側面により関心をもつようになりました。また、今回のコラム執筆にあたり、これまでの蓄積等々に触れたり、その歴史に少々思いを馳せたりもしました。
 (ここで調査課外国係出身の血が騒ぎ、各国の法制作業、とくに読み合わせは一体どのように行われているのだろう、そもそもアルファベットなので、読み合わせは不可能なのではないか・・・などと気になり少々調べてみましたが、今回の記事にできるほどの調査手法が思いつかず、断念しました・・・)

 若手コラムのテーマは「ところ変われば税制も変わる」といったものが多いのですが、今回は少し違った切り口からのコラムとしてみました。今年は各国で大統領選挙が予定され、激変の1年となりうるともいわれますが、身の回りのもの、縷々継承されてきたものに目を向けることがあっても良いかもしれません。みなさまにとって2017年がよい1年となりますように。

主税局税制第二課 松井 都志子

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6 編集後記

 今号は、「所得税法等の一部を改正する等の法律案」に始まり、パンフレット、政府税制調査会、若手コラムと盛りだくさんでお送りいたしましたが、いかがでしたでしょうか。
 
 主税局では平成29年も皆様に税制に関する情報を分かりやすくお伝えするため広報コンテンツの充実を図りたいと考えております。
 そこで、「ホームページにこういう情報・コンテンツを掲載してほしい」「こういうパンフレットがあればいい」など、税制の広報へのご意見がございましたら下記のメールアドレスにご連絡ください。今後の広報の充実に役立てたいと思います。

  mailto:mg_tax@mof.go.jp

 最後に、税制メールマガジンでは今年も読者の皆様に有益な情報をお届けできるよう努めてまいりたいと思っておりますので、今後もご愛読のほどよろしくお願いいたします。

(山本)

税制メールマガジン 第96号 28/12/27

2016年12月27日 | 税制メルマガ
税制メールマガジン 第96号   平成28年12月27日

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◆目次
1 はじめに
2 パンフレット「税に関する18の質問」について
3 「平成29年度税制改正の大綱」について
4 編集後記

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1  はじめに

  今号は、今年最後の配信になります。税制についての基礎的なパンフレットを作成しましたので今号はこれをメインに紹介させていただきます。今回作成した『税に関する18の質問』の特徴を4点ほど述べたいと思います。まず1点目は、これまでとは異なり、Q&A方式にしたことです。目次で知りたい質問を見て、答えをすぐに見ることができます。2点目として、講義や授業、研修等でもお使いいただけるように、所得税、消費税、法人税、相続税などの主要税目について、「制度の仕組み」を入れたことです。また、各税目の現在の状況を図やグラフで入れました。勿論、税を納めていただく理由や税を決める考え方、税収などの状況についての説明もあります。3点目としては、今、ホットトピックである国際課税の話や軽減税率、それから贈与税や地方税について新しく入れました。4点目は、表紙のデザインを刷新し、タイトルも変わりました。冊子が出来上がりますのは、1月中旬以降となりますが、ご入用の方は是非とも下記2のアドレスまでご連絡下さいますようお願いいたします。

  来年の干支は「丁酉(ひのととり、ていゆう)」です。「丁」の字は、釘を形取ったものであり、辞典によっては「さかん」という意味も記されています。また、「酉」は、酒を醸造する器の象形文字とされ、熟するという意味もあるようです。さてどのような年になりますでしょうか。

  先週末の22日に「平成29年度税制改正の大綱」が閣議決定されましたが、主税局は、引き続き、税制改正法案の作成などに取り組みます。このメルマガでは、来年も、税制改正の詳細な内容をはじめ、タイムリーにホットな情報をお伝えしていきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。皆さまにおかれましては、よいお年をお迎えくださいますようお祈り申し上げます。

主税局総務課 企画官  梶野 友樹  

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2  パンフレット「税に関する18の質問」について

  このたび、財務省では、税制に関する情報を分かりやすくまとめたパンフレット「税に関する18の質問」を作成しました。

  所得税、消費税、法人税、相続税などの主要税目について、その現在の状況や制度の仕組みを、Q&A方式でまとめていますので、是非ご活用ください。

  下記ページからダウンロードいただけます。
http://www.mof.go.jp/tax_policy/publication/brochure/zeisei2811/index.htm

  送付をご希望の方は、下記URLよりお申し込みください。
https://www.mof.go.jp/tax_policy/publication/brochure/haifu/index.htm

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3  「平成29年度税制改正の大綱」について

  「平成29年度税制改正の大綱」が、平成28年12月22日に閣議決定されました。大綱の本体やその概要は、以下のURLからご覧いただけます。

税制改正の大綱
http://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2017/20161222taikou.pdf

税制改正の大綱の概要
http://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2017/29taikou_gaiyou.pdf

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4  編集後記

  前回私が編集後記を書いた11月中旬から、気付けば今年ももう残り4日となっていました。今号の編集後記担当は渡部でございます。
  秋から冬にかけて、翌年度の税制改正に向け主税局は繁忙期を迎えます。バタバタとした日々を過ごしていたら、気付けば、秋が更けるのを通り越してもう完全に冬が到来していました。夏に主税局に異動してもう半年が経過したかと思うと、時間の早さに驚愕するとともに、1年という期間を一つの区切りと見れば、28事務年度も残り半年となっていることに焦りも感じます。もっともっと色々な方々に、日本の税財政について広報できるよう、私自身も日々精進していきたいと思います。

  色々な方々に税財政について広報するという観点から、実は、主税局では担当者を皆さんの集まりや学校の授業等に派遣するという訪問講座を行っています(財務省HP上でも募集をしておりますが、あまり知られていないかもしれませんね…)。税の仕組みや課題、取り巻く経済環境等の共有、意見交換等を目的として、皆さんの集まりや勉強会、職場研修、ゼミ、中学・高校の授業等に職員が訪問してお話ししています。また、主税局は、政策評価の目標として47都道府県で広報活動を行うことを目標としていることもあり、我々広報担当者も直接皆さまとお話しさせて頂く機会を大切にしていきたいと考えています。本号で宣伝させて頂いたパンフレットも重要な広報ツールの一つですが、直接お話しさせて頂く機会は、今後より一層大切になってくると考えています。かくいう私も主税局に来てからもう2度ほど講演に行かせて頂きました(まだまだ精進が必要ですが!!)。
  また、大人数の方々に講演会のような形式でお話しをさせて頂くことも大切ではありますが、むしろ10人~20人程度の少人数の方々に対して、双方向的な広報ができれば、皆さまの理解もより進み我々としても本望と思うところです。大学の仲間内や、町内ご近所さんの集まり、商工会などなど、御要望があれば遠慮なくお問い合わせ頂ければと思います。多くの皆さまからの御連絡をお待ちしております!

○訪問講座ご希望の方は、こちらにお気軽に御連絡ください!
  連絡先:mailto:tax-houmon@mof.go.jp">

※原則として、10 名程度以上のグループを対象とさせていただきます。
※なお、日程の都合上、御希望に沿えないこともある旨、予めご了承下さい。

  本年も税制メールマガジンをご愛読いただきありがとうございました。来年もより良い広報を念頭に、皆さまに有益な情報をお届けできるよう頑張ります。本年は大変お世話になりました。来年も引き続きよろしくお願いいたします。

                   (渡部)

税制メールマガジン 第67号               2010/3/3 

2010年03月03日 | 税制メルマガ
税制メールマガジン 第67号               2010/3/3 

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◆ 目次
1 巻頭言
2 税制をめぐる最近の動き
3 主税局職員コラム ~変わるもの、変わらぬ課題~
4 諸外国における税制について ~アメリカのチップに係る税金~
5 編集後記


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1 巻頭言
 
 久しぶりの税制メールマガジンになります。前号から大きく間が空いてしまいましたこと、深くお詫びいたします。

 平成22年度税制改正の内容を盛り込んだ法案が昨日、衆議院を通過しました。政府としては今後、参議院の審議を経て、年度内に法案が成立するよう取り組んでいきます。

 さて、昨年末に閣議決定した税制改正大綱では、平成22年度の税制改正とあわせて、新政権としての中期的な税制改革の基本的方向性を示しており、今後、これを発展させて、「歳出・歳入一体の改革が実現できるよう、税制抜本改革実現の具体的ビジョンとして工程表を作成し、国民の皆様にお示しする」と定めています。

 税制抜本改革は、成長戦略の策定、中期的な財政運営の方針、社会保障・税に関わる番号制度、年金を含む社会保障制度改革、さらには低炭素社会実現に向けた取組に関する政府全体の検討などとも関連した、大きな作業になります。

 この税制抜本改革に向けた作業は税制調査会において進められていくことになりますが、まずは、3月からは、税制調査会の下の助言機関として設置された専門家委員会(委員長:神野直彦 関西学院大学教授)において、「80年代以降の内外の税制改革の総括」というテーマで、所得税から順に、各税目について、1980年代以降の内外の税制の変遷に関して、改革の内容とその背景を検証し、その過程で浮き彫りになった論点などについて議論をはじめることになりました。所得税については、例えば80年代以降、我が国の所得税の財源調達機能や所得再分配機能が減少した要因などについて検証し、その中から改革に向けての論点などを抽出していくことになるのではないかと思っています。現時点で専門家委員会がいつまでどういうものを報告するかについては決まっていませんが、今後の議論の模様については、税制調査会のHPにも掲載されますので、よろしかったら御覧ください。

                  主税局総務課企画官 宇波 弘貴

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2 税制をめぐる最近の動き
 
(1)下記のとおり、税制調査会が開催されました。

 【1月18日(月)】
   税制調査会 平成21年度 第26回
    ○専門家委員会の設置等

 【1月28日(木)】
   税制調査会 平成21年度 第27回
    ○プロジェクトチームの進め方、専門家委員会について

 【2月24日(水)】
   税制調査会 第1回 専門家委員会
    ○専門家委員会及び小委員会の検討課題、運営について

 ・税制調査会の資料等は、下記URLにてご覧いただけます。
  http://www.cao.go.jp/zei-cho/index.html


(2)2月5日(金)、「所得税法等の一部を改正する法律案」及び「租税特別措置の適用  状況の透明化に関する法律案」が閣議決定され、国  会に提出されました。
   これらの法案については、現在、国会で審議されています。

 ・法案の内容は、下記URLにてご覧いただけます。
  http://www.mof.go.jp/houan/174/houan.htm


 
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3 主税局職員コラム ~変わるもの、変わらぬ課題~

 昨年の流行語大賞は「政権交代」、「今年の漢字」は「新」、でした。
そのほかにも、「事業仕分け」「脱官僚」、「政」「改」がトップ10に並ぶなど、例年にもまして、日本中が政治・政府といったものに注目をし身近に感じた年だったことが分かります。(私も例外ではありません。総選挙の投開票日は奇しくも私の誕生日でしたが、外食もそこそこに、テレビに釘付けでした。)

 このメルマガの読者の皆さんが特に興味を持っておられるであろう、税制改正についても、幾つか変化がありました。その一つは税制改正の決定過程に関するものです。鳩山政権は、税制改正プロセスをより透明なものにするために、党と政府の両税制調査会を廃し、政治家のみをメンバーとする新たな税制調査会を政府に設置しました。また、その議事を原則公開とし、HP上で審議の中継・配信や資料の公表を行っています(HPは以下のリンクを御覧ください)。この新たな税制調査会の立ち上げや運営に私も携わっているため、鳩山首相ご出席の下官邸で行われた初会合に臨席する機会を得ましたが、歴史の転換を目撃しているようで、身が引き締まる思いがしたのを覚えています。同時に、政府の旧税制調査会はその50年の歴史に幕を閉じることとなり、それもまた感慨深いものがありました。

 他方で、我が国の税制に求められている経済・社会の構造変化への対応は、新政権においても変わることのない重要な課題です。新たな税制調査会の初会合で総理から行われた諮問や先般閣議決定された平成22年度税制改正大綱においても、内外の構造変化に適応した税制を構築していく必要性が述べられています(諮問文及び大綱は税制調査会のHPに掲載されています)。構造変化の中で、税制が期待されている財源調達や所得再分配等の機能を適切に果たせていないのではないか、という問題意識です。

 政府が提供する財・サービスの財源を調達するという、税制の最も基本的な機能は、今般の世界経済危機の影響もあり、大きく損なわれています。例えば一般会計歳出総額に占める租税及び印紙収入の割合は、バブルの頃は80%程度でしたが、その後の景気低迷を受けて50%台に低下しました。近年の財政健全化努力等によって60%台を回復したのも束の間、21年度予算(補正後)においては35.9%、22年度予算においては40.5%に落ち込んでいます。50%を割ったのは実に第二次世界大戦で日本経済が壊滅的被害を受けた昭和20・21年度以来です。上述の税制改正大綱は、こうした状況を受け、現行税制は「十分性の原則」を満たしておらず、支え合う社会の実現に必要な財源を確保することが必要不可欠だと述べています。

 こうした税制抜本改革の必要性は、景気対策の声にかき消されることもありましたが、政治理念の垣根を越えて唱え続けられてきました。新政権においても、上述の税制改正大綱において中長期的な税制改革の方向性が示され、巻頭言でも触れているように、税制抜本改革の具体化に向けて取組みがスタートいたしました。こうした政府の取組みや通常国会における活発で建設的な議論がより良い税制の構築につながることを願ってやみませんし、私も少しでも貢献できるよう努めてまいりたいと思います。

税制調査会HP:http://www.cao.go.jp/zei-cho/index.html

                    主税局調査課  齊藤 郁夫
  
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4 諸外国における税制について ~アメリカのチップに係る税金~

 最近、アメリカ税制の調査をしていて思うことは、その国特有の文化に根ざした税の仕組みがあるのだなということです。アメリカに旅行をしたり、アメリカで生活したりしますと、日本とは違う文化に気がつきます。例えば、アメリカでは毎年11月の第4木曜日は感謝祭(Thanksgiving Day)と呼ばれており、家族や親戚が集まり七面鳥やマッシュポテトなどの定番料理を囲みます。家賃や光熱費の支払いは日本では銀行引き落としやクレジットカードでの支払いが主流ですが、アメリカでは小切手を利用するところが多かったりします。

 アメリカ文化の中でも、アメリカに旅行した日本人が戸惑うのが、日本にはない「チップ」という文化ではないでしょうか。タクシーに乗るとき、ホテルで荷物を運んでもらうときなど、「チップ」を支払う場面にたびたび出くわします。通例、レストランで食事をした時には、食事の勘定とは別にウェイトレスやウェイターへの感謝の気持ちを表すために食事の10%~20%を「チップ」としてテーブルに置きます(又はクレジットカードの場合には、勘定に上乗せして支払います)。これは日本のサービス料に近いものですが、「チップ」の額はサービスへの満足度を考慮しながらお客が自由に決めることができます。この「チップ」はウェイターやウェイトレスの重要な収入源となっているのです。

 ではこの「チップ」にはどの様な税金がかかってくるのでしょうか。まず、この「チップ」については前年1年間の間に受け取った額全額を確定申告時(通常4月15日が締め切り)に給与収入と並びで収入(income)の中に含めて申告しなければなりません。よって、他の給与所得と同じように個人所得税が課されることになります(アメリカでは10%~35%の累進課税)。また、この「チップ」には日本の社会保険料に当たる社会
保障税(social security and Medicare taxes; 本人負担分7.65%)も課されます。内国歳入庁(IRS)は1つの職業につき1ヶ月に20ドル以上の「チップ」を受け取った場合には、原則次の月の10日までに雇用主にその月の「チップ」の総額を報告する必要もあるとしています。そして雇用主が「チップ」を含めた給与所得から個人所得税や社会保障税の源泉徴収をすることになります。もし受け取った「チップ」を雇用主に報告しなかった場合には、ペナルティとして通常の税額に加えて50%の社会保障税が課される可能性があります。

 しかし、なかなか自分の受け取ったチップを正直に報告しないのではないかと思う方もいるかもしれません。そんな場合のためにIRSは大きなレストランなどの飲食業を営む雇用主に対して、売上の一定額以上(原則8%)をチップとして報告することを求めています。もし、従業員からのチップの報告額の合計がその一定額に足りない場合には、その差額を従業員に割当てなければなりません。そのため、従業員は帳簿などによって自分の受け取った「チップ」の総額が証明できない場合には雇用主によって割当てられた「割当チップ」についても収入に含めなければならず、それに対して所得税や社会保障税を支払うことになります。

 このように文化が違えば、その文化に応じた税制の仕組みがあることがわかります。今後もアメリカの文化や背景を理解しながら税制の調査に取り組んでいきたいと思います。

                      主税局調査課 村木 圭

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5 編集後記

 税制メールマガジン第67号を発行させて頂きます。
 先日、バンクーバーオリンピックが閉幕しました。熱戦に魅入られた方々も多かったのではないかと思います。冬季の種目は、夏期の種目とはひと味違った美しさがあり、日本人が出場しない種目でもじっくり鑑賞してしまいました。選手の勇姿に元気をもらって、また仕事に励もうと思ったところです。
 さて、お知らせになりますが、税制HPのトップページに、「平成22年度税制改正(案)のポイント」のパンフレットの電子媒体を掲載しました。御覧頂ければ幸いです。


http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/syuzei.htm

 次号は4月上旬発行予定です。お楽しみに。

                             (和田)
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税制メールマガジン 第66号              2009/12/28

2009年12月28日 | 税制メルマガ
税制メールマガジン 第66号            2009/2/28 ---------------------------------------------------------------
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◆ 目次 1 古本財務大臣政務官からのご挨拶
2 税制をめぐる最近の動き
3 諸外国における税制について ~ドイツの所得税制~
4 編集後記
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1 古本財務大臣政務官からのご挨拶  はじめまして。財務大臣政務官を拝命しました古本伸一郎と申します。  私は昭和40年3月11日に香川県高松市で生まれNHKの放送会館に近い生家で2歳までを過ごしました(離乳食は讃岐うどんだったそうですが記憶はありません)。後に和歌山城のそばで小学校2年生まで過ごし、大阪、そして学生時代は京都で下宿し、就職は愛知、そして平成15年の総選挙で初出馬させて頂いてから6年、東京で活動させて頂いています。22歳で就職し、26歳で結婚するまでは会社の独身寮で過ごしましたが(家内には内緒ですが)、食事、洗濯、寂しさ等もあって早い段階から結婚したいという思いがありました。昨今、若い方が結婚したくても結婚しない(できない)理由として、一人でも不便でない、経済的な基盤の弱さ等、様々な理由がある様です。政治は結婚や子育てに夢がもてる世の中にしなければなりません。   先日もある25歳の好青年と話をしたところ正社員でそれなりの所得があるのに好きな彼女にプロポーズできないと言います。理由を尋ねると、 “結婚資金がまだ貯まっていない”との事でした。日本の若者は結婚できるのだろうかと思います。職場や地域で結婚や子育てをする先輩たちから、 “結婚や子育てにはお金がかかる”と言われると、稼いだお金を好きなファッションや飲み代に使った方が気楽な訳ですから決断が先送りとなります。結果、晩婚化、未婚化が進んでおり、30代の男性でみた場合、35~39歳での未婚率は全国平均で約30%(女性と職場で出会う機会の少ない職種ではそれ以上のところもあります。)で、20年前と比較すると15.8ポイント上昇しています。他方、完結出生児数(婚姻関係が15~19年続いた夫婦の間の子の数)は少子化といわれる現在でも2人以上いるというのも、無視できないもうひとつの事実であり、税制をはじめとする政策は何らかの意味を持つはずです。  何もしなければ、2050年代には社会保障を支える現役の数が半減する一方、高齢者が倍増するあべこべの日本となります。ところが、先日、内閣府の『結婚』や『子育て』に関する世論調査(「男女共同参画社会に関する世論調査」)が公表されました。「結婚は個人の自由であるから結婚してもしなくてもどちらでも良い」という人が70%、「結婚しても必ずしも子供を持つ必要はない」とする人が42.8%となっています。しかし、こうした若者達も将来自ら年老いたときには、社会保障や税で次世代に支えてもらうことになるのです。そこでいよいよ必要だと思うのが理屈を超えた昔ながら地域での“お節介”です。今時、ご近所のおばちゃんやおじちゃんが“あんたもいい年だから結婚しなよ”なんて声がけする話はあまり聞きません。今こそ、お節介が有効だと感じる年の瀬です。                    財務大臣政務官 古本 伸一郎
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2 税制をめぐる最近の動き  【12月22日(火)】  平成21年度第25回税制調査会において、「平成22年度税制改正 大綱」が決定され、同日、閣議決定されました。  【12月25日(金)】  「平成22年度税制改正大綱の一部改正について」が閣議決定されま した。 ・「平成22年度税制改正大綱」は、下記URLにてご覧いただけます。 http://www.cao.go.jp/zei-cho/etc/pdf/211222taikou.pdf ・税制調査会の審議内容、資料等は、下記URLにてご覧いただけます。 http://www.cao.go.jp/zei-cho/index.html ================================= 3 諸外国における税制について  ~ドイツの所得税制~  日本語の中には様々な外来語が混ざっていますが、ドイツ語に由来するものも多数あります。「テーゼ(These)」「イデオロギー(Ideology)」「カルテ(Karte)」「デマ(Demagogie)」等ある中で、最も頻繁に使うのは「アルバイト(Arbeit)」という言葉ではないでしょうか。ただし、この「Arbeit」という言葉は、日本のように臨時的な仕事を指すのではなく、ドイツでは「労働全般」を指します。  「Arbeit」という言葉は、その他に「苦労、骨折り」といった意味も含みます。この背景には、旧約聖書の失楽園があると言われています(岩村偉史「社会福祉国家 ドイツの現状」三修社)。アダムとイヴが禁断の木の実を食べてしまったが故に楽園を追われ、人間は地上で辛い仕事をするという罰を与えられてしまったのです。一方で、ドイツで労働に肯定的な意味を与えた人物もいます。この人物がマルティン・ルターで、労働または職業が神に与えられた使命であり、働くことが神の意思を実現することであると説きました。そこでは勤労は美徳となり、現在ドイツは日本と並んで勤勉、勤労の国として知られています。  このような労働観と共に、労働に少なからず影響を与えるものとして、労働(所得)に対する税制が挙げられます。そしてドイツには、上に挙げた独自の背景と共に、世界でも珍しい所得税構造が存在します。以下では、この特異な所得税構造を説明すると共に、現在ドイツで提案されている新しい所得税制を紹介したいと思います。  現行の所得税制では、課税所得に対応した税率は存在せず、税額は方程式に課税所得を代入することで算出できます。例えば、2009年時点で課税所得7,835ユーロから13,139ユーロまでは、「(939.68((X-7,834)/ 10,000)+1,400)((X-7,834)/10,000):Xは課税所得」という式で税額が計算されるのです!この結果、一定程度の課税所得まで、限界税率が連続的に変化します。一方、日本及び他の主要国では、限界税率は段階的に推移します(http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/siryou/036.htm)。つまり、日本の所得税における税率が、23%から33%に一気に推移する間に、ドイツの所得税は23%、23.1%、23.2%……32.9%、33%と税率が徐々に変化していくのです(実際には刻み数は存在しない)。  この特異な所得税制に対して、現在の連立政権は改革を行おうとしています。与党第二党のFDP(自由民主党)はマニフェストの段階で、10%、 25%、35%の三段階の簡素な税制を主張し、与党第一党のCDU/CSU(キリスト教民主/社会同盟)との連立合意の中でも、2011年から段階的な所得税構造へ移行することを計画しています。この改革により、中低所得層が所得からより多くの恩恵を得られる(所得税の累進を緩和する)ことを政府は計画しています。  ドイツでは9月の選挙で、CDU/CSU(キリスト教民主/社会同盟)と大連立を組んでいたSPD(社会民主党)が11年ぶりに下野し、小政党がいずれも議席数を伸ばすという大きな変化が起こりました。それと共に、ドイツの所得税制に対するこの大変革が起きようとしています。 今後もドイツの新連立政権の動向を注意深く見ていきたいと思います。                      主税局調査課 小池 孝英
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4 編集後記  税制メールマガジン第66号を発行させて頂きます。今回は古本政務官から御寄稿を頂いております。  先般、税制改正大綱が取りまとまり、平成22年度の税制改正の内容が決定されたところです。年明け以降は法案審議が始まりますが、とにもかくにも、峠は一つ超えたという所です。  来年以降も内容の充実に努めてまいりますので、どうぞ引き続きよろしくお願いいたします。それでは皆さん、良いお年を。                              (和田) ================================= 当メールマガジンについてのご意見、ご感想はこちらへお願いします。 mailto:mg_tax@mof.go.jp ================================= 税制メールマガジンのバックナンバーはこちらからご覧頂けます。 http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/merumaga/merumagaback.htm ================================= 財務省メールマガジンの配信中止・登録内容の変更は、こちらでお願いします。 配信中止 → http://www.mof.go.jp/haisin/sakujo1.htm 登録内容の変更 → http://www.mof.go.jp/haisin/henkou1.htm

税制メールマガジン 第65号              2009/11/6

2009年11月16日 | 税制メルマガ
税制メールマガジン 第65号              2009/11/6

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◆ 目次

1 峰崎財務副大臣からのご挨拶
2 税制をめぐる最近の動き
3 諸外国における税制について ~フランスの「税」の呼び名~
4 編集後記 

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1 峰崎財務副大臣からのご挨拶

 この度、鳩山内閣・藤井財務大臣の下、財務副大臣に就任致しました峰
崎直樹です。主に税制、国際関係等を担当する予定ですので、どうぞ宜し
くお願い申し上げます。

 さて、皆様ご存知のとおり、新・政府税制調査会が10月8日にスター
トしました。

 これは、昨年の民主党税制改革アクションプログラムの時から提案して
いたもので、内閣の中に財務大臣を長とし、政治家をメンバーとする新政
府税制調査会を発足させたものです。

 自民党政権時代にみられた党と内閣の二元的な意志決定から、政治家が
責任を持って決定する仕組みに、大きく転換させようとするもので、何よ
りも国民に開かれ、かつ「権力の二重構造」を排除することを目指したも
のです。

 つまり、これまでは、何ら法的根拠及び決定権を持たないはずの自民党
税制調査会が税制改正内容を決定し、それを内閣が法案として提出してい
ました。これでは、税制という国の姿を形づくる重要な政策決定を実質的
に行った人たちが、国会という国民の代表者の前で答弁に立たないという
もので、この形を改めるために新政府税制調査会を立ち上げた訳です。

 今回の改革によって、与党政治家の方たちが責任を持って税制改革に立
ち向かうわけですが、そこでは、本当にこれまでの既得権に切り込むこと
ができるのか、新しい時代の要請に応えることができるのか、などが問わ
れてきます。税制の中身は専門的で複雑なものが多く、ともすれば自民党
税調時代には、インナーと呼ばれる一部の税の専門家が、「密室で」決定
していましたが、それを廃止して十分な成果が挙げられるかどうか、税制
調査会メンバーとなる各省庁の副大臣・政務官の方たちの力量如何にかか
っています。

 税制改正に関して、新しい皮袋がとにもかくにもできた訳で、今後は、
この袋に「公平・透明・納得」のスローガンを体現した、鳩山政権らしい
新しい酒を入れられるように、運営上の責任あるポジションである企画委
員会主査として、全力を尽くしてまいります。

 是非、国民の皆様のご支援とご指導をお願い申し上げます。

                      財務副大臣 峰崎 直樹

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2 税制をめぐる最近の動き

(1)新内閣において、財務大臣を会長とした税制調査会が設置され、以
 下のとおり、税制調査会が開催されました。
 【10月8日(木)】
  税制調査会 平成21年度 第1回
   ○内閣総理大臣からの諮問等

 【10月9日(金)】
  租税特別措置および非課税等特別措置の見直しのための論点整理に関
 するプロジェクトチーム(以下、租特PT)平成21年度 第1回
   ○今後の進め方
   ○租税特別措置の全体像について(1)

 【10月14日(水)】
  租特PT 平成21年度 第2回
   ○租税特別措置の全体像について(2)
   ○地方税における税負担軽減措置等の全体像について(1)

 【10月16日(金)】
  租特PT 平成21年度 第3回
   ○地方税における税負担軽減措置等の全体像について(2)
   ○租税特別措置に係る実態把握の現状 他

 【10月20日(火)】
  税制調査会 平成21年度 第2回
   ○税財政の現状、租税特別措置等、納税環境整備 他

 【10月21日(水)】
  租特PT 平成21年度 第4回
   ○地方税における税負担軽減措置等の実態把握の現状等
   ○「租特透明化法」について(1)

 【10月22日(木)】
  税制調査会 平成21年度 第3回
   ○法人課税、国際課税 他

 【10月23日(金)】
  租特PT 平成21年度 第5回
   ○「租特透明化法」について(2)(関係者ヒアリング)

 【10月27日(火)】
  税制調査会 平成21年度 第4回
   ○個人所得課税、間接税

 【10月28日(水)】
  租特PT 平成21年度 第6回
   ○平成21年度末までに適用期限が到来する租税特別措置の概要

 【10月29日(木)】
  税制調査会 平成21年度 第5回
   ○地方団体との意見交換
   ○総理からの諮問事項全般について有識者からのヒアリング

 【10月30日(金)】
  租特PT 平成21年度 第7回
   ○平成21年度末までに適用期限が到来する地方税における税負担
   軽減措置等の概要

 【11月2日(月)】
  租特PT 平成21年度 第8回
   ○租税特別措置等の見直しについて(1)

 【11月5日(木)】
  税制調査会 平成21年度 第6回
   ○間接税、資産税 等
   ○各省ヒアリング(1)

 【11月5日(木)】
  租特PT 平成21年度 第9回
   ○租税特別措置等の見直しについて(2)

 【11月6日(金)】
  税制調査会 平成21年度 第7回
   ○各省ヒアリング(2)

(2)10月30日(金)各府省から平成22年度 税制改正要望が提出
 されました。

 ・税制調査会の資料及び各府省の税制改正要望は、下記URLにてご覧
 いただけます。
  http://www.cao.go.jp/zei-cho/index.html

(3)『税を考える週間』が始まります。
 国税庁では、毎年11月11日~17日を「税を考える週間」とし、国
民の皆様に税の意義・役割について考えていただくとともに、税務行政へ
の理解を深めていただくため、さまざまな広報広聴活動を行っています。
今年は「IT化・国際化と税」がテーマです。ホームページにも様々な情
報がありますので是非ご覧ください。
 また、財務省主税局では、10月末に、ホームページに掲載している各
種税金の資料をリニューアルしております。様々な資料を掲載しておりま
すのでこちらも是非ご覧ください。

・国税庁ホームページ
 http://www.nta.go.jp
・財務省ホームページ「各種税金の資料」
 http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/syuzei02.htm


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3 諸外国における税制について  ~フランスの「税」の呼び名~

 早いもので、社会人1年目の私たちが入省して半年が過ぎました。私が
フランスの税制を担当し始めてからも5ヶ月目を迎えています。そこで今
回、フランスの税制について調べる中で気づいたことのうち、税の「呼び
名」という観点からひとつお話ししてみたいと思います。

 突然ですが、日本語で「税」という言葉以外に税を指す呼び名にはどん
なものがあるでしょうか。古くからの日本の歴史をひも解けば、有名な
「租・庸・調」から始まり、「○○役」「○○銭」など、現物納付のもの
も含め様々な税の名前がありました。しかし、現在使われている言葉とし
ては、所得税、法人税、消費税などのように、「○○税」と統一されてい
ます。

 一方、フランスでの税の呼び名は、先頭に「税」を意味する単語を置き、
その後ろに課税対象や課税目的などを表す語句を付ける、というように構
成されているのですが、先頭に置く「税」を意味する単語は、税の性質ご
とに違っています。以下、主なものをご紹介しましょう。

 まず最も一般的なのが「impot」(アンポ)で、所得税、法人税などに使
われます。フランスで「所得税」はimpot sur le revenu(「所得にかかる
税」という意味)といい、IRと略します。同じく法人税はimpot sur les
societes(「法人にかかかる税」)で略称はIS。このように、フランスで
は税の名称が長くなった場合、頭文字をとって略称で呼ぶことがよくあり
ます。
 一方、付加価値税、石油産品内国消費税などの間接税には、「taxe」
(タクス)が多く使われます。これは英語のtaxと似ていますが、英語で所
得税はindividual income tax、小売売上税はsales taxというように、
「tax」は税に関連する広い範囲で使われているのと比べると、フランス語
の「taxe」はより限定的です。もっぱら上記のような一部の間接税や公的
サービスの手数料の意味合いがある場合などに使われます。
 ほかにも、酒税や相続税には権利や法律という意味もある「droit」(ド
ロワ)が使われています。これは、中世のフランスで、王が領地に対して
持っている「財産権」の派生として、課税が行われたことに由来すると言
われています。(中里実 『フランスにおける流通税の歴史』 税大ジャー
ナル 11 2009.6)
 ほかにも、社会保障の財源となる税などには、貢献や分担金という意味
もある「contribution」(コントリビュスィオン)が使われています。

 このように見てみると、様々な性質や沿革を持つ税を、日本語では同じ
「税」という一つの言葉で表すのに対し、フランス語では、その税の性質
に応じて異なる呼び名をあてていることがわかります。
 ある税について考えるとき、「この税は、他の国ではどのような名前が
付けられているか」を調べてみるのも、面白いのではないでしょうか。
 私も、今後もフランスの税制について様々な角度から興味を持って調査
していきたいと思います。

                      主税局調査課 老月 梓

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4 編集後記

 しばらく間が空きましたが、新しい政府税制調査会も立ち上がり、来年
度の税制改正に向けた審議が始まりましたので、税制メールマガジンを再
開させて頂きます。
 通算第65号となりますが、今回は、巻頭言に替わり、峰崎副大臣から
御寄稿を頂きました。謹んで御礼を申し上げます。
 これから、主税局にとっては非常に忙しい日々が続くこととなりますが、
税制メールマガジンは従来のペースで発行できるよう頑張ってまいります
ので、引き続きご愛顧のほどよろしくお願い申し上げます。
 次号は12月発行予定です。お楽しみに。

                             (和田)

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税制メールマガジン 第64号              2009/8/7

2009年08月10日 | 税制メルマガ
税制メールマガジン 第64号              2009/8/7

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◆ 目次

1 巻頭言
2 新主税局長のご挨拶
3 税制をめぐる最近の動き
4 主税局職員コラム ~検事の仕事と租税条約交渉~
5 編集後記 

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1 巻頭言

 7月に省内で定期人事異動がありました。本号に新局長の挨拶を掲載さ
せていただきましたが、主税局も新しい体制でこれから一年、税制改正作
業に取り組みます。なお私自身は留任いたしましたので、メールマガジン
の読者の皆様には、引き続きお付き合いのほどお願いいたします。
 この一年、メールマガジンや広報の仕事をさせていただく中で、色々な
御意見をいただきました。励ましのメッセージもあれば、なるほどと思う
ような御提案、さらには厳しい御批判も多々ありました。
 そんな中で多かった御質問・御意見の一つに「負担の議論の前に今の財
政状況に至った原因・理由を説明すべき」というものがありました。今回
は、この点に関連して一つの分析を御紹介します。
 2008年度末で563兆円に達した日本の公債残高は1965年度か
ら累積が始まっていますが、経済成長率を超えて大きく増え出したのは1
990年代に入ってからです。財務省が発行しているパンフレット「日本
の財政を考える」(平成20年9月)の6ページでは、1990年度から
2008年度までの間の公債発行残高の増加額(約390兆円)の定量的
な要因分解をしています。これによると、公債残高の増加要因は、歳出の
増加要因(約150兆円)と税収等の減少要因(約140兆円)がほぼ半
分ずつを占めています(この他、1990年度の収支差分が50兆円、国
鉄等債務承継・不良債権処理等で50兆円)。このうち、前者の歳出の増
加要因をさらに詳しく見ると、約60兆円は公共事業関係費の増加でこれ
は90年代前半に顕著ですが、90年代後半になるとこの要因は小さくな
っていって、その一方で社会保障関係費の増加(約140兆円)の影響が
大きくなり、最近ではほぼ唯一の要因になってきています。他方、税収等
の減少要因については、主に景気の後退に伴う法人税等の減収と、経済対
策の一環として実施された所得税減税等が寄与しています。
 このように90年代の公債残高の増加は、第一に90年代の長い経済の
低迷とその政策対応に基因しています。財政には、景気後退局面に税収減
や失業給付の増加などにより赤字が自然に拡大して景気を下支えする機能
(ビルト・イン・スタビライザー)が内在されていますが、90年代前半
はさらに追加的な公共事業や減税を行なったことも加わって公債残高が増
えています。他方、その後、90年代後半になると、景気の改善や経済政
策の変化などからこうした要因が消える一方、高齢化等に伴う社会保障関
係費の自然増が主要因になって現在に至っています。
 このような分析は、改めて、予算の効率化・無駄排除の努力はもとより、
G8財相会合声明等が謳っている出口戦略(景気後退期における財政出動
と経済好転後の中期的な財政健全化の道筋)や、昨年末に決定された「中
期プログラム」等が指摘している増加する社会保障費用の安定財源確保の
必要性を示唆しているのではないかと思います。特に、社会保障について
は、平均寿命の伸長や、経済成長の鈍化、出生率の低下など、90年代初
頭に想定していた社会保障の財政運営の前提が大きく違ってきており、制
度対応が遅れている面は否めません。これまでの財政の歩みを振り返り、
その分析・反省も踏まえながら、次の議論を進めることが大切ではないか
と思っています。


日本の財政を考える:http://www.mof.go.jp/jouhou/syukei/sy014_2009.pdf

                   主税局総務課企画官 宇波弘貴

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2 新主税局長のご挨拶

 7月14日付けで主税局長に就任いたしました古谷です。
 税制メールマガジンをご愛読いただき、ありがとうございます。
 
 私はこれまで比較的長く主税局で勤務してきましたが、課長時代に、こ
のようなメルマガを通じた国民の皆様とのインターフェイスが必要ではな
いか、と局内で主張したひとりです。その後、メルマガも64回を重ね、
2万人以上の皆さんに御登録いただき、私たち主税局の職員にとっても、
皆さんとの大変貴重な意見交換の媒体になっています。

 税は公共サービスの財源を調達するためのものです。社会の構成員であ
る国民の皆様に公平に分かち合っていただく必要があります。そのために
は税制が社会や経済の変化に適切に対応したものでなければなりません。
これまでも政府・与党の税制調査会や国会などでの論議を経て、様々な税
制改正が行われてきました。今後も、少子・高齢化や経済のグローバル化
が進行する中で、社会保障制度の安定財源確保、格差の是正、経済成長力
の強化、税制のグリーン化などわが国が直面する諸課題に対応するため、
所得課税、消費課税、資産課税といった税制全般にわたって改革を進めて
いく必要があります。

 実りある税制改革の検討を進めるためには、皆様方からも意見をいただ
き幅広い議論が必要です。このメルマガを通じ、引き続きご指導、ご協力
をいただきますようお願い申し上げます。

                       主税局長 古谷 一之

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3 税制をめぐる最近の動き

(1)政府が4月10日に決定した「経済危機対策」において、その税制
 上の措置に関する法律「租税特別措置法の一部を改正する法律」が6月
 19日に国会にて成立し、同26日に公布・施行されました。
 ・「租税特別措置法の一部を改正する法律」は下記URLにてご覧いた
 だけます。
  http://www.mof.go.jp/houan/171/houan.htm

(2)下記のとおり、税制調査会が開催されました。
 【6月26日(金)】
  第4回スタディ・グループ
   ○海外調査の概要報告
 【8月6日(木)】
  第5回スタディ・グループ
   ○海外調査報告書の概要説明

 ・税制調査会の資料等は、下記URLにてご覧いただけます。
  http://www.cao.go.jp/zeicho/index.html

(3)サウジアラビア王国との租税条約が基本合意に至りました。
 ・概要は、以下のURLにてご覧いただけます。
  http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/sy210626sa.htm

(4)スイス連邦との租税条約の改正について基本合意に至りました。
 ・概要は、以下のURLにてご覧いただけます。
  http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/sy210626sw.htm

(5)バーミューダとの情報交換を主体とした租税協定が基本合意に至り
 ました。
 ・概要は、以下のURLにてご覧いただけます。
  http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/sy210626be.htm

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4 主税局職員コラム ~検事の仕事と租税条約交渉~

 主税局参事官室に異動になり租税条約交渉の担当となってから、ちょう
ど1年になります。私は、本職は検事でありますが、現在は財務省へ出向
しております。

 検察庁で勤務していたころは、仕事の中心は日々発生する事件の捜査で
した。事件が起こると、通常、警察が犯人を逮捕し、事件を検察庁に送致
し、検事が捜査を行った上で、起訴・不起訴を決定します。犯人の身柄を
拘束して捜査を行う場合、法律上、身柄拘束期間は最大23日間とされて
いますから、その間に起訴・不起訴の結論を出さなければなりません。事
件はある日突如として発生しますし、いったん発生すれば、23日間で処
理するということになります。また、検事は、上司への報告などは行いま
すが、基本的には、独自の判断でどのように捜査を進めていくかを決定し
ていくことになります。
 これに対し、租税条約交渉はといいますと、どの相手国といつ交渉を開
始するかは、日本と相手国との経済関係など様々な事情を考慮してじっく
りと判断していくことになりますから、ある日突如として交渉が開始され
るということはありません。また、いったん交渉を開始すれば、何か月も、
場合によっては何年もかけて交渉を行っていくことになります。どのよう
な方針で交渉を進めるかは、担当のチームを作り、そのチームで時間をか
けて何度も何度も検討を重ね、交渉自体もチームで臨むことになります。
ですから、誰か1人の独自の判断で物事が決定されるということはありま
せん。
 検察庁での仕事と現在の仕事とでは、このように反対の部分がとても多
く、財務省に異動になった当時は、このような違いに戸惑ったものでした。
しかし、最近は、租税条約交渉の楽しさを実感できるようになってきまし
た。何か月もかけて準備した上で交渉がうまくいったときの達成感はなか
なかのものです。チームで準備・交渉を行うだけに、連帯感も深まり、達
成感も一層大きくなります。検察庁に戻る日まで、より充実した租税条約
交渉を行い、このような達成感や連帯感を存分に味わっていきたいと思っ
ています。

 ところで、本年6月に、スイスとの間の改正租税条約が基本合意に至り
ました。日本とスイスとの間には、既に租税条約が存在しますが、現行の
日スイス租税条約は、日本が締結している租税条約の中で、唯一、税に関
する情報交換を可能とする規定がありません。これは、スイスがかたくな
に銀行機密情報を提供しない方針をとっていたことを理由とするものです。
しかし、本年4月のG20の首脳宣言の中で「銀行機密の時代は終わった。」
とされるなど、最近、国際的に税に関する情報交換の重要性が唱えられて
います。このような中、スイスもついに銀行機密情報についての情報交換
に応じることを表明しました。これを受けて、改正日スイス租税条約にお
いても、税に関する情報交換を可能とする内容となっています。
 また、同じく6月に、英領バーミューダとの間の租税条約も基本合意に
至りました。英領バーミューダとの租税条約は、現在日本が締結している
他の租税条約と異なり、税に関する情報交換を可能とすることを中心とし
た内容で、このかたちの租税条約としては、日本で初めての条約です。
 この2つの条約は、税に関する情報交換について大きな前進を示すもの
だと思います。税に関する情報交換が充実すれば、脱税などの租税犯罪の
発見にもつながりますから、将来、検察庁に戻った際にも役立つのではな
いかと思い、これらの条約に基づいて情報交換が実施されるのを今からと
ても楽しみにしています。

              主税局参事官室参事官補佐 関口 新太郎

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5 編集後記

 人事異動等があり、先号からの発行が少し遅れてしまいましたが、税制
メールマガジン第64号を発行いたします。また、今号に限り、諸外国の
税制の動きは休載させて頂きます。楽しみにして頂いた方々、どうも申し
訳ございません。
 私はもう1年担当させて頂くこととなりましたが、執筆陣は新たな体制
で行うこととなりましたので、少しずつ新しい企画も考えていきたいと思
います。
 これからもよろしくお願い申し上げます。
                              
                             (和田)

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政府税制調査会では、今後の審議の参考にさせていただくため、広く国民
の皆様から、ご意見を募集しております。

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   り、政府・財務省の見解を表すものではありません。

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税制メールマガジン 第63号

2009年06月12日 | 税制メルマガ
税制メールマガジン 第63号              2009/6/12

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◆ 目次

1 巻頭言
2 税制をめぐる最近の動き
3 主税局職員コラム ~ライフスタイルの多様化に応える税制~
4 主税局職員コラム 値うちある国~ロイド・ジョージに思う~
5 諸外国における税制について ~税制を通じて感じるドイツII~
6 編集後記 

=================================

1 巻頭言
 
 我が国の税制改革の流れの中で、今日重要度が増してきた視点の一つとして税制と社会保障との関係があります。
 これは第一には、これまでも御紹介してきたように、高齢化が進む中で増大していく社会保障の財源確保の問題があります。昨年末に閣議決定された「持続可能な社会保障構築と安定財源確保に向けた中期プログラム」では、ほころびが指摘される社会保障の機能強化とともに、社会保障の財源確保に向けた税制抜本改革の方針(道筋・基本的方向性)が示されています。財源確保の主要な財源とされた消費税については、明確に区分経理して年金・医療・介護の社会保障給付と少子化対策だけに充当することにし、負担・還元の関係を明確にしたうえで税制抜本改革の中で検討を進めることとなっています。
 さらに、個別の制度設計を考える上でも、税制と社会保障のリンクという観点が強まっている面が見受けられます。法人税や所得税の負担については、社会保険料の負担とあわせ見て考える必要性が増していますし、また、格差の問題への対応という意味でも、所得再分配面で社会保障制度が果たす役割と税制が果たす役割をより調和させて、今日的問題に有効に応えていく必要性が増しています。
 このような問題意識から最近議論されている論点の一つに「給付付き税額控除」という考え方があります。給付付き税額控除とは、「給付と税額控除を適切に組み合わせて行なう仕組みその他これに準ずるもの」(21年度税制改正法附則104条)と定義されています。つまり、ある政策目的のために経済的支援を行なう際の仕組みとして、税額控除だけでは制度的に対応できない納税額の少ない方・非課税の方にも等しく一定額の支援を行なうようにするものであり、本質的には給付金です。諸外国では、米国、英国、ドイツ、フランスなどにおいて、主として低所得者を対象に、子育て支援や就労支援などを目的として実施されています。具体的にどのようにやるかというと、「給付付き税額控除」というその語感からは、納税額がある方には税額控除という形で負担軽減を行い、そうでない方には給付を行なうイメージが強いのですが、諸外国では、税額控除をまず行なって引ききれない方には残りの金額を給付(非課税世帯には全額給付)する場合もあれば、税金は税金で納税していただいて別に一定額の給付金を一律に給付しているケースもあります(納税者から見ればどちらも基本的に経済効果は同じです)。
 「給付付き税額控除」についてはやや言葉が先行している感もありますが、それ自体が何らかの政策目的を達成するわけではなく、あくまでも「仕組み」ですから、検討に当たっては、第一に何の目的でやるのかという点を詰めることが重要です。また「仕組み」として有効に機能すること、つまり税制という世界と社会福祉の世界を調和させて整合的に行なうことに意義があるので、同じ政策目的を持つ現行の社会保障制度(例えば児童手当や生活保護)との整理が重要ですし、また、税額控除と給付が並立するような場合には現実の執行をどのようにやるかという問題もあります。
こうした問題意識から、政府税制調査会では、給付付き税額控除の実務面の課題などについて諸外国の実態調査を行なうことになり、今週調査団が欧米に出発しています。今後、その調査結果なども踏まえつつ、来る税制抜本改革の中でこの仕組みについても目的に見合った公平で有効な制度設計ができるかどうか検討を行なっていく方針です。
 
                  主税局総務課企画官 宇波 弘貴

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2 税制をめぐる最近の動き
 
(1)下記のとおり、税制調査会が開催されました。
 
 【5月22日(金)】
  第2回スタディ・グループ
   ○有識者ヒアリング(給付付き税額控除制度について)

 【6月2日(火)】
  第3回スタディ・グループ
   ○有識者ヒアリング(マイクロシミュレーション等について)
 
 ・税制調査会の資料等は、下記URLにてご覧いただけます。
  http://www.cao.go.jp/zeicho/index.html

(2)バーミューダとの情報交換を主体とした租税条約の締結交渉を開始
 します。
 ・概要は、以下のURLにてご覧いただけます。
  http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/sy210612be.htm

=================================

3 主税局職員コラム ~ライフスタイルの多様化に応える税制~

 かつて30代は「みそじ」という哀愁ただよう呼ばれ方をしていました
が、いまや「アラサー」に格上げされ、生き易い世の中になったなぁ、と
思っていたのも束の間、あっという間にアラフォーはもう目の前・・・と
いう個人的な焦りを感じつつ、主税局で所得税を担当しています。

 20年前ならば、私の年代の女性は、結婚して2人くらい子供がいて専
業主婦というのが典型的なパターンだったと思いますが、今の時代、私の
ように仕事中心の生活をしている人も決して珍しくありません。同年代の
女友達を見ると、独身で仕事をバリバリしている人、婚活に励んでいる人、
ディンクスを満喫している人、明るく楽しく子育てしているシングルマザー、
仕事をやめて3人の子供を育てている人もいます。中には、旦那さんが仕
事をやめて奥さんの海外赴任についていくというカップルもいます。まさ
に身近なところで「ライフスタイルの多様化」という言葉を実感させられ
ます。

 このように様々な生活環境にある女友達とおしゃべりのテーマは、10
年前は恋愛、美容、ファッション・・・でしたが、今では、婚活、子育て、
健康、間もなくやってくる親の介護問題、そして老後の生活(更にはお墓
の話まで・・・)と、ずいぶんと変わってきました。
 そんな友人たちとの会話の中で、当たり前ですが、その生活環境やライ
フスタイルによって関心事項が違ってきていることを痛感します。例えば、
老後に対する不安というのは個人差が大きい気がします。結婚して子供も
いる人は、やはり子供がいる(=面倒を見てもらえるかも)という安心感
があるせいか、自分の老後に対する不安は比較的少ないようですが、子供
が小さいうちに自分(や夫)に万が一のことがあったら、という不安は大
きいようです。他方で、独身の場合、歳をとって頼れるのはお金だけ、と
までは言いませんが、やはり老後に対する漠然とした不安を抱く傾向にあ
るようです(かくいう私も「おひとりさまの老後」という本をこっそり購
入しました・・・)。でも、昨今の健康ブームや女性特有の疾病に対する
関心が高まっていることもあり、健康に対する関心や不安はみな共通して
持っているようです。

 女性に限らず、こういった将来の不安に備えて、多くの方は何らかの保
険に入っているのではないでしょうか。ここで、(やっと)私の担当する
所得税の話が出てくるわけですが、所得税には、生命保険料控除という制
度があります。これは、生命保険や医療保険などの保険料を支払った場合
には最大5万円の所得控除、また、個人年金保険の保険料を支払った場合
には、別枠で最大5万円の所得控除を適用できるという制度です。

 私の友人たちの例をとるまでもなく、日本人のライフスタイルが多様化
しており、それに伴い保険ニーズ(どのような保険が必要か)も多様化し
ています。専業主婦をして子供が2人いて旦那さんが家計を支えるといっ
た家庭が必ずしも典型的な家族構成とは言えなくなってきていますし、長
寿化が進む中で、これまでの遺族保障への保険ニーズが薄れる一方で、医
療・介護といった分野における保険ニーズが強まっています。このような
社会経済の変化に対応する観点から、平成21年度税制改正では、生命保
険料控除を見直すこととなりました。具体的には、一般生命保険料控除と
個人年金保険料控除の限度額を4万円とするとともに、介護・医療保障に
係る保険料については新たに4万円の控除枠を設け、合計で12万円まで
の所得控除が可能となる仕組みです。新たな制度については、来年、税法
改正を行い、平成24年から適用されることが予定されています。

 税制関係の仕事をしていると聞くと、難しい顔をして法律を読んでいる
というイメージをもたれるかもしれません。でも、本当は、法律の中だけ
でなく、自分の将来を考えたり、友人とのたわいのない会話をしたりする
中にも税を考える上での多くのヒントがあると思っています。所得税は消
費税と同じように全ての人に身近な税の一つです。常に世の中の変化を敏
感に感じつつ、そして、一人の納税者としての感覚や女性としての視点も
大事にして税制を考えていきたいと思います。

                  主税局税制第一課 福田 あづさ

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4 主税局職員コラム 値うちある国~ロイド・ジョージに思う~

 最近、河上肇の「貧乏物語」(岩波文庫)の付録にある小文「ロイド・
ジョージ」を読んでいて、思い出したことがありました。

 以前、欧州に赴任していた時のことです。夏期休暇でイギリスのウェー
ルズ北部の田舎をレンタカーで走っていたところ、「ロイド・ジョージ博
物館(生家)」という看板が目にとまりました。英国の首相の一人と歴史
で習ったことを思い出したくらいでしたが、歴史上の人物の「お宅拝見」
が趣味となっている私としては、早速立ち寄ってみることとしました。
 黒い屋根で白い石造りの質素な家でしたが、解説をみると、彼は1歳で
父を失い、その後、赤貧洗うがごとしの状況のなかで、母の弟で村の靴屋
をしていた叔父に引き取られたようです。当時のロイド・ジョージの言に
よれば、「我々は、ほとんど新鮮な肉を食べたことがなかった。少年時代
の最大の贅沢は、日曜の朝に卵を半分ずつもらうこと」であったとか。今
から思い返せば、あの小さな家で、一家は大変な苦労をしていたのでしょ
う。
 その後、彼は、四十の手習いの叔父につきあってもらいながら苦学・独
学を重ね、1884年に21歳で弁護士試験に合格。しかし、学費で資金
は底をつき、法服を新調する費用にさえ当惑するほどだったとか・・。
 そして、時は流れて、1909年。第一次大戦を前に、彼は、当時の大
問題であった増税案(累進所得税の導入など)につき、時の蔵相として、
演説をします。少し長いですが、上記「ロイド・ジョージ」より引用しま
す。

 「さて、私は、諸君が私に非常なる特典を与えられ、忍耐して私の言う
ところに耳傾けられたことを感謝する。実は私の仕事は非常に困難な仕事
であった。其(そ)はどの大臣に振り当てられたにしても、誠に不愉快な
る仕事であったのである。しかしその中にただ一つだけ私は無上の満足を
感ずることがある。其はこれらの新たなる課税がなんのために企てられた
かということを考えてみるとわかる。けだし新たに徴収さるべき金は、ま
ず第一に、わが国の海岸を何人にも侵さしめざるようこれを保証すること
のために費やさるべきものである。それと同時にこれらの金はまた、この
国内における不当なる困窮をば、ただに救済するのみならず、さらにこれ
を予防せんがために徴収さるるものである。思うにわが国を守るがために
必要なる用意をば、常に怠りなくしておくということは、無論たいせつな
ことである。しかしながら、わが国をしていやが上にもよき国にしてすべ
ての人に向かってまたすべての人によって守護するだけの値うちある国た
らしむることは、確かに同じように緊要なことである。しかしてこのたび
の費用はこれら二つの目的に使うためのもので、ただ、その事のためにの
みこのたびの政府の計画は是認せらるるわけである。」

 「人あるいは余を非難して、平和の時代にかくのごとき重税を課するこ
とを要求した大蔵大臣はかつてその例がないと言う。しかしながら、これ
はこれ一の戦争予算である。貧乏というものに対して許しおくべからざる
戦を起こすに必要な資金を調達せんがための予算である。余はわれわれが
生きているうちに、わが社会が一大進歩を遂げて貧乏と不幸及び必ずこれ
に伴うて生ずるところの人間の堕落というものが、かつて森に住んでいた
狼のごとく全くこの国の人民から追い去られてしまうというがごとき、よ
ろこばしき時節を迎うるに至らんことを望みかつ信ぜざらんとするもあた
わざる者である。」

 この部分は、今の時代においてもさまざまな含意があるようにも思いま
す。
 ロイド・ジョージについては、ボーア戦争に反対し、第一次大戦を勝利
に導くとともに、健康保険制度を導入するなど「福祉国家」の基礎を築い
たという見方の一方で、人気取りで立場を変えるポピュリストといった批
判もあるようです。ただ、彼のつましい生家を思い浮かべ、また正面から
財源を掲げて議論する姿勢を見ると、社会保障については、ただの「人気
取り」だけでもなかったのではないか・・・とも思います。
 わが国でも、今後の社会保障のあり方が、いろいろな場で議論されはじ
めました。それは、国民負担のあり方とも大きく関係するものであり、国
民的な選択で決していくものです。経済効果や執行上の課題などに加えて、
この国の社会保障の理念のあり方(再分配の哲学、負担の構造、活力との
関係など)を十分吟味した上で、真摯な議論が期待されます。

                   主税局税制第三課長 藤城 眞

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5 諸外国における税制について ~税制を通じて感じるドイツII~

 6月に入り、新生活が始まって2ヶ月が過ぎました。新社会人の方々、
会社にはもう慣れましたか? 早いもので、私が新入省者としてドイツ税
制を担当するようになって一年が経ちますが、この一年間、私がドイツ税
制の調査を行ってきて感じたことを皆様にお伝えしたいと思います。

 皆様は「ドイツ」と聞いて、どのようなイメージを持たれますか? ビ
ールやウィンナーの国、バッハやベートーヴェンといった音楽家を生み出
した音楽の国、「赤ずきんちゃん」や「ヘンゼルとグレーテル」を始めと
したおとぎ話の国・・・様々なイメージがあると思います。私がドイツ税
制を調査していて、ドイツに対して抱いたイメージは「緻密で几帳面な国」
でした。私がそのように感じるきっかけとなったドイツの税制をいくつか
ご紹介しましょう。

その1:子女控除と児童手当
 日本における扶養控除に類するものとして、ドイツには子女控除があり
ます。これは、原則18歳未満の子供一人につき、年間6,024ユーロ
(約91.0万円)の所得控除が適用される、というものです。一方、同
様に原則18歳未満の子供に対して、第一子の場合、年間1,968ユー
ロ(約29.7万円)の補助金が支給されるという制度もあります。それ
が児童手当です。ドイツでは、子供を扶養することに対して、上記のよう
な配慮が講じられていますが、各納税者にはその二つのうち、どちらか一
方の制度のみが適用されることになっています。児童手当と子女控除の二
重取りということはありません。確定申告の際、税務署が各納税者にとっ
てどちらが有利になるかを判定し、有利な方が適用されるのです。いかに
もドイツらしい、緻密な制度設計だと思います。

その2:違憲判決と税制
 ドイツの税制を調査していると、たびたび目にする言葉があります。そ
れはドイツにおける憲法問題の最高裁を意味する「連邦憲法裁判所」とい
う言葉です。ドイツでは、税制上の措置が憲法に違反するのではないかと
裁判が行われ、連邦憲法裁判所の判決を受けて制度が変更されることがあ
ります。例えば、通勤費控除の適用は、2007年1月より、片道21km
を超える通勤の場合に限定されていましたが、昨年末、連邦憲法裁判所よ
り、憲法上の規定である「法の下の平等」に反するという理由から違憲判
決が下されました。その判決を受け、通勤費控除に関しては、通勤距離の
制限がなかった2006年までの制度が復活することになりました。この
ように税制に関する裁判例からも、ドイツ国民の税制に対する関心の大き
さをうかがい知ることができるような気がします。

 上記以外にも、税制改正の流れや所得税額の計算方法などからも、ドイ
ツの国民性を感じ取ることができます。過去のメルマガにて紹介されてい
ますので、ご興味をもたれた方は是非確認してみてください。

 さて、来月以降、新入省者のK君がドイツ税制調査を担当する予定です。
私も新たな担当国を持つことになるかもしれませんが、そこでは一体どの
ような発見ができるのか、今から楽しみです。また新たな発見を皆様にお
伝えできるよう、そして何より日本の税制の発展に資することができるよ
う、日々調査を行っていきたいと思います。

(参考)
主要国における基礎控除、配偶者控除及び扶養控除等の概要(未定稿)
http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/siryou/051.htm

税制メールマガジン第40号
http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/merumaga/merumaga190531.htm#e

税制メールマガジン第20号
http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/merumaga/merumaga170930.htm#d

                     主税局調査課 林 ひとみ

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6 編集後記

 梅雨の季節となりました。雨降りの日々が多くなってきますが、是非、
お体にはお気をつけください。
 さて、先日、2008年合計特殊出生率の発表がありました。1.37
となり、3年連続で上昇とのことです。少子高齢化が進む中、こうしたニ
ュースは嬉しいものです。これまでの好景気を受けたものとのことで、当
面厳しい経済情勢が続く中、なかなかこれ以上の増加は難しいのかもしれ
ませんが、やはり子どもを産み育てるということは次世代を育んでいくう
えでもっとも大事にしたい分野です。かくいう私も家に妊婦を抱える身で
すが、新しい家族を迎えるにあたり、ずいぶん支出が増えていることを実
感しています。妊婦検診の無料化など、出産支援も拡充しているなと感じ
ますが、出産・子育て世帯の消費性向の大きさに着目した新しいビジネス
モデルが生まれて、経済が循環し、消費の起爆剤になるようになると良い
なと感じる今日この頃です。
 来月は7月上旬発行予定です。お楽しみに。

                             (和田)

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税制メールマガジン 第62号

2009年05月21日 | 税制メルマガ
税制メールマガジン 第62号              2009/5/21

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◆ 目次

1 巻頭言
2 税制をめぐる最近の動き
3 主税局職員コラム ~税制改正法案の国会審議について~
4 諸外国における税制について ~韓国の電子政府に向けた取組~
5 編集後記

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1 巻頭言
 
 租税特別措置法の一部を改正する法律案が4月27日に国会に提出されて現在審議中です。これは最近の社会経済情勢を踏まえ、需要不足に対処する観点から、政府が4月10日に決定した総額57兆円規模の経済危機対策の一環として実施するものであり、法案においては、具体的には次の3つの措置を講ずることとしています。

注)平成21年度税制改正法は3月27日に成立し、4月1日に施行されました。

1.住宅取得等のための時限的な贈与税の軽減
 平成21年初から平成22年末までの間に、20歳以上の者がその直系尊属から居住用家屋の取得等に充てるために金銭の贈与を受けた場合には、当該期間を通じて500万円まで贈与税を課さない。この特例は、暦年課税又は相続時精算課税の従来の非課税枠にあわせて適用可能とする。

2.中小企業の交際費課税の軽減
 資本金1億円以下の法人に係る定額控除限度額を、平成21年4月1日以後に終了する事業年度から、400万円から600万円に引き上げる。

3.研究開発税制の拡充
 試験研究費の総額に係る税額控除制度等について、
(1)平成21、22年度において税額控除ができる限度額を、当期の
 法人税額の20%から30%に引き上げるとともに、
(2)平成21、22年度に生じる税額控除限度超過額について、平成
 23、24年度において税額控除の対象とすることを可能とする。

 政府としては、平成21年度補正予算及び上記を含む関連法案の早期成立を図り、民需の自律的回復を促すことを通じて、早期の景気回復へとつなげていく方針です。

経済危機対策:http://www5.cao.go.jp/keizai1/2009/0410honbun.pdf
 
                  主税局総務課企画官 宇波 弘貴

=================================

2 税制をめぐる最近の動き
 
(1)4月27日、租税特別措置法の一部を改正する法律案が国会に提出されまし  た。
 ・法案の内容は、下記URLにてご覧いただけます。
  http://www.mof.go.jp/houan/171/houan.htm

(2)下記のとおり、税制調査会が開催されました。
 【4月28日(火)】
  第29回企画会合
   ○報告事項(最近の状況について)
   ○自由討議
 【5月12日(火)】
  第1回スタディ・グループ
   ○関係省庁等ヒアリング(納税者番号制度等)
 
 ・税制調査会の資料等は、下記URLにてご覧いただけます。
  http://www.cao.go.jp/zeicho/index.html

(3)カタール国政府との間で国際運輸業の所得に対する課税の相互免除
 に関する書簡が交換されました。
 ・概要は、下記URLにてご覧いただけます。
  http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/sy210521qa.htm

=================================

3 主税局職員コラム ~税制改正法案の国会審議について~

 現在、21年度補正予算案や「租税特別措置法の一部を改正する法律案」
等の経済危機対策関連法案が、国会において審議されています。今回は、
税制改正法案(国税)を例に国会審議の大まかな流れとそれに伴う事務方
の業務について簡単にご紹介したいと思います。

 「代表なければ課税なし」とあるように、税制は、国民負担に直結する
問題であるため、国民を代表する国会が制定する法律に基づく必要があり
ます。

 通常、税制改正案については、年末に、当初予算案とともにその骨格が
固められ、これをもとに作成した税制改正法案が、明くる年の1~2月頃
に国会に提出されます。国会に提出された税制改正法案は、先に提出され
た議院(通常は衆議院)において、財務金融委員会(参議院の場合は、財
政金融委員会)の審査を経て、本会議に付されます。可決された場合、も
う一方の議院(通常は参議院)に送付され、そこでも同様のプロセスを経
て可決された場合、税制改正法案が成立し、公布・施行されることとなり
ます。
(現在、国会において「租税特別措置法の一部を改正する法律案」が審議
されておりますが、これは、異例ではありますが、「経済危機対策」の一
環として、「政策の総動員」をもって現下の厳しい経済情勢を克服するた
めに4月27日に提出されたものです。)

 国会審議は、国会議員からの質疑に対し、政府(主に大臣)が答弁する
という形で進められます。我々事務方は、大臣が答弁するにあたり参考と
なる資料を作成するなどのサポート業務を行っています。前日の夕方を過
ぎてから翌日の質疑内容が明らかにされることもあり、答弁参考資料の作
成業務は時に深夜に及ぶこともあります。

 皆さんがTV等のニュースで国会審議をご覧になるときのご参考になれ
ば、幸いです。

                     主税局総務課 篠田 和哉 

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4 諸外国における税制について ~韓国の電子政府に向けた取組~

 韓国ではITが進んでいる、といった話を聞いたことがある方も多いの
ではないでしょうか。例えば、韓国での携帯電話普及率は80%超(日
本は70%超)、インターネット普及率は75%弱(日本は70%弱)と
なっています。

 では、政府が提供する行政サービスについてはどうでしょうか。以下に
見るように、こちらも様々な分野でオンライン化が進んでいます。国連の
電子政府に関するランキングでは、韓国はアメリカに次いで2位となって
います。(なお、我が国は11位でした。)

 現在、韓国で電子化されている行政サービスには、以下のようなものが
あるようです。
・戸籍謄抄本等、各種証明書の交付(電子政府ポータルサイトで申請、自
 宅プリンタで印刷)
・引越しワンストップ・サービス(引越し先の住民自治センターに転入申
 告書を提出するだけで、住所変更に伴う諸手続が完了)
・各種申請書、届出の提出(電子政府ポータルサイト上で提出が完了)
・ウェブサイト上で各種申請の処理進行状況を確認

 1990年代以降、これらの電子化された効率的な行政サービスの実現
に向けて、韓国政府は様々な取組を行ってきましたが、その中でも国民の
利便性の向上、行政の効率化に一役買ったのが「住民登録番号」です。

 この番号は、全国民に与えられている番号で、住所、氏名、年齢といっ
た情報が蓄積されており、引越しや結婚によって番号が変わることもあり
ません。この番号の導入は古く1962年にまで遡り、現在では、クレジ
ットカードを作る際や金融機関での口座開設の際にも必要とされています。
住民登録番号はカードの形で交付されますが、最近では、プライバシーに
配慮し、住民登録番号等の情報が記録されたICチップ入りのカードにな
っています。

 国民は、この住民登録番号を利用して、上に挙げた引越しワンストップ・
サービスや証明書の交付だけでなく、税務手続き、年金受給手続なども行
うことができます。

 我が国の税務行政においても、利便性の向上に向けた取組として、納税
手続のオンライン化による添付書類の省略や、インターネットバンキング、
ATMでの納税などを進めているところです。今後も、韓国の電子政府の
実現に向けた取組も含めて、諸外国の状況もよく研究しながら、広く議論
をしていく必要があると思います。

(参考)韓国電子政府ポータルサイト
https://www.egov.go.kr/default.html

                      主税局調査課 篠原 健

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5 編集後記

 日本国内でも新型インフルエンザの感染の拡大が報道されています。や
はり、日々の備えが一番大事ですので、手洗い、うがい、マスクの着用な
ど、自分でも出来る対策に努めたいと思います。
 前号でも書きましたが、4月より主税局も新人を迎えています。今回は
少しだけ二人に登場してもらおうと思います。

ではまず新人のK君から。
○はじめまして。主税局調査課でドイツを担当することになりました。今
年3月に大学を卒業し、4月1日に配属されました。現在私は、ドイツ税
制をドイツ語と格闘しながら日々学んでいるところです。今は先輩の補助
業務が主ですが、いずれ独り立ちできるように頑張りたいと思います。ド
イツ税制を仕事で専門に扱う方はあまり多くないと思いますので、正確に、
迅速に情報を提供できる人間にならなければならないと、身が引き締まる
思いでいます。少しでも早く、「ドイツ税制のことなら彼に聞け。」と周
囲に思ってもらえるよう、精一杯努力したいと思っています。よろしくお
願いします。(K)

次にOさんです。
○はじめまして。私は新社会人として今年の4月から主税局で働いていま
す。最初の数日は学生気分が抜けず、毎日決まった時間に出勤して一日中
職場にいることだけで疲れてしまっていましたが、入省して一ヶ月が経ち、
だいぶ慣れてきました。主税局は、少人数で非常に多岐に渡る業務をこな
している部署だと思います。そのため忙しい日々が続いていますが、人数
が少ないぶん、お互いの顔が見え、局内の連帯感も強いように思います。
まだまだ研修の日々ですが、私も主税局の一員として一生懸命働いていき
たいと思います。(O)

 いずれ、彼らにも諸外国の税制コーナーを執筆してもらいますので、是
非、成長を見守っていただければ幸いです。
 次回は6月上旬発行予定です。

                             (和田)

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税制メールマガジン 第61号              2009/4/14

2009年04月26日 | 税制メルマガ
税制メールマガジン 第61号              2009/4/14

=================================

◆ 目次

1 巻頭言
2 税制をめぐる最近の動き
3 主税局職員コラム ~環境にやさしい自動車の減税~
4 諸外国における税制について ~フランスの租税法と税制改正法~
5 編集後記

=================================

1 巻頭言
 
 4月になって主税局にも初々しい新人が入ってきました。自分もついこ
の間のように思いますが、気づくとこの4月で社会人になってから丸20
年が経ちました。
 そこで(というわけではないのですが)、20年前の財政の姿を今と比
較して見て思うことがあったので御紹介します。
 第49号などでも御紹介したことがありますが、国民全体の所得に占め
る「公的負担の大きさ」をみるマクロの指標として、「国民負担率」があ
ります。計算式は以下のとおりで、いわば月給から払う税金と社会保険料
の割合を、国全体で捉えたものです。租税負担、社会保障負担それぞれの
国民所得に占める割合は「租税負担率」「社会保障負担率」といいます。

国民負担率(%)={(租税負担+社会保障負担)÷国民所得}×100

 20年前と現在を比較してみました。国民負担率は景気変動による影響
を受けますので、単年度で比較せずにその時期の景気の谷から山までの複
数年の平均値で見ています。

・1986年~91年
  租税負担率   26.7%
+ 社会保障負担率 10.6%
―――――――――――――――
= 国民負担率   37.3%

・2002年~07年 
  租税負担率   23.2%
+ 社会保障負担率 14.6%
―――――――――――――――
= 国民負担率   37.8%

 意外に思われたかもしれませんが、この20年間、国民負担率はほとん
ど変わっていません。またその内訳を見ると、社会保障負担率が4ポイン
ト上がっているのに対して、租税負担率は1990年代の累次の減税など
によって3.5ポイント減少しています。

 ところが、国民負担率の計算に財政赤字(つまり将来世代に先送りして
いる租税負担)を加味すると、ずいぶんと違う姿になります。この指標は
「潜在的国民負担率」と呼ばれ、実際の政府の歳出規模を示しています。

・1986年~91年
  租税負担率(+財政赤字)28.3% 
+ 社会保障負担率     10.6%
―――――――――――――――――――
= 潜在的国民負担率    38.9%
         
・2002年~07年          
  租税負担率(+財政赤字)31.0%
+ 社会保障負担率     14.6%
―――――――――――――――――――
= 潜在的国民負担率    45.6%


 上記の比較について、特に社会保障に着目して、以下のことが言えると
思います。
 まず、この20年間、国民負担率はほぼ不変ですが、政府の歳出規模
(潜在的国民負担率)は、6.7ポイントも増大しています。この歳出増
の主因は社会保障であり、社会保障給付費の対国民所得比は、13.6%
(90年)から24.9%(08年)へと、11ポイント以上上昇してい
ます。つまり、我が国では、人口の高齢化等により急速に社会保障給付が
膨らむ一方で、その費用については、負担増に反映されずにその増加分の
約6割を将来世代へ先送りすることで賄っています(残り約4割は他経費
の削減等によって捻出しています)。負担の先送りは主として赤字公債に
拠っており、給付と負担のミスマッチは上記の2つのケースにおける租税
負担率の変化の違いに表れています。こうしたことから、社会保障制度を
持続可能で安心できるものとするためには、税制抜本改革による安定財源
確保が必要と考えられているわけです。
 また、社会保障の財源の組み合わせという点でも、租税負担・社会保障
負担それぞれが社会保障給付の実態を反映するようにすることは重要です。
紙面の制約上、詳細説明を省略させて頂きますが、社会保障財源について
公費(税金)・保険料・自己負担をどのように組み合わせて賄うのかとい
う論点は、福祉社会の在り方の問題、すなわち、疾病や老後の所得保障と
いったリスクについて自助・共助・公助のいずれに重点を置いて制度的対
応を行うかという問題です。高齢化の進展や格差の拡大といった社会構造
の変化に伴い、我が国の社会保障は、世代間あるいは所得階層間での所得
移転の程度が大きくなりつつあり、公費財源に対する要請が強くなってい
ます。今後少子高齢化が進む中で、社会福祉のあるべき姿を考えるために
は、赤字公債によって見かけの租税負担率が下がっている現状を改め、給
付に見合った租税負担・社会保障負担に向き合った上で、どのような財源
構成が望ましいのか、自助・共助・公助をどのように組み合わせるべきな
のかという議論を行っていく必要があるのではないかと思います。
 
                  主税局総務課企画官 宇波 弘貴

=================================

2 税制をめぐる最近の動き
 
(1)平成21年度税制改正に関する法律「所得税法等の一部を改正する
 法律」が3月27日に国会にて可決・成立し、同31日に公布、4月1
 日より施行されました。
  
 ・「所得税法等の一部を改正する法律」は以下のURLにてご覧いただ
  けます。
  http://www.mof.go.jp/houan/171/houan.htm

(2)4月10日、「経済危機対策」(「経済危機対策」に関する政府・
 与党会議、経済対策閣僚会議合同会議)がとりまとめられました。「経
 済危機対策」においては、税制に関して以下の措置を講じることとして
 います。

 ○ 住宅取得のための時限的な贈与税の軽減
 ・生前贈与の促進により高齢者の資産を活用した需要の創出を図るため、
  平成22年末までの時限措置として、直系尊属から居住用家屋の取得
  に充てるために金銭の贈与を受けた場合には、500万円まで贈与税
  を課さないこととする。この特例は、暦年課税又は相続時精算課税の
  従来の非課税枠にあわせて適用可能とする。
 ○ 中小企業の交際費課税の軽減
 ・交際費等の損金不算入制度について、資本金1億円以下の法人に係る
  定額控除限度額を400万円から600万円に引き上げる。
 ○ 研究開発税制の拡充
 ・試験研究費の総額に係る税額控除制度等について、平成21、22年
  度において税額控除ができる限度額を時限的に引き上げるとともに、
  平成21、22年度に生じる税額控除限度超過額について、平成23、
  24年度において税額控除の対象とすることを可能とする。

 ・「経済危機対策」については以下のURLにてご覧いただけます。
  http://www.kantei.go.jp/jp/keizai/index.html(首相官邸HP)

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3 主税局職員コラム ~環境にやさしい自動車の減税~

 皆さんは、自動車を選ぶときに何を基準にしていらっしゃるでしょうか。
価格は当然として、ボディの形状、内装といった見た目重視でしょうか。
それとも、加速の良さや乗車人数といった機能面重視でしょうか。

 最近は、「環境へのやさしさ」もクルマ選びの大きな基準の一つになっ
ていると聞きます。環境にやさしい自動車を選ぶことは、国際的に重要な
課題となっている地球温暖化問題の解決にも貢献しますし、一人ひとりに
とってはガソリン代の節約にもなります。

 一方で、最近の厳しい経済状況の中で自動車の販売台数が急速に落ち込
んでおり、景気対策の観点から、自動車の購入や買換えを促すような施策
も必要となっています。

 こうした状況の中、環境対策と景気対策を両立させるものとして、本年
4月1日より3年間、(1)国税である自動車重量税についてはこの3年
間のうちに初めて受ける車検時に、(2)都道府県税である自動車取得税
については新車取得時に、それぞれ環境性能に優れた自動車に対する思い
切った減免措置を実施することになりました。

 乗用車について大雑把にいうと、次世代自動車は免税、排気ガスがきれ
いでガソリン消費量が少ない(=二酸化炭素排出量が少ない)乗用車は
75%又は50%の税額軽減を行うことにしており、具体的な条件や2つ
の税を合わせた納税額の試算は次のとおりです。

(1)電気自動車、一定条件を満たすハイブリッド自動車・天然ガス自動
車、クリーンディーゼル車等(いわゆる次世代自動車)
 ⇒ 本来の税額をすべて免除
〔車両価格200万円、1.3トンの自動車を新車で購入した場合、納税
額は0円で、一般の自動車に比べ14万6,700円の減税〕

(2)平成17年排出ガス基準比75%低減を達成し(いわゆる☆☆☆☆
認定車)、平成22年度燃費基準を25%超過達成している乗用車
 ⇒ 本来の税額の75%を軽減
〔車両価格200万円、1.3トンの自動車を新車で購入した場合、納税
額は3万6,600円で、一般の自動車に比べ11万100円の減税〕

(3)平成17年排出ガス基準比75%低減を達成し(いわゆる☆☆☆☆
認定車)、平成22年度燃費基準を15%超過達成している乗用車
 ⇒ 本来の税額の50%を軽減
〔車両価格200万円、1.3トンの自動車を新車で購入した場合、納税
額は7万3,300円で、一般の自動車に比べ7万3,400円の減税〕

 これからは、こうした税の減免措置も考えあわせながら、クルマ選びを
してみてはいかがでしょうか。

※ 具体的な減免対象車種などの情報は、国土交通省の以下のページに掲
載されておりますので、参考にしてみて下さい。
 http://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_fr1_000005.html

                  主税局税制第二課 有利 浩一郎 

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4 諸外国における税制について ~フランスの租税法と税制改正法~

 わが国では、去る3月27日に平成21年度税制改正に関する「所得税
法等の一部を改正する法律」が国会で可決・成立しました。今回のコラム
では日本とフランスの租税法及び税制改正法の仕組みについて比べてみた
いと思います。

 日本では、授業科目に「租税法」という科目のある大学もあり、「租税
法」というタイトルの法律書も存在します。しかし、日本には、「租税法」
という名前の法律があるわけではありません。所得税法や消費税法、法人
税法といったように、各税目ごとに個別の法律が存在し、それらの総称を
講学上、「租税法」と呼んでいます。
 一方、フランスでは、「租税一般法典」と呼ばれる一本の法典の中に所
得税、法人税、付加価値税といった各種税目が定められています。この点
は日本とフランスとの大きな違いであると言えます。この「租税一般法典」
は多くの税目に関して規定しているため、非常に分量が多くなっていると
いった特徴があります。

 次に、税制改正法の仕組みについてですが、日本では、上述のような
「所得税法等の一部を改正する法律」を制定し、改正を行います。この法
律は、「改め文」というものによって構成されます。「改め文」とは、
「第○条中「△△」を「□□」に改める」、「第○条中「△△」の下に
「□□」を加える」、「第○条中「□□」を削る」といったように、改め、
加え、削る箇所のみを改正法中に示すものです。
 フランスにおける年次税制改正は、例年12月末に成立する「予算法」
によって行われます。日本の「所得税法等の一部を改正する法律」が税制
改正のみに対応した法律であることとは異なり、フランスの「予算法」に
は、その年度の歳出部分と歳入部分の両方に関する条文が規定されていま
す。例えば、09年予算法第70条では09年度一般会計予算の歳出額と
歳入額が規定され、第2条では所得税の税率表に関する税制改正について
規定されています。また、フランスの「予算法」における税制改正部分は、
日本と同様に「改め文」で構成されています。フランスの「予算法」を読
んでいくと、日本の「改め文」と同様の書きぶりになっているため、親し
みが感じられます。

 日本とフランスの租税法及び税制改正法は、中身や法の枠組みこそ違い
ますが、改め文方式のように共通点もあり、両者を比較しながら学んでい
くことには面白さがあります。フランスの租税法を読み、その制度を参考
にしつつ、税制の議論を日々深めていきたいと思っています。

                    主税局調査課 樫野 壮一郎

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5 編集後記

 春は出会いと別れの季節です。皆様の中にも、新しい環境で4月を迎え
られた方もいらっしゃるかと思います。主税局にも新人がやってきました。
初々しい姿を見ると、迎える側もフレッシュな気分になりますね。
 税制メールマガジンは今号で発行5周年を迎えました。登録数も順調に
増加し、現在、約2万2千人の方に登録していただいております。これだ
けの方に読んでいただいているということで、編者も常に喜びと緊張の下
で編集作業を行っております。これからも内容の充実に努めていきますの
で、変わらぬ御愛顧の程、よろしくお願い申し上げます。
 次回は5月上旬発行予定です。お楽しみに。

                             (和田)

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税制メールマガジン 第60号               2009/3/4

2009年04月26日 | 税制メルマガ
税制メールマガジン 第60号               2009/3/4

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◆ 目次
1 巻頭言
2 税制をめぐる最近の動き
3 振り込め詐欺・還付金詐欺にご注意!
4 主税局職員コラム~分水嶺世代?~
5 主税局職員コラム~法人税って何でしょう?~
6 諸外国における税制について
  ~イギリス:2008年度プレ・バジェット・レポート~
7 編集後記

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1 巻頭言
 
 3月になりました。税制でも多くの制度が年度末を区切りにしています
が、学生さんやお子さんをお持ちの家庭では、卒業・進学・入学の季節を
お迎えのことと思います。
 今回はその学校に関連して、租税教育の活動を御紹介します。国税庁で
は、毎年、学校当局との連携により、社会科活動の一環として税務署など
から講師を派遣して租税教室を実施しています。平成19年度は小中学校
を中心に39,160回開催しました。中学生・高校生の皆さんからは、
毎年、税に関する作文も募集しており、昨年度は約62万件の応募をいた
だきました。また、租税教育に関連して、財務省のホームページには、税・
財政について学べるキッズコーナー(http://www.mof.go.jp/kids.htm)
があり、そちらにも年間30万回を超えるアクセスをいただいています。
 租税教室は基本的に1回の講義形式ですが、みなさん熱心に聴いて下さ
います。さらに研究を続けている学校もあって、例えばI県のM小学校で
は毎年、6年生100余名全員で財政再建に向けた提言書をとりまとめて
送ってきてくださっており、一昨年には、非公式ながら御礼の手紙を財務
大臣から子供達宛てにお送りしました。
 税金とその使途、日本の財政の姿を知る中で、将来をみつめる子ども達
の眼は確かです。税のムダづかいをまずやめるべきという意見、国の財政
状況をしっかりと国民に説明すれば協力してくれるという意見、国民みん
なが我慢し力を合わせていくことが大切という意見、そして、現実的・具
体的な提言の数々。
 税は民主主義の根幹といわれますが、その原点を改めて教わる思いです。
政策作りの一端を担う者として、このような活動を大切にするとともに、
子ども達の意見や想いを重く受け止めて仕事をしていきたいと思っています。

                  主税局総務課企画官 宇波 弘貴


・・・・・・・・・・・・・・・お知らせ・・・・・・・・・・・・・・
 
 2月27日(金)、財務省ホームページに租税教育用コンテンツ「はっ
ぴぃ★タウン」を公開しました。
 小学校高学年を対象としたコンテンツですが、“税”について楽しく学
べる内容としておりますので、是非、ご覧ください。
 
「はっぴぃ★タウン」は、下記URLにてご覧いただけます。
http://www.mof.go.jp/kids/index.html

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2 税制をめぐる最近の動き
 
 平成21年度税制改正に関する法案「所得税法等の一部を改正する法律
案」については、国会で審議されています。

・法案の内容は、下記URLにてご覧いただけます。
http://www.mof.go.jp/houan/171/houan.htm

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3 振り込め詐欺・還付金詐欺にご注意!

 警察庁では2月を振り込め詐欺の撲滅月間とし、被害防止と詐欺グルー
プ摘発を目指すとの発表がありました。その効果もあってか、先日も、だ
まされたふりをして詐欺グループを逮捕し、また、被害口座から現金を引
き出そうとした男を逮捕したとの報道がありました。
 「振り込め詐欺・還付金詐欺にご注意を」という広報を昨年もこのメル
マガに掲載しましたが、警察庁ホームページによりますと、平成20年の
一年間で、振り込め詐欺の発生件数が2万件超(認知件数)、被害金額も
275億円超と、いずれも平成19年より増加していているとのことです。
(警察庁HP:http://www.npa.go.jp/safetylife/seianki31/1_hurikome.htm)
 
 詐欺グループは次々と新しい手口を編み出して、皆様の大切なお金をだ
まし取ろうとしています。税務署への確定申告書の提出期限(今年は3月
16日)も近づき、納税や還付に絡み、詐欺事件が発生する恐れもありま
すので、引き続き十分ご注意ください。

------------------------------------------------------------------

4 主税局職員コラム~分水嶺世代?~

 主税局調査課長の新川です。

 まずは、当課のご紹介。課員の平均年齢は、40代後半の私を除いて計
算すれば、20代という大変若い世代で内外の租税制度などの調査を実施
しています。かく言う私も世間的にはまだまだ若輩ですし、気分だけは2
0代のままなので課員諸君と同世代のつもりでいます(とはいえ、遠目に
も色鮮やかなコートを着て出勤してくる男性職員がいたり、奥様とほっぺ
をくっつけあった仲睦まじいツーショット写真を何枚も見せてもらったり
すると、なかなか勝負にかなわない部分があることも事実です)。

 さて、「世代」をめぐって一つの興味深い試算があります。少し前のも
のになりますが、平成17年度の年次経済財政報告(経済白書)で、一人
当たりの生涯を通じた税制や社会保障などの公的サービスに関する受益と
負担の状況を世代ごとに推計した試算(※)が示されました。

 これによると、昭和30年代生まれの私はちょうど生涯を通算した受益
と負担の差し引きがほぼゼロ、すなわち、税や保険料で支払う負担と年金
や医療など政府から受ける受益の合計を一生分で平均すればトントンとい
うことになります。他方、わが調査課職員の大半を占める74年~83年
生まれのグループでみると、生涯を通じた受益と負担は一世帯あたり差し
引き1,660万円のマイナスとなるのだそうです。

 前提の置き方によって試算結果は変わりうるものなので、数字の水準そ
のものにとらわれて損得勘定でものごとを云々するのは適当でないと思い
ますが、受益と負担がトントンとなる私の世代を分水嶺として、それより
先輩世代となるほど受益超過の程度が大きく、逆に若手世代となるほど、
負担超過の度合いが大きくなるという結果が得られています。

 この試算結果をみて、皆さんはどのような感想をお持ちになったでしょ
うか。分水嶺世代の私としては、戦後の復興を支え、今日の繁栄と平和な
日本を築いていただいた長寿世代の方々にはその御労苦に感謝せねばなり
ませんし、他方、これからの日本を支える将来世代に過度な負担をかける
ことは偲びないことです。この試算は、世代間の損得勘定や対立を示すと
いうよりは、少子高齢化の進展という現実の前で、世代間の支えあいや負
担の公平についてどのように調和を図っていったらよいかという問題提起
を私に迫るものでした。読者の皆さまが税や社会保障の問題を考える際の
一助になればと思います。

(※)試算結果について詳しくお知りになりたい方は内閣府のホームペー
ジをご覧ください。
http://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je05/pdf/05-00303.pdf 227ページ

                    主税局調査課長 新川 浩嗣 

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5 主税局職員コラム~法人税って何でしょう?~

 皆さんは「法人税」と聞いてどんなことを想像されますか。企業の経営
者の方ならともかく、自分とは縁がないと思われている方も多いのではな
いでしょうか。
 でも、そんな思いをひとまず脇において、私が普段仕事をしながら目に
したり、耳にしたりする、以下のような議論について考えてみて頂けませ
んか。 

 まずは、法人税率を巡る議論を紹介しましょう。

(グローバル企業の経営企画部に勤務するAさん)
 法人税は企業にとってコストです。外国と比べて日本の法人税は高すぎ
るので、日本企業は国際的な競争に勝てなくなってしまいます。国際的な
競争に勝てなければ従業員に十分な還元もできなくなってしまいます。今
の税率は引き下げるべきだと思います。
(主婦のBさん)
 法人税は国の大切な収入源のはずです。多くの所得を上げている企業が
税を負担すべきであり、税率を引き下げるべきでないと思います。

 両者の意見は全く相反する議論ですが、今後の税制改革を進めるうえで
は、一定の方向性を出さなければいけない課題です。

 次に、寄附税制を巡る議論です。

(公益活動に取り組もうとしているCさん)
 自分たちの活動を支えるための資金が必要です。法人に寄附を求めてい
ますが、なかなか寄附が進まないため、寄附を促すために優遇措置を拡大
していく必要があると思います。
(投資家のDさん)
 そもそも、企業は利益の極大化といった目標に縛られているのではない
でしょうか。社会的貢献が求められる風潮はありますが、税制で企業に働
きかけるべきものなのでしょうか。

 公益活動の重要性はいうまでもありませんが、よくよく考えてみると
「法人の寄附」をどう考えるかは悩ましい問題です。
 昨年、話題になった本に、クリントン政権で労働長官を務めたロバート・
ライシュ氏の『暴走する資本主義』がありますが、そこには次のような一
節があります。

 “超資本主義の下で利益にも影響が及びそうなことを企業にさせるには、
規制するしかないのである。 (中略) 企業は、宣伝効果があってそれ
によって利益増に貢献する範囲内なら、まさにその範囲内でのみ、カネを
寄付する。 (中略) 超資本主義の下では、企業は消費者に仕えるため、
そして投資家のもうけのためのみに存在する。これが企業が行う唯一の
「奉仕」なのだ。”

 皆さんは、こういう意見をどう思われますか。
 こうした議論は、まさしく「企業」観に関わる問題といえましょう。

 さて、最後に、法人税の必要性を巡る議論です。もう1度ライシュ氏に
登場願いましょう。

 “間違った人格化の結果、正確には人間に帰属しているはずの義務と権
利が企業にも与えられている。 (中略) 法人税については、一般の人
々は企業が支払っているという間違った印象を持っている。 (中略) 
しかし、税金を払うことができるのは人間のみである。つまり現実には、
法人税は(間接的に)その企業の消費者や株主や従業員が払っているのだ。”

 氏は、こうした考え方に基づいて、法人税を廃止し、全ての法人所得を
株主の個人所得と同じように扱うことを提唱しています。更に、その副次
的効果として、“企業は税金を支払っているのだから政治のプロセスに参
加する資格があるのだという、広く流布している間違った概念に風穴を開
けることができる”とまで踏み込みます。

 以上、色々な議論を紹介しましたが、法人税のあり方には、単に○○と
いう企業がいくらの税金を払ったといった話だけにとどまらない、企業と
は一体どういう存在であり、我が国の中でどういう役割を期待していく必
要があるのか、といった思想・哲学が投影されているものだという実感を
改めて強くする今日この頃です。

 果たして“正解”が存在しうるのか、私には分かりません。
 ただ、日々、企業活動が行われている中、経済の状況等に応じて法人税
制の見直しを求める声がやむことはありません。そうした声に応えてどの
ような法人税制改革を行うか、は優れて政治的な判断によるところも大き
いわけですが、その背景にどのような企業観・価値判断があるのか、分か
りやすく示していくことが大切なことだと感じています。

               主税局税制第三課審査室長 関 禎一郎

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6 諸外国における税制について
  ~イギリス:2008年度プレ・バジェット・レポート~

 2008年11月24日、イギリス財務省は、今般の世界経済危機を受
けた経済対策を盛り込んだ2008年度プレ・バジェット・レポートを発
表しました。新聞等でも大きく報道されたのでご存知の方も多いかと思い
ますが、経済対策の中には、付加価値税(日本の消費税に相当)の一時的
な引下げ(17.5%から15%)が含まれていました。経済対策の一環
として付加価値税を引き下げたのは、主要国の中でイギリスしかなく、
EUの他の加盟国や国際機関からの批判を受けました。今回の外国税制コ
ラムでは、このイギリスの付加価値税の引下げについて取り上げたいと思
います。

(1)1週間で税率を引き下げられる理由
 付加価値税の引下げの発表が、昨年11月24日、実際に税率が引き下
げられたのは、同12月1日です。発表から引下げまで、ちょうど1週間
ということになります。
 なぜ、このような短期間での税率引下げが可能だったのか、不思議に思
われる方も多いのではないかと思います。実は、イギリスでは、付加価値
税法において、付加価値税率を引き上げたり引き下げたりする権限が財務
大臣に与えられているのです(ただし、税率の変更幅や有効期間は一定の
範囲に限定されています)。

(2)事業者の負担
 税率自体は、財務省令により引下げが可能であるとしても、発表から短
期間での税率引下げに伴う事業者の事務負担(値札の貼替え等)はどうな
るのでしょうか。短期間で税率が変わると値札を貼り替えなければならな
くなり、事業者に相当の事務負担をかけることになります。このため、イ
ギリスにおいては、今回の税率引下げに際して、値札はそのままで、レジ
の計算段階で付加価値税額の調整を行うことが認められましたが、消費者
がいくら支払えばその商品やサービスが購入できるか、値札や広告を見た
だけではわからないというトラブルも報道されました。

(3)税率引下げに伴う税収減の財源
 今回の付加価値税率の引下げは、2008年12月1日から2009年
12月31日まで(13か月間)の時限措置です。イギリス財務省による
と、13か月間の引下げによる減収額は、124億ポンドになります。
 国の財政も家計と同様に、その健全性が問題となります。この点につい
て、イギリス政府は、中期的な財政の持続可能性を維持するため、経済が
回復局面に入ると見込まれる2010年度以降に財政の健全化(所得増税、
国民保険料引上げ等)に取り組み、2015年度までに財政収支を均衡さ
せる、中期の財政健全化目標を設定しています。

 各国の経済対策は、それぞれの国の政治・経済的事情やそれぞれの国の
制度的な仕組みを背景として実施されていると考えられますが、今回、イ
ギリスで実施された付加価値税の引下げについては、巨額の財政負担にも
かかわらず、消費刺激効果は限定的との批判も聞かれます。いずれにせよ、
各国で行われている様々な経済対策の背景にある政治・経済的事情や制度
的背景等を研究してみると、様々な新しい発見があり、楽しいものです。

                     主税局調査課 加藤 隆宏

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7 編集後記

 暖かかったり寒かったり、季節の変わり目を実感する日々が続いており
ますが、皆様、いかがお過ごしでしょうか。私は先週風邪を引いてしまい、
辛い日々を過ごしていましたが、そろそろ花粉症に苦しんでおられる方も
多いのではないかと思います。お体にはお気をつけくださいませ。
 さて、お知らせにもありますが、先週より、財務省ホームページのキッ
ズコーナーを刷新し、新しく「はっぴぃ★タウン」を公開しました。税の
意義と役割を勉強できる「はっぴぃ★タウンストーリー」と、ゲーム形式
で税を勉強できる「はっぴい★らいふルーレット」の二つのコンテンツが
あります。特にルーレットは人生ゲームのような形式で、クイズを順番に
解いていって人生を体験するというものになっており、かなり凝った造り
になっているのではないかと思います。楽しみながら税について学び考え
られるよう、いろいろと工夫しましたので、是非お子さんたちにも御紹介
していただければ嬉しく思います。ご覧になられた感想なども是非お待ち
しております。
 次回は4月上旬に発行予定です。

                             (和田)

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ご意見募集のコーナー

政府税制調査会では、今後の審議の参考にさせていただくため、広く国民
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税制メールマガジン 第59号

2009年02月03日 | 税制メルマガ
税制メールマガジン 第59号               2009/2/3

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◆ 目次
1 巻頭言
2 税制をめぐる最近の動き
3 特集 平成21年度税制改正案の概要
4 主税局職員コラム~アメリカの確定申告と金融サービス~
5 諸外国における税制について
  ~税制に関するEC指令の制定・改正プロセスについて~
6 編集後記

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1 巻頭言
 
 2009年最初のメールマガジンです。年初から補正予算や税制改正の
作業などが慌しく、このように発刊が遅れましたこと、深くお詫びいたし
ます。

 先月23日に政府は平成21年度税制改正法案を国会に提出いたしました。

 この法案では、「生活防衛のための緊急対策」(12月12日)に盛り
込まれた、住宅・土地税制、法人関係税制、中小企業関係税制、相続税制、
金融・証券税制、国際課税、自動車課税等にかかる減税措置(地方税と合
わせて平年度約1.1兆円程度)などを規定しています。政府としては、
景気回復に向けて、これらの措置を着実に実施に移すことができるように、
法案の早期成立を期してまいります。(詳細は「3 特集 平成21年度税
制改正案の概要」を御参照下さい。)

 また、この法案の附則においては、昨年12月24日に閣議決定された
「持続可能な社会保障構築とその安定財源確保に向けた『中期プログラム』」
を踏まえ、税制抜本改革の道筋及び基本的方向性に関する規定が設けられ
ています。

 中期的な財政責任を果たし、社会保障に対する安心強化を図るために、
社会保障の安定財源確保は、急ぎ取り組むべき課題です。このため、経済
状況が好転すれば、速やかに税制抜本改革を実施できるよう、事前に法制
上の準備を整えておく必要があります。
 こうしたことから、今回の法案附則においては、「3年以内の景気回復
に向けた集中的な取組により経済状況を好転させることを前提として、遅
滞なく、かつ、段階的に消費税を含む税制の抜本的な改革を行うため、
2011(平成23)年度までに必要な法制上の措置を講ずるものとする」
とし、「改革を具体的に実施するための施行期日等を法制上定めるに当た
っては、景気回復過程の状況、国際経済の動向等を見極める」こととして
います。また、この改革は「不断に行政改革を推進すること及び歳出の無
駄の排除を徹底することに一段と注力して行われる」こととされています。

 この税制抜本改革は消費税だけを取り上げるものではありません。法案
附則においては、社会保障の安定財源確保をはじめ、格差の是正、経済成
長力の強化、税制のグリーン化など我が国が直面する様々な課題に対応す
る観点から、所得、消費、資産等の税体系全体について、以下のような見
直しの基本的方向性が示されています。

 一 個人所得課税については、格差の是正及び所得再分配機能の回復の
  観点から、各種控除及び税率構造を見直し、最高税率及び給与所得控
  除の上限の調整等により高所得者の税負担を引き上げるとともに、給
  付付き税額控除(給付と税額控除を適切に組み合わせて行う仕組みそ
  の他これに準ずるものをいう。)の検討を含む歳出面も合わせた総合
  的な取組の中で子育て等に配慮して中低所得者世帯の負担の軽減を検
  討すること並びに金融所得課税の一体化を更に推進すること。

 二 法人課税については、国際的整合性の確保及び国際競争力の強化の
  観点から、社会保険料を含む企業の実質的な負担に留意しつつ、課税
  ベース(課税標準とされるべきものの範囲をいう。第五号において同
  じ。)の拡大とともに、法人の実効税率の引下げを検討すること。

 三 消費課税については、その負担が確実に国民に還元されることを明
  らかにする観点から、消費税の全額が制度として確立された年金、医
  療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要す
  る費用に充てられることが予算及び決算において明確化されることを
  前提に、消費税の税率を検討すること。その際、歳出面も合わせた視
  点に立って複数税率の検討等の総合的な取組を行うことにより低所得
  者への配慮について検討すること。

 四 自動車関係諸税については、簡素化を図るとともに、厳しい財政事
  情、環境に与える影響等を踏まえつつ、税制の在り方及び暫定税率
  (租税特別措置法及び地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)
  附則に基づく特例による税率をいう。)を含む税率の在り方を総合的
  に見直し、負担の軽減を検討すること。

 五 資産課税については、格差の固定化の防止、老後における扶養の社
  会化の進展への対処等の観点から、相続税の課税ベース、税率構造等
  を見直し、負担の適正化を検討すること。

 六 納税者番号制度の導入の準備を含め、納税者の利便の向上及び課税
  の適正化を図ること。

 七 地方税制については、地方分権の推進及び国と地方を通じた社会保
  障制度の安定財源の確保の観点から、地方消費税の充実を検討すると
  ともに、地方法人課税の在り方を見直すことにより、税源の偏在性が
  小さく、税収が安定的な地方税体系の構築を進めること。

 八 低炭素化を促進する観点から、税制全体のグリーン化(環境への負
  荷の低減に資するための見直しをいう。)を推進すること。

 まずは景気回復に全力を挙げ、経済の好転、そして社会保障の安心強化、
税制抜本改革へとつなげていくことができればと考えています。

                  主税局総務課企画官 宇波 弘貴

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2 税制をめぐる最近の動き
 
(1)1月23日、「平成21年度税制改正の要綱」が閣議決定されまし
  た。(3の特集をご覧ください)

(2)1月23日、「所得税法等の一部を改正する法律案」が閣議決定さ
  れ、国会に提出されました。
  ・内容は、下記URLにてご覧いただけます。
   http://www.mof.go.jp/houan/171/houan.htm

(3)カザフスタン共和国との租税条約が署名されました。
  ・概要は、下記URLにてご覧いただけます。
   http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/sy201219ka.htm

(4)クウェート国との租税条約が基本合意に至りました。
  ・概要は、下記URLにてご覧いただけます。
   http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/sy210113ku.htm

(5)ブルネイ・ダルサラーム国との租税条約が署名されました。
  ・概要は、下記URLにてご覧いただけます。
   http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/sy210120bu.htm

(参考)12月24日、「持続可能な社会保障構築とその安定財源確保に
  向けた『中期プログラム』」が閣議決定されました。
  ・内容は、下記URLにてご覧いただけます。
   http://www.kantei.go.jp/jp/kakugikettei/2008/1224tyuuki.pdf

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3 特集 平成21年度税制改正案の概要

 平成21年度税制改正案については、昨年12月20日に「平成21年
度税制改正の大綱」が閣議決定された後、この大綱を基に「平成21年度
税制改正の要綱」をとりまとめるとともに、「所得税法等の一部を改正す
る法律案」を作成し、これらは本年1月23日に閣議決定されました。
 今後、この法律案について、国会にて審議が行われることになりますが、
ここでは、「平成21年度税制改正の要綱」の概要をご紹介します。
 
----------------「平成21年度税制改正の要綱の概要」--------------

 現下の経済金融情勢を踏まえ、景気回復の実現に資する等の観点から、
住宅・土地税制、法人関係税制、中小企業関係税制、相続税制、金融・証
券税制、国際課税、自動車課税等について所要の措置を講ずることとし、
次のとおり税制改正を行うものとする。

〇 住宅・土地税制
(1)住宅税制
 ・住宅ローン減税の適用期限を5年間延長。最大控除可能額を500万
  円(長期優良住宅の場合には600万円)に引上げ。
 ・自己資金で長期優良住宅の新築等をする場合や省エネ及びバリアフリー
  改修を行う場合の税額控除制度を創設。
(2)土地税制
 ・平成21年、22年に取得する土地を5年超所有して譲渡する際の譲
  渡益について1,000万円の特別控除制度を創設。
 ・事業者が平成21年、22年に土地を先行取得して、その後10年間
  に他の土地を売却した場合、その譲渡益課税を繰り延べることを可能
  とする制度を創設。
 ・土地の売買等に係る登録免許税の軽減措置の現行税率を2年間据え置き。

〇 法人関係税制
 ・エネルギー需給構造改革推進設備等や資源生産性の向上に資する設備
  等について、2年間即時償却を可能とする等の投資減税措置を導入。

〇 中小企業関係税制
 ・中小法人等の軽減税率について、現行22%から18%に2年間引下げ。
 ・中小法人等の欠損金の繰戻し還付の適用停止の廃止。

〇 相続税制
 ・中小企業の事業承継を円滑化するため、非上場株式等に係る相続税及
  び贈与税の納税猶予制度を導入。
 ・農地に係る相続税の納税猶予制度について、農地の有効利用を促進す
  る貸付けも適用対象とする等の拡充。

〇 金融・証券税制
 ・上場株式等の配当及び譲渡益について、現行の7%(住民税とあわせ
  て10%)軽減税率を3年間延長。
 ・少額投資のための簡素な優遇措置を平成22年度税制改正において創
  設(上記軽減税率が廃止され15%(住民税とあわせて20%)本則
  税率が実現する際に導入)。
 ・確定拠出年金について、個人拠出(マッチング拠出)を導入するとと
  もに、拠出限度額を引上げ。
 ・生命保険料控除における新たな控除枠として、介護医療保険料控除を
  平成22年度税制改正において創設。

〇 国際課税
 ・わが国企業が海外市場で獲得する利益の国内還流に向けた環境整備の
  ため、間接外国税額控除制度に代えて、外国子会社からの配当につい
  て親会社の益金不算入とする制度を導入。

〇 自動車課税
 ・一定の排ガス性能・燃費性能等を備えた自動車に係る自動車重量税を
  時限的に減免。

〇 納税環境整備
 ・電子申告に係る所得税額の特別控除制度の適用期限を2年間延長。


・「平成21年度税制改正の要綱」の本文はこちらでご覧になれます。
http://www.mof.go.jp/seifuan21/zei001_a1.htm

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4 主税局職員コラム~アメリカの確定申告と金融サービス~

 先日、庶務担当者から給与所得の源泉徴収票を受け取りました。日本で
は、サラリーマンは給与所得については所得税が源泉徴収され、雇用主が
最後の給与の支払いの際に年末調整を行ってくれることから、その他に所
得がない場合には確定申告を行う必要がありません。残念ながら、私には
(厳密に言うと、申告が必要となる)その他の所得はありませんので、昨
年の所得について所得税の納税手続はこれで終了です。半年前までアメリ
カに赴任しており、彼の地では確定申告に関連して変わった金融サービス
があるので、ちょっと御紹介してみます。

 アメリカでも給与所得について源泉徴収課税が行われるのですが、日本
とは異なり、年末調整という制度はありません。このため、サラリーマン
であっても、翌年4月中旬までに各自で確定申告をしなければなりません。
アメリカの税法は日本とは比較にならないほど複雑ですから、年が明ける
と税務申告のためのソフトウェアが書店の店頭に並びますし、会計士や申
告書作成代行業者に依頼する人も多いようです。自分で間違いのない税務
申告を行うのは難しいようで、オバマ大統領の下で財務長官に就任したガ
イトナー氏についても、一部所得の申告ミスがあったとの報道があったと
ころです。
(注)わが国とは異なり、アメリカでは申告書の作成は資格者の独占業務
にはなっていません。

 いくら便利なソフトウェアがあったり、会計士等に手数料を支払って代
わりにやってもらうといっても、全ての稼得者に確定申告を求めるのはか
なりハードルが高いはずですが、確定申告にはインセンティブもあるよう
です。実は、約8割の人は確定申告をすることによって還付を受けている
のです。しかも、平均的な還付金額は一人当たり約2,000ドルにもな
ります。

 還付金は数ヶ月以内に受け取ることができるのですが、アメリカには、
消費が大好きで、ローンを組んでまでせっせと消費に励む人が多いので、
この数ヶ月の間、欲しい物をじっと我慢して待つことができない人が大勢
います。このため、大手の申告書作成業者は金融機関と提携して、申告書
の作成依頼者に対して、還付金を引き当てとし、予め申告書作成手数料そ
の他の手数料を差し引いた金額を貸し出すサービス(Refund Anticipation
Loan)を提供し始めました。申告者にとっては数日で自由に使えるお金を
手にすることができ、かつ手元資金から出費することなく確定申告を済ま
せることができるというメリットがあり、一方、申告書作成業者と提携金
融機関にとっては短期間・低リスクで収益を上げることができるというメ
リットがあるのです。

 このサービスは、米税務当局の業務改善による還付金支払いまでの期間
の短縮化(申告書を郵送した場合は6週間以内、電子申告の場合は3週間
以内)や、様々な手数料を含めた実質金利が非常に高い(場合によって3
桁にのぼる!)ことへの消費者団体からの批判等を受けて下火になりつつ
あるようですが、2006年春の申告シーズンにおいて、約900万人も
の納税者(全申告件数の14分の1)がこのサービスの提供を受けていた
という試算もあります。
(注)非営利団体であるConsumer Federation of AmericaとNational
Consumer Law Centerが米税務当局公表データを基に行った試算

 さて、2月にも入り、確定申告シーズンになりました。平成20年分の
所得税の確定申告期間は2月16日から3月16日までです。国税庁のHP
「確定申告書等作成コーナー」を利用すれば比較的簡単に確定申告書等の
作成ができることは、もうご存知ですよね。また、確定申告書を郵送又は
税務署に提出することに代えて、e-Taxを利用してオンラインで提出
する場合、初回に限りますが5,000円の税額控除を受けることができ
ますので、是非ご利用下さい。

(国税庁:平成20年分確定申告特集)
http://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinkoku/shotoku/tokushu/index.htm

                   主税局税制第一課 小澤 研也 

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5 諸外国における税制について
  ~税制に関するEC指令の制定・改正プロセスについて~

 先月より通常国会が始まっています。例年、通常国会では税制改正に関
する法案が審議されていますが、今回のコラムではEU(欧州連合)の税
制に関するEC指令の制定・改正プロセスを紹介したいと思います。余談
となりますが、このEC指令の「EC」はEUの前身のEC(欧州共同体)
に由来するものです。(EU発足の際にECは解消されたわけではなく、
現在もEUの一部として存続しています。)

 以前このコラムでもご紹介したように、EUは域内市場統合のために加
盟国の付加価値税、たばこ税、エネルギー税等の調和を目標としており、
その目標を達成するためにEU加盟国に対して税制のガイドラインをEC
指令として制定しています。例えば、日本の消費税にあたる付加価値税に
ついては、「付加価値税に関するEC指令」により標準税率は15%以上、
軽減税率(食料品等に対象を限定)は5%以上と定められており、その範
囲内で加盟国は税率を定めています。

 さて、税制に関するEC指令の制定・改正は次の4機関を通して行われ
ます。

 1)欧州委員会:各加盟国から任命された委員27名により構成
 2)EU財務相理事会:各加盟国の財務大臣級の代表により構成
 3)欧州議会:EU域内の直接普通選挙によって選ばれた785人の議
        員により構成
 4)経済社会評議会:雇用者・労働者・その他の利益(中小企業等)を
           代表するグループの代表者344人により構成

 まず、欧州委員会が税制に関するEC指令案をEU財務相理事会に提案
します。このEC指令案の発案権は欧州委員会だけに与えられており、欧
州委員会で発案されなければEU財務相理事会で審議することはできませ
ん。次にEU財務相理事会が欧州議会・経済社会評議会へ諮問し、欧州議
会・経済社会評議会は意見を提出します。欧州議会・経済社会評議会から
の意見を受けた後、EU財務相理事会が採決を行い、全会一致で採択され
ればEC指令の成立となります。

 EU財務相理事会での税制に関するEC指令の採決は全会一致が必要と
なっいるため、欧州委員会の提案から最終的な結果が出るまで、非常に長
い時間を要することもあります。例えば、「付加価値税に関するEC指令」
の2006年改正は、その提案から採択まで2年間もかかりました。

 EUは加盟国の税制を直接定めているわけではないので、単純に日本の
税制改正プロセスと比較することはできません。しかしながら、税制改正
にあたり、様々な意見や立場を踏まえ、手間と時間をかけて幅広く議論を
行うことは、日欧を問わず共通であるようです。税制に携わる者として、
引き続きしっかりと調査を行っていかなければならないと、改めて感じさ
せられました。

(ご参考)
・税制をめぐる最近の動き(財務省HP)
http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/sy012.htm

・EUの機構(駐日欧州委員会代表部HP)
http://www.deljpn.ec.europa.eu/union/showpage_jp_union.institutions.php

                     主税局調査課 大滝 祥生

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6 編集後記

 諸般の事情により、今年第1号の発行が2月までずれ込むこととなって
しまいました。楽しみにしていただいていた方々にお詫びを申し上げます。
主税局に着任してからは、もっぱら税に関する本を読む機会が多かった
のですが、最近はまた税と関係ない分野の本も読むようになりました。
(それでも税との関係が気になってしまうのですが・・・)。最近読んだ
本の中で特に面白かったものは、行動経済学に関する書籍でした。タイト
ルが面白かったので手にとって読んでみたのですが、経済を動かす人間に
も焦点を当てており、次第に人間の非合理性(人間くささ?)が明らかに
なってきます。「アンカリング効果」「フレーミング効果」などを知って
いると、日々の買い物にも随分役に立つ気がします。同じように何かと堅
いイメージのある税の世界ですが、ちょっと視点を変えてみると、すごく
人間くさい一面も見えてくるかもしれませんね。
 今月からはまた定期的に発行することとしております。改めて内容の充
実に努めてまいりますので、引き続き、御愛読いただけますと幸いです。

                             (和田)

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税制メールマガジン 第58号

2008年12月10日 | 税制メルマガ
税制メールマガジン 第58号              2008/12/10 

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◆ 目次
1 巻頭言
2 税制をめぐる最近の動き
3 諸外国における税制について~アメリカ大統領選挙と確定申告書~
4 編集後記

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1 巻頭言
 
 11月28日、政府税制調査会において、「平成21年度の税制改正に
関する答申」がとりまとめられ、香西泰会長から麻生総理に手交されまし
た。今回はこの答申について、簡単に御説明します。

 先月号で御紹介したように、政府は、10月にとりまとめた「生活対策」
において、足元の景気回復を最優先にして各般の施策を展開しつつ、同時
に、経済状況が好転した後に、社会保障の安定財源を確保するための税制
抜本改革の道筋(「中期プログラム」)を年末に策定する方針を決定しま
した。

 こうしたことを踏まえて、本年の政府税制調査会の答申では、まず、当
面の景気対策について、今般の経済情勢を踏まえれば、当面、経済対策を
優先することはやむを得ないけれども、それはやはり一定の時限を設けて
有効な形で実施すべきである、といった考え方が示されています。

 第二に、答申では、今後政府が策定する「中期プログラム」について、
税制抜本改革の実施時期を明示すること、また、その中身について昨年提
出した答申内容を十分反映させることなどを御提言いただいています。政
府税制調査会では、政府の検討に先立って昨年11月に「抜本的な税制改
革に向けた基本的考え方」と題する答申をとりまとめ、この中で、社会保
障財源の中核としての消費税のあり方をはじめ、個人所得課税、法人課税、
資産課税などの各税目にわたる税制抜本改革の方向性を示していただきま
した。「経済状況が好転したら速やかに我々が提示した税制抜本改革を実
現し、社会保障の安定財源確保、格差是正や経済社会の活力向上といった
課題に応えていくべきである。」「そのために、実施時期を明示するなど、
しっかりした中期プログラムを年末に策定すべきである。」といったメッ
セージが本年の政府税制調査会の答申のポイントであると考えています。

 また、今年の答申では、相続税や国際課税などの21年度改正事項につ
いて、政府税制調査会としての考え方が述べられています。

 政府としては、昨年及び今年の答申において政府税制調査会から御提言
いただいた内容をしっかりと受け止めて、21年度の税制改正や「中期プ
ログラム」の策定に取り組んでいく方針です。
 
<ご参考:内閣府ホームページ>
政府税制調査会「平成21年度の税制改正に関する答申(平成20年11
月28日)」
http://www.cao.go.jp/zeicho/tosin/pdf/201128a.pdf

政府税制調査会「抜本的な税制改革に向けた基本的考え方」(平成19年
11月20日)
http://www.cao.go.jp/zeicho/tosin/19top.html

                  主税局総務課企画官 宇波 弘貴

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2 税制をめぐる最近の動き
 
(1)下記のとおり、税制調査会が開催されました。
 【11月14日(金)】
  第26回企画会合
   ○報告事項(最近の状況について)
   ○税制総論
 【11月18日(火)】
  第27回企画会合
   ○平成21年度税制改正について
 【11月21日(金)】
  第28回企画会合
   ○年度答申の取りまとめについて
 【11月28日(金)】
  第7回総会
   ○答申「平成21年度の税制改正に関する答申」が取りまとめられ
    ました。

 ・税制調査会の資料等は、下記URLにてご覧いただけます。
  http://www.cao.go.jp/zeicho/index.html

(2)日本とスイス連邦との租税条約の改正交渉を開始しました。
 ・概要は、下記URLにてご覧いただけます。
  http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/sy201107sw.htm


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3 諸外国における税制について~アメリカ大統領選挙と確定申告書~

 アメリカでは、11月4日に大統領選挙の投票が行われ、オバマ民主党
候補が来年1月に次期大統領に就任することとなりました。今回の大統領
選挙においては、近年の大統領選挙に比べて投票率が高かったといわれて
おり、アメリカ国民の次期大統領に対する期待の高さが伺われます。大統
領選挙については、日本でも連日、大きく報道されていたのが記憶に新し
いところです。

 このように盛り上がりをみせた大統領選挙ですが、候補者の選挙資金の
確保にあたっては、確定申告書が一役買っています。納税者は、大統領選
挙の年かどうかに関わらず、毎年の確定申告書記入にあたって、納税者一
人あたり3ドルを大統領選挙のための基金に積み立てることが選択できる
のです。積み立てを選択すると、納税額は変わらないまま、納税額のうち
3ドルが基金に充てられます。一方、大統領選挙の候補者は、選挙資金を
この基金から受け取るかどうか選択することができますが、受け取りを選
択する候補者は、他に個人や団体から寄付金を基本的に受け取ってはなら
ず、選挙資金が基金から受け取る額に限られるなどの制限を受けることと
なります。

 この制度の目的は、「大統領候補者による個人や団体からの寄付金への
依存を減らし、大統領選挙において資金面での候補者間の競争条件を同一
にすること」だそうですが、11月の大統領選挙の候補者であったマケイ
ン共和党候補は、基金からの選挙資金の受け取りを選択した一方で、オバ
マ民主党候補は受け取りを選択せずに、マケイン候補が基金から受け取っ
た金額以上の選挙資金を寄付金などで確保したようです。また、2007
年においては約5,101万ドル(約54億円)が基金に積み立てられまし
たが、年間積立金額は年々減少し、確定申告書数のうち積み立てを選択す
る割合も低下しているのが現状のようです(1980年 28.7%→2006年 10.9%)。

 このように納税者と様々なところでつながっている大統領選挙において
は、各候補者の掲げる租税政策についても大きな論点となりました。アメ
リカにおいて、オバマ次期大統領就任後、どのような税制が構築されてい
くのか注目していきたいと思います。

                     主税局調査課 斉藤 貴文

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4 編集後記
   
 遅くなりましたが、税制メールマガジン第58号を発行させていただき
ます。今回は事情により、職員コラムの原稿が無くなってしまいました。
申し訳ありません。

 11月から12月に向けては、例年どおりではありますが、今年度の税
制改正の作業も佳境を迎え、財務省主税局も熱い議論の日々を過ごしてい
ます。巻頭言で御紹介しているとおり、11月28日には政府税制調査会
の答申が出されました。12月上中旬には、平成21年度の税制改正大綱
がとりまとめられ、来年度の税制改正における政府案の骨格が固まること
になります。

 言わずもがなですが、税制改正の中身は国民の皆様に様々な影響を与え
ることとなります。このため、来年度の税制改正の内容を巡っては、各所
において白熱した議論が行われることとなり、現在、そのプロセスの最終
段階という状況です。私も現在の仕事を通じて、こうした税制改正のプロ
セスを間近に見ることが出来、税制が生活に与える影響の大きさを日々間
近に感じております。

 次回は、新年1月上旬に配信予定です。本当は年内に発行したかったの
ですが、今年は暦上例年より早く閉庁日となってしまいますので、編集作
業の都合上、年内の発行は難しい状況となってしまいました。そのため、
本年のメルマガは今号が最終号となります。新年明けにはまた内容を充実
してお届けすべく、頑張って編集してまいります。 

 ということで、他のどの挨拶よりも早いかもしれませんが、読者の皆さ
まに良い新年が訪れますよう、御祈念申し上げます。来年も変わらぬ御愛
読のほど、よろしくお願い申し上げます。

                             (和田)

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ご意見募集のコーナー

 政府税制調査会では、今後の審議の参考にさせていただくため、広く国
民の皆様から、御意見を募集しております。

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税制メールマガジン 第57号              2008/11/7

2008年11月07日 | 税制メルマガ
税制メールマガジン 第57号              2008/11/7

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◆ 目次
1 巻頭言
2 税制をめぐる最近の動き
3 主税局職員コラム~消費税と私~
4 元主税局員コラム 「税を考える週間」~IT化・国際化と税~
5 諸外国における税制の動き~税制を通じて感じるドイツ~
6 編集後記

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1 巻頭言
 
 10月30日に新しい総合経済対策「生活対策」が政府・与党で決定さ
れました。
 この「生活対策」では、現下の金融経済情勢を踏まえ、国民生活と日本
経済を守る観点から、
(1)生活者の暮らしの安心
(2)金融・経済の安定強化
(3)地方の底力の発揮
を重点分野として、セーフティネットの強化や自律的な内需主導型経済成
長への移行を図るために必要な施策をとりまとめています。

 税制関連では、一つには、家計の緊急支援のために、総額2兆円を限度
とする生活支援定額給付金(仮称)を実施することとしています。これに
ついては、特別減税及びこれに関連する臨時福祉特別給付金を実施するこ
ととしていましたが、家計への緊急支援としての効果をより迅速に実現し、
かつ、低所得者の方にも広く公平に行き渡ることができるよう、給付方式
としたものです。現在、その実施方法等について検討を急いでいます。
 このほか、自律的な内需拡大による経済成長に資するものとして、住宅
ローン減税の延長・拡充、省エネ・新エネ設備等の投資促進税制、中小企
業に対する軽減税率の時限的引下げ等の中小企業対策の税制措置などを行
います。

 今回の「生活対策」の規模は、国費ベースで5.0兆円程度、事業費ベ
ースで26.9兆円程度となっています。その財源については、赤字国債
に依存しないこととし、そのための特例措置として財政投融資特別会計の
金利変動準備金の活用等を行います。
 他方、日本の財政は大きな赤字を抱えており、今後、高齢化に伴って社
会保障給付は増大を続けます。今回の「生活対策」では、足元の景気回復
を最優先にして各般の施策を時限的に行いつつ、同時に、経済状況が好転
した後に、安心な社会保障のため、社会保障の安定的な財源を確保するた
めの税制抜本改革の道筋(「中期プログラム」)を年末に策定することと
しています。この中で、消費税のみならず、所得、消費、資産にわたる各
税目について、「税制抜本改革の全体像」もお示しする予定です。

【参考】首相官邸ホームページ
○「生活対策」について(概要)
http://www.kantei.go.jp/jp/keizai/images/gaiyou.pdf
○ 生活対策
http://www.kantei.go.jp/jp/keizai/images/taisaku.pdf

                  主税局総務課企画官 宇波 弘貴

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2 税制をめぐる最近の動き
 
(1)日本とパキスタンとの間で新しい租税条約が発効します。
・概要は、下記URLにてご覧いただけます。
http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/sy201010pa.htm

(2)日本とサウジアラビア王国との間で租税条約の締結交渉を開始します。
・概要は、下記URLにてご覧いただけます。
http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/sy201022sa.htm

(3)日本とオーストラリアとの間で新しい租税条約が発効します。
・概要は、下記URLにてご覧いただけます。
http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/sy201104au.htm

(4)日本とフィリピンとの間で租税条約(改正議定書)が発効します。
・概要は、下記URLにてご覧いただけます。
http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/sy201105fi.htm

(5)『税を考える週間』が始まります。
 国税庁では、毎年11月11日~17日を「税を考える週間」とし、国
民の皆様に税の意義・役割について能動的に考えていただくとともに、税
務行政への理解を深めていただくため、さまざまな広報広聴活動を行って
います。
 財務省主税局もこの時期に合わせ、税の意義・役割や財政・税制の現状、
税制改革に向けた基本的考え方などを紹介した新しいパンフレット「税制
について考えてみよう」を作成し、全国各地で配付することとしています。
ホームページにも、このパンフレットを掲載していますので、是非ご一読
いただければと思います。

・国税庁ホームページ「税を考える週間」特集ページ
http://www.nta.go.jp/kohyo/katsudou/week/index.html

・新パンフレット「税制について考えてみよう」
http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/pn01.htm

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3 主税局職員コラム~消費税と私~

~消費税との出会い~
 思えば、学生生活最後の年度に入った初日(平成元年4月1日)に、私
の懐に新たに課せられた税金、それが消費税でした。未熟な一学生にとり
まして、現代社会で生活していく以上誰もが行っている「消費」という行
為を対象として課税するという新税の発想は新鮮でした。この日から、例
外なく自分も消費税を負担することになったのですが、3%という税率で
消費に広く薄く負担を求めるこの税を通じて、学校で学んだ国民の三大義
務の一つである納税の義務をより身近に体験することとなったのです。

~消費税のこれまで、そしてこれから~
 学生の時に導入された消費税でしたが、平成9年の税率の引上げ(3%
→5%)もあり、今や国の税収の約20%を占める基幹的な税目として、
重要な役割を担うに至っています。
消費税は、経済の動向や人口構成の変化に左右されにくく、財貨・サー
ビスの消費に広く等しく負担を求める性格から、勤労世代など特定の者へ
の負担が集中せず、その簡素な仕組みとも相まって、貯蓄や投資を含む経
済活動に与える歪みが小さいという特徴を持っています。
このため、平成19年11月の政府税調答申でも、「税制における社会
保障財源の中核を担うにふさわしい」と謳われているように、極めて重要
な税目に位置付けられています。

 このように、我が国の基幹税として定着した消費税ですが、国民の皆さ
んにご負担いただく以上、その制度が、信頼性・透明性の高いものでなけ
ればならないことは当然のことです。
 消費税には、その導入時点では中小事業者に対するいくつかの特例措置
が設けられていました。これらの措置は、その対象となる方々の事務負担
の軽減など、当時においては相応の理由があって設けられたものでしたが、
一方で、消費税制度の公平性・透明性の観点から議論があったことも事実
でした。その後、これらの特例措置については、消費税の導入時からの時
間の経過に伴って、制度の定着状況や実務の実態を踏まえながら、累次の
見直しが行われてきています。その結果、現在では、消費税制度の信頼性・
透明性は相当程度向上しているものと考えられますが、今後、消費税に期
待される役割を十分に果たしていく上では、その信頼性・透明性を高める
ため、引き続き、一層の取り組みが求められるのだと思います。

              主税局税制第二課主税企画官 菅家 秀人

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4 元主税局員コラム 「税を考える週間」~IT化・国際化と税~
   
 先日、国税庁広報キャンペーンキャラクターであり、女優でピアニスト
の松下奈緒さんが国税庁を訪問され、「e-Tax普及のお手伝いをした
い」と語られました。この模様は、新聞記事やテレビのニュースでとりあ
げられましたので、ご覧になった方も多いかもしれません。

 毎年11月11日から17日は「税を考える週間」です。国民の皆様に
税の意義や役割についてより能動的に考えていただくとともに、税務行政
への理解を深めていただくため、国税庁ホームページを中心とした広報広
聴活動を行っていきます。

 今年のテーマは、「IT化・国際化と税」。国税庁の取組についてご紹
介するとともに、IT化施策の利用を促進していくこととしています(詳
しくは、国税庁ホームページの「税を考える週間」特集ページをご覧くだ
さい。)。

 国税庁のIT化施策としては、e-Taxをはじめ、ホームページで確
定申告書が作成できる「確定申告書等作成コーナー」、タックスアンサー
(税に関するQ&A)、インターネット公売など、いろいろあります
(「税を考える週間」では、講演会など各種施策を行いますが、私も広報
第一係長という役職上、一番率先して広報しなければならないような気が
しまして、IT化施策の一環(?)として、11月のマラソン大会で
e-TaxをPRしようと考えたのですが、練習で膝を故障してしまいま
した。国税庁のITは故障しないとよいのですが・・・。)。

 これらのIT施策の入口となるのは、国税庁ホームページです。
 国税庁ホームページは、1.税の情報を提供する機能、2.納税者サー
ビスの窓口としての機能、3.納税者の皆様からご意見をお聴きする窓口
としての機能、を持っており、いわば一つの税務署が存在しているような
ものです。
 昨年のアクセス数は1億件を超えているため、このホームページは「最
も小さく、しかし最も来訪者数が多い525番目の税務署である」と言っ
ても過言ではないでしょう(全国の税務署数は524です。)。

 実は、私は、約5年前に国税庁ホームページを担当していたことがあり
ます。当時は、古い通達を遡って全て掲載するなど膨大な事務を抱えてい
たため、季節によって変えるはずのトップページの窓内の画像が、夏にな
っても満開の桜、秋になっても海辺のリゾートなど、季節外れになってい
たこともありました・・・。
 また、掲載ルールを細部まで定めたものがなかったため、「これは○○
のため重要。何とかこれを目立つよう一番上に(しかも大きく)載せて」
など、各課の要望に応えているうちに、トップページの構成にまとまりが
なくなってきました。

 今では、皆様が利用しやすいよう、作成したガイドラインに沿ってホー
ムページを運営しています。原則としてどのページへ行っても共通のフォ
ーマットが用いられ、所得税、消費税など税目別のページ、個人向け又は
法人向けのページ、税理士向けのページなど、区分別のページを設けてい
ます。
 19年度には、全国12の国税局(所)ごとにあったホームページを国
税庁ホームページ内に移し、一つのコーナーとしました。
 さらに、どなたにも容易に利用していただけるよう、検索機能や案内機
能の向上を図るとともに、文字の拡大・音声読み上げ機能など、視覚に障
害のある方や高齢者の方の利便性にも配意しています。
 今後も、更なる内容の充実を図り、皆様が使いやすいホームページとな
るよう努力してまいりますので、ぜひ国税庁ホームページもご利用いただ
ければ幸いです。
 
(国税庁は、ホームページの新着情報とメールマガジンの配信サービスを
行っています。税制メルマガご愛読の皆様も、併せて御愛読をいただけれ
ば幸いです。)

国税庁ホームページはこちら
http://www.nta.go.jp
新着情報・メールマガジンの登録はこちら
http://www.nta.go.jp/merumaga/index.htm

         国税庁広報第一係長(前主税局広報係長) 石井 貴

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5 諸外国における税制の動き~税制を通じて感じるドイツ~

 ドイツのアンゲラ・メルケル首相。最近、ドイツの金融機関、ヒポ・リ
アル・エステートへの500億ユーロの融資決定や、預金全額保護の発言
から彼女がニュースで取り上げられることも多く、よく目にする名前です。

 2005年11月、彼女はドイツにおける初の女性首相となり、200
7年1月からの付加価値税率の引き上げ(16→19%)、2008年1
月からの法人税率の引き下げ(25→15%)など、大きな税制改革を次
々と成し遂げています。そんな彼女の出身地が旧東ドイツ地域であること
を、そして現在のドイツにはドイツ統一にまつわる税があることを皆様ご
存知でしょうか。

 ドイツといえば、ベルリンの壁崩壊を経て1990年10月に東西ドイ
ツが統一されたことはあまりにも有名です。そしてドイツ統一後、東ドイ
ツ諸州に対する支出の増大等に伴う財源措置として、1991年に導入さ
れたのが「連帯付加税(Solidaritätszuschlag)」です。
付加税というだけあって、所得税額、法人税額に応じてその税額が決定し、
その税率は最高で5.5%となっています。本来は1991年のみの時限的
措置としての導入でしたが、1995年に恒久的措置として再導入されました。
税収すべてが連邦に帰属する連邦税であり、その税収は約100億ユーロ、
全税収に占める割合は06年で約2.3%となっています(ちなみに、日本
において全税収に占める割合が同程度の税目としては、相続税や酒税
(08年度予算で約2.8%)があります)。

 このように、「連帯付加税」は東西ドイツ統一を経た現在のドイツなら
ではの税目であることがお分かりいただけると思います。一見、難しそう
に見える税制。しかしその中には、その国の歴史や文化、大きく言えば価
値観が反映されたものがあるということに、ちょっとした驚きを感じます。

 さて、今月11日から17日までは「税を考える週間」です。秋も深ま
り、夜が長くなった今日この頃、税制を通じて日本の歴史や文化、価値観
に想いをはせてみるのも良いかもしれません。

                     主税局調査課 林 ひとみ

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6 編集後記

 税制メールマガジン第57号を発行させていただきます。
 今回は、11月11日から17日までの「税を考える週間」に合わせ、
記事の内容もこれまでと若干テイストの異なるものとなりました。如何で
したでしょうか。
 この「税を考える週間」にあわせて、財務省主税局では、税制に関する
パンフレットを毎年度作成しています。今年度からは、「税制について考
えてみよう」というタイトルに変わり、内容、デザインとも一新いたしま
した。新しい犬のキャラクター「たっくす君」が、日本の税制について分
かりやすく解説してくれています。パンフレットの作成作業を通じて、税
制について、簡潔にかつ分かりやすくお伝えすることの難しさに悩む日々
が続きましたが、税制と日本の財政の全体像について自分でも勉強しなが
ら作業を行うことができました。結果として、新しいパンフレットは、こ
れまでよりもより親しみやすいものに出来たのではないかと考えています。
 新しいパンフレットは、全国の税務署などで配布しているほか、財務省
の税制ホームページから印刷用データを入手できるようになっています。
是非お手に取って頂き、ご一読頂ければ大変嬉しく思います。
 次回は、11月下旬に配信予定です。是非、お楽しみに。

新パンフレット「税制について考えてみよう」はこちら
http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/pn01.htm
                             (和田)

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ご意見募集のコーナー

政府税制調査会では、今後の審議の参考にさせていただくため、広く国民
の皆様から、ご意見を募集しております。

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税制メールマガジン 第56号              2008/10/10

2008年10月10日 | 税制メルマガ
税制メールマガジン 第56号              2008/10/10

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◆ 目次
1 巻頭言
2 主税局職員コラム~租税条約担当官の決意表明~
3 諸外国における税制の動き
  ~シンガポールの予算案からみた国際比較:税制の自己分析~
4 編集後記

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1 巻頭言
 
 9月24日に麻生新内閣が発足しました。29日には所信表明演説が行
われ、その後、代表質問など国会での論戦が始まっています。今回は、麻
生新内閣の経済財政政策の方針について、所信表明等を引用しながら御紹
介したいと思います(引用箇所には二重カギ括弧を付しました)。
 麻生総理は、所信表明で、当面の経済財政政策の方針について、『日本
経済の立て直しは三段階を踏んで臨みます』と述べられました。当面は景
気対策、中期的に財政再建、中長期的には改革による経済成長、です。

 まず、景気対策については、8月29日に政府・与党が合意した「安心
実現のための緊急総合対策」があり、これに基づいて策定した補正予算
(緊急総合対策関連の歳出1.8兆円)を今国会に提出しています。まず
は、この補正予算の早期成立を図ることが重要であると考えています。ま
た、総理は、所信表明の中で、『米国の経済と国際金融市場の行方から目
を離さず実体経済への影響を見定め、必要に応じ更なる対応も弾力的に行
う』と述べられています。なお、税制については、「安心実現のための緊
急総合対策」に盛り込まれた定額減税を今年度内に実施します。政策減税
の在り方については、総理は、国会答弁の中で『税制の課題は、定額減税
に加え、省エネ設備等の投資促進や、海外子会社利益の国内還流のための
環境整備など、多岐にわたります。今後、財源を明確にしつつ、年末に向
けて検討を進めます』と述べておられます。
 次に、財政再建については、『経済や社会保障に悪い影響を与えないた
め、当然の課題』であるとし、『2011年度までに、国・地方の基礎的
財政収支を黒字化する目標を達成すべく、努力してまいります』と述べて
おられます。重要な課題である社会保障を支える財源問題については、
『年金等の社会保障の財源をどう安定させるのか、その道筋を明確化すべ
く、検討を急ぎます』と所信表明で述べておられます。この道筋の明確化
については、『年末までに結論を得たい』と答弁されており、今後、政府・
与党において、検討が進められることになります。
 最後に、改革による経済成長については、所信表明において、『新たな
産業や技術を生み出し、新規の需要と雇用を生み出すことにほかならない』
として、「新経済成長戦略」の推進、規制改革、税制改革に言及されてい
ます。

 当面、米国経済や国際金融市場の動向をはじめ、内外の情勢から目を離
さない緊張した状況が続きますが、政府としては、新内閣の下で、現下の
経済・財政運営に的確に対応するとともに、財政の健全化、構造改革に向
けた取り組みを進めていきます。

                  主税局総務課企画官 宇波 弘貴

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2 主税局職員コラム~租税条約担当官の決意表明~
 
 この夏から租税条約の交渉を担当する主税局参事官室の補佐になりまし
た。租税条約とは何か、といった話は別に譲るとして、今回はこの月に私
が初めて経験した某Q国との交渉での体験をご紹介します。

 まずその前に、租税条約交渉の一般的なプロセスのイメージを説明して
おきます。租税条約ネットワークの整備というのは、日本も含め多くの国
が進めている政策の1つであることから、大臣レベルをはじめとする二国
間の意見交換の場でよく出る話題であり、時として条約締結の要望を受け
たり、逆にこちらから出したりします。そうした要望を踏まえ、まずは担
当レベルが租税条約に関するお互いの考え方を説明し合う予備的な接触を
行います。その中で、租税条約の締結(あるいは既存の条約の改正)をし
ようという基本的な方向性で一致することができると、次に条文に関する
意見交換、細部にわたる交渉へと進んでいきます。このようなプロセスを
経るため、普通は1度の交渉でまとまることはなく、数か月の検討期間を
置いて1週間程度の交渉を何度か繰り返すことになります。公平を期する
ため、交渉はホーム・アンド・アウェイ方式で、つまり東京と相手国とで
交互に行われることが習わしになっています。

 さて、先日、私にとっての初めての租税条約交渉が東京で開催されまし
た。国際会議への出席経験は何度かあるものの、二国間での交渉は経験し
たことがなく、少し緊張して、数週間前から準備をして過ごしました。と
ころが、いよいよ翌週月曜日から交渉開始という木曜日の夕方、突然Q国
大使館の職員から電話があり、延期して欲しいとのこと・・・。このタイ
ミングで中止かと腹立ち半分、残念半分で、次の業務に気持ちを切り替え
ていました。ところが(x2)、翌日の金曜日。「やはり上層部から行け
と言われたので行くことにした(ただし、火曜日からの開始としてほしい)。」
との連絡・・・。仕方なく、ばたばたと再び準備作業。ところが(x3)、
来日予定だった月曜日夕方、またもQ国大使館職員から電話が入り、室内
に不穏な空気が・・・。案の定、「キャンセル待ちをしていたが空席が出
ず、結局飛行機に乗れなかった。明日には必ず行くから。」もはや絶句です。

 そんなこんなで、当初予定より2日遅れで水曜日から3日間、Q国代表
団との交渉を行いました。今回は、日程的に厳しいこともあり、双方の方
針を一通り説明するところまでで、譲歩を迫ったり迫られたりといった場
面までには至らず、次回の約束をして、彼らは去っていきました。後日、
外務省のQ国担当者にことの顛末を話すと、さもありなんというリアクシ
ョン。そういうお国柄のようです。
 今回の交渉を通じ、個人的には、日本人のビジネスの常識が通じないこ
とについて、ある種の覚悟ができました。今後も(とくにアウェイで交渉
する際には)交渉相手に振り回されることになると思いますが、日本の代
表として、きちんと準備をし、両国の経済関係の発展と日本の国益に資す
るような租税条約を結ぶことができるよう、誠意を持って交渉に臨みたい
と考えています。応援(?)、宜しくお願いします。

                    主税局参事官室 小多 章裕

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3 諸外国における税制の動き
  ~シンガポールの予算案からみた国際比較:税制の自己分析~
   
 先日、シンガポールの税制について調査する機会がありました。シンガ
ポールの税制改正は毎年の予算案の中で提案されますが、例えば、2007
年度予算案では、「将来への準備、世界への準備」をキャッチフレーズに、
国際競争力強化のための法人税率の引下げ(20→18%)や将来に向け
た投資、社会保障の強化といった歳出増の要請に備えるためのGST
(Goods and Service Tax:日本の消費税に相当)の引上げ(5→7%)
などが提案され、昨年から実施されています。

 このような税制改正の内容も興味深いのですが、予算の解説の中でコラ
ムや図が多く設けられている点も印象的でした。諸外国の財務省が公表し
ている資料を見てみると、アメリカやイギリス、フランスでは諸外国と自
国を比較したような資料はほとんど目にしたことがありません。ところが、
この年のシンガポール予算の解説では、特に税制に関する部分には国際比
較のグラフやコラムがいくつか掲載されおり、例を挙げると…

・税収構成比の国際比較
・消費税率の国際比較
・租税負担率の国際比較

などです。

 これらの国際比較を通じてなされたシンガポール政府の税制に関する
「自己分析」を見てみると、

・シンガポールは世界で最も小さな政府をもつ国のひとつ
・シンガポールは総税収に占めるGSTの割合が最も低く、所得課税の割
 合が最も高い水準
・シンガポールはGSTの税率が国際的に最低水準

などとされています。

 ちなみに、「シンガポールのGST税収のGDP比は、消費課税が存在
する国々の中で最も低く、日本でさえシンガポールよりも高い」とされて
います。(「日本でさえ」という書き方の含意は定かではありません。)

 このように、「国際比較」は自国が世界の中でどのような位置にいるの
かを客観的に把握するのに役立つため、財務省でも税制ホームページの中
に多くの国際比較資料を掲載しています(上に挙げた国際比較資料も掲載
しています)。もとより、諸外国の制度を単純に真似したからといって必
ずしもうまくいくとは限りませんが、こうしたことも踏まえ、今後とも我
が国の税制を考える際の参考となるような国際比較資料を提供していこう
と思います。

(参考)
・シンガポール財務省ウェブサイト(英語):
http://app.mof.gov.sg
・財務省 税制ホームページ(国際比較に関する資料):
http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/siryou/hikaku.htm

                      主税局調査課 篠原 健

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4 編集後記

 税制メールマガジン第56号を発行させていただきます。
 秋も深まり、急に寒くなってきましたが、皆さま、体調を崩されたりし
ていないでしょうか。是非、御自愛くださいませ。
 さて、先日、私達の係の職員に、新しい命が誕生いたしました。子ども
が産まれるということは大変嬉しいことであり、周囲もそれに対してでき
る限りサポートしてあげたいと思います。日々の仕事を通じても、これか
ら産まれてくる子どもたちのために良い日本を作っていきたいと、気持ち
を新たにするところです。
 次回は11月上旬発行予定です。毎年11月11日~17日は、「税を
考える週間」となっています。次回はそれに関するトピックをお届けした
いと思い、構想を練っているところですので、是非、お楽しみに。

                             (和田)

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税制メールマガジン 第55号              2008/9/11

2008年09月11日 | 税制メルマガ
税制メールマガジン 第55号              2008/9/11 

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◆ 目次
1 巻頭言
2 主税局職員コラム~相続税の税額計算方式の見直し~
3 主税局職員コラム~中年の挑戦!?~
4 諸外国における税制の動き~フランスの付加価値税率19.6%の謎~
5 編集後記


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1 巻頭言
 
 マクロ経済学を学ばれた方は御存知のことと思いますが、財政には自動
的に景気の波を小さくする機能(ビルト・イン・スタビライザー)があり
ます。つまり、不況期になると、歳出面では福祉や雇用保険等の歳出が増
え、歳入面では所得税や法人税等の負担が所得低下の割合以上に低くなる
ことによって、自然に財政赤字を拡大させながら経済に資金を供給し、景
気を支えます。好況期には逆に財政赤字が縮小し、景気の過熱を抑えるわ
けです。
 さらに、一般にケインジアンといわれる考え方の下では、景気後退局面
において、この自動的機能を超えて政策的に歳出増や減税を行ない(つま
り財政赤字を政策的に拡大し)、景気を強く下支えする政策を採ります。
 以上に対して、景気後退局面において財政再建を進めることは、逆に財
政赤字を縮減して経済から資金を吸収することになります。この点では経
済に必ずしもプラスではありません。財政構造改革は経済動向も見ながら
進める必要がある、とされるのはこのためです。
 しかしながら、この問題については、長い目で見た社会経済のコストも
あわせて考えていく必要があります。平成19年10月の財政制度等審議
会に起草検討委員が提出した資料「財政の持続可能性についての分析」
(注)では、2050年までに債務残高対GDP比を60%(EU基準)
に縮減するとの前提で、必要な財政収支改善が5年間遅れた場合の「遅延
コスト」を試算しています。これによると、必要な財政再建を5年先送り
すると、将来、もともと必要な収支改善努力に加えて、GDP比で0.7%、
すなわち3~4兆円規模の歳出削減又は税収の積増しを2050年まで継
続的に達成する必要があります。
 現在の受益と将来の負担。リカードの等価定理では、各個人はこれらを
完全に比較考量して行動すると考えますが、果たして現実はどうでしょう
か。特に世代をまたいで負担が先送りになる場合に、それを我が事として
考えることの難しさは、地球温暖化問題などとも共通点があるような気が
します。また、他方で、こうした将来不安が現在の内需の足を引っ張って
いるとの見方もできるように思います。
 戦後60年、その間の世代は日本を一流の経済大国にして今に引き継い
で下さいました。次の50年、今の積み重ねが将来世代に何を残している
かも考慮しながら、経済と財政の関係を考えていく必要があるのではない
でしょうか。

(注)「財政の持続可能性についての分析」(PDF, 669kb)
http://www.mof.go.jp/singikai/zaiseseido/siryou/zaiseib191026/04.pdf

                  主税局総務課企画官 宇波 弘貴

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2 主税局職員コラム~相続税の税額計算方式の見直し~
 
 この夏は、例年以上に暑かったとの印象ですが、皆様は無事乗り切られ
ましたでしょうか。
 私の所属する税制第一課資産税係は、様々な課題を抱えており、暑い最
中に熱くフル回転の夏でした。その課題の一つに、相続税の税額計算方式
の見直しがあげられます。

 現行の計算方式は、少し込み入っているのですが、大まかに言いますと、
まず、遺産総額から遺産に対する基礎控除(5,000万円+1,000
万円×法定相続人数)を差し引きます。その残額を法定相続人が民法で規
定されている相続分にしたがって取得したとし、その各々の(仮の)取得
額に累進税率を適用することにより(仮の)税額を算出し、これらの(仮
の)税額を合算します(相続税の総額)。実際の各遺産取得者(相続人以
外で遺言により財産を取得した人(受遺者)も含みます)の負担する税額
は、相続税の総額を各人の取得額で按分した額となります。
 実はこの計算方式、どのように遺産分割が行われようと、全遺産取得者
の相続税を合算した額が一定になるとの特徴に着目され、ちょうど50年
前に導入されたものです。
 ただし、近年、この計算方式について、相続税の申告後に、新たに遺産
が見つかった場合にこの遺産を取得しない人まで税負担が増加することに
なることや、同じ額の遺産を相続したとしても(例えば、法定相続人数の
違いや受遺者の有無によって)相続税額が異なる場合があることなどから、
見直しの必要性について指摘されてきたところです。
 こうした指摘を受け、このたび、相続税の税額計算方式において、「相
続税の総額」を経由するとの段階をなくし、シンプルに、各遺産取得者の
実際の取得額から基礎控除を差し引き、累進税率を適用する方向での見直
しが検討課題となっております。

 現行の計算方式は、これまで50年の長きにわたり浸透・定着してきた
ものであることからも、見直すにあたっては、慎重な検討が不可欠です。
こうした問題意識の下、特に実務面からのご意見を伺うため、8月一杯を
かけて、全国の税理士会の皆様と意見交換を行う機会を持つことができま
した。
(個人的コメントその1:8月の終わりに、同日中に沖縄から北海道に移
動する機会があったのですが、その気温差なんと15度近く。日本列島の
広大さ?を実感しました。)
(個人的コメントその2:娘たちへ。8月中の大半を出張していましたが、
大事な仕事だったんです・・・。)

 今後、政府の税制調査会での審議等を経て、平成21年度税制改正のプ
ロセスにおいて、最終的な方向が固まっていくことになると思いますが、
主税局としてもベストを尽くす必要があると考えております。

(参考)具体的な論点等については、平成20年7月22日の政府税制調
査会第25回企画会合提出資料(http://www.cao.go.jp/zeicho/siryou/k25kai.html)
における「企画25-3 資料(相続税関係)」をご参照ください。

                   主税局税制第一課 波戸本 尚

 
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3 主税局職員コラム~中年の挑戦!?~
 
 1年前まで、ニューヨークで留学生活を送っていました。その中で、数
多くの中国人留学生と出会いました。彼らは皆、前向きな努力を惜しまな
い。自分の生活が今後よりよくなることを信じて疑わない。それとシンク
ロするように、自分たちの社会についても、今後よりよくなっていくこと
を、明るく信じている。自分も、自分の生きる社会も、坂の上の雲を目指
して登っているという感覚でしょうか。そんな彼らと飲んでいて、「高度
成長期の日本の若者はこんな感じだっただろうか」と、ふと思ったのを覚
えています。

 ひるがえって、現在の日本。「先進国」「経済大国」と呼ばれるように
なって何年経ったでしょうか。以降、バブルという祝祭も、バブル崩壊後
のひどい悪酔いも経験しました。酔いから覚めたら、周囲の状況も一変し
ています。何だか昔の元気がなくなったと思い、人間ドッグに入ってみた
ら、諸外国に類をみないペースで少子高齢化が進行しているとのこと。今
後も、誰のせいでもなく、老年人口が年100万人ずつ増え、生産年齢人
口は年100万人ずつ減っていきます。このため、現在歳出の3割程度を、
将来への負担の先送りで賄っている中で、社会保障給付費は年に2兆円、
うち公費で賄う部分は1兆円増えていきます。しかも、働く人が減ってい
き、以前のような高成長を望むことは、簡単ではありません。

 国家や社会を人間の一生に例えることがどこまで適切かは分かりません
し、これからの時代、活力はますます必要でしょう。ただ、少なくとも、
どんどん肉体的・精神的に大人になっていき、車やマイホームを買うのが
待ち遠しい、そんな青年のような時代ではないことは確かだと思います。
むしろ、現在は、膨大な借金を抱える中で、車や住宅ローンの返済に負わ
れ、妻の側も含めて老親達が安心して暮らせるための仕送りや、医療・介
護を賄う必要があり、かつ、唯一の愛娘には、借金は絶対に残したくはな
い。そんな悩み多き中年に近いかもしれません。

 この状況では、結局、唯一の出口が、歳出は合理的なものにしつつ、い
かにして、負担を分かち合って行くのか、という選択になってしまいます。
給付を減らすか、負担をより多く分かち合うしかない、というのは、どっ
ちにしてもあまり楽しいわけではない、というか、苦い選択です。

 自分の人生なら、こういう状態でも、自分で何とかするしかないと諦め
もつくのかもしれませんが、たまたまこういう局面に、望むと望まざると
に関わらず、乗り合わせてしまった側からすれば(自分も含めて若い世代
は特に!)、そんな選択を迫られても、にわかには釈然としません。自分
の青春時代を回顧するように、三丁目の夕日を懐かしみながら、神風が吹
くのを待ちたくなります。あたかもそれで問題が解決するかのように、次
から次へと悪者探しを続けたくもなります。

 ただ、ものは考えようで、嫌な仕事を、期限ぎりぎりまで引き延ばして、
それまでの間どっちつかずの悶々とした気分で過ごすよりは、終わらせて、
その後好きな仕事に取り組むなり旅行に行くなりする方がいいように、ど
うせ逃れられないならば、正面から向き合って、その先にある「第二の人
生」を謳歌した方がいいかもしれません。また、今後アジアをはじめとす
る多くの国々で、同様に急速な少子高齢化が進むことが見込まれている中、
日本が世界に先駆けてこうした課題を乗り越えることで、一種のパイオニ
アになることもできるでしょう。

 なにより、野心的だけど向こう見ずな若者の挑戦ではなく、酸いも甘い
も噛み分けた中年の新たな挑戦というのも、意外と、オツかもしれません
ね。

                     主税局調査課 小岩 徹郎
  
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4 諸外国における税制の動き~フランスの付加価値税率19.6%の謎~
   
 今回のコラムはフランスの付加価値税率に関する話です。現在、付加価
値税(消費税)は欧州諸国を中心に多くの国で採用されており、2008
年1月現在の欧州諸国の付加価値税率は以下のようになっています。

フランス    19.6%
イギリス    17.5%
ドイツ     19%
イタリア    20%
スウェーデン  25%
デンマーク   25%

 ほとんどの国は区切りの良い税率となっているのに、なぜフランスは
19.6%と、区切りの悪い税率になっているのでしょうか。

 この疑問に対する答えは1970年度の税制改正にあります。70年度
改正前は、フランスにおける付加価値税率は15%(当時あった複数の税
率のうち、現在の標準税率の元となった税率。)でした。しかし、現在と
は違い、当時のフランスの法定税率は税「込」価格に対する税率を採用し
ていました。つまり、ある生産物に対して法定税率15%がかけられてい
るということは、税込価格を100とすると、付加価値税分が15で、税
抜価格は残りの85ということです。この税率計算では、実際は付加価値
税を抜いた生産物価格に対して17.647%(=15÷85(%))の
付加価値税が課されていると言えます。

 しかし、上記の通り、この計算方法は煩雑であり、誤解されやすく、さ
らに、当時付加価値税を導入していた主要国でこのように税率を定めてい
た国はフランスとスウェーデンしかなかったため、他国との計算方法が一
致しないという問題がありました。

 そこで、こうした問題を解消するため、70年度税制改正で、フランス
は税「抜」価格に対する税率をもって法定税率にする旨の税制改正を行い
ました。先述の計算のように、当時の税「込」価格に対する法定税率を税
「抜」価格に対する法定税率に換算すると17.647%となり、さらに
税率を簡易化するために小数点以下を整理して、17.6%と定められた
のです。

 このような経緯で、フランスの付加価値税率には○○.6%が登場する
こととなりました。その後の税制改正において付加価値税率は1%単位で
改正されたため、現在も19.6%と区切りの悪い税率となっています。

                    主税局調査課 樫野 壮一郎

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5 編集後記

 若干遅くなりましたが、税制メールマガジン第55号を発行させていた
だきます。
 編者は、8月末に夏休みを頂き、新婚旅行に行ってきました。(編者は
先般結婚式を挙げたばかりで、一応新婚なんです。)行き先はロンドンと
パリでした。海外では、買い物をしたり、免税手続をしたりと、普段より
税に触れる機会が多く、日本との違いなど、いろいろ考えることの多かっ
た気がします。そういえば、パリのホテルでは、宿泊税のようなものも徴
収されました。金額を請求されてはじめは何だか分からなかったのですが、
一言taxといわれて分かりました。新婚旅行くらい仕事のことは考えな
いようにという御指摘もありそうですが、これほど、税は国の文化と生活
に密着しているということなのでしょうね。
 次回は10月上旬発行予定です。


                             (和田)


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