税制メルマガ

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税制メールマガジン 第35号

2006年12月26日 | 税制メルマガ
税制メールマガジン 第35号             2006/12/26 

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◆ 目次

1 巻頭言
2 税制をめぐる最近の動き 
3 特集 平成19年度税制改正案の概要
4 お知らせ 平成19年から所得税が変わります(税源移譲の実施、定率
 減税の廃止) 
5 編集後記

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1 巻頭言 

 2004年の約1億2778万人をピークにして日本はいよいよ人口減少社会に
突入したといわれています。明治時代以降日本の人口は増加し続けてきま
した。特に戦後50年かけて約8千万人から1億2千万人へと1.5倍の水準に
跳ね上がりましたが、人口の低位推計によればこれから半世紀後には戦後
の水準に戻るということになります。この人口減少が日本の経済社会にど
のような影響を及ぼすのかについては、悲観論から楽観論まで諸説あるよ
うです。ただ、人口の規模が将来元に戻るといっても、その構成内容は大
きく異なります。少なくとも2025年には20歳~64歳の勤労者世代2人に対
し65歳以上の高齢者が約1人という時代を迎えることは不可避であり、こ
れまで何となく当たり前とされてきた「高齢者=社会的弱者」という一律
的な見方では今後の社会が成り立たないことは誰もが感じているはずです。
私個人としては、現在の平均寿命の高さにかんがみれば、そもそも65歳と
いう年齢自体、社会的にどういう意味を持つのか改めて問い直してみる必
要があるのではないかと感じています。

 また、最近ではいわゆる「格差」の問題がいろいろな場面で提起されて
います。世代間の格差などは、先ほど申し上げた今後の人口構成とも直結
する大きな問題ですが、その他にも例えば地域間の格差の問題があります。
中央集権の弊害、地方にできることは地方にというキャッチフレーズで地
方分権が進められています。今般の国会でも「地方分権改革推進法」が成
立し、今後3年以内に国と地方の役割分担の見直しなどを内容とする推進
計画を策定することとされました。かつては「国土の均衡ある発展」とい
う大きな政策目標の下で、人・金を一旦中央に集め、それを地方に分配す
ることにより全体の水準を高めるという方法がとられてきました。これは
豊富な労働力人口と高い貯蓄率による高度成長(全体のパイの拡大)に支
えられてこそ成り立っていたものと考えられますが、今後の日本の経済社
会を展望したとき、もちろん生産性の向上などにより経済成長を促進して
いく途を追求していくことはもとよりですが、かつての高度成長期のよう
な構図に限界があることは明らかであり、地方の自主・自立を高める方向
での政策が求められているのだと思います。ただ、これを突き詰めていく
と、地域間、特に都市部と地方の格差の問題に否応なしに直面せざるを得
なくなるのではないでしょうか。つまり、「理念」として大変美しい地方
分権と、それを徹底したときに起こるであろう「現実」とのギャップをど
う埋めていくのか、本当に英知を結集していくことが求められているのだ
ろうと思います。

 税制については、平成21年度における基礎年金国庫負担割合引上げのた
めの財源をはじめとする社会保障財源の安定的確保や、わが国経済の活性
化、子育て支援策等の充実等の政策目的の実現に資する役割が求められて
います。いずれにせよこの先わが国は、さらなる少子高齢化が進む中で、
増幅する社会保障等のニーズを社会全体でどうやって担っていくかという
深刻な問題への対応を迫られます。来年秋以降、早期に、本格的かつ具体
的な議論を行い、平成19年度を目途に、少子高齢化社会における社会保障
給付や少子化対策に要する費用の見通し等を踏まえつつ、その費用をあら
ゆる世代が広く公平に分かち合う観点から、消費税を含む税体系の抜本的
改革への取組みが必要であると指摘されている所以です。

 こうした流れの中で、このほど平成19年度税制改正の大綱が策定されま
した。19年度税制改正においては、まずはわが国経済の成長基盤を整備す
る観点から、直面する諸課題への取り組みとして、減価償却制度の抜本的
見直しや中小企業・ベンチャー支援などを行うこととしています。また、
国民生活への配慮という観点から、住宅ローン減税の特例や住宅バリアフ
リー改修促進税制の創設、寄付金控除の限度額の引上げなどの措置、さら
に、電子証明書を取得した個人の電子申告に係る所得税の税額控除制度の
創設、税務手続きの電子化の促進、コンビニで納税できる制度の創設など
円滑・適正な納税のための環境整備も図られることになります。

                    広報担当主税企画官 鑓水 洋

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2 税制をめぐる最近の動き 
  
(1)「所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための
 日本国とフィリピン共和国との間の条約を改正する議定書」の署名が行
 われました。
 ・概要は、下記URLにてご覧いただけます。 
  http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/sy181209fi.htm

(2)財務省は、「平成19年度税制改正の大綱」を12月19日に決定しました
 (詳しくは、3の特集をご覧ください)。

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3 特集 平成19年度税制改正案の概要

 平成19年度税制改正の具体的中身について、11月下旬から与党で審議が
行われ、12月14日に与党の「平成19年度税制改正大綱」が公表されました。
これを踏まえ、財務省では、12月19日に平成19年度税制改正案を公表しま
した。この案については、今後、閣議決定を経て、来年の通常国会におい
て法律案として審議が行われることになります。
 平成19年度税制改正案の主な内容は、以下のとおりです。

~ 平成19年度税制改正案の概要 ~

 現下の経済・財政状況等を踏まえ、持続的な経済社会の活性化を実現す
るためのあるべき税制の構築に向け、我が国経済の成長基盤を整備する観
点から減価償却制度の抜本的見直しを行うとともに、中小企業関係税制、
国際課税、組織再編税制・信託税制、金融・証券税制、住宅・土地税制、
納税環境整備等について所要の措置を講ずることとし、次のとおり税制改
正を行うものとする。

○減価償却制度
・平成19年4月1日以後に取得をする減価償却資産については、償却可能
 限度額(取得価額の95%)及び残存価額を廃止し、250%定率法を導入
 することにより耐用年数経過時点に1円(備忘価額)まで償却できるこ
 ととする。
・平成19年3月31日以前に取得をした減価償却資産については、償却可能
 限度額まで償却した後、5年間で1円(備忘価額)まで均等償却ができ
 ることとする。
・フラットパネルディスプレイ製造設備等の法定耐用年数を短縮する。

○中小企業関係税制
・同族会社の留保金課税制度について、適用対象から中小企業(資本金等
 が1億円以下の会社)を除外する。
・実質的な一人会社(特殊支配同族会社)のオーナーへの役員給与の一部
 を損金不算入とする制度について、適用除外基準である基準所得金額を
 1,600万円(現行800万円)に引き上げる。
・相続時精算課税制度について、取引相場のない株式等の贈与を受ける場
 合には、一定の要件を満たすときに限り、60歳以上の親からの贈与につ
 いてその適用を選択することができることとするとともに、2,500万円
 の非課税枠を3,000万円に拡大する。
・エンジェル税制(特定中小会社が発行した株式に係る譲渡所得等の課税
 の特例)の適用期限を2年延長するとともに、適用対象となる企業の要
 件の緩和及び確認手続の合理化を行う。

○国際課税
・移転価格税制について、租税条約の相手国との相互協議に係る納税猶予
 制度を創設する。

○組織再編税制・信託税制等
・組織再編税制について、会社法における合併等対価の柔軟化(三角合併
 等)に伴う税制措置や、組織再編成に伴う国際的な租税回避を防止する
 ための措置を講ずる。
・信託税制について、信託法の改正による新たな類型の信託等に対応した
 税制を整備するとともに、租税回避防止の観点から、受託者段階での法
 人課税を行う等課税の中立・公平を確保するための措置を講ずる。
・企業会計基準の変更に伴い、一定のリース取引を売買とみなした上で、
 借手の減価償却の方法についての規定を整備する等所要の措置を講ずる。

○金融・証券税制
・上場株式等の配当・譲渡益に係る軽減税率の特例の適用期限を1年延長
 する。

○住宅・土地税制
・住宅ローン減税について、税源移譲に伴い中低所得者層の減税額が減少
 することを踏まえ、計画的な持家取得の支援のため控除期間・控除率の
 特例を創設する。
・住宅のバリアフリー改修促進税制を創設する。
・居住用財産の譲渡に係る課税の特例(買換え特例及び譲渡損失の繰越控
 除)の適用期限を3年延長する。

○納税環境整備
・電子証明書を取得した個人の電子申告に係る所得税の税額控除制度を創
 設するとともに、税務手続の電子化促進措置(電子申告における第三者
 作成書類の添付省略等)を講ずる。
・コンビニエンス・ストアで納税できる制度を創設する。

○その他
・寄附金控除の控除対象限度額を総所得金額等の40%(現行30%)に引き
 上げる。
・再チャレンジ支援寄附金税制を創設する。
・地域産業活性化支援税制を創設する。

※ 平成19年度税制改正案全文については、こちらからご覧いただけます。
  「平成19年度税制改正の大綱」(平成18年12月19日財務省)
  http://www.mof.go.jp/genan19/zei001.pdf

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4 お知らせ 平成19年から所得税が変わります(税源移譲の実施、定率
 減税の廃止)

(1)税源移譲の実施(所得税から住民税へ)

 平成19年から、地方分権を進めるため、国税(所得税)から地方税(住
民税)へ税金が移し替えられます(3兆円の税源移譲)。

 この税源移譲に当たって、所得税と住民税の税率が変わります。

 これに伴い、ほとんどの方が、
・所得税は平成19年分から減り(平成19年1月以降の源泉徴収及び平成20
 年2月~3月に行われる確定申告)、
・住民税は平成19年度分から増える(平成19年6月以降に納付)
こととなりますが、税金の移し替えなので、所得税と住民税を合わせた年
額の税負担は基本的には変わりません。
 ただし、景気回復のための定率減税措置がとられなくなることや、皆様
の収入の増減など、別の要因により、実際の負担額は変わりますので、ご
留意ください。

(2)定率減税の廃止

 平成11年に景気対策として暫定的に導入された定率減税が、経済状況の
改善等を踏まえ、
・所得税は平成19年分(平成19年1月以降の源泉徴収及び平成20年2月~
 3月に行われる確定申告)から、
・住民税は平成19年度分(平成19年6月以降に納付)から、
廃止され、税負担が増えることとなります。

※ 詳しくは、下記URLをご覧ください。
 ・「平成19年から所得税が変わります。」(財務省ホームページ) 
  http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/zeigen.htm
 ・「国から地方への税源移譲(三位一体の改革)」(総務省ホームページ)
  http://www.soumu.go.jp/czaisei/czaisei_seido/zeigenijou2.html

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5 編集後記
 本年は、税制メールマガジンをご愛読いただき、ありがとうございます。
本年もいろいろありましたが、来年もいろいろあるのでしょう。来年が読
者の皆様にとってよりよい年になりますようお祈り申し上げます。次回発
行は1月下旬の予定です。                  (高宮)

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ご意見募集のコーナー

 政府税制調査会では、今後の審議の参考にさせていただくため、広く国
民の皆様から、御意見を募集しております。

http://www.mof.go.jp/singikai/zeicho/iken/iken.htm

当メールマガジンについてのご意見、ご感想はこちらへお願いします。

mailto:mg_tax@mof.go.jp

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税制メールマガジン 第34号

2006年12月06日 | 税制メルマガ
税制メールマガジン 第34号             2006/12/05

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◆ 目次

1 巻頭言
2 税制をめぐる最近の動き 
3 特集 政府税制調査会「平成19年度の税制改正に関する答申-経済
 活性化を目指して-」
4 諸外国における税制の動き ~ドイツの税制改革~ 
5 編集後記

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1 巻頭言 

 毎年11月の上旬に「税を考える週間」があり、国税庁、国税局、各税
務署が中心となって各地で様々な広報・広聴活動が行われます。本年は
「少子高齢社会と税」というテーマでしたが、その活動の一環として、埼
玉大学において財政学の講義の時間に大勢の学生を前にして話をさせてい
ただく機会がありました。20歳前後の学生の方々は、まさにこれからの
社会を支えていく世代であり、今日直面している経済・社会の状況や、財
政・税制の現状と抱えている問題点をきちんと伝えておきたいという気持
ちで一時間ほど話をしました。その際、特に伝えたかったのは、世代毎の
生涯を通じた受益と負担という点です。これは、今の社会保障制度等を維
持した場合に現在の各世代の受益と負担の関係がどうなっているかという
ものであり、年齢が高くなればなるほど受益の方が大きくなるという結果
になります。具体的には60歳以上の世代では一世帯あたり4875万円
受益が負担を上回り、40歳代では受益と負担がほぼ均衡、20歳代では
負担の方が受益を1660万円上回り、将来世代では負担が受益を
4585万円上回るという推計があります。
 
 私としては、「あなたたちは黙っていてはいけない。自らの問題として
真剣にどうしたらいいのか考えてほしい」というメッセージを是非受け止
めてもらいたいと思って話をしたわけですが、講義を終えた後で、国の財
政状況や消費税、国と地方の財源の問題などについて多くの質問をいただ
き大変驚きました。というのも、このような問題に対して自分なりにどの
ような答えを出していくのか、当然様々な意見がありうるわけですが、ま
ずは関心をもつことが何より大切であり、私が事前に考えていた以上のい
わば想定外?の反応や関心の高さを学生の方々が示してくれたからです。
これからも財政・税制の現状と課題などについていろいろな方々と意見交
換する機会を自分なりに作っていきたいと改めて強く思った次第です。

                        主税企画官 鑓水 洋

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2 税制をめぐる最近の動き 
  
 (1)下記のとおり、税制調査会が開催されました。

【11月7日(火)】
 第1回総会
 ・会長の互選、内閣総理大臣からの諮問等

【11月9日(木)】
 第1回企画会合
 ・経済活性化等に向けた税制上の取組みの全体像等

【11月14日(火)】
 第1回グループ・ディスカッション
 ・テーマ『国民生活関連』
 金融証券税制等・個人住民税・納税環境整備について

【11月15日(水)】
 第2回グループ・ディスカッション
 ・テーマ『新しい動きへの対応』
 三角合併・信託税制等について、国際課税について、留保金課税・事業
承継について

【11月21日(火)】
 第3回グループ・ディスカッション
 ・テーマ『経済全体の活性化 等』
 減価償却制度等・地方法人課税関係・その他の事項について

【11月22日(水)】
 第2回総会
 ・これまでの審議内容の報告、自由討議
 
【11月29日(水)】
 第2回企画会合
 ・答申(案)について

【11月30日(木)】
 第3回企画会合
 ・答申(案)について

【12月1日(金)】
 第3回総会
 ・答申(案)について

・税制調査会の資料等は、下記URLにてご覧いただけます。

 http://www.mof.go.jp/singikai/zeicho/top_zei3.htm

(2)日本国政府は、UAE政府及びクウェート政府との間で、租税条約
 の締結交渉を開始することになりました。

・概要は、下記URLにてご覧いただけます。
 
 http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/sy181107uae.htm

(3)尾身財務大臣とP.コステロ・オーストラリア財務大臣は、租税条
 約改正交渉の早期立ち上げが適当であるとの認識で一致し、今後、所要
 の調整を行うこととしました。

・概要は、下記URLにてご覧いただけます。 
 
 http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/sy181117aus.htm

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3 特集 政府税制調査会「平成19年度の税制改正に関する答申-経済
 活性化を目指して-」

 政府税制調査会では、本年11月の安倍総理大臣からの諮問を受け、平
成19年度税制改正についての審議を行ってきました。12月1日の総会
において「平成19年度の税制改正に関する答申 -経済活性化を目指し
て-」が取りまとめられ、安倍総理大臣に提出されましたので、その概要
をご紹介します。

 今回の答申は平成19年度税制改正に当たっての指針を示したものであ
り、改正の具体的中身について、現在、与党で審議していただいておりま
す。


 平成19年度の税制改正に関する答申 -経済活性化を目指して-(概要)


一 税制調査会の使命-総合的な税制改革に向けての視点と審議の進め方
○ 当調査会は、総理からの諮問を受けて、国民各層が豊かになる税制改
 革を目指し、次のような基本的な視点に立って議論を進めていく。
○ 経済成長は財政健全化の牽引力になるという認識の下、「成長力強化」、
 「財政健全化」、「健全で安心できる社会の実現」という相互に関連
 する改革を一体的に推進すべき。
○ 一方、将来世代への負担の先送りを行わないよう、財政健全化にも正
 面から取り組む必要。この取組は経済活性化につながる。歳出・歳入一
 体改革をしっかりと実行。自然増収がある場合にも財政規律を堅持し、
 歳出削減を徹底すべき。
○ 税制については、中長期的な視点からの総合的な税制改革に向け、社
 会経済構造の変化に対応した各税目の在り方を検討していく。その中で、
 経済活性化、社会保障等の安定的な財源の確保、子育て支援策等の充実、
 地方分権の推進にも応えていく必要。
○ まず経済活性化と税制について議論。財政健全化との両立という視点
 や公平・中立・簡素の租税原則を踏まえ、国際的な競争条件を揃え、イ
 ノベーションを加速し、オープンな姿勢をとることが重要。このような
 観点からの今後の検討課題の一つとして、法人実効税率引下げの問題が
 提起された。また、リスクマネーの有効な活用方策、企業の資金調達手
 段に税制が及ぼす影響、租税条約ネットワークのさらなる拡充等が今後
 の検討課題。
○ ミクロ・マクロの両面から、税制と経済、財政、企業、家計との関わ
 りを調査・分析するとともに、これらを基礎に、総合的な税制改革のグ
 ランドデザインを国民に分かりやすく示していく。広報・広聴の役割を
 重視し、情報発信の強化と合わせて広く国民各層・各分野の声を聞いて
 いきたい。


二 総合的な税制改革の流れの中での平成19年度税制改正
1.経済活性化に向けた速やかな対応
(1)国際的な競争条件を揃える観点から、減価償却制度を見直すべき
 (償却可能限度額(取得価額の95%)の撤廃、残存価額(10%)の廃止
 等)。
(2)中小企業の資本蓄積の促進等の観点から、留保金課税制度のさらな
 る見直しを検討。
(3)エンジェル税制について、対象企業の範囲を広げるなど、より使い
 やすくする方策を検討。
(4)中小事業者の事業承継の実態を把握し、課税の公平に留意して、経
 済活力維持の観点も踏まえ、支援の基本的在り方を今後検討。他方、当
 面、議決権のない株式等の種類株式の評価の明確化等について適切に対
 応。
(5)租税条約ネットワークを引き続き拡充すべき。移転価格税制に関し、
 事前確認制度の迅速化等、予測可能性を高める環境整備を行うとともに、
 納税猶予制度を導入。
(6)外形標準課税については、減資により課税対象外となる事例が生じ
 ており、今後、税負担の公平性を確保する観点から、対象法人の見直し
 が課題。
(7)政策税制は、PDCA(計画・実施・評価・改善)サイクルの確立
 が不可欠であり、経済活性化等にとって真に有効な分野へ集中・重点化
 すべき。


2.新しい制度改革に対する税制上の対応
(1)会社法の施行に伴う三角合併の解禁に対し、企業組織再編時の課税
 繰り延べについて現行と同様の考え方で対応すべき。また、国際的な租
 税回避を防止する観点からの検討も必要。
(2)法改正に伴い信託制度の利用形態が多様化(例えば、事業信託や公
 益的な性格を持つ目的信託)。こうした利用実態に対応した税制上の検
 討を進めていくべき。一方、新たな制度を利用した租税回避の懸念の指
 摘も踏まえ、現行税制の考え方を基本とした上で、必要な場合に信託段
 階課税を行うなど適切な措置を講ずべき。
(3)リース会計に係る会計基準の変更を踏まえ、取引の経済的実態を適
 切に反映させるよう措置すべき。


3.国民生活に関連する税制
(1)金融所得間の課税方式の均衡化、損益通算の範囲の拡大を柱とする
 金融所得課税の一体化を進めるべき。上場株式等の配当や譲渡益の軽減
 税率(10%)は、金融所得課税の一体化の方向に沿って、廃止すべき。
  今後、金融所得課税の一体化を進めていくにあたって、次の点に留意
 すべき。
 ・軽減税率の廃止が株式市場の無用の変動要因とならないよう工夫する
  必要。
 ・金融所得の損益通算の範囲を本格的に拡大するため、その具体的な範
  囲や仕組みを早急に検討。
 ・配当所得について、総合課税における法人段階と個人段階での課税の
  調整の在り方についてさらに議論。
(2)利便性の向上や脱税の防止等のため、円滑・適正な納税のための環
 境整備を進める必要。
(3)個人住民税は、「地域社会の会費」として応益性がより明確になる
 ことを踏まえ、その在り方を考えていく必要。
(4)揮発油税、自動車重量税等の道路特定財源については、行革推進法
 における基本方針に沿って、現行の税率水準を維持し、納税者の理解を
 得つつ、一般財源化を図るべく、年内に具体案を取りまとめるべき。
(5)環境税については、温暖化対策全体の中での環境税の具体的位置付
 け、その効果等を踏まえ、総合的に検討していく。


※ 答申全文については、こちらからご覧いただけます。
 http://www.mof.go.jp/singikai/zeicho/top_zei2.htm

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4 諸外国における税制の動き ~ドイツの税制改革~

 ドイツのメルケル政権は、2006年11月に成立1周年を迎えました。
ドイツ史上初の女性首相として、約40年ぶりに成立した大連立政権をど
のようにまとめ上げるのか、その手腕が注目されていましたが、外交面で
の評価は高いものの、医療保険改革の停滞などから、内政面での評価は低
迷しつつあるというのが実情のようです。しかし、税制に関しては大胆な
改革を就任以降次々と決定しています。

 最近議論されている施策の一つには、法人税改革が挙げられます。ドイ
ツの法人所得に係る実効税率は、国税・地方税の合計で約39%に達して
いますが、企業の国際競争力を増大させるため、実効税率を30%以下と
する改革を行おうとしているのです。2008年1月の実施を目指し、
11月上旬に連立与党の作業部会で骨子について合意がなされました。

 「こうしたドイツの動きに倣い、日本でも法人税の改革を進めるべき
だ。」と思われる方もいるかもしれませんが、ドイツにおける法人税改革
を議論するにあたっては、以下の三点に留意する必要があります。

 一点目は、法人税改革が、ドイツの財政状況が好転しつつある中で行わ
れる点です。もともとドイツはEUが規定する財政赤字の基準を2002
年から4年連続で超過しており、慢性的な財政赤字の問題を抱えていまし
た。財政再建が喫緊の課題となる中、メルケル政権は就任直後に2007
年1月からの付加価値税(日本の消費税にあたります)の税率の引上げ
(16→19%)や所得税の最高税率の引上げを相次いで決定し、財政
再建に一定の道筋をつけています。

 特筆すべきなのは、法人税改革を含めた大きな税制改革のパッケージが
政権成立時の連立協約に明記されており、上記の措置によって財政の安定
性を確保した後に、法人税改革に取り組むことが最初から表明されていた
ことです。当初は2007年にEUの基準を達成する予定でしたが、経済
の好調を背景として2006年の財政赤字も基準値を下回ると予想されて
おり、法人税改革の追い風となっています。

 二点目は、企業負担の軽減と課税ベースの拡大を同時に行い、法人税改
革全体での減収額を抑制している点です。11月の合意の報道発表には、
改革全体の減収額を50億ユーロ(約0.7兆円)に抑制することが明記
されており、財政状況に対する危機感は失われていないものと思われます。

 三点目は、ドイツでは社会保険料の事業主負担も企業にとって大きな負
担となっており、企業の公的負担を軽減する観点から、法人税を引き下げ
る要請が強い点です。ドイツの年金、医療、失業、介護といった主要な保
険の保険料率は労使折半で40%を超えており、同じく労使折半である日
本の約25%という水準に比べてかなり高くなっています。また、ドイツ
の失業率は経済が回復しつつあるとはいえ、10%前後の高い水準で推移
しており、企業の負担軽減を通じた雇用の拡大に対する期待が高いという
事情もあります。

 以上のように、ドイツの法人税改革一つ取っても複雑な内容と背景があ
り、日本と比較する上では様々な差異に留意しなければなりません。しか
し、税制改革全体のパッケージを明確にした上で税制改革を行っているこ
とや、その背景及び考え方など、日本として学ぶべきことは非常に多いと
思います。本質を見極めるのは簡単な作業ではありませんが、今後も鋭意
研究を深めていきたいと思います。
 
                      主税局調査課 荒井 夏來

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5 編集後記

 特集でご紹介しましたが、「平成19年度の税制改正に関する答申」が
政府税制調査会で取りまとめられました。この後、与党でさらに議論が行
われ、平成19年度税制改正の案が固められます。その上で、年明けの通
常国会において税制改正法案が審議され、法案が成立して、ようやく税制
改正が実現されます。現在、主税局では、税制改正案の具体化に向けた作
業が連日行われています。次回は、平成19年度税制改正案の概要をお届
けする予定です。                           (高宮)

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ご意見募集のコーナー

 政府税制調査会では、今後の審議の参考にさせていただくため、広く国
民の皆様から、御意見を募集しております。

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