5 元主税局職員コラム~働き方の見直しと子育て支援策の充実に向けて~
平成17年の夏まで税制メールマガジンの編集を担当しておりました
「あられ」です。主税局を離れてから一年半、厚生労働省で子どもの保育
施策を担当してきましたが、この春から滋賀県で引き続き子どもにかかわ
る仕事をすることになりました。
日本では、「少子化が進んでいる」と言われていますが、子どもの数が
少なくなっているにもかかわらず、この10年ほど、保育所を利用する子
どもの数は急激に増えています(平成9年164万人→平成19年202
万人)。保育サービスの供給が需要に追いつかず、日本全国で約1.8万
人もの待機児童(※)が存在しています。
(※)保育所への入所を希望していながら入所できない児童のこと。
都市部では、保育所の定員を100人増やしても待機児童は10人しか
減らないという状況が続いています。女性の就業率が上昇し、近くに保育
所があれば、子どもを預けて働きたいという方々の潜在的な需要があるた
めです。
昨年末、政府は「子どもと家族を応援する日本」重点戦略をとりまとめ
ました。働きながら子どもを育てたいと思っても、長時間労働、女性労働
者の継続就業の困難さ、保育サービスの不足などから、仕事と子育てを両
立できる見通しが立たず、「就業」と「出産・子育て」が二者択一になっ
ていることが指摘されています。重点戦略では、この二者択一構造を変え
るために、「仕事と生活の調和の実現」と「保育をはじめとする次世代育
成支援の社会的基盤の構築」という二つの取組を「車の両輪」として取り
組んでいくこととされています。
平日ほとんど夫と顔を合わせることのなかった私にとって、「仕事と生
活の調和の実現」は本当に切実な問題ですが、それはさておき、私が担当
していた「次世代育成支援の社会的基盤の構築」に取り組むためには、相
当規模の財源が必要です。重点戦略では、国民が希望する出産・子育てを
実現するのに必要な社会的コストは約1.5~2.4兆円と試算されてお
り、このコストについては、次世代の負担とすることなく、国・地方・事
業主・個人の負担・拠出の組合せにより支えることが必要だとされていま
す。びっくりするくらい大きな金額ですが、これで様々な保育サービスが
充実し、安心して子育てできるのだったら・・・。私たち国民の選択の問
題です。
現在、厚生労働省では、「新たな次世代育成支援の枠組み」の構築に向
け、税制改革の動向を踏まえつつ、その具体的な制度設計の検討を始めた
ところです。また、先般、「新待機児童ゼロ作戦」を公表しました。約1.8
万人という顕在化している待機児童はもちろん潜在的な需要も視野に入れ、
希望するすべての人が安心して子どもを預けて働くことができるサービス
の受け皿を確保し、待機児童をゼロにするという目標を掲げ、今後3年間
を集中重点期間として取組を進めることとしています。
今回のコラムでは、子育て支援に関する政府の検討状況の一部を御紹介
しました。子育て中のみなさんをはじめ、子育て行政について御要望や御
不満など多々あると思います。ぜひ声をあげていただき、みなさんと一緒
に子育てしやすい社会をつくりあげていきたいと思います。
・「子どもと家族を応援する日本」重点戦略検討会議について
(内閣府ホームページ)
http://www8.cao.go.jp/shoushi/kaigi/ouen/index.html
・新待機児童ゼロ作戦について(厚生労働省報道発表資料)
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2008/02/h0227-1.html
滋賀県健康福祉部子ども・青少年局 原田 真紀子
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6 諸外国における税制の動き
税のモラル~モラルが高いのはどういう人?
春を迎え、甲子園では高校球児たちの熱闘が繰り広げられました。
一方、ドイツの税の世界でも熱闘が繰り広げられています。というのは、
最近、ドイツでは大規模な脱税事件が発覚し、税務当局が脱税の捜査に躍
起になっているからです。何しろ、追徴税額が3億~4億ユーロ(約490
億円~650億円)と言われていますから、重大な事件です。蛇足ですが、
ドイツ政府は、情報提供者から脱税に関する情報を500万ユーロ弱(約
8億円)で買ったそうです。(このことについては、ドイツ国内でも賛否
両論ありますが、ドイツ連邦財務省は、「良い投資であった」とコメント
しています。)
こうした中、ドイツ連邦財務省のウェブサイトに、「税のモラル―自発
的な納税と脱税の緊張関係」と題する報告書が掲載されました。この報告
書は、「脱税はいかなる場合にもしてはいけないことである」と考える人
の割合によって税のモラルを測定しようとしており、いくつかの興味深い
分析や主要先進国の国際比較がなされています。いくつかご紹介しましょ
う。
― 他の納税者の行動を信頼している人ほどモラルが高い!?
他の納税者は皆正しく納税する、と考えているグループほど脱税に対す
る見方が厳しく、税のモラルを高く持っているようです。特に、ドイツや
デンマークではその傾向が強く現れています。
― 政府を信頼している人ほどモラルが高い!?
他の納税者に対する信頼と同じことが政府に対しても言えるようです。
ほぼすべての国において、脱税に対して厳しい見方をしている人の割合が、
政府を信頼していないグループよりも、政府を信頼しているグループにお
いては10~20%程度高くなっています。
― 宗教を大切に思う人ほどモラルが高い!?
宗教を大切にしているグループとそうでないグループでは、脱税に対す
る見方が大きく異なっているようです。ドイツでは、脱税に対して厳しい
見方をしている人の割合が、宗教を大切だと考えないグループよりも、宗
教を大切にしているグループにおいては25%以上高くなっており、カナ
ダでは30%以上、フィンランドでは50%以上高くなっています。
では、この報告書の中で、最も税のモラルが高いとされている国はどこ
でしょうか?
・・・答えは、我が国、日本です。
「脱税はいかなる場合もしてはいけないことである」と考える人の割合
によって税のモラルを測定することが適切かどうかはともかくとして、こ
の調査で見た税のモラルは主要先進国中、日本が突出して高く、80%以
上の人が「脱税はいかなる場合にもしてはいけない」と考えているようで
す。ちなみに、ドイツではそのように考える人の割合は60%弱となって
います。
納税者間の信頼関係、政府と国民との信頼関係、信仰心(人間と神仏と
の信頼関係?)・・・。人間が作り出した「制度」には、こうした極めて
人間的な要因が影響している面があるように思います。心機一転の春、最
も身近な制度の一つである税制を通じて、「国のかたち」を考えてみるの
も一興ではないでしょうか。
主税局調査課 篠原 健
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7 編集後記
平成16年3月に始まった税制メルマガは、今号で通算50号になりま
した。そこで、税制メルマガの創刊当時に編集を担当されていた「あられ」
さん(原田さん)に、久しぶりに原稿(「働き方の見直しと子育て支援策
の充実に向けて」)を書いてもらいました。今後の日本にとって最大の課
題は、長年言われていることですが、一層の少子高齢化に対応した経済社
会の構築だと思います。そのために、国・地方・事業者・個人それぞれが
それぞれの責任を果たしていく必要があります。
(高宮)
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ご意見募集のコーナー
政府税制調査会では、今後の審議の参考にさせていただくため、広く国
民の皆様から、御意見を募集しております。
http://www.iijnet.or.jp/cao/kanbou/opinion-zeicho.html
当メールマガジンについてのご意見、ご感想はこちらへお願いします。
mailto:mg_tax@mof.go.jp
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税制メールマガジンのバックナンバーはこちらからご覧頂けます。
http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/merumaga/merumagaback.htm
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ます。
配 信 中 止 → http://www.mof.go.jp/haisin/sakujo1.htm
登録内容の変更 → http://www.mof.go.jp/haisin/henkou1.htm
平成17年の夏まで税制メールマガジンの編集を担当しておりました
「あられ」です。主税局を離れてから一年半、厚生労働省で子どもの保育
施策を担当してきましたが、この春から滋賀県で引き続き子どもにかかわ
る仕事をすることになりました。
日本では、「少子化が進んでいる」と言われていますが、子どもの数が
少なくなっているにもかかわらず、この10年ほど、保育所を利用する子
どもの数は急激に増えています(平成9年164万人→平成19年202
万人)。保育サービスの供給が需要に追いつかず、日本全国で約1.8万
人もの待機児童(※)が存在しています。
(※)保育所への入所を希望していながら入所できない児童のこと。
都市部では、保育所の定員を100人増やしても待機児童は10人しか
減らないという状況が続いています。女性の就業率が上昇し、近くに保育
所があれば、子どもを預けて働きたいという方々の潜在的な需要があるた
めです。
昨年末、政府は「子どもと家族を応援する日本」重点戦略をとりまとめ
ました。働きながら子どもを育てたいと思っても、長時間労働、女性労働
者の継続就業の困難さ、保育サービスの不足などから、仕事と子育てを両
立できる見通しが立たず、「就業」と「出産・子育て」が二者択一になっ
ていることが指摘されています。重点戦略では、この二者択一構造を変え
るために、「仕事と生活の調和の実現」と「保育をはじめとする次世代育
成支援の社会的基盤の構築」という二つの取組を「車の両輪」として取り
組んでいくこととされています。
平日ほとんど夫と顔を合わせることのなかった私にとって、「仕事と生
活の調和の実現」は本当に切実な問題ですが、それはさておき、私が担当
していた「次世代育成支援の社会的基盤の構築」に取り組むためには、相
当規模の財源が必要です。重点戦略では、国民が希望する出産・子育てを
実現するのに必要な社会的コストは約1.5~2.4兆円と試算されてお
り、このコストについては、次世代の負担とすることなく、国・地方・事
業主・個人の負担・拠出の組合せにより支えることが必要だとされていま
す。びっくりするくらい大きな金額ですが、これで様々な保育サービスが
充実し、安心して子育てできるのだったら・・・。私たち国民の選択の問
題です。
現在、厚生労働省では、「新たな次世代育成支援の枠組み」の構築に向
け、税制改革の動向を踏まえつつ、その具体的な制度設計の検討を始めた
ところです。また、先般、「新待機児童ゼロ作戦」を公表しました。約1.8
万人という顕在化している待機児童はもちろん潜在的な需要も視野に入れ、
希望するすべての人が安心して子どもを預けて働くことができるサービス
の受け皿を確保し、待機児童をゼロにするという目標を掲げ、今後3年間
を集中重点期間として取組を進めることとしています。
今回のコラムでは、子育て支援に関する政府の検討状況の一部を御紹介
しました。子育て中のみなさんをはじめ、子育て行政について御要望や御
不満など多々あると思います。ぜひ声をあげていただき、みなさんと一緒
に子育てしやすい社会をつくりあげていきたいと思います。
・「子どもと家族を応援する日本」重点戦略検討会議について
(内閣府ホームページ)
http://www8.cao.go.jp/shoushi/kaigi/ouen/index.html
・新待機児童ゼロ作戦について(厚生労働省報道発表資料)
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2008/02/h0227-1.html
滋賀県健康福祉部子ども・青少年局 原田 真紀子
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6 諸外国における税制の動き
税のモラル~モラルが高いのはどういう人?
春を迎え、甲子園では高校球児たちの熱闘が繰り広げられました。
一方、ドイツの税の世界でも熱闘が繰り広げられています。というのは、
最近、ドイツでは大規模な脱税事件が発覚し、税務当局が脱税の捜査に躍
起になっているからです。何しろ、追徴税額が3億~4億ユーロ(約490
億円~650億円)と言われていますから、重大な事件です。蛇足ですが、
ドイツ政府は、情報提供者から脱税に関する情報を500万ユーロ弱(約
8億円)で買ったそうです。(このことについては、ドイツ国内でも賛否
両論ありますが、ドイツ連邦財務省は、「良い投資であった」とコメント
しています。)
こうした中、ドイツ連邦財務省のウェブサイトに、「税のモラル―自発
的な納税と脱税の緊張関係」と題する報告書が掲載されました。この報告
書は、「脱税はいかなる場合にもしてはいけないことである」と考える人
の割合によって税のモラルを測定しようとしており、いくつかの興味深い
分析や主要先進国の国際比較がなされています。いくつかご紹介しましょ
う。
― 他の納税者の行動を信頼している人ほどモラルが高い!?
他の納税者は皆正しく納税する、と考えているグループほど脱税に対す
る見方が厳しく、税のモラルを高く持っているようです。特に、ドイツや
デンマークではその傾向が強く現れています。
― 政府を信頼している人ほどモラルが高い!?
他の納税者に対する信頼と同じことが政府に対しても言えるようです。
ほぼすべての国において、脱税に対して厳しい見方をしている人の割合が、
政府を信頼していないグループよりも、政府を信頼しているグループにお
いては10~20%程度高くなっています。
― 宗教を大切に思う人ほどモラルが高い!?
宗教を大切にしているグループとそうでないグループでは、脱税に対す
る見方が大きく異なっているようです。ドイツでは、脱税に対して厳しい
見方をしている人の割合が、宗教を大切だと考えないグループよりも、宗
教を大切にしているグループにおいては25%以上高くなっており、カナ
ダでは30%以上、フィンランドでは50%以上高くなっています。
では、この報告書の中で、最も税のモラルが高いとされている国はどこ
でしょうか?
・・・答えは、我が国、日本です。
「脱税はいかなる場合もしてはいけないことである」と考える人の割合
によって税のモラルを測定することが適切かどうかはともかくとして、こ
の調査で見た税のモラルは主要先進国中、日本が突出して高く、80%以
上の人が「脱税はいかなる場合にもしてはいけない」と考えているようで
す。ちなみに、ドイツではそのように考える人の割合は60%弱となって
います。
納税者間の信頼関係、政府と国民との信頼関係、信仰心(人間と神仏と
の信頼関係?)・・・。人間が作り出した「制度」には、こうした極めて
人間的な要因が影響している面があるように思います。心機一転の春、最
も身近な制度の一つである税制を通じて、「国のかたち」を考えてみるの
も一興ではないでしょうか。
主税局調査課 篠原 健
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7 編集後記
平成16年3月に始まった税制メルマガは、今号で通算50号になりま
した。そこで、税制メルマガの創刊当時に編集を担当されていた「あられ」
さん(原田さん)に、久しぶりに原稿(「働き方の見直しと子育て支援策
の充実に向けて」)を書いてもらいました。今後の日本にとって最大の課
題は、長年言われていることですが、一層の少子高齢化に対応した経済社
会の構築だと思います。そのために、国・地方・事業者・個人それぞれが
それぞれの責任を果たしていく必要があります。
(高宮)
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ご意見募集のコーナー
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民の皆様から、御意見を募集しております。
http://www.iijnet.or.jp/cao/kanbou/opinion-zeicho.html
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登録内容の変更 → http://www.mof.go.jp/haisin/henkou1.htm