税制メルマガ

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税制メールマガジン 第13号

2005年02月28日 | 税制メルマガ
税制メールマガジン 第13号           2005/2/28

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◆ 目次

1 巻頭言 ~もう1つのワールドカップ?と2050年の希望~
2 税制をめぐる最近の動き
3 若手はこう見る ~「税収」の意味とは?~
4 税制コラム ~法人税のはなし~
5 編集後記
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1 巻頭言 ~もう1つのワールドカップ?と2050年の希望~
いよいよサッカーのワールドカップ最終予選がはじまりました。第1戦の2月9日の試合にはまさに釘付けとなったファンの方も多かったと思います。来年のドイツ大会へ向けて、今後さらにヒートアップすることは間違いないでしょうね。ジーコ・ジャパンのますますの健闘をお祈りします!

さて、今年7月、大阪で、もう1つのサッカーの世界大会が開催されます。といっても、人間のサッカーではなく、ロボットによるサッカー大会です。RoboCup(ロボカップ)ということばを聞かれた方も多いのではないかと思います。1997年に第1回の世界大会が名古屋で行われて以来、日本では、これまで、2002年、第6回世界大会が福岡・釜山共催で行われ、今年2005年、第9回世界大会が大阪で行われることとなっています。

ロボカップは、「ロボット工学と人工知能の融合、発展のために自律移動ロボットによるサッカーを題材として日本の研究者らによって提唱された国際的なプロジェクト」です。ロボカップ2005大阪の日本向けサイトには、『かつて、アポロ計画は、「人類を月に送り込み、安全に帰還させる」という目標を立て、その目標に向かって多くの人々が参加し、月面に人が立つという人類の偉業を成し遂げました。このような夢のある目標を立て、その目標にチャレンジする課程で生み出された活動が、私たちの生活に応用されるようなプロジェクト。それがランドマーク・プロジェクト(記念碑的事業)です。ロボカップは、「西暦2050年、サッカーの世界チャンピオン・チームに勝てる、自律型ロボットのチームを作る」という夢に向かって人工知能やロボット工学などの研究を推進し、様々な分野の基礎技術として波及させることを目的とした新たなランドマーク・プロジェクトです。』と高らかにうたわれています。アポロ計画に比する壮大な夢と遊び心がある目標設定がとてもいいですね。

 このロボカップでは、2足歩行の自律型ロボットが登場して「サッカー」をするヒューマノイドリーグをはじめとしたロボカップサッカーが注目を集めますが、ほかにも、大規模災害にロボットを応用しようというロボカップレスキュー、次世代の技術の担い手である子供たちを育成しようというロボカップジュニア、研究者のシンポジウムなどの活動も同時におこなわれています。

実際、2050年に、めでたく、人間対ロボットのサッカー試合が行われることを期待したいところですが、この2050年に、われわれの社会はどのようになっているのでしょうか。わが国の人口は、「将来推計人口」(国立社会保障・人口問題研究所)の中位推計によると、およそ、1億60万人、生産年齢人口(15歳~64歳)は、5,389万人となり、総人口に占める割合は、53.6%まで低下することが見込まれています。平均年齢は、51.3歳になります。66.7万人が生まれる一方、161.7万人の方がお亡くなりになると予想されています。こういう数字をならべると、どうも将来に対して悲観的な気分になりがちです。しかし、平成15年度の年次経済財政報告(2003年10月)は、「高齢化・人口減少への挑戦」という章を設けて、経済成長の制約要因となりうるこの問題への対処についていろいろ検討を加えていますが、重要な「かぎ」として、わが国が労働生産性を高めることができるかどうかという点をあげています。

いま、行われているロボカップの取り組みが、たとえば、わが国の労働生産性の向上というような具体的な経済的関心事項とどのぐらいかかわるかどうか、まだ未知数だと思いますが、このような取り組みも、人間の持つ可能性を大きく高めるものとして重要なものであることは間違いないように思います。人間とロボットがサッカーをするというような面白そうなことが起きる将来であれば、ことさら悲観ばかりしていなくてもよいのかも。科学技術の壮大な目標と遊び心に本当に期待したいところです。
               主税局広報担当企画官  渡部 晶

・ロボカップ国際委員会公式ホームページ(英文)
http://www.robocup.org/02.html

・ロボカップ日本委員会公式ホームページ
http://www.robocup.or.jp/index.html

・ロボカップ2005大阪日本向けサイト
http://www.robocup2005.jp/index.php

・ロボスクエア(ロボカップ2002福岡・釜山大会を機会に福岡市が開設)
http://www.robosquare.org/index.php

・国立社会保障・人口問題研究所ホームページ
http://www.ipss.go.jp/

・平成15年度年次経済財政報告(内閣府ホームページの白書のサイトからご覧ください。)
http://www5.cao.go.jp/keizai3/whitepaper.html
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2 税制をめぐる最近の動き
平成17年度税制改正案は現在、「所得税法等の一部を改正する法律案」として国会で審議がなされています。

・「所得税法等の一部を改正する法律案」は下記URLにてご覧いただけます。
http://www.mof.go.jp/houan/162/houan.htm#st

税制調査会は今年に入ってから、2回目の審議を2月25日に行い、財政及び社会保障関係予算の現状などについて、財務省・総務省から説明した後、宮島委員から社会保障制度の一体的な見直しについてご報告いただき、その後、議論が行われました。3月にも、社会保障に関する議論を行う予定になっています。

・税制調査会の資料は、下記URLにてご覧いただけます。
http://www.mof.go.jp/singikai/zeicho/top_zei3.htm

・これまでの審議の概要等は、下記URLにてご覧いただけます。(順次掲載を行っているため、直近の開催分が未掲載の場合がございます。)
http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/sy012.htm
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3 若手はこう見る ~「税収」の意味とは?~

「景気がよくなれば税収は増加し、逆に景気が悪くなれば税収は減少する。」これは誰もが当たり前のように感じていることであり、もちろん間違っているわけではありません。事実、バブル期(平成2年度)に過去最高の税収(約60兆円)を記録して以来、景気の低迷やそれに伴う減税措置によって税収は減少の一途をたどり、ここ数年はピーク時の7割程度である40兆円台前半で推移しています。

では両者の関係がそれほど単純なものかといえば、実はそうでもありません。Y=aX+bぐらいで求められれば気楽なものですが、実際には、税金の種類ごとに課税する対象も異なり、考慮すべき変数は山ほどあります。そういう中で、毎年末の予算編成過程において、税制改正の中身がどうなるかも横目で睨みながら、税収の積算作業を進めていくわけですが、必ずしも信頼できるデータがない場合もあります。ある程度は予測に頼らざるを得ない場合もあります。経済状況に大きな変化が生じるかもしれません。税収の見込み(予算)と結果(決算)を一致させる(つまり「当てる」)には、まさに神業が求められるとも言えます。

ところで、税収は数字です。数字は人々の感覚に訴えます。租税原則と呼ばれるものの一つに「税制が簡素であること」というものがあり、皆さんにとってわかりやすい税制を目指しなさいということですが、実際には、多くの場合、法律を読んだって、資料を見たって、それだけで簡単に理解できるというものではありません。そこで、皆さんが税をどうやって肌で感じるかといえば、大きなポイントの一つは数字、すなわち「自分たちがいくら払っているのか、払わなければならないか、負担がいくら変わるのか」ではないかと思います。

そのような観点から見れば、税収の見積もり作業は、単に当たった外れたという以上の重要な意味を持っています。皆さんに税制に対する理解を少しでも深めていただくとともに、できるだけ正確に「感じて」いただくためにも、税収の見積もりを担当する者として、肝に銘じておかなければと思っています。

余談ですが、最近、政策評価の取り組みが進められていますが、自分の仕事の出来栄えが数字で現れてしまうのも大変だなあと思う今日この頃です。
  主税局総務課  柴田 智樹
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4 税制コラム ~法人税のはなし~

 今回は、法人税の沿革についてお話します。
前回お話しましたように、日本では、明治20年(1887年)に所得税が創設されましたが、この所得税が、明治32年(1899年)に全面的に改正され、法人に対しても所得税が課されるようになりました。その後、昭和15年(1940年)に「法人税」という独立の租税になり(税率は一律18%)、戦費調達などの目的で、法人税の負担は年々増加していきました。

 戦後、昭和25年のシャウプ勧告に基づく税制改革により、税率は一律35%とされました。シャウプ勧告以来と言われる抜本的な税制改革が行われた昭和63年12月の税制改正では、当時42%となっていた法人税率について、国際的にみて税負担水準が高いということで、平成2年までに段階的に37.5%に引き下げるなどの改正が行われました。

 その後、企業活動の活性化や外国の負担水準との均衡の観点から、平成10年度及び平成11年度税制改正において、税率の引下げが行われた結果、現在の法人課税の実効税率(39.54%)は、他の先進主要国と比較して遜色のない水準となっています。また、平成10年度税制改正においては、経済社会の構造変化やグローバル化の進展にあわせて、経済活動に対する税の中立性を高めるため、企業業績を的確に把握するなど課税ベースの大幅な見直しが行われました。

 さらに、平成13年度及び平成14年度税制改正において、商法改正等に伴うインフラ整備として組織再編税制や連結納税制度を導入したほか、平成15年度税制改正においては、わが国を支える産業・技術の創出に不可欠な研究開発・設備投資を促進する政策税制を集中・重点的に行うなど、中小企業を含めた企業活動全般を積極的に支援する思い切った措置を実施しています。

以上のように、法人税については、国際的に整合性がとれ、企業活動に歪みの少ない中立的な税制をめざして、課税ベースを適正化しつつ、税率を引き下げるとともに、企業の競争力強化や産業の構造改革に資するための制度を取り入れてきました。今回は、大まかな法人税の改正の経過をかいつまんでお話しましたが、このほかにも、法人と株主の負担調整の問題、中小企業や公益法人に関する税制、商法・企業会計の動向や国境を越える企業活動の実態との関係、さまざまな租税特別措置など、とても幅広い論点があります。法人税については、こうした問題も含め、その時代の要請に応じて、適切かつ柔軟に対応していくことが必要です。
                  主税局調査課  原田 真紀子

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5 編集後記
関東では2月23日に春一番が吹きました。寒がりの私としては、暖かくなるのはありがたいのですが、花粉の大量飛散が心配です。次回発行は3月下旬の予定です。(あられ)
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ご意見募集のコーナー
 税制調査会では、「少子・高齢化社における税制のあり方」につきご意見募集中です。
http://www.mof.go.jp/singikai/zeicho/iken/iken.htm

このメールマガジンについてのご意見ご感想はこちらへお願いします。
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税制メールマガジン 第12号 

2005年02月07日 | 税制メルマガ
税制メールマガジン 第12号           2005/1/28

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◆ 目次

 

1 巻頭言 2005年(平成17年)のはじめに

     ~二本松藩の「戒石銘」のてん末

2 税制をめぐる最近の動き

3 若手はこう見る ~「格差」について~

4 税制コラム ~個人所得課税のはなし~

5 編集後記



・・・・・・・・・・お知らせ・・・・・・・・・・

首都圏その他の地域の電車内(1月14日~2月28日のうちの8日間か

ら1か月間)と、検索サイト「Yahoo! JAPAN」のトップページ上

(1月31日~2月13日)において、税制についての広告を掲載していま

す。テーマは「少子・高齢社会における税制」です。日本人の平均年齢は

42.1歳(2002年)ですが、国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、

2050年には平均年齢が51.3歳になるそうです。人口構成が大きく変わっ

ていく中での税制のあり方について、一緒に考えてみませんか。

↓こちらから広告をご覧いただくことができます。

http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/zeinohanashi/index.html

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1 巻頭言 2005年(平成17年)のはじめに

~二本松藩の「戒石銘」のてん末



2005年(平成17年)になりました。1年のはじめは、やはり、過去を

ふりかえり、今後を展望するということが世のならいですね。昨年6月に

公表された税制調査会の『わが国経済社会の構造変化の「実像」について』

のキーファクト(『今世紀日本は「人口減少社会・超高齢化社会」』)に

関連しますが、お正月の新聞各紙でも、人口問題がおおきく紙面をにぎわ

したことに注目したいと思います。



日本の歴史を振り返ると、日本の人口成長が直近の時代で停滞したのは

江戸時代の後半の125年間(享保(1721)から化政(1846)年代)です。

1600年には、1227万人(速水融氏の推計)ぐらい(論者によって諸説あ

りますが、1000万人台とみられています。)でした。このあと、江戸中期

までは急速に増加し、1721年には3128万人ぐらいになったと推定されて

いますが、ここからは停滞したというのが通常言われているところです。

この時代は、社会全体の消費は増大している中、人口停滞とともに、耕地

と石高の成長が停滞してきたことから、穀物生産に課税を頼っていた幕府・

藩の財政は悪化することとなりました。



今後の財政問題では、先進諸国で共通の現象である、高齢者の人数の増

大による財政的な負担増が予想されていますが、当時の日本では、平和に

なり戦闘集団が不要になったのにそれを維持したこと、経済システムが変

化してきたにもかかわらず、土地を基本とするという理念を転換できず、

課税ベースを市場経済と非農業に求められなかったことなどが要因として

挙げられています(「文明としての江戸システム」第6章参照)。



このような状況の中で、八代将軍吉宗の享保の改革以降、財政再建も大

きな目的とした幕政改革・藩政改革が行われました。現代の平成の世にお

いても、国・地方自治体がお互いに刺激しあいながら、各地で様々な行財

政改革が行われているのと、非常に近しいものを感じます。成功した藩政

改革として、米沢藩(上杉鷹山)や信州松代藩(恩田杢)が代表例として

あげられます(「武士道と現代」第三章参照)。農耕中心の時代であるせ

いもあるのかもしれませんが、改革の成果が出るまで非常に長い年月がか

かるのが印象的です。



ほぼ同時期、東北の二本松藩でも、藩政改革が行われていました。改革

を進めていた藩儒学者岩井田昨非(いわいださくひ)の進言で、藩政改革

と綱紀粛正の指針として、藩士を戒める目的で「戒石銘」が藩主の命で刻

まれ、1749年(寛延2年)3月に完成しました。



爾俸爾禄(なんじのほう なんじのろくは)

民膏民脂(たみのこう たみのしなり)

下民易虐(かみんはしいたげやすきも)

上天難欺(じょうてんはあざむきがたし)

(意味)お前がお上から戴く俸禄(給料)は、人民の汗と脂の結晶であ

る。下々の人民は虐げ易いけれども、神をあざむくことはでき

ない。



非常に緊張感ある戒めだと思いませんか。現在でもこの碑は二本松の霞

が城址にあり、公務員の綱紀粛正などの際によく引かれます。



ただ、当時の二本松は凶作で、各村では年貢米の減免を訴えている状況

下、一修験僧が戒石銘の解釈を「下民は欺き易く、虐げても民の膏脂をし

ぼり、もってなんじらの俸禄とせよ」と誤って伝えたところ、昨非の改革

に反感を抱いていた者たちの扇動もあって、農民による一揆にまで発展し

ました。誤解は解けたものの、これをきっかけに昨非への非難は高まり、

1753年に辞職したとのことです。(以上、福島県二本松市のホームページ

の「歴史・文化」を参考。)



大きな改革には、「公務」に携わるものにとって高い緊張感が要求され

ることは間違いなく、この「戒石銘」には非常に感銘を受けますが、それ

以上に私には、その後のてん末が大いにショックでした。広報・コミュニ

ケーションは、本当に重要だなと思います。新年にあたって、ここらあた

りを十分かみしめていきたいと考えます。皆様とのコミュニケーションを

どうとっていったらよいのか、今年もいろいろ試行錯誤を続けてまいりた

いと存じます。今年もどうぞよろしくお願い申し上げます。



主税局広報担当企画官 渡部晶



・税制調査会基本問題小委員会『わが国経済社会の構造変化の「実像」

について』(平成16年(2004年)6月)

http://www.mof.go.jp/singikai/zeicho/top_zei2.htm

・福島県二本松市のホームページ「歴史・文化」

http://www.city.nihonmatsu.fukushima.jp/history/top.html

・笠谷和比古著「武士道と現代」(扶桑社文庫0397 2004年)

・鬼頭宏著「文明としての江戸システム」(日本の歴史19 講談社2002年)

・札幌市職員長谷部英司さんが運営されている行革のリンク集

http://www.hasebe-jp.com/link/

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2 税制をめぐる最近の動き



1月17日に「平成17年度税制改正の要綱」が閣議決定され、それに基

づき、現在法案化作業が行われているところです。今後は2月から3月に

かけて、国会で法案の審議がなされることになっています。

・「平成17年度税制改正の要綱」は下記URLにてご覧いただけます。

http://www.mof.go.jp/seifuan17/zei001_a1.htm



また、税制調査会も1月25日から審議を再開しており、今後、2月か

ら3月にかけて、社会保障制度に関する勉強会を実施し、その後、個別税

目について議論を行っていくことになっています。

・税制調査会の資料は、下記URLにてご覧いただけます。

http://www.mof.go.jp/singikai/zeicho/top_zei3.htm

・これまでの審議の概要等は、下記URLにてご覧いただけます。(順次、

掲載を行っているため、直近の開催分が未掲載の場合があります。)

http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/sy012.htm

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3 若手はこう見る ~「格差」について~



最近、「勝ち組や負け組」、「負け犬」など「格差」が話題になってい

ます。経済学者や社会学者の方々が書かれた様々な本や週刊誌の特集記事

が出ていますし、また、その中で紹介される「格差」も、収入格差、階層

格差、地域格差、最近では“希望格差”など様々です。



日本の「格差」(ここでは、“収入”格差)について調べてみました。

日本の社会全体でみると、諸外国と比べて、「格差」は大きくないそうで

す(ただし、各年齢層では状況は異なります。例えば、若年層の“収入”

格差は、社会全体の格差に比べて小さいですが、漸増傾向にあります。)。



しかし、“それほどの”「格差」がないはずの社会が、「勝ち組や負け

組」、「負け犬」などの言葉を通じると、(個人差はありますが、)「二

極化する(格差)社会」へと変わります。

これは、「格差」を評価する際に、個人の価値観がその判断基準に影響

を与えることによるものなのかも知れません。



しかし、“収入”格差のように、社会全体でみると、諸外国と比べて、

大きくないはずの「格差」が、個人では“認識される”ことがあること

を鑑みると、ひょっとすると自分も含め、日本の社会全体で“認識して

いない(されていない)”「格差」があるのではないかとの疑念もある

わけです。

 

今後、“認識していない(されていない)”「格差」をいかに認識し、

その将来に与える影響を見据えて対応していくのか(もちろん、対応する

必要があるのか、も含めてですが、)をよく考える必要があるのではない

かと“認識しています”。



主税局調査課 西野健



(日本の「格差」について書かれた本)

・日本の経済格差(1998、橘木俊詔、岩波新書)

・不平等社会日本(2000、佐藤俊樹、中公新書)

・日本の所得分配と格差(2002、宮島洋+連合総合生活開発研究所、東洋

経済新報社)

・「社会階層・意識に関する研究会」報告書(2003、財務省財務総合政策

研究所)

・封印される不平等(2004、橘木俊詔他、東洋経済新報社)

・希望格差社会(2004、山田昌弘、筑摩書房)



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4 税制コラム ~個人所得課税のはなし~



このコーナーでは、主要な税目についての沿革をシリーズで紹介してい

きます。これまでも、「若手はこう見る」のコーナーなどで税制が抱える

課題などを取り上げていますが、それとあわせて、今後の税制のあり方を

考える上での参考にしていただけたら幸いです。



~個人所得課税のはなし~

国に納められる所得税は、国税収入の中で最も高いウェイトを占めてお

り、地方税の個人住民税も、地方税収の中で固定資産税についで二番目に

高いウェイトを占めています。このように現在重要な役割を担っている個

人所得課税ですが、歴史的にみれば新しい制度であるといえます。



世界で最初に個人所得課税を導入したのは、18世紀末のイギリスでし

た。その後、19世紀半ば以降から主要国において導入され、日本でも明

治20年(1887年)に所得税が創設されました。それまでは、当時の中心

的な産業が農業であったことから、地主がその土地の収穫力に応じて納め

る「地租」が国税収入の中心でした。所得税の創設は、財政需要の増大へ

の対応のほか、地租と酒税に税負担がかたよっている税制を見直し、異業

種間の不公平を是正するという意味がありました。



所得税は、昭和24年の「シャウプ勧告」にもとづく改革により、課税ベ

ースを包括的にしつつ、税率の引下げ、基礎控除等の控除の充実が図られ

ました。また、所得税は累進構造を有しているので、所得水準が上昇する

と自動的に適用される税率が高くなります。このため、高度成長期にはし

ばしば減税が実施されました。



シャウプの税制改革以来と称される抜本的な税制改革が行われたのは、

昭和62年9月と昭和63年12月の税制改正でした。勤労者を中心とする

税負担の累増感を解消するため、高い累進性を持つ所得税の税率構造が見

直され、10.5%~70%(15段階)であった税率が10%~50%(5段階)に

改められるとともに、控除の創設・拡大などが行われました。一方で、社

会共通の費用をみんなで負担するという考え方を背景に、消費全般に広く

薄く負担を求める消費税が創設されました。



平成6年には、当面の経済状況に配慮して、消費税率引上げ(3%→5

%)に先行して個人所得課税の負担軽減が実施されました。平成11年には、

当時の著しく停滞した経済状況への臨時異例の対応として定率減税(所得

税額の20%を控除等)が導入されました。この定率減税については、平成

17年度税制改正案において、2分の1に縮減されることとなっています

(実施は平成18年1月から)。



このように、個人所得課税等の日本の税制は、経済・社会情勢の変化と

密接不可分の形で変遷してきました。

今後は、三位一体改革の一環として、平成18年度税制改正において所

得税から個人住民税への本格的な税源移譲を実現する上で、所得税・個人

住民税の抜本的見直しを行うこととなっており、税制調査会においても具

体的な制度設計の検討が進められることになります。



主税局調査課 原田真紀子

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5 編集後記



大学入試センター試験の「現代社会」で、日本政府の財政赤字や国民負

担率の問題が出題されました。仕事柄、いつも目にしている図表が載って

いましたが、試験問題というだけでなぜか緊張してしまうものですね。公

的サービスとそれをまかなうための国民負担の現状や今後の課題について、

若い方々にも関心をもっていただけるよう、私たちとしても努力してまい

りたいと考えています。次回発行は2月下旬の予定です。(あられ)

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ご意見募集のコーナー



 税制調査会では、「少子・高齢化社における税制のあり方」につきご意

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