税制メルマガ

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税制メールマガジン 第60号               2009/3/4

2009年04月26日 | 税制メルマガ
税制メールマガジン 第60号               2009/3/4

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◆ 目次
1 巻頭言
2 税制をめぐる最近の動き
3 振り込め詐欺・還付金詐欺にご注意!
4 主税局職員コラム~分水嶺世代?~
5 主税局職員コラム~法人税って何でしょう?~
6 諸外国における税制について
  ~イギリス:2008年度プレ・バジェット・レポート~
7 編集後記

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1 巻頭言
 
 3月になりました。税制でも多くの制度が年度末を区切りにしています
が、学生さんやお子さんをお持ちの家庭では、卒業・進学・入学の季節を
お迎えのことと思います。
 今回はその学校に関連して、租税教育の活動を御紹介します。国税庁で
は、毎年、学校当局との連携により、社会科活動の一環として税務署など
から講師を派遣して租税教室を実施しています。平成19年度は小中学校
を中心に39,160回開催しました。中学生・高校生の皆さんからは、
毎年、税に関する作文も募集しており、昨年度は約62万件の応募をいた
だきました。また、租税教育に関連して、財務省のホームページには、税・
財政について学べるキッズコーナー(http://www.mof.go.jp/kids.htm)
があり、そちらにも年間30万回を超えるアクセスをいただいています。
 租税教室は基本的に1回の講義形式ですが、みなさん熱心に聴いて下さ
います。さらに研究を続けている学校もあって、例えばI県のM小学校で
は毎年、6年生100余名全員で財政再建に向けた提言書をとりまとめて
送ってきてくださっており、一昨年には、非公式ながら御礼の手紙を財務
大臣から子供達宛てにお送りしました。
 税金とその使途、日本の財政の姿を知る中で、将来をみつめる子ども達
の眼は確かです。税のムダづかいをまずやめるべきという意見、国の財政
状況をしっかりと国民に説明すれば協力してくれるという意見、国民みん
なが我慢し力を合わせていくことが大切という意見、そして、現実的・具
体的な提言の数々。
 税は民主主義の根幹といわれますが、その原点を改めて教わる思いです。
政策作りの一端を担う者として、このような活動を大切にするとともに、
子ども達の意見や想いを重く受け止めて仕事をしていきたいと思っています。

                  主税局総務課企画官 宇波 弘貴


・・・・・・・・・・・・・・・お知らせ・・・・・・・・・・・・・・
 
 2月27日(金)、財務省ホームページに租税教育用コンテンツ「はっ
ぴぃ★タウン」を公開しました。
 小学校高学年を対象としたコンテンツですが、“税”について楽しく学
べる内容としておりますので、是非、ご覧ください。
 
「はっぴぃ★タウン」は、下記URLにてご覧いただけます。
http://www.mof.go.jp/kids/index.html

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2 税制をめぐる最近の動き
 
 平成21年度税制改正に関する法案「所得税法等の一部を改正する法律
案」については、国会で審議されています。

・法案の内容は、下記URLにてご覧いただけます。
http://www.mof.go.jp/houan/171/houan.htm

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3 振り込め詐欺・還付金詐欺にご注意!

 警察庁では2月を振り込め詐欺の撲滅月間とし、被害防止と詐欺グルー
プ摘発を目指すとの発表がありました。その効果もあってか、先日も、だ
まされたふりをして詐欺グループを逮捕し、また、被害口座から現金を引
き出そうとした男を逮捕したとの報道がありました。
 「振り込め詐欺・還付金詐欺にご注意を」という広報を昨年もこのメル
マガに掲載しましたが、警察庁ホームページによりますと、平成20年の
一年間で、振り込め詐欺の発生件数が2万件超(認知件数)、被害金額も
275億円超と、いずれも平成19年より増加していているとのことです。
(警察庁HP:http://www.npa.go.jp/safetylife/seianki31/1_hurikome.htm)
 
 詐欺グループは次々と新しい手口を編み出して、皆様の大切なお金をだ
まし取ろうとしています。税務署への確定申告書の提出期限(今年は3月
16日)も近づき、納税や還付に絡み、詐欺事件が発生する恐れもありま
すので、引き続き十分ご注意ください。

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4 主税局職員コラム~分水嶺世代?~

 主税局調査課長の新川です。

 まずは、当課のご紹介。課員の平均年齢は、40代後半の私を除いて計
算すれば、20代という大変若い世代で内外の租税制度などの調査を実施
しています。かく言う私も世間的にはまだまだ若輩ですし、気分だけは2
0代のままなので課員諸君と同世代のつもりでいます(とはいえ、遠目に
も色鮮やかなコートを着て出勤してくる男性職員がいたり、奥様とほっぺ
をくっつけあった仲睦まじいツーショット写真を何枚も見せてもらったり
すると、なかなか勝負にかなわない部分があることも事実です)。

 さて、「世代」をめぐって一つの興味深い試算があります。少し前のも
のになりますが、平成17年度の年次経済財政報告(経済白書)で、一人
当たりの生涯を通じた税制や社会保障などの公的サービスに関する受益と
負担の状況を世代ごとに推計した試算(※)が示されました。

 これによると、昭和30年代生まれの私はちょうど生涯を通算した受益
と負担の差し引きがほぼゼロ、すなわち、税や保険料で支払う負担と年金
や医療など政府から受ける受益の合計を一生分で平均すればトントンとい
うことになります。他方、わが調査課職員の大半を占める74年~83年
生まれのグループでみると、生涯を通じた受益と負担は一世帯あたり差し
引き1,660万円のマイナスとなるのだそうです。

 前提の置き方によって試算結果は変わりうるものなので、数字の水準そ
のものにとらわれて損得勘定でものごとを云々するのは適当でないと思い
ますが、受益と負担がトントンとなる私の世代を分水嶺として、それより
先輩世代となるほど受益超過の程度が大きく、逆に若手世代となるほど、
負担超過の度合いが大きくなるという結果が得られています。

 この試算結果をみて、皆さんはどのような感想をお持ちになったでしょ
うか。分水嶺世代の私としては、戦後の復興を支え、今日の繁栄と平和な
日本を築いていただいた長寿世代の方々にはその御労苦に感謝せねばなり
ませんし、他方、これからの日本を支える将来世代に過度な負担をかける
ことは偲びないことです。この試算は、世代間の損得勘定や対立を示すと
いうよりは、少子高齢化の進展という現実の前で、世代間の支えあいや負
担の公平についてどのように調和を図っていったらよいかという問題提起
を私に迫るものでした。読者の皆さまが税や社会保障の問題を考える際の
一助になればと思います。

(※)試算結果について詳しくお知りになりたい方は内閣府のホームペー
ジをご覧ください。
http://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je05/pdf/05-00303.pdf 227ページ

                    主税局調査課長 新川 浩嗣 

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5 主税局職員コラム~法人税って何でしょう?~

 皆さんは「法人税」と聞いてどんなことを想像されますか。企業の経営
者の方ならともかく、自分とは縁がないと思われている方も多いのではな
いでしょうか。
 でも、そんな思いをひとまず脇において、私が普段仕事をしながら目に
したり、耳にしたりする、以下のような議論について考えてみて頂けませ
んか。 

 まずは、法人税率を巡る議論を紹介しましょう。

(グローバル企業の経営企画部に勤務するAさん)
 法人税は企業にとってコストです。外国と比べて日本の法人税は高すぎ
るので、日本企業は国際的な競争に勝てなくなってしまいます。国際的な
競争に勝てなければ従業員に十分な還元もできなくなってしまいます。今
の税率は引き下げるべきだと思います。
(主婦のBさん)
 法人税は国の大切な収入源のはずです。多くの所得を上げている企業が
税を負担すべきであり、税率を引き下げるべきでないと思います。

 両者の意見は全く相反する議論ですが、今後の税制改革を進めるうえで
は、一定の方向性を出さなければいけない課題です。

 次に、寄附税制を巡る議論です。

(公益活動に取り組もうとしているCさん)
 自分たちの活動を支えるための資金が必要です。法人に寄附を求めてい
ますが、なかなか寄附が進まないため、寄附を促すために優遇措置を拡大
していく必要があると思います。
(投資家のDさん)
 そもそも、企業は利益の極大化といった目標に縛られているのではない
でしょうか。社会的貢献が求められる風潮はありますが、税制で企業に働
きかけるべきものなのでしょうか。

 公益活動の重要性はいうまでもありませんが、よくよく考えてみると
「法人の寄附」をどう考えるかは悩ましい問題です。
 昨年、話題になった本に、クリントン政権で労働長官を務めたロバート・
ライシュ氏の『暴走する資本主義』がありますが、そこには次のような一
節があります。

 “超資本主義の下で利益にも影響が及びそうなことを企業にさせるには、
規制するしかないのである。 (中略) 企業は、宣伝効果があってそれ
によって利益増に貢献する範囲内なら、まさにその範囲内でのみ、カネを
寄付する。 (中略) 超資本主義の下では、企業は消費者に仕えるため、
そして投資家のもうけのためのみに存在する。これが企業が行う唯一の
「奉仕」なのだ。”

 皆さんは、こういう意見をどう思われますか。
 こうした議論は、まさしく「企業」観に関わる問題といえましょう。

 さて、最後に、法人税の必要性を巡る議論です。もう1度ライシュ氏に
登場願いましょう。

 “間違った人格化の結果、正確には人間に帰属しているはずの義務と権
利が企業にも与えられている。 (中略) 法人税については、一般の人
々は企業が支払っているという間違った印象を持っている。 (中略) 
しかし、税金を払うことができるのは人間のみである。つまり現実には、
法人税は(間接的に)その企業の消費者や株主や従業員が払っているのだ。”

 氏は、こうした考え方に基づいて、法人税を廃止し、全ての法人所得を
株主の個人所得と同じように扱うことを提唱しています。更に、その副次
的効果として、“企業は税金を支払っているのだから政治のプロセスに参
加する資格があるのだという、広く流布している間違った概念に風穴を開
けることができる”とまで踏み込みます。

 以上、色々な議論を紹介しましたが、法人税のあり方には、単に○○と
いう企業がいくらの税金を払ったといった話だけにとどまらない、企業と
は一体どういう存在であり、我が国の中でどういう役割を期待していく必
要があるのか、といった思想・哲学が投影されているものだという実感を
改めて強くする今日この頃です。

 果たして“正解”が存在しうるのか、私には分かりません。
 ただ、日々、企業活動が行われている中、経済の状況等に応じて法人税
制の見直しを求める声がやむことはありません。そうした声に応えてどの
ような法人税制改革を行うか、は優れて政治的な判断によるところも大き
いわけですが、その背景にどのような企業観・価値判断があるのか、分か
りやすく示していくことが大切なことだと感じています。

               主税局税制第三課審査室長 関 禎一郎

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6 諸外国における税制について
  ~イギリス:2008年度プレ・バジェット・レポート~

 2008年11月24日、イギリス財務省は、今般の世界経済危機を受
けた経済対策を盛り込んだ2008年度プレ・バジェット・レポートを発
表しました。新聞等でも大きく報道されたのでご存知の方も多いかと思い
ますが、経済対策の中には、付加価値税(日本の消費税に相当)の一時的
な引下げ(17.5%から15%)が含まれていました。経済対策の一環
として付加価値税を引き下げたのは、主要国の中でイギリスしかなく、
EUの他の加盟国や国際機関からの批判を受けました。今回の外国税制コ
ラムでは、このイギリスの付加価値税の引下げについて取り上げたいと思
います。

(1)1週間で税率を引き下げられる理由
 付加価値税の引下げの発表が、昨年11月24日、実際に税率が引き下
げられたのは、同12月1日です。発表から引下げまで、ちょうど1週間
ということになります。
 なぜ、このような短期間での税率引下げが可能だったのか、不思議に思
われる方も多いのではないかと思います。実は、イギリスでは、付加価値
税法において、付加価値税率を引き上げたり引き下げたりする権限が財務
大臣に与えられているのです(ただし、税率の変更幅や有効期間は一定の
範囲に限定されています)。

(2)事業者の負担
 税率自体は、財務省令により引下げが可能であるとしても、発表から短
期間での税率引下げに伴う事業者の事務負担(値札の貼替え等)はどうな
るのでしょうか。短期間で税率が変わると値札を貼り替えなければならな
くなり、事業者に相当の事務負担をかけることになります。このため、イ
ギリスにおいては、今回の税率引下げに際して、値札はそのままで、レジ
の計算段階で付加価値税額の調整を行うことが認められましたが、消費者
がいくら支払えばその商品やサービスが購入できるか、値札や広告を見た
だけではわからないというトラブルも報道されました。

(3)税率引下げに伴う税収減の財源
 今回の付加価値税率の引下げは、2008年12月1日から2009年
12月31日まで(13か月間)の時限措置です。イギリス財務省による
と、13か月間の引下げによる減収額は、124億ポンドになります。
 国の財政も家計と同様に、その健全性が問題となります。この点につい
て、イギリス政府は、中期的な財政の持続可能性を維持するため、経済が
回復局面に入ると見込まれる2010年度以降に財政の健全化(所得増税、
国民保険料引上げ等)に取り組み、2015年度までに財政収支を均衡さ
せる、中期の財政健全化目標を設定しています。

 各国の経済対策は、それぞれの国の政治・経済的事情やそれぞれの国の
制度的な仕組みを背景として実施されていると考えられますが、今回、イ
ギリスで実施された付加価値税の引下げについては、巨額の財政負担にも
かかわらず、消費刺激効果は限定的との批判も聞かれます。いずれにせよ、
各国で行われている様々な経済対策の背景にある政治・経済的事情や制度
的背景等を研究してみると、様々な新しい発見があり、楽しいものです。

                     主税局調査課 加藤 隆宏

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7 編集後記

 暖かかったり寒かったり、季節の変わり目を実感する日々が続いており
ますが、皆様、いかがお過ごしでしょうか。私は先週風邪を引いてしまい、
辛い日々を過ごしていましたが、そろそろ花粉症に苦しんでおられる方も
多いのではないかと思います。お体にはお気をつけくださいませ。
 さて、お知らせにもありますが、先週より、財務省ホームページのキッ
ズコーナーを刷新し、新しく「はっぴぃ★タウン」を公開しました。税の
意義と役割を勉強できる「はっぴぃ★タウンストーリー」と、ゲーム形式
で税を勉強できる「はっぴい★らいふルーレット」の二つのコンテンツが
あります。特にルーレットは人生ゲームのような形式で、クイズを順番に
解いていって人生を体験するというものになっており、かなり凝った造り
になっているのではないかと思います。楽しみながら税について学び考え
られるよう、いろいろと工夫しましたので、是非お子さんたちにも御紹介
していただければ嬉しく思います。ご覧になられた感想なども是非お待ち
しております。
 次回は4月上旬に発行予定です。

                             (和田)

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ご意見募集のコーナー

政府税制調査会では、今後の審議の参考にさせていただくため、広く国民
の皆様から、ご意見を募集しております。

http://www.cao.go.jp/zeicho/iken/iken.html

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