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税制メールマガジン 第61号              2009/4/14

2009年04月26日 | 税制メルマガ
税制メールマガジン 第61号              2009/4/14

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◆ 目次

1 巻頭言
2 税制をめぐる最近の動き
3 主税局職員コラム ~環境にやさしい自動車の減税~
4 諸外国における税制について ~フランスの租税法と税制改正法~
5 編集後記

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1 巻頭言
 
 4月になって主税局にも初々しい新人が入ってきました。自分もついこ
の間のように思いますが、気づくとこの4月で社会人になってから丸20
年が経ちました。
 そこで(というわけではないのですが)、20年前の財政の姿を今と比
較して見て思うことがあったので御紹介します。
 第49号などでも御紹介したことがありますが、国民全体の所得に占め
る「公的負担の大きさ」をみるマクロの指標として、「国民負担率」があ
ります。計算式は以下のとおりで、いわば月給から払う税金と社会保険料
の割合を、国全体で捉えたものです。租税負担、社会保障負担それぞれの
国民所得に占める割合は「租税負担率」「社会保障負担率」といいます。

国民負担率(%)={(租税負担+社会保障負担)÷国民所得}×100

 20年前と現在を比較してみました。国民負担率は景気変動による影響
を受けますので、単年度で比較せずにその時期の景気の谷から山までの複
数年の平均値で見ています。

・1986年~91年
  租税負担率   26.7%
+ 社会保障負担率 10.6%
―――――――――――――――
= 国民負担率   37.3%

・2002年~07年 
  租税負担率   23.2%
+ 社会保障負担率 14.6%
―――――――――――――――
= 国民負担率   37.8%

 意外に思われたかもしれませんが、この20年間、国民負担率はほとん
ど変わっていません。またその内訳を見ると、社会保障負担率が4ポイン
ト上がっているのに対して、租税負担率は1990年代の累次の減税など
によって3.5ポイント減少しています。

 ところが、国民負担率の計算に財政赤字(つまり将来世代に先送りして
いる租税負担)を加味すると、ずいぶんと違う姿になります。この指標は
「潜在的国民負担率」と呼ばれ、実際の政府の歳出規模を示しています。

・1986年~91年
  租税負担率(+財政赤字)28.3% 
+ 社会保障負担率     10.6%
―――――――――――――――――――
= 潜在的国民負担率    38.9%
         
・2002年~07年          
  租税負担率(+財政赤字)31.0%
+ 社会保障負担率     14.6%
―――――――――――――――――――
= 潜在的国民負担率    45.6%


 上記の比較について、特に社会保障に着目して、以下のことが言えると
思います。
 まず、この20年間、国民負担率はほぼ不変ですが、政府の歳出規模
(潜在的国民負担率)は、6.7ポイントも増大しています。この歳出増
の主因は社会保障であり、社会保障給付費の対国民所得比は、13.6%
(90年)から24.9%(08年)へと、11ポイント以上上昇してい
ます。つまり、我が国では、人口の高齢化等により急速に社会保障給付が
膨らむ一方で、その費用については、負担増に反映されずにその増加分の
約6割を将来世代へ先送りすることで賄っています(残り約4割は他経費
の削減等によって捻出しています)。負担の先送りは主として赤字公債に
拠っており、給付と負担のミスマッチは上記の2つのケースにおける租税
負担率の変化の違いに表れています。こうしたことから、社会保障制度を
持続可能で安心できるものとするためには、税制抜本改革による安定財源
確保が必要と考えられているわけです。
 また、社会保障の財源の組み合わせという点でも、租税負担・社会保障
負担それぞれが社会保障給付の実態を反映するようにすることは重要です。
紙面の制約上、詳細説明を省略させて頂きますが、社会保障財源について
公費(税金)・保険料・自己負担をどのように組み合わせて賄うのかとい
う論点は、福祉社会の在り方の問題、すなわち、疾病や老後の所得保障と
いったリスクについて自助・共助・公助のいずれに重点を置いて制度的対
応を行うかという問題です。高齢化の進展や格差の拡大といった社会構造
の変化に伴い、我が国の社会保障は、世代間あるいは所得階層間での所得
移転の程度が大きくなりつつあり、公費財源に対する要請が強くなってい
ます。今後少子高齢化が進む中で、社会福祉のあるべき姿を考えるために
は、赤字公債によって見かけの租税負担率が下がっている現状を改め、給
付に見合った租税負担・社会保障負担に向き合った上で、どのような財源
構成が望ましいのか、自助・共助・公助をどのように組み合わせるべきな
のかという議論を行っていく必要があるのではないかと思います。
 
                  主税局総務課企画官 宇波 弘貴

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2 税制をめぐる最近の動き
 
(1)平成21年度税制改正に関する法律「所得税法等の一部を改正する
 法律」が3月27日に国会にて可決・成立し、同31日に公布、4月1
 日より施行されました。
  
 ・「所得税法等の一部を改正する法律」は以下のURLにてご覧いただ
  けます。
  http://www.mof.go.jp/houan/171/houan.htm

(2)4月10日、「経済危機対策」(「経済危機対策」に関する政府・
 与党会議、経済対策閣僚会議合同会議)がとりまとめられました。「経
 済危機対策」においては、税制に関して以下の措置を講じることとして
 います。

 ○ 住宅取得のための時限的な贈与税の軽減
 ・生前贈与の促進により高齢者の資産を活用した需要の創出を図るため、
  平成22年末までの時限措置として、直系尊属から居住用家屋の取得
  に充てるために金銭の贈与を受けた場合には、500万円まで贈与税
  を課さないこととする。この特例は、暦年課税又は相続時精算課税の
  従来の非課税枠にあわせて適用可能とする。
 ○ 中小企業の交際費課税の軽減
 ・交際費等の損金不算入制度について、資本金1億円以下の法人に係る
  定額控除限度額を400万円から600万円に引き上げる。
 ○ 研究開発税制の拡充
 ・試験研究費の総額に係る税額控除制度等について、平成21、22年
  度において税額控除ができる限度額を時限的に引き上げるとともに、
  平成21、22年度に生じる税額控除限度超過額について、平成23、
  24年度において税額控除の対象とすることを可能とする。

 ・「経済危機対策」については以下のURLにてご覧いただけます。
  http://www.kantei.go.jp/jp/keizai/index.html(首相官邸HP)

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3 主税局職員コラム ~環境にやさしい自動車の減税~

 皆さんは、自動車を選ぶときに何を基準にしていらっしゃるでしょうか。
価格は当然として、ボディの形状、内装といった見た目重視でしょうか。
それとも、加速の良さや乗車人数といった機能面重視でしょうか。

 最近は、「環境へのやさしさ」もクルマ選びの大きな基準の一つになっ
ていると聞きます。環境にやさしい自動車を選ぶことは、国際的に重要な
課題となっている地球温暖化問題の解決にも貢献しますし、一人ひとりに
とってはガソリン代の節約にもなります。

 一方で、最近の厳しい経済状況の中で自動車の販売台数が急速に落ち込
んでおり、景気対策の観点から、自動車の購入や買換えを促すような施策
も必要となっています。

 こうした状況の中、環境対策と景気対策を両立させるものとして、本年
4月1日より3年間、(1)国税である自動車重量税についてはこの3年
間のうちに初めて受ける車検時に、(2)都道府県税である自動車取得税
については新車取得時に、それぞれ環境性能に優れた自動車に対する思い
切った減免措置を実施することになりました。

 乗用車について大雑把にいうと、次世代自動車は免税、排気ガスがきれ
いでガソリン消費量が少ない(=二酸化炭素排出量が少ない)乗用車は
75%又は50%の税額軽減を行うことにしており、具体的な条件や2つ
の税を合わせた納税額の試算は次のとおりです。

(1)電気自動車、一定条件を満たすハイブリッド自動車・天然ガス自動
車、クリーンディーゼル車等(いわゆる次世代自動車)
 ⇒ 本来の税額をすべて免除
〔車両価格200万円、1.3トンの自動車を新車で購入した場合、納税
額は0円で、一般の自動車に比べ14万6,700円の減税〕

(2)平成17年排出ガス基準比75%低減を達成し(いわゆる☆☆☆☆
認定車)、平成22年度燃費基準を25%超過達成している乗用車
 ⇒ 本来の税額の75%を軽減
〔車両価格200万円、1.3トンの自動車を新車で購入した場合、納税
額は3万6,600円で、一般の自動車に比べ11万100円の減税〕

(3)平成17年排出ガス基準比75%低減を達成し(いわゆる☆☆☆☆
認定車)、平成22年度燃費基準を15%超過達成している乗用車
 ⇒ 本来の税額の50%を軽減
〔車両価格200万円、1.3トンの自動車を新車で購入した場合、納税
額は7万3,300円で、一般の自動車に比べ7万3,400円の減税〕

 これからは、こうした税の減免措置も考えあわせながら、クルマ選びを
してみてはいかがでしょうか。

※ 具体的な減免対象車種などの情報は、国土交通省の以下のページに掲
載されておりますので、参考にしてみて下さい。
 http://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_fr1_000005.html

                  主税局税制第二課 有利 浩一郎 

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4 諸外国における税制について ~フランスの租税法と税制改正法~

 わが国では、去る3月27日に平成21年度税制改正に関する「所得税
法等の一部を改正する法律」が国会で可決・成立しました。今回のコラム
では日本とフランスの租税法及び税制改正法の仕組みについて比べてみた
いと思います。

 日本では、授業科目に「租税法」という科目のある大学もあり、「租税
法」というタイトルの法律書も存在します。しかし、日本には、「租税法」
という名前の法律があるわけではありません。所得税法や消費税法、法人
税法といったように、各税目ごとに個別の法律が存在し、それらの総称を
講学上、「租税法」と呼んでいます。
 一方、フランスでは、「租税一般法典」と呼ばれる一本の法典の中に所
得税、法人税、付加価値税といった各種税目が定められています。この点
は日本とフランスとの大きな違いであると言えます。この「租税一般法典」
は多くの税目に関して規定しているため、非常に分量が多くなっていると
いった特徴があります。

 次に、税制改正法の仕組みについてですが、日本では、上述のような
「所得税法等の一部を改正する法律」を制定し、改正を行います。この法
律は、「改め文」というものによって構成されます。「改め文」とは、
「第○条中「△△」を「□□」に改める」、「第○条中「△△」の下に
「□□」を加える」、「第○条中「□□」を削る」といったように、改め、
加え、削る箇所のみを改正法中に示すものです。
 フランスにおける年次税制改正は、例年12月末に成立する「予算法」
によって行われます。日本の「所得税法等の一部を改正する法律」が税制
改正のみに対応した法律であることとは異なり、フランスの「予算法」に
は、その年度の歳出部分と歳入部分の両方に関する条文が規定されていま
す。例えば、09年予算法第70条では09年度一般会計予算の歳出額と
歳入額が規定され、第2条では所得税の税率表に関する税制改正について
規定されています。また、フランスの「予算法」における税制改正部分は、
日本と同様に「改め文」で構成されています。フランスの「予算法」を読
んでいくと、日本の「改め文」と同様の書きぶりになっているため、親し
みが感じられます。

 日本とフランスの租税法及び税制改正法は、中身や法の枠組みこそ違い
ますが、改め文方式のように共通点もあり、両者を比較しながら学んでい
くことには面白さがあります。フランスの租税法を読み、その制度を参考
にしつつ、税制の議論を日々深めていきたいと思っています。

                    主税局調査課 樫野 壮一郎

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5 編集後記

 春は出会いと別れの季節です。皆様の中にも、新しい環境で4月を迎え
られた方もいらっしゃるかと思います。主税局にも新人がやってきました。
初々しい姿を見ると、迎える側もフレッシュな気分になりますね。
 税制メールマガジンは今号で発行5周年を迎えました。登録数も順調に
増加し、現在、約2万2千人の方に登録していただいております。これだ
けの方に読んでいただいているということで、編者も常に喜びと緊張の下
で編集作業を行っております。これからも内容の充実に努めていきますの
で、変わらぬ御愛顧の程、よろしくお願い申し上げます。
 次回は5月上旬発行予定です。お楽しみに。

                             (和田)

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政府税制調査会では、今後の審議の参考にさせていただくため、広く国民
の皆様から、ご意見を募集しております。

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