税制メルマガ

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税制メールマガジン 第54号

2008年08月07日 | 税制メルマガ
税制メールマガジン 第54号


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◆ 目次
1 巻頭言
2 税制をめぐる最近の動き
3 主税局職員コラム~パートを控えるのは何故?税金に対する意識~
4 諸外国における税制の動き
  イギリス:2008年度税制改正~non-domiciled residentに対す
  る課税強化~
5 編集後記

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1 巻頭言
 
 このたび広報担当の企画官に異動して参りました宇波(うなみ)と申し
ます。直前は在フランス日本大使館に勤務していました。20年ほど前に
入省してから半分以上は財政や社会保障制度関係の仕事をしています。創
刊5年目を迎えて2万人以上の方に登録いただいているこの税制メールマ
ガジン、さらに充実したものになるように努めてまいりますので、前任の
田島に引き続きまして、どうぞよろしくお願いします。

 さて、初回の今回は、フランスに関連した税制の話を少々。
 フランスに皆さんはどんなイメージをお持ちですか?ワイン、ブランド
品、シャンソンなど、キザなものが多いですが、結構色々あるのではない
でしょうか。経済に限らず、文化・芸術等に至るまで、お互いに好意と関
心を持ちながら、日仏関係は今年国交150周年を迎えています。
 そんなフランスの意外な?特徴として「新しいもの好き」であることが
あります。1889年に完成したエッフェル塔は当時、斬新な建築として
賛否両論の大論争を巻き起こしました。最近、筆者が感心した例では、温
暖化対策の一環としてパリ中にレンタサイクルを配備すると発表するや、
短期間のうちに24時間1ユーロで乗れる貸自転車「ベリブ」を約2万台・
市内1500の基地に配備し、今パリの街は自転車であふれています。
 御存知の方もおられるかと思いますが、そのフランスの三大発明の一つ
とも言われるものに、付加価値税(消費税)があります。フランスにはそ
れまでも売上税がありましたが、製造・卸売・小売の各段階に課税するた
め、取引段階が多いほど税が累積するなどの不公平の問題がありました。
これを、各取引段階の税負担から前段階の税額を控除する仕組みを導入す
ることで、簡素で、経済活動に中立的で、より公平な税にすることに成功
したのが付加価値税です。1968年にフランスで本格導入された付加価
値税は、その後広く採用され、ヨーロッパ諸国を中心に多くの国で基幹的
な税として定着しています(EUでは加盟国の標準税率を15%以上とす
るよう定めています)。
 話題の展開としては我田引水が過ぎたかもしれませんが、社会の会費で
ある税を簡素・中立・公平に負担いただく一つの方法として、フランス人
が考え出した発明のお話でした。

 翻って日本の財政状況を見ると、少子高齢化などの構造変化の中で、厳
しい坂道の最中にあります。一発大逆転の発明はなく、私達一人一人が将
来世代のために考え、実践していく必要のある問題です。前任者に続き、
この問題を考えていく一助となることを願って、今後、様々な話題を提供
させていただきますので、どうぞよろしくお願いします。


                  主税局総務課企画官 宇波 弘貴

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2 税制をめぐる最近の動き
 
 下記のとおり、税制調査会が開催されました。
  【7月22日(火)】
   第25回企画会合
    ○報告事項
     ・平成20年度改正について
     ・経済財政改革の基本方針2008
     ・社会保障国民会議中間報告
    ○自由討議

  ・税制調査会の資料等は、下記URLにてご覧いただけます。
   http://www.cao.go.jp/zeicho/index.html

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3 主税局職員コラム~パートを控えるのは何故?税金に対する意識~
 
 皆さんこんにちは。税制第一課は、所得税、相続税など、個人の方々に
直接関係する税金の話を担当しています。働き出したり、結婚したり、自
分や家族の暮らし方が変わってくる節目節目で、これらの税金との関わり
合い方も変わります。税金に対する皆さんの意識への影響も大きい分野な
のではないかと思います。

 女性の働き方に対して税制が制約要因になっているとの指摘が以前から
あります。厚生労働省が行っている調査によると、パートで働いている女
性のうち働き方を調整している方に調整の理由を聞いてみると、「非課税
限度額を超えると税金を払わなくてはならなくなるから」「一定額を超え
ると夫の受ける配偶者控除がなくなり、配偶者特別控除が少なくなるから」
との選択肢を選ぶ方が多いことがわかります。

 かつては、妻の給与収入が103万円を超えると夫が配偶者控除を全く
受けられなくなり、夫婦合わせた世帯の手取りがかえって減ってしまう、
という逆転現象が大きな問題となった時期がありました。「働きたくても
税金で損になるから」という意識がその時に広まってしまったのではない
かと思っています。実は昭和62年に配偶者特別控除が設けられ、妻の所
得の増加に応じて夫の控除額は段階的に少しずつ減る仕組みに改められて、
それ以降は税制としては「逆転現象」が起きないようになっています。

 この春から夏にかけて、各地の財務省の出先を通じていくつかの企業の
担当者に、パートの方の就労調整の理由について伺う機会がありました。

 企業の担当者からは、「パートで働いている方の世帯にとって、実質的
には、①妻の収入が一定額を超えると、それぞれの企業が独自に支給して
いる配偶者手当などの手当てを、夫が受けられなくなること(配偶者手当
支給の問題)、②妻の収入が一定額を超えると夫の健康保険などの被扶養
者からはずれ、妻自身に社会保険料負担が生じること(社会保険料負担の
問題)、が実額の負担増としては大きい。税金の負担はもっと小さく、こ
れらの理由と税制が混同されているのではないか。」「税制や社会保険制
度をよく理解すればわかるが、収入が一定額を超えることに伴う問題がす
べて税制の問題だと思われている面がある。いろいろな機会をとらえてわ
かりやすくPRしてはどうか。」といった指摘をいただきました。

 以前に広まった「働きたくても税金で損になるから」という意識に加え、
「税金と関わるのはめんどうだ」「そもそも税金がかかるのは損だ」とい
った意識がなかなか抜けない難しさを感じます。

 今後の税制を考えていくに当たって、家族のあり方や働き方との関係で、
できる限り一人一人の選択をゆがめないように中立的な制度を作っていく
べきとの主張があります。そうした議論を深めていくためにも、税制に対
する偏りのない理解や知識をより多くの方に持っていただくとともに、税
金に対する皆さんの意識がより深められたらと思います。そしてこの税制
メルマガが、その一助になればと願っています。

(参考資料)配偶者控除・配偶者特別控除制度の仕組み
http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/siryou/046.htm

                  主税局税制第一課長 星野 次彦

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4 諸外国における税制の動き
 イギリス:2008年度税制改正~non-domiciled residentに対する課
 税強化~
  
 イギリスでは、7月21日、本年の税制改正の内容を盛り込んだ200
8年歳入法が、女王の裁可を経て成立しました。今回成立した歳入法では
さまざまな改正が行われましたが、その中から、特にイギリス国内におい
て議論のあった、イギリス国内に「本拠」を持たない居住者への課税に関
する改正についてご紹介したいと思います。

 イギリスの国際課税では、居住者・非居住者という区別以外に、イギリ
ス国内に「本拠」(domicile)を有するか否か、という区別が重要になっ
てきます。従来、イギリス国内に「本拠」がない居住者(non-domiciled
resident)については、国内源泉所得及び一部の国外源泉所得(イギリス
へ送金された分)のみ課税される一方で、イギリス国内に「本拠」がある
居住者(domiciled resident)については、国内源泉所得とすべての国外
源泉所得に課税されてきました。こうした制度は諸外国にもあまり例がな
く、イギリス特有の制度であると言えるのかもしれません。
※「本拠」とは、「居住者の区分となる「住所」や「居所」よりも固定的
 で、戻る意思が認められる場所」のことを言います。

 ところが、近年、イギリス国内に「本拠」を持たない居住者に対して、
課税を強化すべきであるという批判がイギリス国内で高まりました。この
ような居住者(例えば、中東産油国、新興国の富裕層)は、イギリスで一
年の大半を過ごしており、したがって、イギリス国内でさまざまな公的サ
ービスを受けているにもかかわらず、所得の多くをイギリス国外で得てい
る場合は、イギリスでほとんど課税されません。その一方で、こうした富
裕層が、イギリスで課税されない国外所得を用いてロンドン中心部の不動
産を積極的に買い占めているのではないかと考えられたことが、批判の背
景にあったと言われています。
※ロンドンでは、百万ポンド(約2億円)を越える高額住宅物件の価格が
 一年間で3割以上値上がりした地区もありました。

 他方で、こうした改正を行えば、課税強化を嫌う外国人がイギリスに居
住しなくなる結果、イギリスに富が集まらなくなってしまい、ひいてはイ
ギリスへの投資が減少してしまうのではないか、ロンドンのシティ(金融
の中心)や大学の教授職に優秀な人材が集まらなくなるのではないか、と
懸念する声もありました。

 このような批判や懸念がある中で、今回の改正では、イギリス国内に
「本拠」を持たない居住者に対しては年30,000ポンドが課されるこ
ととなり、30,000ポンドを支払わない場合には、通常の居住者と同
様にイギリス国内源泉所得及びすべての国外源泉所得について課税される
ようになりました。

 今回の改正内容は、本年3月12日のダーリング財務大臣の予算演説と
バジェット・レポートにおいて、
“Stability and opportunity: building a strong,sustainable future”

(安定と機会:強固で持続可能な未来の構築)という副題とともに公表さ
れました。「安定」(マクロ経済の安定)と「機会」(機会の公正)は主
要な政策目標として、ブラウン首相が財務大臣であったブレア政権から引
き継がれたものです。
 これらの政策目標の下で64四半期(16年)に渡る長期の景気拡大を
続けてきたイギリスですが、果たして今後もこうした景気拡大が続くのか、
また、税制はどのように改正されていくのか、注目していきたいと思いま
す。

                     主税局調査課 加藤 隆宏

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5 編集後記

 はじめまして。この号から税制メルマガの編集担当になりました和田と
申します。この7月に厚生労働省から出向してきました。
 税については全くの素人同然ですが、これから、色々な機会を生かして、
税について勉強していきたいと思っています。
 このメルマガも、皆さんの役に立ち、かつ面白いものにしたいと思って
いますので、どうぞよろしくお願いします。
 次回は、9月上旬に発行予定です。
                             (和田)

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ご意見募集のコーナー

 政府税制調査会では、今後の審議の参考にさせていただくため、広く国
民の皆様から、ご意見を募集しております。

http://www.iijnet.or.jp/cao/kanbou/opinion-zeicho.html

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