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税制メールマガジン 第53号

2008年07月03日 | 税制メルマガ
税制メールマガジン 第53号             2008/7/3 

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◆ 目次

1 巻頭言 
2 税制をめぐる最近の動き
3 お知らせ~ 所得変動に伴う住民税の還付~
4 主税局職員コラム
5 主税局職員コラム~公益法人制度改革に伴う税制~
6 諸外国における税制の動き
  ~米国税制:米国大統領選における経済学者100人の声~
7 編集後記

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1 巻頭言
 
 税制メールマガジンの「巻頭言」を私が担当させて頂いてから約一年と
なりました。ここで何度か触れましたが、私は、「公共サービスを賄うた
めの費用を皆でどう分担していくか」ということを考える際に有用な資料
をご紹介してまいりました。もう少し肩の凝らない内容にすればよかった
かなとも思いますが、耳障りが悪い話でも、税制メルマガをお読みいただ
く方に少しでも頭に残ってもらえればという思いで書きました。

 振り返ってみますと、公的サービスによる「受益」とそれを賄うための
「負担」についてイメージを持っていただくため、例えば以下のような色々
な切り口の資料をご紹介しました。

 ・ 生涯を通じての、「受益」と「負担」の大きさはどうか。各世代で
  違いがあるか。
 ・ 所得階層毎に「受益」と「負担」をトータルで見るとどうなってい
  るか。
 ・ 国債残高の急増の要因(「受益と負担の差」の急激な積み上がりの
  要因)は何か。
 ・ 我が国の「政府の大きさ」と「負担の大きさ」のバランスはどうなっ
  ているか。諸外国と比較してどうか。
 ・ 個々の家計で、税負担と社会保険料負担をあわせた公的負担はどの
  程度か。年収別に見てどうか。また、年齢別に見てどうか。

 社会保障をはじめとする各種制度や国の個別施策、税制を巡っては日々
さまざまな議論や報道がありますが、その中では、必ず、「当該制度(施
策)を支える財源はあるか。」「当該施策が国民負担で賄うに相応しいも
のか。」といった論点があります。これは、言葉の違いこそあれ、「受益
と負担」の視点であり、公的サービスなどのあり方を考える際には、とて
も大切な点だと思います。こうした議論や報道に接した際に、これまで
「巻頭言」でご紹介した資料が少しでもお役に立てれば幸いです。

 なお、「負担」に関する議論で、「国の負担」という言葉を見かけるこ
とがあります。「国」の行うサービスは、国民の皆様の「負担」により賄
われているわけですから、「国で負担」とはすなわち「国民全体で負担」
ということになりましょう。「わかりきったことを言うな」ということで
しょうが、ただ、「国の負担」という言葉が、「漠然と『自分以外の誰か』
が負担」という意識で使われることはないでしょうか。こうした意識を皆
が持つことになると、結局『自分以外の誰か』は、「これから生まれてく
る将来世代の国民」ということになりかねません。

 事実、これまでも何度となく申し上げてきたとおり、我が国は、全体で
見ると、皆様の受ける受益に比べて負担はさらに低い水準にあり、その差
の負担を財政赤字という形で将来世代へ先送りしているという大きな問題
があります。先送りされた将来の「負担」を担う人数(母数)が多いので
あればともかく、将来の見通しはむしろ全く逆であります。

 いろいろと雑駁に書きました。「受益」も「負担」もそれぞれのおかれ
た境遇、立場、価値観等によって受け止め方・感じ方も様々であるわけで
すが、できるだけ多くの方が納得できるよう、皆で考え選択し実現してい
く事が大事だと思います。その際、「今後生まれてくる人々に『「受益と
負担」の面からも、この国に住んでいて良かった』と思ってもらいたい。」
という気持ちを皆で共有できればと思っています。

       主税企画官 田島 淳志

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2 税制をめぐる最近の動き
 
(1)日本とカザフスタン共和国との租税条約が基本合意に至りました。
   ・概要は、下記URLにてご覧いただけます。
    http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/sy200620ka.htm
(2)日本とブルネイ・ダルサラーム国との租税条約が基本合意に至りま
  した。
   ・概要は、下記URLにてご覧いただけます。
    http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/sy200627br.htm

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3 お知らせ~ 所得変動に伴う住民税の還付~

 税源移譲により、所得税率の変更による税負担の軽減の影響は受けず、
住民税率の変更による税負担の増加の影響のみを受けた方については、市
区町村への申告により、既に納付済みの平成19年度分の住民税額から、
税源移譲により増額となった住民税相当額が還付される場合があります。
申告期間は平成20年7月1日から同月31日までとなります。

 詳しい内容は、総務省ホームページをご覧いただくか、お住まいの都道
府県・市区町村の税務担当課にお問い合わせください。
・総務省ホームページ
 http://www.soumu.go.jp/czaisei/czaisei_seido/zeigenijou2.html


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4 主税局職員コラム
 
 皆さんは、税の意義・役割について考えたことがありますか?改めて言
うまでもなく、税の本質は、治安維持、安全保障、教育、社会保障、社会
資本整備など様々な公共サービスを賄うための歳入調達手段です。

 税が公共サービスの財源であることから、国民全体としては、「公共サー
ビスという受益」と「税による負担」が概ね等しくあるべきと言われてい
ます。言い換えますと、公共サービスが提供されるなら、本来、それに対
応する税負担を受け容れる必要がある、それができないのなら公共サービ
スの受益をあきらめなければならない。つまり、受益と負担の間にはバラ
ンスが求められるということです。

 ところが、国民全体でなく、個人レベルで見ると、どの人がどれだけ負
担することが適当か、という問題が生じます。そして、いろんな人が、
「なるべく俺じゃなくてほかの誰かに負担してもらってよ」とか「俺はもっ
と国にやってほしいことがあるんだけど、税金はなるべく払いたくない」
とか、言ったりしています。とかく、民主主義の下では、公共サービスの
充実については合意を得やすいものの、それを賄う税制については合意を
得づらいという指摘があります。でも、それでは国は立ち行かない。

 公共サービスが増えるとき、ある人が増税を拒めば、他の誰かへの増税
を意味することになります。「他の誰か」は、将来世代の人々である場合
もあります。まさに今の日本は、将来世代に負担を先送りしています。
「公共サービスからの受益」の方が「税による負担」よりもずっと多い状
況が続き、国債残高は約550兆円にも達してしまいました。これは、10
年前の倍以上、15年前の3倍以上です。巨額の国債残高の大部分は、今
を生きている世代が受益相当分の負担をしてこなかったことで生んでしまっ
たと言えるでしょう。

 欧米先進国とは歴史が異なるせいか、日本人は、「公共サービス」と
「税」との受益と負担の関係をリンクさせて考えることが苦手であるよう
に思います。そういえば、ドイツでは税のことをSteuerといいますが、こ
れは車のハンドルとか飛行機の操縦桿を意味する言葉です。税は、国家や
公共サービスを動かすもの、という考え方なのでしょう。ちなみに、ドイ
ツの公的債務残高対GDP比(財政健全化を示す国際的指標)は、日本の
3分の1程度で、わが国より遥かに優等生です。

 それでは、国債残高が、この15年間に3倍以上にも増加した理由は何
でしょうか。大きな理由としては、(1)社会保障関係費の増加、(2)
バブル崩壊後の景気後退に伴う税収減と景気対策としての減税、(3)景
気対策としての公共投資の追加などが挙げられます。ただ、ここ数年で税
収は回復してきましたし、公共事業費も大幅に減額しました。しかし、
(1)の社会保障関係費だけは、高齢化に伴う年金・医療・介護等の給付
費の伸びによって増加の一途をたどっています。1990年に比べて、約
10兆円も増えました。この間、財源手当ては、行われていません。国民
全体として、社会保障の受益に見合う負担がなされていない状態となって
いるのではないでしょうか。今後も、団塊の世代が高齢者の仲間入りをす
ることなどで、社会保障給付は、益々増加していくことにも注意する必要
があります。

 これに関連して、総理大臣の諮問機関である税制調査会は、「社会保障
制度は、国民がともに支えていくことで初めて成り立つものである。今こ
そ、国民が広く公平に負担を分かち合って、『皆で制度を支えあう』こと
が不可欠である。できる限り早いタイミングで、安定的な歳入構造の確立
に向けて税体系全体のあり方の抜本的な見直しを実現すべきである」と答
申しています。いずれにせよ、社会保障制度を如何に維持し、将来への不
安を如何に解消するかは、国民一人ひとりがどのように制度を支えていく
かという問題だと思います。

                    主税局総務課長 宮内 豊

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5 主税局職員コラム~公益法人制度改革に伴う税制~

 本年12月、民による公益の増進を目指して公益法人制度の改革が行わ
れます。これまで、公益法人は、所管の役所が公益性の有無の判断と設立
の許可を一体として行う仕組みでした。今回の改革では、設立にあたり役
所の関与を遮断し、決められた手続きで登記すれば、「一般社団法人・一
般財団法人」を設立できるようになります。その上で、公益認定を受けた
い法人は申請を行い、第三者委員会の関与のもと認定を受けて「公益社団
法人・公益財団法人」になることができるという、いわば2階建ての仕組
みに改まります。

 これに伴う税制として、まず「公益社団法人・公益財団法人」について
は、公益認定の対象となる事業(公益目的事業)については非課税、さら
に収益事業からの収益についても公益目的に使用することが確認できれば
非課税となります。また、外部からの寄附金についても、公益認定を受け
ている法人は自動的に寄附金優遇(特定公益増進法人)が受けられること
となります。
      
 一方、「一般社団法人・一般財団法人」については、これからは、公益
性に関わらず自由に設立が可能となることから、様々な法人のタイプにあ
わせて税の取扱いも法人に選択してもらう仕組みとなっています。(1)
剰余金などの利益を構成員などに分配しないで活動するタイプや会員から
集めた会費で会員を対象に活動するタイプを選択する法人は、収益事業の
み課税となります。また、(2)特段の制約なく自由に活動するタイプを
選択する法人は、株式会社と同じ課税となります。

 いずれにしても、危機的な日本の財政状況の中で、制度改革の趣旨にあ
るように、民による公益の増進が図られることを期待しつつ、そうした動
きをフォローできる税制であればと思っています。                

                   税制第三課企画官 富山 一成

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6 諸外国における税制の動き
 ~米国税制:米国大統領選における経済学者100人の声~
  
 民主党の大統領候補もオバマ議員にようやく確定し、米国大統領選挙に
向けた動きもいよいよ大詰めとなりました。共和党候補であるマケイン議
員が共和党候補となることが事実上決まったのは今年の2~3月でしたの
で、オバマ候補にとっては数か月遅れのスタートとなりますが、いずれに
しても、民主・共和両陣営では、今後、秋の大統領選に向けた準備が本格
化していくことでしょう。

 さて、米国大統領選においては、あるべき政策を議論する中で、候補者
本人のみならず様々な人が幅広い立場から議論に参加してくることが珍し
くありません。今般の大統領選に向けたプロセスでは、例えば、民主党の
候補者を確定する選挙戦の最中で、経済学者達から税制面での問題で意見
が寄せられたという事例があったようです。

 
 今年の4月、民主党の大統領候補に出馬していたヒラリー・クリントン
議員は、現下の石油価格高騰を受けて、ガソリン税を一時凍結(“tax holiday”)
する旨の提案を行いました。共和党のマケイン候補も、それに先立って同
様の提案を行っていたのですが、複数の大統領候補から相次いでこのよう
な提案がなされたことを受けて、ジョゼフ・スティグリッツなどノーベル
経済学賞の受賞者をはじめとする米国の経済学者100名超は、署名の上、
こうした提案に関する「意見書」を発表しました。意見書では、「エネル
ギー政策、税制、財政及び予算を専門とする経済学者」という立場から
「今夏、ガソリンにかかる連邦税を一時凍結することは不適切な政策であ
り、私たちはこれに反対する」旨が表明されました。

 意見書では、ガソリン税の一時凍結に反対する理由として、以下のよう
なポイントが挙げられています。

 まず、一つ目に、「ガソリン税の凍結は、消費者に対する小売価格の大
きな低下にはつながらず、むしろ石油会社に大きな利益をもたらすという
研究がある」こと。二つ目に、「ガソリン税の凍結は、高額な輸入石油の
購入の継続を促進する結果、環境保護にはつながらない」こと。三つ目に、
「ガソリン税の一時凍結は、生活の苦しい(貧しい)人々に対し、ほとん
ど恩恵をもたらさない」こと。そして、四つ目として、「ガソリン税の凍
結は来年度の財政赤字に対し深刻な影響をもたらす」こと、などがポイン
トとして挙げられているようです。

 このように、米国大統領選では、候補者が表明した政策案に対して、様々
な立場の人々が具体的な内容に踏み込んで意見する例が見られるようです。
そんな動きにも配慮しながら、引き続き米国大統領選に注目していきたい
と思います。

                  主税局調査課課長補佐 向井 豪

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7 編集後記

 7月は役所の人事異動の季節です。主税局もメンバーが変わる予定で、
「1年間お疲れさまです。異動する人も、異動しない人も、また1年がんば
りましょう。」という解散会が、タテ・ヨコ・ナナメのいろいろな関係で開
かれています。異動を肴にみんなで飲んでいるとも言えますが、この1年で
取り組んだ業務について話をすることにより、今後の課題をもう一度見つめ
直すよい機会にもなっています。私自身は異動するかどうかまだ分かりませ
んが、異動するにせよ、しないにせよ、そのときの職場でベストを尽くし、
国民一人ひとりが安心して暮らせる社会作りに少しでも貢献できればよいな
と思います。その際、「巻頭言」でも「職員コラム」でも書かれているよう
に、将来世代の暮らしも併せて考えなければならないことは言うまでもあり
ません。
(高宮)

※ 平成20年度税制改正の内容を説明したパンフレットができあがりまし
たので、ぜひ一度ご覧になってください。財務省ホームページからお申込み
いただいた方に無料で送付しております。
http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/haifu.htm

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ご意見募集のコーナー

 政府税制調査会では、今後の審議の参考にさせていただくため、広く国
民の皆様から、ご意見を募集しております。

http://www.iijnet.or.jp/cao/kanbou/opinion-zeicho.html

当メールマガジンについてのご意見、ご感想はこちらへお願いします。

mailto:mg_tax@mof.go.jp

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http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/merumaga/merumagaback.htm


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