主夫の徒然なるままに

毎日の夕食作りに奮闘する60代主夫の独り言

脊柱間狭窄症再発手術から一年(1)

2024-04-30 16:47:59 | 日記

 ちょうど1年前のゴールデンウイーク直前に「脊柱間狭窄症」の再発手術をうけた。あれから1年がたった。当時の手術の結果をブログに載せようと思っていたが、いつの間にか1年が過ぎた。再手術をする人はそう多くはないと聞いていたが、再手術を考えている人の何かに役立てばと思い文章にしてみる。



「「「「「「
 歩けなくなった。10mごとに休む。ゴミ捨てもいけない。3年前である。そこで、脊柱間狭窄症の手術をした。それから1年半後、4月頃より足先のしびれがではじめる。さらに、6月頃より、以前にもまして早く歩くことができなくなった。つま先立ちもできなくなった。

 以前、手術した産業医大の担当医に再受診した。「まだ再手術 の段階でない。運動量をふやせ」とアドバイスをもらう。そこで、ウォーキングに加えプールも始める。7月末、太ももの痛みに耐えきれず、手術を決心。お盆過ぎの手術を覚悟した。検査入院のためのPCR検査をうけると、なんと陽性反応がでた。一週間の自宅待機命令。同時に軽いぎっくり腰になった。その影響かどうかわからないが、状態がいい方に回復。手術の延期が決定された。

 毎日の運動を課す。ウォーキングや水泳、空き家になった親の家の片付けなど、毎日体を動かすようにした。しかし、状態はいい状態に向かわなかった。もともと2か所の狭窄部位を手術する予定が、最終的に1カ所のみの手術だったので、それが原因ではないかと考えざるを得ず、不安になった。以降、義両親の入院や介護施設の入所、家の解体、子供の結婚など、あっと言う間に時は過ぎた。

 家族関係のあれやこれやが一段落したので、脊柱管の再手術をうけることを決心した。背骨を切り開い手術はやはり恐怖を感じたが。

 3日間の検査入院。PCR検査 慣れたものとなった。30分間飲み食い厳禁、けっこうな量の唾をださなければならににで、その時まで、ためておいた。試験管にどっと吐き出す。30秒で終了した。隣おじさんの唾は血で真っ赤。ドキッとした。この人なんの病気だろうと、こちらが気持ち悪くなった。「口のなかが切れていたので血が混じっているけれどいいですか?」「いいですよ!」いいんだ、ちょっと安心。PCR検査は陰性で、手術のための検査入院へ。

 検査前日から入院。産業医科大学の整形外科病棟がいっぱいらしく西2階の病棟へ。少し古く6人部屋。のこり5人、抗がん剤や放射せん治療の話をしていた。みんな明るく元気そうに話しをしていた。看護師も明るい。
 まずは、血液検査、レントゲン検査、されに、苦手な肺活量検査、心電図と続いた。それが終わり、痛みの場所やしびれの場所の問診、部屋に戻る。無料wifiがないと思っていたら、何とかつながりの設定を確保。これは望外の嬉しさだった。スマホ以外のパソコンやタブレット持ち込み禁止とパンフレットにあったので、無料Wi-Fiがあるとは思わなかったが、これは入院生活には大いに助かる状況だ。

 翌日より検査開始。
まず、歩き方を見られる。パタパタ歩き(=ペンギン歩き)と言われる。足の各パーツの反力を5段階で計る。右足の先の反力がいちばん弱かった。歩く最大幅計る。階段上の椅子から立ち上がれるかチェック。40センチから始めて30センチ、22センチへ。さらに片足で立ち上がれるかチェック。私は全部無理だったが、隣の80代のおじいさんは、すべて立ち上がることができた。この人は、何の病気だろうと思ってしまった。元気すぎるだろう。

 次に、像影剤の注射が始まる。学生が注射を始める。背骨に注射するのは初めてらしく、うまくいかない。主治医やその他のスタッフからあれこれと指示を与えている。不安になる。前回、痛みの記憶がなかったので安心していたが、像影剤の注入で右足に電気が通るような嫌みが走った。なぜか中学時代のカエルの解剖をしたことを思い出す。神経をさわると足がピクッとなる。痛かっただろうと思った、すでに死んでいるのに。

 動きながらレントゲンを撮る機械は、最新式で、以前は人間が回転していたが、今回は、機械が回る。人間も時々体制をいれかえて撮影、いったい何枚とるのだろうかと思っていたら終了、どっと疲れた。

 (画像はHPよりお借りしています)

 監査結果を見ながらの主治医との面談が始まる。診断の結果、「今回は、3ヶ所手術しましょう。」軽く言われた。

 一年ほど、リハビリとして運動など頑張ったが、ここ2ヶ月は、悪化を強く感じていた。歩くスピードが遅くなり、歩ける距離も短くなった。特に荷物を持って2階階に上がることが難しくなっていた。「手術は仕方がないね」と自分に言い聞かせながら、予定の手術日に手術することを了承した。 病室へもどってきた。その病棟が呼吸器系疾患のものと知る。みな肺癌患者だったのだろう。翌朝、検査費用4万7千程を払って退院帰宅。

(2)に続く








捨てられる教師

2024-04-18 14:45:18 | 日記

2冊の本を読んでみた。

「非正規教員の研究ー『使い捨てられる教師たち』の知られざる実態」 佐藤 明彦著

「捨てられる教師  AIに駆逐される教師、生き残る教師」石川一郎著



 
 教師を志望する若者が減っている。公立校の教員採用試験の倍率も年度によっては10倍を超す時代もあったが、現在、平均として3.2倍、小学校では、2倍程度となり、減少が続いている。現実に小学校では、先生が足りずに定年退職した70代の先生や中学免許でもOKという都道府県もある。

 教師志望者が減少している理由は複数あるが、長時間労働やなんでも責任を押し付けられる過酷な労働環境。 教職とはブラック職業というイメージの浸透。モンスターペアレンツどころかモンスターチルドレンの対応を考えるだけで志望意欲が薄まる。昔、ある中学でアメリカ人のALTが授業を受け持ったが、その教室の無法ぶりに一瞬で退職したそうである。現実の教室、生徒、親は、先生を目指す若者には、過酷すぎるかもしれない。

 そういう状況の中で、教師を目指して頑張る若者も多い。最初に、非正規でもかまわないとして教師をはじめる人も多い。生徒や保護者は、どれくらいの割合で非正規教員がいるのかを知らないと思われる。20%近くが非正規という県も多く、非正規教師は10万人以上に上る。つまり、5人から6人に1人が非正規という劣悪な労働環境の中で、正規の教師とほとんど同じ校務教務をこなしている。

「あなたの先生が非正規教師である」ことを知っているだろうか。ただし、佐藤氏は、この本では、非正規教師が劣っていることは全くない、と何度も断っている。だが、問題は、不安定な立場に追い込んでいる教師に、日本の教育を任せていいのかどうかだ。



AIに駆逐される教師像は、単純に言って、昭和・平成時代の教師像、一方的な知識伝達を授業を行い、宿題を出して、テストをする。目的は、(一流)大学や企業に入るための教育を行う教師であるという。反して、生き残れる教師は、単純に言って、AIを駆使し、考える力、創造する力を培う教師だという。ブルームのタキソノミーによる「知識・理解・応用・分析・評価・創造」のプロセスが教育の理想形として示されている。今までの日本の教育は、「知識・理解・応用」という低次の学習認識スキルを満足させるものでしかなかったと言う。今からの教育は、高次の学習スキルが求められていると言うのである。




ただし、2000年頃の本「分数ができない大学生: 21世紀の日本が危ない」などにあるように基礎学力がまったく身についていない生徒・学生も多い。

「知識」だけとっても、そこには、授業の創造を駆使した知識の学習も存在する。塾講師の経験から言えば、知識理解と創造は、ピラミッドの底辺と頂点ではなく渦巻き状に低次高次を深化させ高度な教育・学習へと発展するように思われるが、どうであろうか。

 
 非正規教員の問題やAIによる教育のあり様などは、現代の「今」が、教育の変節点にあることは確かだろう。教育関係者や教育に興味を持つ人々、そして親としても、興味深い視点を提供してくれる2冊の本だと思う。













「データ保護完全ガイド」

2024-04-05 13:44:26 | 日記

「データ保護完全ガイド」W.Curtis Preston 著 池田 祥孝 訳 を読んだ。


 実は、この訳者は私の大学時代の親友で同じ寮で生活を共にし、時にバイクに乗ったり、酒を酌み交わしたりしていた。彼は、英語が大好きで英単語を学べるボードゲーム「スクラブル」のようなものを部屋で彼女と遊んでいた。英語が好きなのだなぁと感心したものである。


 さて、彼が一冊の本を訳したと年賀状で伝えてきた。早速、ネットで調べてみると400ページ近いボリュームと4400円と言う値段に恐れをなし、図書館にあるかどうか調べてみた。北九州市の図書館には置いてなかった。そこで、福岡県立図書館経由で福岡県のすべての図書館の在庫を調べてみた。水巻町図書館と大宰府図書館にあった。2023年12月25日出版でもあり、また、かなりの専門書であるので、福岡県に2冊あったことが幸運であった。さらに、水巻町図書館はいつも利用している図書館で、こういうめぐり合わせというものもあるのだなぁと思った。

 基本的に企業のデータ保護を担当する部署で読むべき内容であり、専門用語も多く、読むのを躊躇していたが、勇気を出して読んでみた。出だしで、
 
 ランサムウェアの脅威
 バックアップとアーカイブは全くの別物
 3-2-1ルール(データバックアップの基礎)
 フルバックアップとインクリメンタルバックアップ
 
 など、前半に頻繁に出てくるこれらの専門用語は、この手の部署にいる人なら常識用語だろうが、素人には近寄りがたい。ただし、よく読んでいくと多くの納得できる説明や自分の経験のなかに出てきたことと重なることが多いことに気が付いた。

 私個人は、塾での講師をしながら最初、個人塾で使われるプログラムの開発に夢中になっていた。大手塾に入ってからは、1000人以上の成績管理データの処理にあたり、バックアップの問題などに関わっていた。当初、その塾でのデータ管理は、ハードディスクが一般的な時代に3.5インチフロッピーディスクで保存されていた。全体のシステムもWindows95以前のプログラムで動かしていたので手を付けられない状態であった。結局、データ保護も含めて一から構築となったが、塾講師、教室長、成績管理システムの開発の同時進行は、オーバーワークで大変であった。私が勤める前のデータのバックアップの統一性がなく、それらのデータを有効利用できなかったのは悔やまれる。せめて、その時代にデータ管理・保護に精通していた人材がいればと思った。


 このガイドブックの後半になると、さらに専門性は上がり、素人にはさらに取っ付きにくくなってくる。わかるところをかいつまんでみると
 
 パブリッククラウドでのデータ保存とその問題点
 バックアップとリカバリソフトウェアの多くの方法
 アーカイブソフトウェア・アーカイブの重要性
 ディザスタリカバリ(DC)の方法

  企業にとってディザスタリカバリ、つまり、滅多に起こらない最悪の最悪の状態に備える。災害復旧と訳すことが多いが、やはり、ランサムウェアが近年登場したことが企業にとってDRが始動する理由であろう。ランサムウェアとは、企業などのデータを暗号化したり、使用不能にしたりするもので、これに感染すると身代金を要求されることになる。ホンダやいくつかの病院などが感染し、ニュースになったこともある。DCの方法などの解説は詳しいが、素人との私には難解であったが、企業としては死活問題であろう。


「データ保護完全ガイド」は、専門性の高い本で、専門用語が多用され、個人のデータ保護のとしては、敷居が高い。しかし、一般の企業としては、最低限この本の知識は必要ではないのだろうかと思った。そして、この膨大の量の翻訳を担当した友人を誇りに思う。「すごいなぁ!」



<思い出のLP 「オレゴン」>














  
 


 


2度目の格安車検

2024-04-03 21:00:01 | 日記

 2年前に初めてマッハ車検を受けた。ディラー整備済み中古車を買ったので、交換部品はほぼないはずなので、こういう格安車検を受けてみようと思った。いろいろ業者で車検を受けたが、格安車検というのにイマイチ不安があったので躊躇していたが、思い切って受けてみた。結果、軽自動車ということもあり3万8千円で済み、安さを実感した。不満に思う点は皆無であった。丁寧な説明と納得のいく「ご提案シート」、分かり易い「点検結果記録簿」、大満足だった。今回は、次回とほぼ同じ整備であるが、ブレーキフルードの交換もまだだいじょうぶという状態だったが、これだけは交換することにしてプラス5千円で前回より5千円アップの約4万3千円で終了。次回の仮予約も入れることになった。


 ビッグモーターの件があるので、おまかせ車検では、ぼったくられる危険が大きすぎる。ディラー車検は、安全重視過ぎて高額になりやすい。町の車屋の車検は、安くしてくれと言えばどこまでも安くしてくれるが、安さの明確な根拠を示してくれる一覧表がない。「信用」は難しく、大事である。


 エアーエレメント、エアコンフィルター、ワイパーの交換も自分でおこなった。まだ、だいじょうぶだが交換してもいいという部品は、次回に回した。オイルはリッター100円で交換してくれた。半年前にも、オイル祭りのような企画で妻の車も含めてリッター100円で交換した。3か月くらい前から、次回の車検予約日のお知らせが来る。最終的には2日前にも教えてくれた。妻の車は、3度マツダの新車を買っているにもかかわらず、車検のお知らせさえ来なかった。もう、マツダディラーで車検を受けることは無いだろう。

 さて、車検を受けている間に別の若い客との会話が聞こえてきた。係の者が「大きなタイヤが付いているので元のタイヤは保管していますか」と尋ねていた。「家にある」との答えた。「では、今から取りに行ってもらえますか、できないのであれば、新しいタイヤを購入してもらわなければ車検は通りませんよ」「家はけっこう遠距離なので今からでは」などど若者がぼやいでいた。結局、次回タイヤを持ってくることで決着、今回は車検を受けれないことになった。 一連の会話を聞いていて、私は、「この会社、信用できる!」と思った。あの、ビッグモーターだったらどうしただろうと要らぬ想像をしてしまった。





<桜満開>4/2中間市はぶ公園













「中学受験はしないという選択」財部真一

2024-03-29 10:08:41 | 入試


「塾講師が本音で語るー中学受験はしないという選択(財部真一)2024」 を読んでみた。

 東京では、小学生の5人に1人が中学受験をするそうだ。私の住む地方では、中学受験をする生徒は、少ない。が、大手の塾では、中学受験を活発に推し進め、利益をあげている。高校受験をメインにした塾で教えてきた経験上、中学受験は詳しくない。そこで、この本を読んでみた。

 私が教室長をしている教室では、年に数回、全体保護者会というものを実施した。個別に一人一人の保護者と面談するのではなく、30人前後の保護者の方々に来ていただいて、いろいろなお話をさせてもらった。そのなかで、いつも強調していたことは、今、「教育は、情報戦」だということである。『「知らない」「昔と同じと思っていた」では、子供たちは、たいへん損をすることになる』このことを強調して、保護者の方々に最新の情報を伝えてきた。


 そういう私も塾講師を引退して数年、教育界の最新情報に接すると、その変化に驚くことが多くなってきた。中学受験もいろいろな角度から情報を得たつもりだったけれども、この本から「なるほど」という部分に気づかされた。

 この本の<はじめに>では、中学受験を否定するために書いたのではないと述べられている。しかし、だれでもが中高一貫校を目指すべきかどうかは、一旦立ち止まって考えてみようと言うことだ。
 
 中高一貫校を目指す理由は、ずばり一言で言って「一流の大学に合格すること」につきると思われる。そのために必要なものは、

  母親の『狂気』と父親の『経済力』

 一流の大学に合格実績を持つ中学校に入学させるためには、算数の難問を解ける力が必要だが、その問題は、国立大学医学部生でも解けない問題が含まれる。計算だけとっても、

 植木算・周期算・集合算・和差算・差分け算・つるかめ算・差集め算・過不足算・平均算・消去算・年齢算・分配算・倍数算・相当算・損益算・濃度算・仕事算・のべ算・ニュートン算・旅人算・通貨算・流木算・時計算

 算数の計算だけでこれだけのものをこなす努力と時間。個人的にどうしても、中国の『科挙』を思い起こす。科挙に合格さえすれば、一族の安泰と高給が約束される。それも40歳でも50歳でも合格さえすれば。だが、清朝末期でにも科挙を続け、論語などを必死に勉強し、世界の強力な科学を学ばずして、西洋列強の餌食となった。その中学入試のための算数の勉強は人生と社会に有意義であろうか

 問題は、高校受験や大学受験と違い、中学受験は、「親主導」での勉強になるとである。 早ければ小3、だいたい小4で塾通いが始まる。 母親の『狂気』なくして一流進学中高一貫校の合格は難しい。 さらに、その母親の狂気を支えるのは、専業主婦を許す父親の『経済力』、年間100万円はかかる塾費用、3年で300万、中学3年でかかる私立中学費用100万×3年、計600万円の費用が9歳から14歳頃までに必要となる。 東大や医学部合格なら安いものかもしれないが。

 中高一貫校のメリットは解説不要だと思われる。一流の大学にはいるためにはベストの選択だと推測されるから。もちろん、アンチのこの本では、中学受験や中高一貫校での勉強や生活のデメリットにも多く解説されている。


 「深海魚」成績が全く上昇せず学校内成績がずっと下位にいる生徒をさす。 残酷な言葉である。私の教室は、高校受験をメインとする塾なので私立中学に通う生徒は多くない。それでも、時々、私立中学の生徒が入塾する場合がある。深海魚の場合である。
 いい塾だと友達から聞いて、お母さんと一緒に中2生がきた。教室にいる子供たちと比べても理解力が劣るわけでもなく暗記力もある。少しの努力で立ち直れるはずと見ていたが、まったくやる気がない。その理由を聞いてみると、「どんなに努力しても最下位の成績から抜け出せない」という。この教室なら、正直に言って彼より理解力の無い生徒もいる。少し時間をかけて見て行こうと思った。が、2カ月で母親が退塾させると言ってきた。母親には待ってあげる余裕はなかったようだ。



 近くの開業医の息子が医者と一緒にやってきた。医学部合格を何名もだす中高一貫校から公立中学にかわったので面倒を見てくれと言う新中3生である。お父さんには残念な感覚がにじみ出るいたが、本人は、これでサッカーができると明るい感じであった。塾では、人気者で明るい生徒であった。勉強は、公立3番手校レベルで大半が私立大学に行くレベルの成績であった。医大付属の高校へ推薦入試を目指すとのこと。筆記テストもあるので、英語は特に力を入れて指導していたが、そのテストがまるで私の作成した英熟語完成プリント問題そのままで、自信をもって合格を期待していたそうだ。後に知ったことだが、その高校では、3年間1000万円程度の費用がかかり、大学と合わせて4000万円の費用がかかるとのこと。開業医の息子であれば高くはない費用なのだろう。

 『お客さん』大手塾には、毎年、必ず多くの「お客さん」がいる。「お客さん」とは、多額の授業料をいただいていているにもかかわらず、能力的にみてムリだったり、やる気が全くない生徒で、先生が労力を費やしても無駄と思える生徒である。中小塾にはいないのかというともちろん必ずいる。ただし、大手塾ほどではない。大手塾は、名が通っている場合が多く、その塾の塾生であることが大人のステータスになっている場合があるからだ。大手塾では、クラスが下になれば、先生も下の先生があてがわれる。自分の子が「お客さん」かどうか、親はしっかりと見極めてほしい。不幸なのは誰なのかだ。

 第5章では、親世代とは大きく違う大学受験について書かれている。中高一貫校受験の目的が、大学受験を有利にするためならば、大学受験についてしっかりと認識しなければ、受験は失敗する。何度も言うように「受験は情報戦である。」

 ▼激変する大学入試方式

 「大学入試共通テスト」の毎年の各科目の平均点が変わっていない。このことは、テストの難しさが変わらないのでなく、難しくなっている、難化しているということだ。

 理由の一つが、平均点を押し下げている層が、受験しなくなったこと。私大の推薦入試などの活用で受験する必要がなくなった。

 もうひとつの理由は、選択科目の多様化や傾斜配点、国立でも3科目入試などが増えていること。つまり、より得意科目だけで勝負できるようになったからである。


 ▼私立大学入試「多様化の真実」

推薦入試などが私立大学で50%を超えたと事実を知らない方はいないと思う。底辺の大学は学生獲得が大変である。とのかく学生を確保しなければ存続にかかわる。しかし、底辺の大学に同情しているばあいではない。あの早稲田でさえも6割近くが推薦(AO入試など含む)での合格をだしている。理由の一つが、中学受験高校受験大学受験で入学する生徒が燃え尽きてしまっていること。目的が、大学合格であり、大学での勉強ではないからだ。推薦での合格者は明確に大学での勉強に目的意識をもち、入学後もアクティブに活動する。大学入学が目的ではない。

 ただし、これは<表の理由> つまり、<裏の理由>がある。

『大学偏差値ランキングの維持』

ペーパー入試結果で多くの学生を確保しようとするとどうしても合格点が下がってしまう。大学ランキングが下がる。そうすると大学ブランドに傷がつく。それを防止するためにテストでの合格者を絞り、高得点を獲得できる学生のみを合格とし、大学ランキングを維持する。結論として、上位の私立大学一般入試では、合格は難しく、希望するのであれば、一般入試以外での合格を模索せよ、となる。

 地域2番手の高校に進学した教え子が、お茶の水女子大に推薦合格したことを報告に来た。女子大の東大と言われるお茶の水女子大に合格したことに私は本当に驚いた。地域no.1の高校に進学しなかったことが幸運の獲得につながったのかもしれない。指定校推薦を勝ち取った。

 両親は離婚し、祖父に育てられた15歳の彼は、中3で反抗期にどっぷりとなり、公立高校も受けずに、私立底辺校に進学した。その後、青山学院大学に推薦で合格したと報告に来た。一緒に来た塾生の友達は、工業高校に行き、無事就職できたとうれしどうであった。あの高校からあの大学へ合格できるのか?というのが私の印象だ。もちろん努力もあるだろうが、親世代の大学入試とは、やはり、どこがが違うと認識せねばならなかった。


『6年後の大学入試はどうなる』

少子化の影響を我が子に照らしてみよう。18歳人口のピーク、1992年には、205万人であった。大学の入試倍率は、国公立私立とも6倍以上であった。6年後に大学受験する12歳の人口が105万人。去年生まれた子は約75万人。少子化が進む将来に、大学側の「学生獲得戦争」が激化するのは火を見るよりも明らかだ。今、10歳の子に現在の大学入試での合格を考えて1日中勉強させることが正しい選択かどうか、考える余地は十分ありそうである。

 さて、だからと言って、中学受験が正しい選択か否かを断言することはできない。中学受験がその子にとって素晴らしい経験になるかもしれないし、悲惨な結果になるかもしれない。親がしっかりと子供本位に子供を見守っていくしかないのが結論である。


 私の教え子には、高校生になってから医者を目指し、国立医学部に合格して医者になった子がいる。また、世界的に有名な医者の息子は、母から低学年で勉強付
づけにさせられ、調理師を目指す結果ななった子もいる。医学部合格者の多い中高一貫校に進学し、まともな礼儀作法も知らない傲慢な高校生を見てしまったこともある。優秀な子が集まると言うことで、ある塾講師が、長男をなんとかその中高一貫校に入学させて、結局公立中学の深海魚になった生徒も見てきた。子育てに正解はないが、やはり、子供の成長を子供の視点で見守るしかないかもしれない。


 中学受験を考えている親御さんは、ぜひ、一読することをお勧めします。