経営者のための聖書講座

永遠のベストセラー、聖書からビジネスのヒントを学ぶ

No.12 モーセ(8):持続可能性

2007-09-11 23:02:20 | 出エジプト記~申命記
最近「サステナビリティ」という言葉を耳にするようになった。
CSRとの関連で語られることが多いようだ。
だが、企業の持続可能性を保つためには、
有能な指導者の育成も不可欠な要素といえよう。

優れた指導者は、後継者の育成においても際立っている。
カリスマ的経営者がその指導力を発揮し企業を繁栄に導いても、
後継者を育てられなければ、組織はじきに消滅してしまうだろう。

持続性の観点から言えば、後継者を育成できない指導者が評価されることはない。
偉大な指導者は、優秀な教育者でもあるのだ。

「イスラエルには、再びモーセのような預言者現れなかった」(申命記34:10)
と称えられたモーセは、後継者育成に関してどうだったのだろうか。

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モーセはそれからヨシュアを呼び寄せ、全イスラエルの前で彼に言った。
「強く、また雄々しくあれ。
 あなたこそ、主が先祖たちに与えると誓われた土地に
 この民を導き入れる者である。
 あなたが彼らにそれを受け継がせる。
  申命記31:7
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120歳になったモーセは、約束の地を目前にして、
その人生の幕を閉じることとなる。
死の直前、モーセは指導者の任をヨシュアに委ねた。
ヨシュアは、その任務を立派に果たす。
イスラエル民族を悲願であった約束の地へと導いたのだ。
モーセの後継者指名は大成功を収めた。

モーセはヨシュアを若いころから自分の従者にしていた。
シナイ山に登るとき、幕屋で祈るとき、民を指導するとき、
常に傍らにヨシュアを置いた。
ヨシュアはイスラエルを導くため苦闘するモーセの姿を間近に見ていた。

優秀な後継者育成のために特別な方法はいらない。
側に置いて、指導者としての自分のありのままの姿を見せるのが一番だ。
彼らは、あなたのリーダーシップを肌で感じ取り、そのイメージを脳にインプットする。

常に身近な場所にいるのに、うまく育たないとしたら・・・、
彼らの見ている対象そのものに問題があるのかもしれない。

企業の「持続可能性」を高めるため、身を引き締め、事に当たろう。

No.11 モーセ(7):クーデターへの対応

2007-09-09 21:48:31 | 出エジプト記~申命記
経営者として最もこたえるのは、ライバル企業からの攻撃でも、
消費者からのクレームでもない。
企業内、つまり身内からの裏切りや造反であるといわれる。

モーセは40年の間、何度もそのような危機的状況を経験した。
次の箇所は、その一例である。

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さて、レビの子ケハトの孫でイツハルの子であるコラは、
ルベンの孫でエリアブの子であるタダンとアビラム、
およびペレトの子であるオンと組み、集会の招集者である共同体の指導者、
二百五十名の名のあるイスラエルの人々を仲間に引き入れ、モーセに反逆した。
彼らは徒党を組み、モーセとアロンに逆らって言った。
「あなたたちは分を越えている。共同体全体、彼ら全員が聖なる者であって、
主がその中におられるのに、なぜ、あなたたちは主の会衆の上に
立とうとするのか。」
モーセはこれを聞くと、面を伏せた。
 民数記16:1-4
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モーセは、奴隷であったイスラエル人をエジプトから脱出させるため尽力した。
「約束の地」に向けてイスラエル人らが安心して旅ができるよう心を配った。
常に先頭に立って、彼らのために必死に闘ってきたのだ。

そのイスラエル人たちから、モーセは「分を越えている」と言われた。

あなたが、自分が面倒を見た社員たちから、
「おまえが、経営者でいるのは身の程知らずだ」、
「あなたが、なぜ我々のリーダーなのか理解できない」、
と言われたらどうするだろうか。

モーセは「面を伏せた」。
面を伏せ、神に祈った。
神に自分の感情を打ち明け、
民には冷静に接した。

「ののしられてもののしり返さず、苦しめられても人を脅さず、
正しくお裁きになる方にお任せになりました。」(Ⅰペトロ3:23)
これが聖書の精神である。

感情に対して感情で返しても、事態は悪化するだけだ。

モーセのように
「わたしは彼らから一頭のろばもとったことはなく、
だれをも苦しめたことはありません。」という自負があるなら、
心を鎮め、冷静にコミュニケーションをとることだ。
正しい裁きが下されることを信じて。

ちなみに、反逆者コラ、タダン、アビラムらは、
その後、生きたまま裂けた大地に呑み込まれた。

正義は勝利するのだ。



No.10 モーセ(6):ポジティブシンキング

2007-09-07 23:26:46 | 出エジプト記~申命記
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カレブは民を静め、モーセに向かって進言した。
「断然上って行くべきです。そこを占領しましょう。必ず勝てます。」
しかし、彼と一緒に行った者たちは反対し、
「いや、あの民に向かって上って行くのは不可能だ。彼らは我々よりも強い」と言い、
イスラエルの人々の間に、偵察してきた土地について悪い情報を流した。
「我々が偵察して来た土地は、そこに住み着こうとする者を食い尽くすような土地だ。
 我々が見た民は皆、巨人だった。そこで我々が見たのは、ネフェリムなのだ。
 アナク人はネフェリムの出なのだ。
 我々は、自分がいなごのように小さく見えたし、彼らの目にもそう見えたに
 ちがいない。」
共同体全体は声をあげて叫び、民は夜通し泣き言を言った。
 民数記13:30-14:1
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社員の声に耳を傾ける、それは経営者が心がけるべきことの一つといえるだろう。
しかし、どんな意見を取り入れかは注意を要する。
多数派の主張が常に正しいとは限らないからだ。

モーセ一行はエジプト脱出後、荒れ野の旅を続けた。
旅の目的地、カナンは「乳と蜜の流れる地」と呼ばれていた。
そこがすばらしい土地であることは神によって約束されていた。

いよいよ一山越えれば約束の地、というところまで一行がたどり着いたとき、
モーセは各部族の指導者12人をかの地へ偵察に遣わすことにした。

40日後、偵察から戻ってきた12人のうち10人が、
「上って行くのは不可能だ。我々を食い尽くすような土地だった。」と報告した。
残りの2人、カレブとヨシュアは、
「断然上って行くべきだ。とてもすばらしい土地だった。」と報告した。
彼らは同じ土地を偵察して来たのに、なぜか意見は真っ二つに分かれていた。

共同体全体は10人の意見に強く影響され、一斉にモーセに対し不平を言い始めた。

実は、この後、イスラエル人らは、なんと40年間も荒れ野をさまようことになる。
このときの不信仰が原因だった。
40年後、約束の地に足を踏み入れることができたのは、
この世代ではカレブとヨシュアの2人だけだった。

ものごとを、素直にありのまま見るか、ネガティブなフィルターを通して見るかで、
印象はまったく異なったものとなる。

みなさんの会社の会議では、普段、どのような光景が繰り広げられているだろうか。

困ったことに、一般的にネガティブなコメントの方が影響力を発揮しやすい。
恐れに取り付かれた多数派の意見によって、千載一遇のチャンスを逃してしまう
可能性があることを経営者はわきまえておくべきだろう。

大勢に迎合しない勇気ある少数派にこそ、耳を傾ける価値があるのかもしれない。
あなたの会社にもカレブやヨシュアがいるのではないだろうか。

現実を直視した、ポジティブ人間が組織には必要である。

No.9 モーセ(5):意思決定の土台

2007-09-05 21:54:08 | 出エジプト記~申命記
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「わたしは主、あなたの神、あなたをエジプトの国、奴隷の家から導き出した神である。
 あなたには、わたしをおいてほかに神があってはならない。
 あなたはいかなる像も造ってはならない。上は天にあり、下は地にあり、また地の下の水の中にある、いかなるものの形も造ってはならない。あなたはそれらに向かってひれ伏したり、それらに仕えたりしてはならない。わたしは主、あなたの。わたしは熱情の神である。わたしを否む者には、父祖の罪を子孫に三代、四代までも問うが、わたしを愛し、わたしの戒めを守る者には、幾千代にも 及ぶ慈しみを与える。
 あなたの神、主の名をみだりに唱えてはならない。みだりにその名を唱える者を主は罰せずにはおかない。
 安息日を心に留め、これを聖別せよ。六日の間働いて、何であれあなたの仕事をし、七日目は、あなたの神、主の安息日であるから、いかなる仕事もしてはならない。あなたも、息子も、娘も、男女の奴隷も、家畜も、あなたの町の門の中に寄留する人々も同様である。
 六日の間に主は天と地と海とそこにあるすべてのものを造り、七日目に休まれたから、主は安息日を祝福して聖別されたのである。
 あなたの父と母を敬え。そうすればあなたは、あなたの神、主が与えられる土地に長く生きることができる。
 殺してはならない。
 姦淫してはならない。
 盗んではならない。
 隣人に関して偽証してはならない。
 隣人の家を欲してはならない。隣人の妻、男女の奴隷、牛、ろばなど隣人のものを一切欲してはならない。」
 出エジプト記20:2-17
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これは有名な「十戒」である。

イスラエルの民がエジプトを脱出して3カ月が過ぎたとき、
モーセ一行はシナイ山にたどり着いた。
シナイ山の頂に上ったモーセは、神より「十戒」を授かる。
生まれてこの方、奴隷生活しか経験したことのない当時のイスラエル人に、
秩序を保つための価値基準が提示された。

以後、「十戒」に適う行動はYES、「十戒」に反する行動はNO、と、
意思決定の際、考えられるようになった。

みなさんの会社には、物事を判断する上での価値基準があるだろうか。

企業のモラルが問われる時代である。

何かを決めなければならないとき、どちらを選ぶか迷ったとき、
しっかりとした価値基準を持っていなければ、
目先の利益に目がくらみ、良心は流され、誤った選択をしてしまいかねない。
後で厳しく咎められ、すべてを台無しにしてしまう、ということも起こりうる。

意思決定の土台となるもの。
それは経営者の心の内にあれば良いというものではない。
社員全員に共有されていなければならない。
社員の間違った判断にも、経営者の責任が問われる時代だからだ。

もう一度、「十戒」に目を通してみて欲しい。
自分自身を、また自分の組織を「十戒」に照らし合わせてみて、
何か心に気づきがあれば、あなたは幸いである。

何か、自分と自分の会社にしっかりとした価値基準が欲しいと感じたら、
聖書はその求めに十分応えることができるだろう。
ぜひ実際に手にとって、じっくりと味わっていただきたい。

No.8 モーセ(4):組織デザイン

2007-09-04 23:23:07 | 出エジプト記~申命記
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あなたは、民全員の中から、神を畏れる有能な人で、
不正な利得を憎み、信頼に値する人物を選び、
千人隊長、百人隊長、五十人隊長、十人隊長として
民の上に立てなさい。
平素は彼らに民を裁かせ、大きな事件があったときだけ、
あなたのもとに持って来させる。
小さな事件は彼ら自身で裁かせ、あなたの負担を軽くし、
あなたと共に彼らに分担させなさい。
 出エジプト記18:21-22
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普通、規模が大きくなると、問題も増える。
とても一人では処理しきれなくなる。
そこで、組織を整え、しかるべき人材に責任を委譲することになる。
それはモーセの時代でも同じであった。

エジプトを無事脱出したイスラエル人たちであったが、
約束の地に向かって、徒歩で旅をしなければならなかった。
その数は、壮年男子だけで60万人。まさに民族の大移動だ。
生まれたときから奴隷だった民をひとつにまとめ上げ、
旅をするモーセの苦労はいかばかりであったろう。

旅の途中、モーセのしゅうとエテロが宿営を尋ねてきた。
彼はその地方の祭司であり、羊飼い時代のモーセを世話した人物だった。
エテロは、ある一日モーセの傍にいて、モーセが一人で、共同体に起きた
一つ一つの問題解決を行っているのを見て、こう言った。
「あなたのやり方は良くない」。

そして、上記のようなアドバイスをモーセにしはじめた。
リーダー人選の基準は3つ。
組織のサイズは10人、50人、100人、1000人。

十人隊長は10人のメンバーを指導する。
五十人隊長は5人の十人隊長を指導する。
百人隊長は2人の五十人隊長を指導する。
千人隊長は10人の百人隊長を指導する。

責任によって、求められる能力に違いがありそうだ。

社員が増える、あるいは店舗が増える、または得意先が増える、
これは喜ばしいことだ。
それと同時に経営者は、成長をにらんだ組織設計と
責任者の育成を進める必要がある。

あなたの会社をモーセの組織に当てはめてみて欲しい。

現在、組織の規模は、どの段階にあるだろう。
それぞれのグループを統括している責任者がいるだろうか。
その人材は、その役目に適任だろうか。

モーセが採用した組織づくりの知恵から学ぶべきことは多い。

No.7 モーセ(3):プラス1の精神

2007-09-03 23:24:55 | 出エジプト記~申命記
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イスラエルの人々は、モーセの言葉どおりに行い、
エジプト人から金銀の装飾品や衣類を求めた。
主は、この民にエジプト人の好意を得させるようにされたので、
エジプト人は彼らの求めに応じた。
彼らはこうして、エジプト人の物を分捕り物とした。
イスラエルの人々はラメセスからスコトに向けて出発した。
一行は、妻子を別にして、壮年男子だけでおよそ六十万人であった。
 出エジプト記12:35-37
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我が国では、「なあなあ」という表現が、いたるところに出現する。
そして、いたるところで「勝負弱さ」を露呈する。
特に、国際的な舞台で、それが顕著に現れるようだ。

あなたも、日常、知らず知らずのうちに、
「まあ、とりあえず、こんなところで」などと
つぶやいたりしていないだろうか。

エジプト王説得中のモーセは、決して「なあなあ」ではなかった。
イスラエル人を国外に連れ出すこと許可せよと、モーセは王に執拗に迫る。
しかし、エジプト王はなかなか応じようとはしない。
頑迷な指導者を戴くエジプトは不幸にも数々の災いに襲われる。
災いが重なってくるにつれ、王は次々と妥協案を提示し始める。
「行くならば、男たちだけで行け」。
「羊と牛は残しておけ。妻子は連れて行ってもよい」。
モーセは決して中途半端では折れない。あくまでも当初の要求を主張する。
「若い者も年寄りも一緒に参ります。息子も娘も羊も牛も参ります」。

10番目の災いがエジプトに襲いかかる。
エジプト王は、ついにモーセの願いを受け入れ、
イスラエル人とその財産すべての国外退去を許可する。
モーセの信念が勝利を収めたのだ。
かくしてイスラエル人は430年ぶりにエジプトから移動することとなる。

だが、モーセはこれで満足してはいなかった。
エジプト人からそれぞれが金銀を「餞別」としてもらうよう、
イスラエル人たちに命じたのだ。

人々はモーセに従った。
約60万世帯がエジプトから金銀を分捕った。

塵も積もれば山となる。

相当な額の金銀がエジプト国外に持ち出された。
そして相当な額の財産を労せずイスラエルは手にした。

あなたは、まあまあの勝利で満足する経営者か。
それとも、完全な勝利を求める経営者か。
いや、モーセのように、完全な勝利プラス1を追及する経営者か。

この精神の違いが、後々、結果に大きな違いをもたらすのだ。


No.6 モーセ(2):モチベーションアップ

2007-09-02 20:22:59 | 出エジプト記~申命記
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モーセは、そのとおりイスラエルの人々に語ったが、
彼らは厳しい重労働のため意欲を失って、
モーセの言うことを聞こうとはしなかった。
主はモーセに仰せになった。
「エジプトの王ファラオのもとに行って、
 イスラエルの人々を国から去らせるように説得しなさい。」
  出エジプト記6:9-11
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あなたの会社の社員は最近、あなたの言うことをよく聞いてくれているだろうか。
もし、そうでないとしたら原因は何だろう。
もしかしたら、仕事を負担に感じていて、意欲を失っているのかもしれない。

モーセはエジプトに帰ると、イスラエルの長老らを集め、
神がイスラエルを憐れみ、エジプトから脱出させようとしていることを伝えた。
それを知ったイスラエル人は喜び、モーセに大いなる期待を寄せた。
モーセは、さっそくエジプト王を訪問し、イスラエル人全員を国外へ
連れ出したいと申し出るが、即座に拒否される。
エジプト王はすぐさま、イスラエル人に対し、材料の供給を減らし、
生産量の増加させるという二律背反の命令を布告する。
モーセのためにイスラエル人は、より過酷な状況に追い込まれてしまうのだった。
イスラエル人たちは、モーセに猛抗議を浴びせる。
モーセは将来の希望を民に説くが、イスラエル人らは聞く耳を持たなかった。

ピンチに陥ったモーセは、自分の窮状を神に訴えた。
神の答えは、「民を慰めよ」でも、「さらに叱咤激励せよ」でもなかった。
あくまでも「エジプトの王ファラオのもとに行って、 
イスラエルの人々を国から去らせるように説得しなさい。」であった。

その後、モーセは、主が命じたとおり、怯まず、妥協せず、
果敢に王のもとに赴き、説得を繰り返す。
彼のあきらめない心と信じる力により、奇跡がそのたびに起こる。
それを目の当たりにしたイスラエル人らは、徐々にモーセへの信頼と
希望を深めていく。

あなたの社員のモチベーションを維持、向上させるには何が必要なのだろう。

社員を奮い立たせるもの、それは経営者自らによる、信念に基づいた行動と
奇跡的な成果である。
綺麗な言葉だけでは、社員の意欲をキープすることはできない。

「社員が思い通り動いてくれない」と愚痴をこぼす前に、やるべきことがあるのではないだろうか。

会社が目指しているものをもう一度自分の中で整理し、ビジョンを生き生きと思い描こう。
その上で、今、自分自身が率先してできることは何かを考え、できることから行動に移してみよう。

社員たちは、見ていないようで、実はしっかり経営者の動向に注目し、
良くも悪くも影響を受けているのである。

No.5 モーセ(1):スピーチの基本

2007-09-01 00:37:36 | 出エジプト記~申命記
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それでもなお、モーセは主に言った。
「ああ、主よ。わたしはもともと弁の立つ方ではありません。
 あなたが僕にお言葉をかけてくださった今でもやはりそうです。
 全くわたしは口が重く、舌の重い者なのです。」
主は彼に言われた。
「一体、誰が人間に口を与えたのか。一体、誰が口を利けないようにし、
 耳を聞こえないようにし、目を見えるようにし、また見えなくするのか。
 主なるわたしではないか。
 さあ、行くがよい。このわたしがあなたの口と共にあって、
 あなたが語るべきことを教えよう。」
モーセは、なおも言った。
「ああ主よ。どうぞ、だれかほかの人を見つけてお遣わしください。」
 出エジプト記4:10-13
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いよいよ、今日からモーセの物語に入る。

ヨセフの時代、イスラエル一族の全員がエジプトへ移住した。当初はヨセフのゆえに保護されていたイスラエル人も、ヨセフを知らない王の時代になると、数が増え強力になったがために警戒され、奴隷として労働を強いられるようになった。さらに王はある時イスラエル人の赤ん坊は男の子であるならば虐殺するよう全国民に命じた。そんな時代にモーセは生まれた。

彼の母親はわが子を殺すことができず、3ヶ月の間隠しておいたが、もはや隠し切れなくなったので、籠に入れナイル川に流す。するとタイミングよく王の娘が水浴びに来ていて籠を見つける。中にいた赤ん坊を不憫に思った王女は、自分の息子として彼を育てることにする。

モーセは、生まれたときから特別に選ばれていたといえよう。なぜなら、殺されて当然だったのに生かされ、そればかりでなく、奴隷の子のはずが、王の家で育てられ、当時ではおそらく世界最高の教育を受ける機会を与えられたのだから。

モーセはその後120歳まで生きることになるが、彼の人生は大きく3期に分けることができる。エジプト王女の息子としての40年、羊飼いとしての40年、そしてイスラエルの指導者としての40年である。

40歳になったモーセは奴隷状態のイスラエル人を救うべく立ち上がるが、同胞からの支持を得られず挫折、国外へ逃亡する。ある羊飼いの家族に拾われ、結婚、二人の子をもうけ、羊飼いとして40年間平凡な生活を送る。80歳のとき、突然、神からの招命を受け、エジプトに帰ることになるのだが、上記の聖句はその時の会話の一部である。

後にイスラエル民族のエジプト脱出を指揮し、偉大な指導者として民を教育するモーセであるが、この時は、ただの羊飼いの老人であり、長い荒れ野での生活を送るうちにかつての自信をすっかりと失っていたようだ。

特に自分が口べたであることを気にしていたようだが、この点、共感を覚える方も多いのではないだろうか。

経営者ともなると、人前で話す機会が少なからず訪れるに違いない。
思わず、言い訳をして断りたくなった経験もあるのでは・・・。

モーセは神から叱責を受けることになるが、この後、試練を一つ一つ忍耐強く乗り越えていく。そして、そのたびに民の心を勝ち取っていく。

なめらかな弁舌よりも、責任感の強さと誠実さの方が、人々の心には響くようだ。

たとえ口べたでも恐れることはない。
あなたの内にしっかりとした信念があれば、伝わるべきものは伝わるのだから。