熊本県・天草市が進めてきた路木ダム建設。熊本地裁は、「洪水調節施設として路木ダムを建設する必要はない」との判決を下しました。県議会本会議での一般質問、討論、委員会質疑など、路木ダム建設の不当性をたびたび指摘、追及してきた一人として、「大きな拍手」です。
現地のみなさん、弁護団、支援の皆さん、本当にお疲れ様でした。
同時に、
たたかいはこれから―です。
定例県議会。先議の補正予算、農地中間管理機構関連条例・予算に対する反対討論をしました。
以下のとおりです。
日本共産党の松岡徹です。知事提出議案第1号2013年度一般会計補正予算では、国家公務員に準じた県職員の給与削減分、約61億円が減額補正として計上されています。
この件は、6月議会の反対討論で指摘したように、国が地方公務員の給与削減を地方交付税の削減とセットで押し付けてきたことによるものです。
給与の大幅削減は、県職員、一人ひとりにとって重大問題であす。県職員の使命感と意欲の減退は、県政全体に影響します。同時に民間賃金、地域経済にもつながる大きな問題です。
19日の衆院予算委員会での民主党岡田克也氏と新藤総務大臣のやり取りを聞いておりますと、国家公務員の給与について、岡田氏が、「55歳超の昇給抑制に加えて、50歳代前半から検討を」と述べると、大臣が「建設的なご提案をいただいた」などと答弁しています。無責任な、際限のない公務員給与削減論です。こういう議論を聞いていますと、国の圧力による地方公務員給与の削減も、今回きりと安易に判断できません。
政府や一部政治家の偏った公務員攻撃に厳しく抗議し、歯止めをかけるうえでも、国家公務員に準じた県職員の給与削減に関わる、知事提出議案第1号には、反対の意思を表明するものです。
一般会計補正予算には、4月からの消費税増税を見込んで、債務負担行為、繰り越し明許費が設定されています。
昨年10~12月期の国内総生産(GDP)の伸びは前期比0・3%増、1年間に換算した年率でも1・0%増にとどまっています。政府は4期連続の「プラス成長」だといっていますが、伸び率は昨年前半に比べ2期連続で大きく鈍化し、10~12月期は予測にくらべ半分以下です。原因は、GDPの6割を占める個人消費が、消費税増税前の駆け込み需要があったにもかかわらず、わずか前期比0・5%しか伸びず、輸出や設備投資も伸び悩んだからです。 厚生労働省の毎月勤労統計調査では、昨年の1カ月平均の「きまって支給する給与」は3年連続の減少となっています。
安倍政権は、「アベノミクス」で、消費税増税前に景気を回復させると取り組んできましたが、破綻は明白です。
こうしたなかで、消費税増税で8兆円、社会保障の負担増・給付減をあわせれば10兆円という史上空前の負担増を強行すれば、国民の暮らし、日本経済、財政も共倒れの「悪循環」に陥ることは疑いありません。
「経済の好循環」をいうのであれば、4月からの消費税増税の実施は、いまからでも中止すべきです。消費税増税込みの補正には同意できません。
知事提出議案第28号熊本県農用地利用集積等推進基金条例制定は、農地中間管理機構制度運営基金設置のためのものです。第21号は、農地中間管理機構事業費補助12億1100万円余を計上しています。
安倍内閣は,TPPに突き進む一方、国内の農政「改革」として大規模農地化、農地利用の効率化・高度化を促進し自由化に対応できる競争力のある農業経営の育成を進めています。
6月に閣議決定した「日本再興戦略」では、今後10年間で全農地面積の8割を大規模経営に集め、コメの生産コストを平均で4割削減し、法人経営体を5万に増やすことを決めました。それを推進する決め手として位置づけられたのが「農地中間管理機構」です。
ここには日本の農業、戦後農政の根本にかかわる大きな問題があります。
第1に、「機構」の農地貸付にあたっては「公募」を義務付け、競争力のある企業経営が優先されることになりかねないことです。これまで地域で頑張ってきた大規模農家、農業生産法人などの排除の手段になりかねません。
新規参入もいま増加している青年のIターンより、販売力、資金調達能力に勝る企業経営が優先されることになります。
第2に、農地の借り受け対象から耕作放棄地など条件の悪い農地を除外していることです。当初「機構」による農地の借り入れが、中山間地域で増えている耕作放棄地の解消に役立つかのように言われ、自治体や農業委員会関係者からの期待もありましたが、貸出先が見込めない農地が「機構」の不良債権となり、財政負担となるとして財界筋の規制改革会議等からクレームが付き、借入対象からはずされました。また引き受けた農地も一定期間貸出先が見つからない場合は所有者に戻すことになります。
政府の産業競争力会議では「機構」が扱うのは優良農地に限定すべきとの主張が強く出されていました。結果として、こうした主張に押されて、この制度が地域農業の振興とは無縁の優良農地を企業にさしだすものとなったいっても過言ではありません。
第3に、政府や県の方針が優先で、農地に関する権限が農業委員会や市町村から奪われ、地域の実態に即した判断、農業委員会、市町村の意見の反映の保証がないことです。農地の貸借は、「機構」が、対象となる農地の地番、面積、借り手の名前などを「農用地利用配分計画」にまとめ、知事の許可を受けて公告することによって権利が発生します。つまり、一般の農地の貸借では必要とされてきた農地法にもとづく農業委員会の許可は不要です。これまでの規制緩和のなかでも守られてきた農業委員会の許可や関与の仕組みの重大な転換です。産業競争力会議の「国家戦力特区ワーキンググループ」などで、財界筋が「農地が流動化されない最大の阻害要因の一つは農業委員会による関与である」「のぞましい将来像は、農業に関しても不動産業者が情報を集約し」「農業委員会の土地売買に関する関与を全廃する必要がある」といった注文に応えたものです。
農業委員会は、公選法に準じて農民から選ばれる委員が多数を占める市町村の行政委員会であり、運営は法律に沿ってなされています。農業自体が困難な情勢の下で農業委員会もまた様々な困難を抱えていますが、そうしたなかでも多くの農業委員会が農地の有効利用、耕作放棄地の解消などに努めています。
規制改革会議などでの農業委員会排除の議論に対して、全国農業会議所の二田孝治会長は「農業、農村の現場から著しくかい離した内容」だと厳しく批判しています。全国市長会経済委員会も「地域の特性と実情に応じた農業振興がはかられるか疑問」との緊急意見を発表しています。
農地は、個々の生産者の経済基盤であると同時に、地域社会で多様な機能を担っています。農村で、農地を持続的に利用し農業を維持してきたのは大小多様な家族経営の農業です。農地法は、農村に定住し、自ら農作業に従事する農民の権利を優先してきました。農地の管理を地域の農業者から選ばれた委員が多数を占める農業委員会にゆだねてきたのも、農業者による自治的な取り組みが適切と考えられたからです。
「農地中間管理機構」創設の根底にある農地の多面的機能、農地法の理念、農業委員会の役割の否定、農地を宅地などと同列に扱い、不動産業者にゆだねるという考え方、やり方には、到底容認できません。
この問題は、熊本の農業、農村、地域社会、地域経済に大きな影響を与える性質のものであり、拙速でなく、十分な論議と検証をまず行うべきです。
知事提出議案第28号及び第21号には反対です。