--Katabatic Wind-- ずっと南の、白い大地をわたる風

応援していた第47次南極地域観測隊は、すべての活動を終了しました。
本当にお疲れさまでした。

48次隊夏期設営作業(1)ロケット発射台と機械・建築倉庫

2007-02-10 | 南極だより・施設備品
南極気象観測50年記念事業の「パネル展示」が昨日から始まりました。
講演もあるのですが、3月9日(金)の平日なので、行くことができず残念です。
気象観測は47次でも渡井さんの所属する気水圏と一緒にオゾンゾンデやエアロゾルゾンデを揚げるなど関係の深い分野なので、ぜひとも行きたいと思っています。
それでは、渡井さんからの南極だよりです。
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2007年2月9日(金)曇り 48次隊夏期設営作業(1)ロケット発射台と機械・建築倉庫

48次隊の夏作業では新規に建築する建物などが多かった。
昭和基地の風景も我々47次隊が来た昨年とでは若干違ってきた。

Aヘリ脇にあったロケット発射台は撤去された。
最初に昭和基地に降り立った時、初めて目にする建造物といっても過言ではないだろう。
「ここが昭和だ!」の看板が据え付けられた、廃墟ともいえる建造物は否応なく人目をひきつける。
この発射台は使用されなくなって久しく、床は朽ちて穴が開きランチャーは錆びて横たわっていた。
解体は、床を一枚一枚剥がして、鉄骨のフレームは溶断して行ったようだ。
コンクリートの土台はブルドーザで引き抜いて掘り起こした。
今では注意深く見ないとここにロケット発射台があったとはわからないだろう。

#この看板はどこかへ移設されるのでしょうか?

#発射台全景

#取り壊された後は、跡形もない。

その脇では機械・建築倉庫が建設された。
2夏から砂利採取場や太陽光パネルに向かう道路を少々迂回させ建てたのだ。
これは11倉庫にある資材や、外におきっぱなしであった資材を保管するための倉庫となる。
11倉庫は老朽化しているため雪溶け水の浸入もあり取り壊す予定なのである。
ドーム型の建屋は2廃や車庫と同様な構造であるが、その大きさは一番大きいのではないだろうか?
中には櫓を組んで2階がしつらえられ、その保管スペースは十分すぎるほどだ。
床はコンクリート打ちだが、その広さから全面に打つのはかなり大変そうである。


#取り壊された発射台(左)のそばに機械・建築倉庫(右)が建てられた

#外側はもう終わっている?

#中は・・広いです!!

-----2月9日本日の作業など-----
・メール対応
・日刊昭和作成
・読書

<日の出日の入>
日の出   03:26
日の入    21:42
<気象情報>
平均気温-2.7℃
最高気温-1.2℃(1610) 最低気温-4.6℃(2400)
平均風速3.5m/s
最大平均風速9.3m/s風向NE(0930) 最大瞬間風速13.0m/s風向NE(0926)
日照時間 1.2時間

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11次隊ではじめてロケットの打ち上げを成功させ、オーロラのロケット観測が始まったのだそうです。
「フィルム上映 オーロラ観測ロケット」に、渡井さんがロケット観測の事についてこう書いていました。
高度100kmほどまで上昇したロケットは、オーロラが光る高高度で数分間の観測を行った後、水平距離140kmほどのところに落下する。
ロケットが高高度でオーロラを横切る際に、先端につけた観測機器がオーロラを観測するのである。

なんと、オーロラのところまで観測機器を持っていってしまおうという、大胆な観測計画なのでした。
当時ロケット観測を計画実行した方たちの実行力はすごいものだったのだと思います。
昨年11月に科学未来館で行われた講演「南極の動物たち」(オプション:「宗谷」見学会)で、案内してくださった南極OBの芦田さん(追尾装置・搭載計器担当)は、11次隊でロケット打ち上げのプロジェクトのメンバーでいらっしゃいました。
しかもメンバー中2人しかロケット飛翔実験の経験がなかったのだそうです。
歩きながらロケット打ち上げについて語ってくれたのですが、どんなに夢を描きながら取り組んだプロジェクトだったのか分かるような気がしました。
10次隊で作られたロケット台、11次隊での初打ち上げ、12次隊での本格的な超高層観測。
オーロラ観測も30年あまりのうちに開発が進み、ロケット観測は行われなくなりました。
38年前に作られた夢の舞台はなくなってしまったけれど、その情熱は様々な観測に息づいているのだと思いました。

48次隊では大型の建設がいくつも行われているようです。
その一つが機械・建築倉庫で、その建設の様子は小川ドクターの第48次南極観測隊医療隊員日誌?や、nikkansports.com(下位ページへのリンク不可との事なので右側にある「南極」というところをクリックしてください)で読むことができます。
コンクリート打ちは歴代医療隊員が担当することになっているそうで、小川ドクターのブログでは、その大変さが手に取るように分かります。
48次では建設のプロも多くいるようですが、それでも実際には建設作業をしたことのない隊員さんたちが多く関わるわけですから、大変な作業だと言えますよね。
昨夏のNHK棟移設を思い出します。
そろそろ完成間近でしょうか。
連日の作業お疲れさまです。

<参考文献>

南極観測隊-南極に情熱を燃やした若者隊の記録-:技報堂出版
財団法人 日本極地研究振興会 発行
南極OB会・観測五十周年記念事業委員会 編集

「南極ロケット観測事始めの頃」鮎川勝氏
「ロケット夜間打ち上げ」竹内徳男氏 より

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