--Katabatic Wind-- ずっと南の、白い大地をわたる風

応援していた第47次南極地域観測隊は、すべての活動を終了しました。
本当にお疲れさまでした。

廃棄物

2006-06-06 | 南極だより・施設備品
栗の花の匂いがしてきました。
麦もそろそろ色づいて、刈り入れの季節「麦秋」です。
困るのはカモガヤか何かの花粉がたくさん飛んでいること。
マスクをしていないので、朝方くしゃみで目が覚めます。
南極は冬に向かっているけれど、日が短くなったり寒くなったりするほかに実感する「何か」はあるのでしょうか?
それでは渡井さんからの南極だよりです。
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2006年6月5日(月) 曇りなれど強風 廃棄物

36人が生活しているとそれなりの量のゴミが出る。
その量は1年間ともなると莫大だ。
昭和基地では環境汚染を可能な限り少なくするため、
廃棄物の分別に力を入れている。
大きなものやまとまったものは環境保全の仕事になるのだが、
まずはじめに各個人や当直が分別を行っている。

・可燃物
紙や木がこれにあたるが、カップラーメンの容器等、
保管しておくと異臭を放つ恐れがあるものは可燃物とする。
防B脇の廃棄物集積場の可燃物置き場に重量を計測して置く。

・生ゴミ
調理場から出る食糧関係の廃棄物がこれにあたる。
生ゴミ炭化装置で処理する。
廃棄物集積場の生ごみ置き場に重量を計測して置く。

・不燃物
容器の包装や梱包材などプラスチック系のゴミはここだ。
廃棄物集積場にあるタイコンに重量を計測して詰める。

・缶
廃棄物集積場にある缶潰し器「かばちゃん」で潰してアルミ缶と鉄缶に分ける。
その後はドラム缶へ。

・ビン
ラベルを全て剥がして色別に廃棄物集積場にあるビン粉砕器にて砕いて区分。
厚手のビニール袋に一時保管。

・ダンボール
・ペットボトル
廃棄物集積場にあるタイコンに詰める。

・陶器
・スプレー缶・ガス缶
・蛍光灯・電球
・たばこの吸い殻
・ゴム・革製品
・複合物
廃棄物集積場にある一斗缶に詰める。

個々で重量を測定しないものは、後でまとめて環境保全隊員が計測するのだ。


#廃棄物集積場(手前の大きな機械は缶潰し器「かばちゃん」)

#ビンも砕いて色別に分けています

-----本日の作業など-----
・MMF案x2
・精製装置立ち上げ
・CO2, CH4, CO, O3濃度分析システムチェック
・南極大学(滝沢教授、井熊教授、角教授)

<日の出日の入>
日の出  なし
日の入  なし
<気象情報6月5日>
平均気温-8.9℃
最高気温-6.9℃(2156) 最低気温-14.4℃(0009)
平均風速18.4m/s
最大平均風速24.7m/s風向E(1620) 最大瞬間風速31.7m/s風向E(1533)
日照時間 0.0時間

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昭和基地に着いて、驚くもののひとつにゴミがあるといいます。
昭和基地には歴代の残置物(ゴミ)がたくさんあるのだそうです。
以前に書いた第一次の避難小屋にも、処分されなければならないものが山積していました。
南極観測が始まった時期と高度経済成長が始まった時期は大体同じ時期で、そのころの公害日本を考えると、昭和基地だけが環境を考えた生活をしていたとは思えませんので、そういう時代だったのだなぁと思うのです。
ましてや自分の身も危険にさらされるような地ではゴミの持ち帰りより、自分達が帰ることが先決でしたでしょうし、広大な自然の中で少々のゴミは大きな問題になるとは思えなかったのかもしれません。
現在の昭和基地は、ゴミに関しては大変細かく処分方法や管理方法等が決められているようです。
今回は基地内で出る、主に生活ゴミの各個人や当直が行う処理についてが書かれているということですね。
これは家庭ゴミを想像すれば様子がわかりますが、かなり丁寧な分別がされていると思います。
この後の処理の仕方も、細かく定められているので、適当にその辺で燃やしたり、流したり、埋めたりもできないはず(そのうち南極だよりとして届けてくれると思います)。
つまり、多くのものを持ち帰るということですよね。
第47次南極地域観測実施計画の概要にも「南極環境保護対策の推進のため、残置廃棄物の持ち帰りを重点的に推進する(昭和基地クリーナアップ4カ年計画の2年目として200tを予定)」と書かれています。
200tってどれくらい??と思うほどの量です。
燃料のなくなった「しらせ」は、ゴミを持ち帰るには十分なスペースがあるのでしょうけれど、200tの廃棄物を積み込むのはそう簡単ではないと思われます(もう動かない雪上車などもあるみたいです)。
昭和基地内で処理をするものについても配慮がされています。
今までも、生ゴミ炭化装置、汚水処理施設、夏宿の汚水処理装置、バイオトイレ、燃焼処理トイレのことに少しずつ触れてきましたが、どれもなるべく汚染物質が出ないように工夫されたものだそうです。
今日の南極観測隊では環境保全に携わる隊員を置いていますし、土壌調査や水質調査なども行っていると聞いた事があります。
環境保護対策にかける費用、時間、人員はかなり多いと思いますが、そこを厭わずきちんとすすめているので、とても信頼できるし安心できます。
どうか、今後も環境保護対策を進めてもらいたいと思います(南極地域観測統合推進本部に対してということになるのでしょうけれど)。

で、ふと思ったこと。
南極から帰ってきた隊員さんたちは、家庭や街角でゴミがちゃんと分別されていないと、やり直してしまうんじゃないだろうか?
家庭では大変重宝がられるのではないだろうか?
なんてことを考えてしまいます。
「なんでも自分達でやらなければならない生活を体験した人は、その仕事に従事する人のことを考えることができる」と言っていた人がいましたが、それって自然だけでなく社会にも優しいってことですよね。
南極観測隊の隊員さんもそうなんだろうなぁと思いました。

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